■ 『日本の岩場』CJ編集部 1991年
日本全国を見渡した時、
日本を代表する岩場
はどこか?と 考えるとこの地図が出てきます。
黒伏山▲
谷川岳▲
明星山▲
劔岳
八ヶ岳
甲斐駒▲
穂高岳
北岳▲
富士山
阿蘇山
大崩山、▲
比叡山、▲
行縢山 ▲
(上)に載っているのは、黒い▲の山だけです。つまり、九州では宮崎が、もっと正確に知名を言えば、延岡市が、岩場という意味では、代表的都市、ということです。
ちなみに甲府は、甲斐駒、北岳、のお膝元、です。
延岡市は甲府より、あんまり分かっていないと思いますが…甲府は一応、山岳資料館が芦安にあって、アルパインクライマーの加藤慶信さんという亡くなられた方の業績が書いてありました。延岡でそういうのは見たことがないです。市として、岩場の地位の高さを認識はしていないかもしれません。
ショートとボルダーは取り上げられていませんが、デカい壁があれば、ショートはそれを1ピッチだけ登ったり降りたりしているだけ。ボルダーは当然ですが、石ころを登っているだけ。
ボルダーからスタートした人だと、ショートであってもロープを使うフリークライミングにステップアップする際は、かなり大きな意識改革が必要です。そうですね、年に3分の1登っても、1年はかかるくらいでしょうか。もっと頻度が少なければ、もっと年数がかかると思います。
■ 昔の人と今の人では覚える順番が逆です
ショートのフリークライミングから、マルチピッチ(ビッグウォール)へ進むにも、かなり大きな意識改革、が必要です。
アプローチゼロ分のマルチ(ゲレンデ。つまりフリークライミングのマルチ)と、山のマルチ(アルパインのマルチ)は、全然違います。なんせ、前穂北尾根なんて、6時間の登山をこなしてから、やっとルートの起点に立つのです。一方、ゲレンデである比叡の白亜スラブは、道路から5分です。全然、スタート時の疲れ度合いが違います。
昔の流れでクライミングしてきた人たちは、山を大きくしてから困難度を上げる、という順番で、教わってきたわけです。登山→山のマルチピッチルート→ ショートのフリークライミング → ボルダー… 私も、この順番です。オールラウンドクライマーと言われます。
大体、登山から入った人は、この順番ですが、インドアクライミングジムから入った人は、順番が真っ逆さま、です。
オールラウンドの反対で、その分野しか知らない”専門家”クライマーです。
そこが、”ビフォアクライミングジム時代のビギナー”と”アフタークライミングジム時代のビギナー”の大きな違いです。
■ リスク認知が違えば、実力認知の違いを生む
この違いが何を産むかというと、リスクの認識違い、です。
リスクの認識違いが何を産むか?というと、実力の認識違い、です。
このページは、行縢山の山野井泰史さんの開拓ルートです。「明日なき暴走」という名前のルートです。山野井さんは、日本を代表する世界的クライマーでもダントツトップの方です。だだのピオレドール賞ではなく、生涯功労章、を取った方。
”明日なき暴走”のルートグレードを見ると?五級下です。この本にあげてある代表的事例としての5級下は、穂高岳屏風岩緑ルート、谷川岳衝立岩雲稜ルート、丸山南東壁塚田=小暮ルート、です。
AA2は、アメリカンエイド、つまり、カムで、落ちたら、7m落ちる、AA3は、10~20m落ちる、という意味です。その間は、ブランクセクションということです。
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1P目 20mAA2+: フェイス、ハング下レッジナイフブレード多用
2P目 35m AA2: ボルトラダー
3P目 30m AA3: クラック スカイフック
4P目 15m AA2: フェイス
トータルでボルト7本。アプローチは登山道を徒歩30分。
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”ザック一つで国内を放浪していた
20代前半、九州の行縢山に一人で開拓したルートは「明日なき暴走」とした”
そうです。
■ 一般市民クライマーが登るフリーの岩場でのランナウト
現代では、”フリークライミングの岩場”として親しまれている比叡ですが…
ボルトのランナウト許容度合いが、開拓者の言葉を引用すると、”5級で50mにつき3本”、となると… デシマルに置き換えると、10a以上でも、墜落距離は12~13m。
これは、世界的クライマーの山野井さんの20代のころのエイド記録並みのリスクテイクです。
そりゃ、普通の人には怖いのが当然だわなー。
一般にフリークライミングの場合は、確保理論が国から出されており、それによると、6mからの墜落で人体は壊れるということになっているんだが…(汗)。倍、落ちると、どうなるんだろう?
https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/Portals/0/kougisiryou/H24kakuhoriron.pdf
というので、一般市民クライマーに、20代の山野井泰史なみの度胸を要求しているってことになりますが…(汗)。
■ 2グレード ゆとりを
これに対策するには、十分な登攀力のゆとり、が必要です。
私は、2グレードアップと教わりました。
つまり、5.7(4級)を落ちないでリードするには、5.9が必要ということです。
5級は、5.10aから上は全部含まれてしまうので、5.11であっても、5.12であっても、5級…とっても幅広く設定されてしまいます。なので、5級を2グレードの安全マージンを取ってリードするには、5.12aがやっとこさRP出来る実力では、全然足りないのです…
ということは、5.11aをやっとこさRP出来るレベルでは、本チャンでは、まあ、4級が安全になるだけで、何の安全マージンも増えたことにならないです…(汗)。
もちろん、5級の中で、易しいものは、手が付けれるものもあるかもしれませんが、そうだとしても、よほどしっかりした情報源で得た内容でないと、行ってみるまで分かりませんね。なんせ、5級は昔の人にとっては、最高グレードだったので、難しければすぐ5級になり、エイドに切り替えていたわけですから…。
■ ボルトルートのフリー
現代のトップクラスクライマーの仕事は、こうしたルートを現代的な基準で正確にグレーディングすることかもしれませんが、フリーの価値観の中では、脆い支点のルートなんて誰も行きたくないかもしれません。
なにしろ、フリーは、困難度、を求めるものであり、危険を求めるものではないので。ドーンウォールで何度もトライしている画像が出てきますが、落ちても落ちてもあきらめないですが、あれが、たまに支点外れるとか、あります?ないですよね。10回落ちて、そのうち1回は外れた、とか、そういうことは想定されていない。だから、チャレンジできるんですよね。100回トライして、やっと1回成功する、というクライミングです。
今日は、
アレックスオノルド君のフリーソロの動画が回ってきましたが、フリーソロしているのは、5.11のルートです。イレブンなんて、ジムでは今日初めてジムに来ました!みたいな若い男性は登ってしまいます。
ところが、5.11を100発100中で落ちないで登るためには、5.13が必要ですね、2グレードの法則で言えば。まちがっても、5.11cではないですね。
この考えに基づけば、2段がノーマット、つまり100発100中で登れるためには、4段が登れている必要があります。3級が限界グレードの人が、ノーマットしてよい…おそらく100発100中だろう…と想定できるのは、2グレード下の5級のボルダー課題です。
私は、今の力だと、一般的な5.9は落ちないので、ー2グレードだと、RCCの3級や4級のところは、落ちないだろうということなので、たしかに私がリードした奇数ピッチは、そのようなグレードですので、納得感があります。合って良かった登攀力って感じです。
RCC3級、4級なんてところは、セカンドであればロープで確保しているので、昨日クライミング始めました、みたいな人でも行けます。なにしろ、登攀自体は簡単です。
つまり、トップ(100発100中である必要がある人)とセカンド(そうでない人)の実力には、これくらい差があるということです。
ボルダーだけのクライミング歴2年の人が分かっていないのは理解できるが、普通にマルチやショートを10年も、20年も登っていて、なんで、これくらいのことが分からないのか、分かりません…
■ 1991年の発行
この本が出たのは、1991年で、すでに
30年前
登攀は、1987年の登攀で、さらに4年前。
34年経過しているということです。ボルトラダーのボルトは最低でも34年経過しているということですね。
そのあと、このルートを登った記録は、奥村さんのようです。
http://blog.livedoor.jp/joywall/archives/51762198.html
本当にブイブイ言わせていいのは、こんな記録であるよ、という事例として、
誰からも文句が出そうにない、ダントツクライマーの山野井さんの記録を持ってきました(笑)。
こちらに、2017年の回想が、掲載されています。
https://www.evernew.co.jp/outdoor/yamanoi/2017/20170327.html
■ これを書いている理由
自分が分かったことを相手にも分かってもらう=覚他。