2017/03/20

昇仙峡クラック 

■ No matter of what is given, be grateful of what is given.

連休の週末初めは、大阪からモウアラさんご夫婦が昇仙峡を登りに来てくれた。

思えば、私のクラックは、モウアラさんが来てくれてから本格化した。クラックの初心者の頃、一緒に菊地さんの講習に出ましょう、ということで、関西からわざわざ一緒に登りに来てくれたのだ。

当時、私はクラックと言えば、小川山の小川山レイバックくらいしか知らなかったが、生まれて初めて登った小川山レイバックは意外と感触が良く、「これなら行けるかも?」

そこで、都岳連のレスキュー講習で知り合った友人と小川山に出かけ、カムエイドでトライ。ビビッて降りて、事なきを得ていた(笑)。まだまだリードで取り付くには、技術が足りていなかった…。プロテクションが核心だ。

クライミングの初心者は知らないが、初心者が一通り経験しておくべき課題と言うのがちゃんとあり、それらを一通り登りつくしてから自立、である。すっ飛ばして自立しようとしても、怪我になるだけである。

そんなこととはつゆ知らず、である(笑) ああ~落ちて死んでいなくて良かった~。実際、あの小川山レイバックは、かなりきわどかったようである。

それを察してか(?)、モウアラさんたちが来てくれて、私は菊地敏之さんの講習に出かけ、楽しく、そして、安全に、クラックを登ることになった。講習ではいかに登れていないか実感。

次のステップと言うことで、クラック名人の吉田和正さんの講習に出ることになった。吉田さんとの出会いは、アルパインからフリーへのステップアップと言う事だった。

登攀の含まれない山と登攀が入るアルパインの質の差も大きいが、アルパインの登攀とフリーの登攀の質の差もかなり大きい。

山を学ぶと言う道中において、大きな質の差が出てくることがある。そういうところへ来たら、質の差は理解するにも時間がかかるし、技術の習得となると、それこそ、半年や1年、2年という単位で時間がかかるものである。それを心得て、進むべし、である。

大事なことは、時間やお金など、きちんと自腹でリソースを掛けて理解し、習得すべきということだ。

ただレジャーとして、楽しくて登る岩、とは違う。ある程度の真剣な取り組みが必要になる。

それがまたクラックで来たわけだった。その認識をモウアラさんにもらった私は、クラックを吉田さんに教えてもらいに出かけたわけだった。ちなみに、ジャミングは本で勉強して行ったが、色々と間違ったジャミングをしていた(笑)。

余談だが、お金を払って講習会に出る、などの真剣な取り組みをしない人は、脱落して行くし、そうあるべきだ、死んでしまうので。

お遊び程度の気分で…ただ実際、遊びではあるので切り分けが難しいのだが…でクライミングしている人は、ビレイもいい加減で、人を殺してしまいそうだ。逆に言うとビレイがいい加減=テキトー気分、ということなのだが、それは講習会に出ようとしない姿勢からしてわかると思う。

一般に、お金を払ってガイドさん主催の講習会に来ている人の方が意識も高く登攀もうまい。

山岳会に指導を目的にして入る人は、意識が低い人が多い。そもそもの動機が、指導をタダでやってもらおうという、あさましい狙いなので、実際、指導されても、教わらない人が多い。それは自腹でないからではないだろうか?というのが前の師匠との共通認識だった(笑)。

だから私は講習会にきちんと出る人は尊敬している。実際、講習会で会った人の方が、安全面がきちんとしている。

■ 助け舟

山は、ありあまる時間を、何か社会的に有意義なこと、今しかできないことに費やそうと思って、始めた。

山も嵩じると、登攀と登攀のマスターは避けて通れない。登攀となると、パートナーの問題が出てくる。

パートナーに行き詰った時、助け舟を出してくれたのがモウアラさんであり、Kさんペアだった。本当に助かった。

山は私にとって社会貢献の一部なので、そうできないのであらば、いつでも山を辞める気でいたが、あらゆる難所で、誰かが、何かが、助け舟を出してくれ、続きに続いて7年。

そういうことだから、私の山の歴史は、結局のところ、山に愛された歴史だ。

あまりガツガツしてこなかった。いつも、与えらえたものをありがたいと感謝して、受け取ることにしてきた。それは今も一緒だ

No matter of what is given, be grateful of what is given.
与えられたものが何であれ、与えられたものに感謝しなさい。

■ ゆかりの地

そういうわけで、去年の今頃、私に与えらえていたのは、いまや伝説となった吉田和正さんとの時間だった。

吉田さんは、開拓クライマーで、岩場に住んでいるようなものだった。日本で初めて、5.14Aのクラックに登ったクライミング史に残る人物だ。私が山さえ行ければいいや、というような生活をしているので、講習会の後は、ビレイヤーで呼ばれて出かけていた。

その吉田さんに紹介してもらった岩場が昇仙峡というのも、すてきな話だった。

というのは、昇仙峡は、「昇仙峡開拓団」というつながりで、初めての山の先輩である三上さんや、大町のリーダー講習で私の班の講師を担当してくれた高橋さんとの接点が、すでにあったからだ。家も甲府だし、ゆかりの地。

岩登りをスタートする前から、昇仙峡には色々な思い出があった。雪では御岳新道でのラッセル三昧、読図では踏み跡全くなしの中津森や燕岩岩脈、沢では板敷渓谷や伝丈沢、アイスでは金石沢…と既に色々と遊ばせてもらっていた。

登攀は、私自身が去年はスタートして間もなく、まだ初心者。吉田さんが教えてくれた頃、やっと5.9が登れる程度の実力だ。(今は少し成長しました)

デイドリと献花
吉田さんは、そんな私にも登れる課題を見つけてくれた。ビレイのお礼で登れる課題を見繕ってくれるのだ。この辺の感覚はさすがベテランというところ。吉田さんの岩を見る目、ということだ。

そう言う目が養われた人の目で見た課題は、やはり質が良いと思われた。

今回は、お礼として、ぜひモウアラさんやKさんペアに昇仙峡を紹介したいと思っていた。

大きなエリアで捉えてのことだが、昇仙峡での遊び方は多彩だ。

だが、岩場が一番素晴らしいと思う。

本来は小川山以上の一大クライミングエリアになれるポテンシャルのある岩場だと思う。

■ 献花

初日は空荷で、エリアを案内した。めずらしく、ボルダラーや登攀中のパーティに会う。この岩場で、だれか他の人に会うのは初めてのことだった。チョーク跡は見るけど、人には遭わないんだよな。

色々なエリアがあるのだろうが、トポは公開されていないので、限定的な知識の寄せ集め、となっている。

だから、誰かに会って、あのデイドリの隣の…などと言っても話が通じない(笑)。ボルダ―も名前があるのだろうと思うが、一向にワカラナイ。

昇仙峡は相変わらずのポカポカ、るんるんの岩場だった。どうしても、吉田さん元気に天国でも登ってるかなぁ…と考えてしまう…

吉田さんが作っていた手作りのハシゴはどこかに消えていた。あれ、その辺の落ちている木をつないで作ったハシゴだったから、あぶなかったしなー。

翌日だが、デイドリのスタートラインに行くと、花が添えてあった。なんだかうれしかった。デイドリは、超かぶっている薄ーいクラックで、こんなの、登れるんだろうか~というラインだ。でも、とても美しい。

フィンガーの課題
■ 翌日

翌日はKさんペアも参加して5名でエンジョイクライミング。

吉田講習と同じ流れにした。まずは、5.10Aのボルダ―クラックでアップ。これはハンドジャムなので、比較的楽に皆登れた。

近所のデイドリエリアに移動して、本来はフィンガークラックをする予定だったが、フィンガーはパスして、ジャムジャム84の下部へ移動。

ジャムジャム84
ジャムジャムの1P目は3級なので、ロープを引いて上がり、懸垂で降りて、5.9+のワイドと5.11bのシンクラックにトップロープを張った。

モウアラさんご夫婦はジャムジャムへということで、ワイドだけトップロープで登って、ラインをつなげてもらう。

ワイドは結構大変で、登攀に時間がかかった。

私は一回目は登れなかったんだよなぁ。チキンウィングをして、それだけで上にも下にも動けず、どうにもならなくなったのだった。半身が入るような形になる。半身と背中で、もぞもぞして上がる系のクラックだ。

ここは、実は3回目だが、去年案内してきたときは、すごく登れる人と来たので、アドバイスが良くて、2回目は登れた。が、それ以来、アイス三昧しており、ワイドの登りをすっかり忘れていた。

登れるかな~と不安な気持ちで取り付いたが、なんとか登れた。一度登れたと言う記憶があるというおかげかもしれない。上の方は体を翻して、フェイスにして登る。

Kさんもトライしたが、パートナーのサチさんは登らずビレイだけだったので悪かったな~。

ワイド5.9+
みなで、11bのシンハンド?ほとんどフェイスでカチなんだけど・・・もトライ。最後回収は旦那さんにしてもらった。

この課題は、出だしが核心で背が低いと右上のカチが取れないので、一歩が出ない。右を使わないでクラックだけで、というのは、完全に不可能に感じられるラインだ。

というわけで、各自3本づつで、お腹いっぱいとなり、本日のクライミング終了となった。

アイスでは、15mくらいを7本とか登って、持久力の世界に今いるので、なんだか、だいぶ違う話だ。

それだけ岩って難しいんだな~と強く実感。

岩は岩でもアルパインの3、4級の岩場ではなくて、フリーの岩場ってことなんだが…

その、圧倒的な難しさ…が、分かっていないのが初心者で、私もその初心者に含まれていたよなー。何しろ、初見の人と小川山レイバック出かけたしなー。

相変わらず、岩場は、ポカポカ陽気で、幸せ色だった。ここは、本当にいつでも平和で幸せだ。

■ 宴会

11bのシンクラック
初日はモウアラさんたちと楽しく宴会。おもてなし。

メニューは
・前菜 魚介とオレンジのサラダ
・サラダ ミックスリーフとクルミのサラダ バルサミコビネガー
・サラダ ヒヨコ豆のサラダ 私のお気に入り
・スープ ダルスープ
・主菜  鶏胸肉のオーブン焼き オレガノ風味
・デザート リンゴのキャラメリゼとバニラアイスシナモン風味 
・ドリンク 清里のヨーグルトと低温殺菌牛乳のラッシー、豆乳のカルダモンチャイ、赤ワイン

モウアラさんたちが日本酒を持ってきてくれ感謝。

去年は一緒に小川山に出かけて宴会していた。湯河原幕岩も宴会。クライマーと話しているとクライミングの話で話題が尽きなくて、とっても楽しい。ラオスに入った話やアイスの話しかできないのだが…。

その土地の提供する楽しいラインを登り、地のモノを食べ、クライミングの話で盛り上がり、健康的な二日間だった。

山が振り向かなければ、いつでも辞める気でいたのに、続きに続いて7年。私一人の力では、ここまで来たのではなく、導かれて来たのだなぁと思います。

今日も、幸せな思い出をまた1ページつづることができ、感謝の念でいっぱいだ。

色々考えると、私にとって良いことしか人生には起こらない。ので、一見否定的だと思われることが起こったにしても、何かしら意味あってのこと、結局は、すべてが導きであり、必要だから起こる。シャンティ☆