2020/01/10

オールステンで15kNの強度があれば、岩に穴をあけても許されるか?どうか?

■岩に穴をあけることの正当化

オールステンで15kNの強度があれば、岩に穴をあけても許されるか?どうか?

というのは、

カムが設置できる場所か?
しっかりした立木がある場所か?

ということに左右されるだろうと思います。

クラックがあればボルトを打つ必要はないし、上に歩いて行けるなら、トップロープで登ればいいだけで、岩を傷つけてまでリードしたい、というのは、クライマーのエゴかもしれません。

カットアンカーで強度が100%の15kN出ているか?というのは、効きが確かめられない以上、よくは分からないわけです。

■ カムのほうがマシ

まぁ、私はカム落ち練習もしましたが、

同じくらいの緊張感

で落ちるのが、ボルトでもカットアンカーの場合、適切かもしれません。

カムは慣れた人であれば見て効いているかどうか、判断ができる。私も大体判断ができる。

しかし、カットアンカーは外目から判断ができないし、増締めもできない。

100%強度が出て15kNで、20%しか強度が出ていなかったら、3kNしかない。いくら二つあっても…。体重60kgの人が3mから落ちれば9kNです。

なので、見て確認できるほうが、より信頼性が高いと言える。

九州ではカムを怖がっている人は多いが、どっちがより怖いか?は、精査が必要でしょう。

結局、知的怠惰、つまり楽して安全、というのは、ないのではないですかね?

2020/01/08

カットアンカーの支点は3点で…

カットアンカーの強度は15kN
■ 登山歴50年でも分からないなら

この支点は、強度が現代では十分ではない(15kN)と分かっているボルトの支点ですが、実は私は問い合わせをしたのです。回答は、

「不安だったらバックアップを取って使うといいよ!」

というアドバイスだったとしたら、要するに登山歴50年でも、このボルトがカットアンカーであるということが分からなかったということです。

ならば、登攀歴5年の私が分かるわけがないよな。

■ カットアンカー

カットアンカーというのは、2010年発行の『アウトドアクライミング』で

使用には注意が必要なボルト

に区分されています。信頼性の高いボルトに区分されているのは、

・グージョン、
・ケミカル、
・ケミカル施工された全ネジボルト


の3つです。

この情報は2010年時点で、現在は2020ですので、カットアンカーを2020年に使うのは、10年遅れの技術であり、勉強不足と言えるということになります。

UIAA準拠のボルト強度は、25kNです。

■ 15kN

15kNって、普通サイズのカムが14kNです(汗)。

カムとさして変わらない強度に、ドリルを持ち出す意義が感じられませんね。

ということで、カムは3点で終了点を取る、が基本ですので、このタイプのボルトも強度が同じくらいですから、

3点

で、つまり、バックアップを取る、というのは正しい所作のように思います。



2020/01/07

2020 JFAリボルト講習会のまとめ

注:全15記事、ですので、15記事全部読んでいただくようお願いします。

■時間的経緯

現代では、1985年から数年間のラッシュ時に打たれたボルトが更新期(30~35年)を迎えている。

逆に言えば、新しい岩場であれば、ボルトはまだ新しいため比較的安心 と言える。

 ・2000年以前の岩場 落ちない登り
 ・2000年以降の岩場 フリークライミングの岩場

■ UIAA 基準の強度

 25kN 

■ 現時点での強度を満たすボルト

25kN
・M10グージョン 
・ケミカル
・ケミカル強化された全ネジボルト

5~15kN
・カットアンカー
・M8以下のもの

できれば使いたくないもの
・オールアンカー
・リングボルト
・ハーケン

■ ボルトの安全性の見極め原則

1)材質 
2)種類
3)サイズ
4)施工者

■ 材質

 ・異種金属の組み合わせ=コロージョンによりNG
 ・コロージョンがない場合は、応力腐食による破断がありうる
 ・鉄=酸性雨によりNG
 ・消去法により、ステンレス、もしくはチタン等上位金属

■ 種類
 
 ・カットアンカー = 異種金属のためNG 施工後、効きが確認できない
 ・グージョン =OK  ほぼ360度方向の拡張、効きが確認可能
 ・ケミカル  =OK

■ サイズ

 ・M8 = 細すぎて強度不足
 ・M10 = OK
 ・M12 = OK

■ 施工者

ヒューマンエラーの可能性。施工ミス。多くは下穴が大きすぎるミス。粉塵の除去。

■ 現在危険視されているボルト 

ペツルの刻印があるケービング用ボルト

 ・マニュアル値 15kNしかない
 ・3cmしか穿孔されていない
 ・異種金属 3つのコンビネーションでできている

■ 現在推奨のボルト

 新規 = グージョン、もしくはケミカル
 リボルト = ケミカル

景観等の配慮のため。

■ ケミカルボルトの特徴

 ・景観等になじみ目立たない (アクセス問題再燃中)
 ・ドローに優しい
 ・敗退可能
 ・コスト高
 ・施工が難しい
 ・逆クリップが許されない

■ 1ルート当たりのコストの変化 

高価格化ということです。

 昔 支点一つ数百円 5中間支点として、ボルト数7 数百円×7=7000円~
           長いルートでも、1ルート1万円程度

 今 支点一つ最低1600円 1600×7=11200円 + 日当(人件費) 
           1ルート 3万円程度~

日当:特A級 時給2000円 施工スケジューリングができるレベル。かなり敷居が高い。すでに開拓慣れしている人ですら、B級で精いっぱい。日当が出るため、いい加減なレベルの人は雇用できない。そのためリボルト職人の講習会がある。

■ 個人の時代から、組織の時代へ

ルートへのコストが倍増したため、

 「個人のポケットマネーで施工できる時代は終わった」

という井上さんのセリフが印象的でした。まさしく、そうですね。

しかし、クライミング界への周知は、まだまだなようです。高額なボルトを打ち換えてまで、そのルートを登りたいという魅力があるルートは今後打ち替えが進むでしょう。

高額なため、受益者負担の原則を貫くとしても、ローカルな岩場のメンバーが情報網を持つ必要があります。

■ 記事まとめ

以下の記事が私の今回の、リボルト講習会で学んだことのまとめ、です。

1トピック、1記事の原則になっています。全部読んでくださいね!読まないと、このページの、まとめだけでは分かりませんよ!

17ミリのスパナを持ち歩きましょう
ケミカルアンカーでは逆クリップが許されない
ケミカルアンカーの理由
ボルト=負の遺産となっていないか?
ペツルだからと言って信用できない事例
山岳会代わりにJFA加入しましょう
JFAリボルト講習会 Day2
JFAリボルト講習会 DAY1
悲報: JFAのリボルト講習会に見学で参加してきました
ボルトの見極め まとめ マインドマップ
カットアンカーは、時代遅れ
ボルトの安全性 情報量少ない

■ 当方のボルト吟味の歴史

スタートは油山川で開拓者に会い、ボルトを見せてもらったこの山行(2018年11月)


から、正確な知識を得るまで(2020年1月)、約1年2か月かかっています。

この開拓者の方とは4か月程度でご一緒しなくなり、現在はボルダーをメインに頑張っていますが、ボルトに意識を高めようとして、研究したのが以下の記事です。

ボルトの質や配置については、疑問に思えることが多く、この山行で最初の気づきを得ています。

その後、日向神の支点、比叡のマルチに行くことで、かなり疑問を感じ、比叡では、打ち替えに検討されているボルトが、規格に見合ったものなのかどうか?という疑問を持ちました。結論的に言えば、検討されていたボルトでは、現代の要求するレベルには達していないようです。

こちらの図が、ボルトを見決める際のマインドマップです。大事なことは 

・M10グージョンが良く効いている
・もしくは、ケミカル

の2つ以外では衝撃荷重ではなく、静荷重にしておくなど、用心が必要ということです。

「バンバン落ちるクライマーは、俺、嫌い」と言った青ちゃんの言葉は、現代の岩場事情をよく理解し、反映したものであった、と言わざるを得ません。さすが長く岩やっているだけのことはあります。

小川山のように気軽な墜落は遠慮しましょう。 やはり、国際基準でのボルト整備が、着々と進んでいる岩場は、安心の上、安全です。安普請のツケは命で払うことがないようにしたいものです。後世に負の遺産を残さない、これを目指しましょう。

何度も同じことを話す苦労と間違って伝わるリスク

■一人で同じことを何度も何度も大勢の人に話して回る

一人で同じことを何度も何度も大勢の人に話して回る

というのは、セールスマンならいざ知らず、そりゃ~嫌にもなるだろーなーという感想だった、今回のJFAリボルト講習。

一日しゃべって時給800円(かどうかは知らないが、例えば)だったら、そりゃ、もうやる気減退でしょうね。

講習の様子を動画にとったり、リアルタイムでZoomで配信とか、フェイスブックでリアルタイム配信とかしたら、いんじゃないの?とも思う。

動画や注意喚起の文章があるだけでも、注意喚起されて、出たくなる人、ちょっときっかけになって、より深く知りたくなる人、はたくさんいると思う。

ほとんどの人が日和見菌である現代…特に若者。

若い人ほど、経験値が少ないので、良しあしの判断が、ただのフィーリング、つまり、なんとなくだったりして、行動から人柄を察したり、論理の裏付けがない。なんとなくかっこいい方とか、なんとなく多数派につく、というのが安全策の大半である現代。

きちんとした情報を出す=先手必勝、かもしれません。

どんな権力でも腐敗する

■どんな権力でも腐敗する

そもそも、安全を自分で確認するための情報が、ほとんどどこにも出ていない。

ので、若いクライマーに、お前ら、勉強不足だろ~と言っても、気の毒だと思う。

認識不足も同じ。たぶん、言っている本人も、”かつて来た道”(笑)。

私は岩登りを含む山が必要になった時に、死ぬのは嫌だと思ったので、山岳総合センターに行きましたが、雪上の支点の作り方は教わったけど、ボルトの見極め方は教わっていない。つまり、ボルトを追いかけるようなクライミングは、山岳総合センターではクライミングとは思われていない。アルパインクライマーはボルトを使わないものだ。

フリークライミングをしている、外岩クライマーは外岩クライマーで、インドアジムの奴らは怖がりで、誘っても外岩に来ないんだよな~と思っている。

が、インドアの人が怖いのも当然で、やたらピン遠いし、何を持ったらいいか、分からないし、トップロープだと蔑まれるし、登れるのを登って楽しむということが許されず、外に行っても、強くて登れるクライマーのメンタルおトイレにされるだけで(やっぱり登れる俺ってかっこいい~)、楽しくないからすぐ来なくなる。

子どもなんか見ていると分かるけど、怖い怖い!と言って、すぐテンションするけど、それが悪いことだとは、まだ知らないので、おんなじのに飽きずに何回も何回も登ろうとする。ので、外岩に関しては、リードしないことをさげすむ風潮とか、そもそも、強いか弱いかだけでクライマー適性を計る日本の岩場環境のほうがまずくて、人間性が卑しくなっているだけだと思う。肝試し大会になっている。

リードなんて楽しくてやっているんだから、ほら登ってやったぞ、なんてもったいぶって差し出すものじゃない。ラオスでは、誰だってリードだが、登った後のロープ、これ登る?と初心者に聞くときに、俺が命がけで掛けてやったんだぞ、ありがたいと思え、なんて態度の人はいない。

考えれば、考えるほど、日本のフリークライミングを汚染したのは、

面子とかプライドなのでは?

ずいぶん昔に読んだ北山真さんの『フリークライミングのススメ』には、”上手くなりましょう、そうでないと、日本では楽しくありません”と書いてあり、そうだよなぁと納得。

自分の足で稼いで、自分の納得を稼ぎ中だ。

ボルト=非アルパイン

■ボルト=非アルパイン

ハーケンは、そもそもリムーバブルな支点だったわけで、スノーボラートにせよ、ピトンにせよ、

 既存の支点を追っかける山

は、そもそも、アルパインクライミングのカテゴリー外、だと思われます。

 世界の教科書 UIAAのアルパインサマー

が、ボルトについて記載していないなら、そうなのでしょう。

日本の岩場では、アルパインからスタートした人たちがボルトを打つことが多いのですが、思想が混乱している理由は、

アルパインの思想でフリーのルートを作る

ところにあるのではないかなと。思想は見えないので、ボルトがあれば、フリーのルートだと思ってフリーのクライマーが来てしまいますが、フリークライミングというのは、墜落は前提です。

なのにバンバン落ちるな!と言われたら、え?!ってなると思う。

私はアルパインでスタートしたので、落ちないクライマーですが、落ちないのは、落ちれないから、です。落ちれるところなんて、アルパインではないですから… なんで落ちないクライマーで良かったし、落ちてもいいよと言ってくれてありがとうだけど、やっぱり落ちるのは嫌かもです。

今回で、ますますボルトへの信頼、減りました…

17ミリのスパナを持ち歩きましょう

現在のところ信頼できる支点の標準サイズは、10ミリグージョンです。これは六角レンチで言うと、17ミリのスパナということになります。

ネジ頭 スパナサイズ
M8  13ミリ
M10 17ミリ
M12 19ミリ


グージョンの良さは、増締めすることで、効きが確認できることだそうです。

グージョンボルトを選び、サイズ的にも強度が十分であっても、施工ミスはありえます。

最後のチェックは、クライマー自身で。

それには、17ミリスパナが必要です。


ケミカルでは逆クリップが許されない

現在、動画は用意中です。

動画で見たほうが分かりやすいと思いますので動画を用意します。YouTubeを見ましたが、掲載ありませんでした。なんでないんだろう???

以下が、ケミカルの支点を使う際の注意点です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・しなやかさに欠けるドッグボーンのクイックドローでは、ロープにドローが引っ張られたときに、支点の反対側にドローが反転しやすい

・ドッグボーンが短いドローでも同じ

・ドローの支点側のカラビナを固定している場合も同じ

・ワイヤーゲートは、マイナーアクシスで安定しやすい
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

以上のため、ケミカルアンカーでは

 ・長めのしなやかさのあるドローを使う 26cm
 ・支点側のカラビナは固定しない
 ・ワイヤーゲートを支点側に使わない
 ・ゲートを互い違いにして使用しない (人的ミス)

等の配慮が必要です。

ちなみに井上さんは、ペツルアンジェ でした。

ケミカルアンカーの採用の理由 景観に配慮

■ ケミカルへの抵抗感

一般にオールドクライマーが開拓者のことが多いこの業界で、ケミカルへの打ち替えが進まない理由は、

 オーバースペック感

というのがあると思います。クライマーの文化の中に、

 過剰な安全を好まない文化

というのがあるのは、事実です。

何しろ、ボルト数を減らそうというのが根底思想。もともと打つのが手打ちのジャンピングで1つ打つだけでも大変だった、という歴史的理由からですが、岩を保護する、という観点からも、人工壁並みに1m置きに打ってあるとやっぱり変だなって感じです。

■ 景観への配慮

ケミカルが推奨される、強い理由の一つは、昨今のアクセス問題のことがあるようです。

天然記念物にくさび問題、に端的にみられたように、クライミングが大衆化していくプロセスで、今まで普通に登られていた場所が、”え?!ボルト打ってある!いいのか!!”と社会の目…批判的な目のこともある…を向けられるようになった、という事情です。

昔はハーケンで、目立たなかったものが、打ち替えで、ピカピカのペツルになってしまえば?

目立ちます。

そして、不必要な注目… ”器物破損じゃないの~?”などを生んでしまいます。

クライマー目線で言えば、危険極まりないハーケンを安全安心なボルトに打ち換えるというのは、打ち換えてくれたクライマーにとっては、何も得るものはなく

 善意以外の何物でもなく、

本当にありがたいお方、なのですが、それは、同時に社会的にみると、

 犯罪

ということになってしまいます。究極のババですね…。善意のリボルトクライマーが、犯罪歴付きになってしまいます。

■ アクセス問題、という単語だけで 忌避感 があります(--;)

アクセス問題を解決する、アクセスファンド、が日本にはありませんが、アクセス問題は、おそらくアメリカでも、相当厄介な感じに受け取られている問題だと思います。

なにしろ、ラオスで登った時、どうもドイツ国内には、すでにアクセス問題を抱えず、楽しく登れる場がないから、ラオスに開拓に行ったという感じなのではないか?とうかがえたんですよね。それは、世界のクライマーの雰囲気で分かりました。

アメリカ人クライマーたちも、大勢がラオスに来ていましたが、アクセス、という単語を聞くだけで、及び腰モードな感じでした。

雰囲気は、誰も寄り付きたくない分野、みたいな?

しかし、誰かが許可を取らない限り、みんなで登る岩場は確保されません。

■ 日本百岩場に載っている岩場でも…

このような忌避感のためか、日本百岩場というきちんと印刷された本に載っている岩場であってすら、

 使用許可の受領

は、

 口約束

だったりして、かなりいいかげんなものであるそうです。その辺に野良仕事をしていた、おじさんに聞いたら、「いいよ、いいよ」と言われた、とか。

そのようないい加減なものであったり、きちんとしていたとしても、

 30年前の許可で、すでに許可をくれた人が亡くなっていたり

ということで、基本的にもう一度取り直さないといけないことのほうが多いのだと。

■ 支点のカモフラージュがマナー化しています

上記のような理由で、アクセス問題が浮上してくると、地権者やほかの利用者へ配慮して

 登らせていただいている

という姿勢が大事になります。そうなるとクライマー自身のマナーだけでなく、ボルトのも、マナーとして、

 目立たないボルト

ということが重要になります。

 ハンガーがないケミカルは目立たない点で非常に有利だ、

ということです。何しろ目立ちませんので。ラッカーなどでのカモフラージュも可能だそうです。

という事情で、岩場のアクセス問題の有無によっては、新規開拓であっても、グージョンで打つよりも、ケミカルのほうが採用に適している、ということになります。

■ 施工が難しい

しかし、欠点もあり、施工が難しいということです。施工者のスキルによりばらつきがある、ということ。それで、

 リボルト職人、

という職位を設けて、きちんと責任をもってケミカルボルトを打つことができる人を育成している、という訳なんですね。

施工の難しさについては、どのボルトも同じですが、下穴が大きすぎれば、当然、抜けます。

粉塵の洗浄が十分でない場合も、同様に抜けやすくなるので、丁寧な施工をするという細やかな配慮が必要です。

■ まとめ

上記に加え、ケミカルボルトには、他にも利点があります。

1)目立たない
2)部品点数が少ない …部品の数が少なく、コロージョンの影響がない
3)カラビナに優しい
4)強度が強い 40kN

逆に、欠点もあります。

1)1本1600円と高価  …接着剤分は除く、です
2)施工が難しい  … リボルト職人検定で対策中です
3)逆クリップが許されない 
4)粘りがない … 破断するときは唐突

です。

とくに逆クリップに関しては、これだけを取り上げて書いておいた方が良いと思いますので、別の記事にします。

ボルト=負の遺産となっていないか?

■ ボルトを打つことに対する歴史的思想の変化

昔(20年前)

・積極的には打たない
・プロテクションは必要な人が打てばいい(必要とするほどダサい、弱いというノリ)
・グラグラで怖いと思った人が打てばいい
・会員数も少なかった 数百人レベル 



 ・クライミングブーム 
 ・クライミングジム 500件 
 ・私費で打つ人が増えた あいまいなボルトの選択曖昧な技術
 ・高いグレードを登れる人が、良い開拓者であるとは言えない
 ・破断事故、すっぽ抜け事故が増え、危機感
 ・会員数 3000人レベル

■ ボルト見極めの4原則

1)材質   → ステンレスが標準
2)ボルトタイプ → グージョンが標準
3)サイズ   → M10 以上
4)施工者  → 人的ミス

■ リボルトvs新規開拓

新規開拓のほうが、すでに打たれているボルトの撤去がない分、作業は簡単です。また、新規開拓の場合、開拓者の栄誉がありますが、リボルトの場合、それはありません。ボルト自体も、選択肢が幅広く取れますが、リボルトだとケミカルという選択肢しかありません。

つまり、新規開拓より、リボルトのほうが、より技術的に難しく、得るものがない、ということです。

さらに進めると、現時点でM8などの

強度不足とされているボルトを打つことは、貢献ではなく、むしろ負の遺産

ということになります。

■ 考察

どのような資材を使うべきか?ということについて、考えない開拓者の人はいないです。

十分強度がある、というのは最低限考えていることだと思いますが、M8では、すでに強度的に十分とは言えないのだろう、ということは、ペツルのボルトが、M10以上であることからもうかがえます。 

日本の多くの岩場では、気軽な墜落をするよりも、

 テンションで静荷重のほうがいまのところ、安心である状況だ、

というのは言えそうです。特に体重が重い方は。

怖いと思う人が打ち換えれば良い、という論は、打ったボルトが負の遺産となってしまっている現在では、開拓者の無責任、ということになってしまっています。というのは、

リボルトのほうが手間が多く、なおかつ、外から見て、強度を確認する方法がない

からです。

間違ったものがあるよりは、初めから何もないほうがマシ

かもしれません。特に作業量的には。

それでは、現在打たれているボルトで登るリスクを受け取りたくないと考える人は…、見極められないと、安全を自己責任で取れ、と言われても、見極めようがないため、登らないという選択肢しかなくなり、それは、岩場に来るなという非言語メッセージを送っているのと、同じことになってしまいます。

実際、岩場に来る若い人は大変減っている、というのが実情です。きちんと若い世代はメッセージを受け取っている、ということです。

次に登る人がボルトを評価できるよう、開拓者は開拓したルート、もしくは岩場で、使用したボルトについて、

 「この岩場では、M10ステンレス製グージョンを使用しています」
 「リボルトでケミカルアンカー 〇〇ミリを採用しています」

などの記載が、トポに掲載されてしかるべきですね。そうでないと、どうやってメーカーの取説を見たりして、自己責任、を全うできるのでしょうか?

外から見て分からない腐食したペツル

現代的に強度不足のボルト

現代的に強度不足のボルト


ペツルだからと言って信用できない事例

■ ペツルでも信用できない

一般に、ハンガーにペツルの刻印があれば、クライマーは、「あ、ペツルだ~」と、ほぼ絶対的に落ちて良いボルトだと感じていると思います。

しかし、ケービング用で、信頼ができないペツルのケースもあるそうです。

まずは、写真を。



中がコロージョンしています。しかも、ボルト、短い! 何?1.5cm???

これはケービング用で、15kNしか強度がない、ペツル ブリーユ という製品です。この製品が、クライミング用に中間支点として、大変多く使われているそうです。

ペツルには

クールボルト スチール  ×  気候変動により酸性雨のため日本では不可
クールボルト ステンレス 〇  スタンダード品
クールボルト HCR    ◎  

と3種のボルトがありますが、どれもグージョンですが、使えるのは、ステンレス以上の 下の二つだけです。 

さらに、ペツル社は、ハンガーだけのバラ売りもしており、ステンレスとスチールを混同して使うと、ガルバニックコロージョンが起きます。

写真のように、中が腐っていても、外からは確認ができないです。

こちらの取説には、

https://www.alteria.co.jp/download/pdf/ifu/P13.pdf

3cmしか埋め込まれておらず、せん断方向に、15kNしか強度がないことが書かれています。これは、落ちる方向に、という意味です。一般にUIAAの規定するクライミング用途での使用は、25kN以上ですよね。引き抜き方向へはNoと書いていあるだけです。

しかも、絵が手打ちの絵ですから、きっと、ジャンピングで打っていた時代のものなのでしょう…

ということで、この手のボルトを信頼しないようにするのが大事です。見分け方は、頭がグージョンのようにネジになっているか?カットアンカーのように平べったい六角かです。

ネジ山が出ているのがグージョン=OK ボルト

ペツルだけど、NGのボルト ケービング用





2020/01/06

山岳会代わりにJFAに加入しましょう

■ リボルト講習会に出た感想

出て良かったんだけど、2点、残念というか…、どうしてそうなっちゃんだろうなぁ…そんな感じのことがあった。

一つ目は、JFAの人が大変疲弊していそうなこと…。

やっても、やっても、ありがたがられず、むしろ煙たがられ、そしてキリがない仕事をしていると、厭世的になると思う…。(まさに主婦業!!!)

「講習会があるってお知らせが来ても、来ない人はどうせ来ないですよ」
「そんな人に声をかけるだけ無駄ですよ」
「安全に関心がない人は、どんなに言っても関心がないですからね」

…。厭世的...?

なので、なんだかとても気の毒になりました。”どうせ”ちっく? よほど、これまで大変だったんだろうなって…。人が嫌がる仕事のことを痰ツボと言うそうですが、そういう感じなのかも?と。

二つ目も、そんな人に何を言っても無駄、的な部分。

でも、なぁ…。

私個人は、誰からも何も言われていないけど、海外登攀に行って、

1)適正ボルト間隔、
2)適性グレード

適性か、どうかはともかく、とにかくグレードピラミッドができるくらい、たくさん課題がある世界を経験し、自分が登る課題を決めるために、トポを読むことによって、

 ボルトは何々を使っています

 ロープ長は○○にしてください

等、書かれているトポを見て、”ボルトの質”や、”その他、あれやこれや”が、大事なことだということが分かりました。

それ以前も考えてはいましたが、龍洞で、支点の最新情報をトポに書き写すほどの熱心さは、行ってから身につけました。 エクセル表があったので、なんだろ~と思ってみたら、アンカー情報だったので。誰でも、そんなものを見れば、書き写すと思いませんか??

日本ではそもそも情報が岩場ごとに提供されていないので、同じことをやろうと思っても、不可能です。

小川山クライミングも誘われない限り、行かないし、逆に自分が連れて行くときは、すでに行ったことがあるところの復習山行で、後輩にはよほどでないとリードはさせないのでした。ので、支点については良いと分かっているところしか行っていない…

九州に来てから、会だったり、信頼できる師匠というわけではない人とも行かないといけなくなり、なんだかんだで、見慣れないボルトを見るようになり、色々とアップしていたので、それはクライマーとして自分で支点を見極めようとする、というので良い事だったと思います…

見たことない、変な支点一杯見たよなぁ…

オールアンカー

カットアンカー

海外からまで支点の疑問をアップしたら、返事が来た…。まぁ、今すぐ落ちて死ぬとかないですし、ほぼほぼ大丈夫なんですが、永久に、これでいいってのとは違うかもです。

しかし、いかに日本の支点が遅れているかは、だいぶ知見が高まりました。リボルトは急務で、なおかつお金がかかることですが、なかなか、

なり手がいない

そうです。

■ 地元って誰??問題

地元のクライマーに聞くといっても、会があるわけでもなんでもなく、バラバラの個人でしかないので、

 地元のクライマーのコミュニティ

と言っても、誰がその主体なのか?は、何年も住んでいる人しかわからない…。

上位組織もあるようでない… 誰が誰なのか、漠然としていて、あるようでない、ないようである、という岩場開拓コミュニティの在り方自体が問題なんだなーと、今回は理解しました。

結局、ボルトについて問い合わせしたくても、新しいクライマーたちが誰に何を聞いたらいいか、分からなくても当然だと思うので、

ボルトの安全性について知識を求めない 

ことを責めても、無理がある。そこに知識がある、必要性がある、ということ自体が、現代では、分かりようがないので、

 聞いてこない奴=ダメな奴、

は、誰もがハーケンスタートの、昔の基準だと思うし、今の人は、

 昔の人ほど優秀でない

だけだと思います。昔は大卒男子はエリートですが、今は普通の人です。海外のトポのように、積極的に

「この岩場はM10グージョンを使用しています」

とか、知識を出していくほうがいいのではないかなと思ったりしました。書いてあれば、Googleで”グージョン”と入れる人も中にはいるでしょう。

それに、きちんと網羅的に知識をまとめて、書けば、みな、できることはやってくると思うんだけどな。

とりあえず、そう言うきっかけとして、一番有意義なのは、リボルト講習に無料参加することですので、JFA会員になって、誰かがリボルト職人になる、そのついでに話を聞きましょう。