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2021/12/22

A kind of mountain I love

「日本の山は美しいなぁ…」

夫の仕事の都合で、行くことになった甲府。駅前にある舞鶴城跡からは、南アルプスの
雪を抱いた白い稜線が、いつもくっきり見えます。

夫婦共働きから、一転。バリバリ働く女性から、専業主婦となった私。流産後でもあり、心身共に深い傷を負い、次なる生き方を模索している…そんな私を癒し、導いてくれたのが、日本の山の大自然です。

初めて見るカラマツの植林は、秋になれば黄金色に輝き、厳冬期ともなれば凍り付いた白い雪や霜が、繊細なレースのように美しいのです。春は、みずみずしい黄緑色の小さな星型の新芽が一斉に出てきて、とても愛らしい…。

カラマツの森はとても明るい。カラマツは、落葉する唯一の針葉樹です。日本原産の唯一の針葉樹なのに、針葉樹と言えば、九州の放置されたスギやヒノキ林しか見たことがなかった私には、とても新鮮でした。



  ダケカンバの森…ずいぶんここでは遊びました 

「山が呼んでる…」

明るくさわやかな森は、明るい青年の笑顔のような森です。

暗く鬱蒼として人を寄せ付けないスギやヒノキの森とは違い、迷子になって帰れないかも…そんな気持ちはつゆにも起こさせない、いつでもおいで、と明るく笑っている森です。

広葉樹ならダケカンバ。落葉して枝だけになったダケカンバの木は、樹幹辺りがうっす
らと赤みを帯びて、何層にも重なったダケカンバの森は、それはそれは美しいのです。

初めて見る植生に心が惹かれ、”山を見るために”、始めたのが登山でした。

登山と言っても、白い雪の山がスタート。美しいからです。

ロープを使ってテクニカルなルートを登る、クライミング要素の強いアルパインクライミングというスタイルの登山へ進みました。美しい景色をテントの中から、のんびりと見たいと思ったから。

明るく晴れた雪の山が好き。

  厳冬期の北八ヶ岳 私の原点の山です


11月の北ア山頂ではテント泊を

私のやっていた山登りでは、四季ごとに違うアクティビティをします。

アルパインは、四季折々の季節に合わせ、自然界の営みから有利な点を人間が利用する、というスタイルなのです。

それまで四季のない都会暮らしをしていた私たち夫婦に、四季とともに生きる生活がやってきました。

ハイシーズンは、11月からです。山から観光客が去って静かになってからが本番です。

11月最終週の燕山荘前はテント泊練習場です

まずは、北アで初雪を踏む。そして、今期はどこを登ろうかしら…とワクワクしながら、アイスアックスを取り出してきては、刃を研ぎ、12月第二週にもなると、そそくさと凍った氷瀑を偵察に行きます。大体、第二週で登れるか、登れないか、今年の氷の発達具合が分かる。十分寒いかどうか?が、人生の重大事になります。地球温暖化はジブンゴトです(笑)。

年末はクリスマス寒波が来る前に、雪崩が起きるような傾斜のルートは済ませてしまいます。というのは、雪崩には時機というものがあるからです。

ルートも雪で埋もれてしまうと、クライミングではなくラッセルの山になってしまいます。

お正月は冬山合宿です。寒さを味わう。お正月前の富士山五合目は、雪に慣れておこうという人で一杯です。
  雪の稜線歩きは素晴らしい経験です

雪の稜線を歩く

そして、厳冬期は、私の大好きなアイスクライミングのハイシーズン。毎週アイスクライミングに出かけます。その途中、凍った谷底を見るわけですが、その美しいこと!冬には冬の愉しみがあります。

  こんなのを見るために行っているだけで、選手になるために登っている訳じゃないです

春の愉しみは4月のスプリングエフェメラル。森の妖精と言われる、先行して花咲く山野草です。

カタクリやニリンソウ、フクジュソウ、セツブンソウなど…トレジャーハントのように花を探して歩きます。これは九州でもできますね。


GWは、雪を利用し、長い縦走を。豪雪の山に出かけて、春の温かい日差しの中で、雪の山を楽しみます。どこにでも雪という水があるから、水を担がなくて良く遠くに行ける。これも自然の恵みです。

雪の山に登山道はありません。読図のスキルがないと、道はないので歩けません。

夏は沢登り。川を遡行します。急な増水に備えて、ロープで逃げ道を作ってから、タープの下で就寝。寝るのは土の上。増水時、閉じ込められないためです。水辺であれば、山火事のリスクはないので、焚火を燃やして暖を取り、焚火で料理することもあります。


 タープ泊が沢では通常です。焚火もできないと、夏でも寒いです。

一番暑い季節には、水と戯れる沢を…。
  沢は沢の技術をちゃんと分かっている人と行かないとゴルジュで流さないとかだと、おぼれ死にさせられてしまいます…

そして、また秋になり、山の樹木から葉が落ちると…山の中の見通しが良くなる。黄金色の秋の森は、お月様がキレイです。明るい月夜にナイトハイク。そして、また冬の白銀の季節が来て…。

あとはエンドレスリピートです。

「なんて愚かだったんだろう…」

何シーズンか、こうした四季のある生活を繰り返していると、山の声が聞こえてくる…。

例えば、太陽光発電のこと…。

都会のOLだったころは、当然のように推進派でした。代替エネルギーだったら、どんなものでも善だと思っていたのです。ところが、皆伐し、山を切り開いて太陽光パネルが設置されている様子を見かけるようになると、本末転倒していると分かるようになりました。

都会に暮らしているころは、まさか森を切り開いて太陽光パネルを置くというような、愚かなことが起こるとは思ってもみなかったのです。当然、そういうことは避けられて、空いた土地に設置されるものだ、政府に任せておけばそうなるんだ、と、なんとなく思っていたのですね。

それだけ、世間知らずだったということですね。空いた土地って、どこ?ここは日本なのだから、空いた土地は、99%山林です。頼まなくても、岩の上にさえ木が生えるのが日本の植生なのです。

例えば、燃料のこと...。

山小屋勤務も経験しました。昨今の山小屋は、薪を下界から買わないといけない。というのも、周辺の森が天然記念物指定されていて、薪用に不要な木を伐るどころか、拾うことすら、許されていないためです。そうなると石油を担ぎ上げるも、薪を担ぎ上げるも、同じことになってしまいます。

そのような状況なので、石油をヘリで上げるのではなく、薪を歩荷で上げる山小屋は、環境問題に体当たりで頑張っている山小屋です。昔の木こり小屋があって、炭焼きの跡があるような山でも、国立公園等に指定されてしまえば、山小屋が生活のために、薪を自由に伐って良いというところは、めったになくなりました。

私も良く、登山道の入り口に薪を積んであるのを見かけて、2、3本ザックに結わえて担いで上がったものでした。

同じ山小屋経営をしていても、やっていることの本質は全く違うということですね。

「山の文化の喪失が悲しい…」

山の師匠は、山の文化や民俗も大事にするという方針の人でした。

鹿島槍に登るなら、カクネ里のことを知りなさい。『黒部の山賊』を読んでから、黒部ダムをめぐる立山三山を登りなさい。そうすれば、感動もひとしおだよ…。

私のバイブルは『北八つ彷徨』でしたし、ヒーローは『八ヶ岳研究』を書いた独評登高会の山口輝久さんでした、長いこと。

ヒロケンは知っていますが、崇めたことはありません。私はブイブイ言わせる山をやったことはありません。当然です。

20代で水泳を始めた人が、今からオリンピック選手目指しますか?目指しませんね? 

そんな当然のことが、山やクライミングになると分からなくなる。大人になって山を始めた人は、すべからく、全員が、”一般市民クライマー”です。

プロと言えるクライマーは、5000~6000mの標高へマルチを持っていく時代です。それ以外だったら、高難度マルチです。高難度というのは5.12は含まれませんよ、いまや12は中級者です。若い人などアップが12だそうです。つまり、それ以外の人は、ぜんぶ一般市民クライマーですよ。

目くそが鼻くそを笑ってどうするんでしょう? そんなことにエネルギーを費やさず、とっとと身に着けるべきスキルは身に着けてしまい、日本の大自然を楽しみましょう。


「鹿の被害、深刻です」

あるとき、いつものようにルンルン気分で、尾根をひとつ降りていたら、銃を構えた猟師さんに、ばったり。猟師さん、がっかり。こちらは、びっくり。

作物の取れない冬の時期は狩猟期です。この辺の農家はみんな、猟銃免許を持っているの
が普通だそうです。鹿と猿が主な狩猟の対象。田畑を荒らす有害鳥獣の駆除ですが、直接の駆除というより、全体的な狩猟圧を高める活動です。もちろん、お肉にして食べることもあります。上手な猟師さんが処理した鹿の肉は絶品です。

鹿に食い荒らされた森…残っているのは、毒草のコバイケイソウばかり。美しい山野草は、
おいしいためにすっかり食べられてしまいます。

三つ峠という山では、ここと北海道の礼文島でしか見られない、アツモリソウの保護のた
め、鹿柵を設置するボランティア活動をしていましたが、設置したとたんに植生が回復。

三つ峠は、伝統的なロッククライミングの入門の山でもあります。岩の山は花の山なのです。

「天に唾しない生活をしたい」

地下鉄と会社の始業終業のリズムから一転、山のリズムで暮しはじめ、山で過ごす日々が増え…そうして、私は、消費を中心とした生活から、”自然に寄り添った暮らし”の世界に入って行ったのでした。

山小屋では雨が降ったらラッキー!です。雨水が溜まって、お風呂に入れる。ウキウキ、さっそく薪を割って、五右衛門風呂を沸かしましょう。

冬季の避難小屋に行けば、ダルマストーブが置いてあります。外はマイナス17度。火をつける技術があるか?どうかは、今夜の快適さの大きな分かれ目。ここは頑張りどき!です。

雨が降ったら、今夜は洞窟でテントを張りましょう。洞窟は雨風を避けてくれ、快適です。

そうやって、”山のスキル”を培うことは、そのまま、”生きのびる力”です。文字通りです。

ムーブはそのような中の、ほんの一部分にしかすぎません。

自分に必要なところへ行く

そして、上手に登れるようになった結果、自分に適した課題をもとめ、韓国のアイスクライミングへ。

6か月先まで予約が取れない、ラオスの石灰岩クライミングへ。

ラオスで出会ったカナダ人クライミングパートナーと台湾のシークリフへ。

アイスクライミングでは、当時、私は持久力の世界におり、長いルートを登ることが課題でした。

日本国内には、外岩で5.9がたくさんある岩場はなく、ラオスの岩場がそれに最適です。みなさんも、ぜひ。滞在費用も安くお勧めです。

しかも、日本のように怖くないので、行ったら、あっという間に上達しました。ビレイヤーは見繕えるので、単独で行っても大丈夫です。

帰ってきて登った城ケ崎で、みんなびっくり。それだけでなく、石灰岩を登ったのに、アイスの6級が上達してしまいました。

台湾は、湯川の代わりです。初級クラックの経験値を貯める、登り貯めをするためにいきました。ちょうど、相方のデイビッドと私は二人とも、初級クラックをしたかったので、意気投合。

初級のクラックを登りだめしたい、そのために最適な岩場はどこか?となると、九州からなら、台湾がおススメです。プロテクションはセットし放題です。湯川はプロテクションディフィクルトで、初心者向きでないです。

実は、BMCトラッドフェスは、お誘いいただきましたが、ピンとこなかったので行きませんでした。

今だと、インディアンクリークは行ってもいいかもしれない岩場ですが、ヨセミテは行く気になれないです。普通にハイキングでは、むかーしに夫と一緒に行ったので、場所の目新しさはないです。(私はカリフォルニアには、2年の生活経験があります)

海外も、けっこう疲れるものです。交通費分の元が取れるか?という、そこが大事です。先進国は、滞在費が高すぎるので、友達がいるところ以外は、あまり行きたい気持ちになれないです。

自分の課題を克服する旅路の中で、それぞれの土地で、それぞれのクライマー達が、その土地なりの”自然と共生した暮らし”を広げ、文明との折り合いをつけている姿を目にすることができました。

韓国ではクライミング基地だった山小屋は、環境省の方針で廃止となり、クライマーは下界から、1時間半ほど歩いてあがります。なんのことはない、本来の姿に戻っただけなのです。岩場まで5分で寝食を山小屋が丸ごとお抱え、っていうほうが、特例だったのです。

ラオスでは、牛とヤギが草を食む中、電波もWifiもない場所でのクライミングです。これで文句をいうクライマーは一人もいません。みなが幸せそうでした。お食事はそんなにおいしくないですが、そんなことはそう問題にならない感じです。当然ですが、シャワーはちょろちょろです。でも、そんなことで文句を言う、なよっちいやつはいないのが、クライミング界のいいところですしね。

台湾では、クライマー達は海岸のゴミをクライミング帰りに拾って帰っています。米国のクライミングガイドの資格を持った人が、岩場と支点の強度をエクセルで管理していました。飲んだビールとコーヒーはボルト基金になるそうでした。

都会の便利を捨てて、自然界本来の姿に戻る… つまり、自然界を人間の都合に合わせるのではなく、人間の側が自然界に応じる、のです。

 応じれる力の大小が山やの実力

というわけなんでした。自然界に応じれる力が大きい人ほど、優れた山や、優れたクライマーというわけです。

なるほどなぁ、そういう話だったんだ…。と目からウロコです。人類共通の過ちがここに見出されます。野生動物はホントにエライ!と思います。

「人間、水と火があれば、大体のことはオッケーなんだなぁ」

地下鉄も、インテリジェントオフィスビルも、タワーマンションも、ハイテクスポーツカーも、ハイテクトイレも、デザイナーズブランドのスーツも、実は人間の幸福には、そんなに必要なものじゃなかったんですね。

本当の自信というのは、そういうものに守られないでも、自分の幸福は大丈夫なんだ、と本人が分かっていく…そういうプロセスから、湧いてくるものらしいです。

本当に必要なものは、ほんの些細なことだった。

清浄な水、清浄な空気、温かい住居、雨をしのげる屋根、安全に使える火、そして、楽しい仲間。

今の目標は、人間の生活が自然を破壊するのではなく、自然界の営みの一部となる暮らし。

クライミングは、例えばゴルフ場開発と比べて、自然界の破壊度合いは、最小です。ボルトを打てば、半永久的に岩という自然の造形を傷つけてしまいますが、カムなら、そんなことはありません。

生涯取り組み続けることもでき、ちゃんとクライミングのノウハウを理解してしまえば、それ自体が国際言語。英会話力なくても、バディは組めます。

自分の出した生ごみを大地に帰すことができる生活ができて幸せ。

自分の作ったお米で一膳食べれる生活が幸せ。

自分の作った藁でしめ縄が作れる生活が幸せです。