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ヨセミテ国立公園におけるクライミング管理は、明確な「良い・悪い」の二元論ではなく、「ウィルダネス(原生地域)としての特性(Wilderness Character)をいかに維持しつつ、レクリエーションの価値を両立させるか」という観点から規定されています。
現在の管理の基本的な考え方をまとめると、以下のようになります。
1. 「良いこと(推奨される行動・価値)」
クライミングを、ヨセミテの歴史や文化と密接に結びついた「かけがえのないレクリエーション価値(Outstandingly Remarkable Value)」として尊重しています。
クリーン・クライミング(Clean Climbing)の推進: 一時的なプロテクション(カム、ナッツ、チョックなど)を使用し、岩に恒久的な痕跡を残さない手法を「規範(norm)」として推奨しています。
歴史的・文化的資産の保護: ヨセミテのクライミングの歴史や文化を尊重し、それを守り伝える教育活動を支援しています。
コラボレーション: 公園当局とクライミング団体(ヨセミテ・クライミング協会など)とのパートナーシップを重視し、教育や自主的なルール形成を通じた管理を目指しています。
低インパクトなアプローチ: 既存の登山道を利用し、踏み荒らしや土壌侵食を防ぐなど、環境への負荷を最小限に抑える行動が「良い」とされています。
2. 「よくないこと(禁止事項・制限される行為)」
「ウィルダネスの原始性」や「自然環境」を損なう行為は、厳しく制限または禁止されます。
過度な設備(bolt-intensive)の設置: 「ボルト集約型のルート(スポーツクライミング)」は、ウィルダネスの管理方針とは「両立しない(incompatible)」と明確に位置付けられています。
環境破壊: 岩を削る(チッピング)、ホールドを接着剤で固める、植生を損傷する行為は国立公園の規則(36 CFR 2.1)で明確に禁止されています。
動力工具の使用: 電動ドリルなどの動力工具の使用は、ウィルダネス法および連邦規則(36 CFR 2.12)により一律で禁止されています。
無許可のアンカー設置: 原則として、新規の固定アンカーの設置には当局の承認が必要です。
管理のポイント:グレーゾーンの扱い
ヨセミテの管理戦略において非常に重要なのは、以下の考え方です:
既存ルートの扱い: 2025年1月4日以前に存在したルートやアンカーについては、一定の理解を示しつつも、将来的な管理計画(Wilderness Stewardship Plan等)の中で必要に応じて数を見直す(削減を含む)可能性があるとしています。
「責任」の所在: 公園側はクライミング中に生じるリスクや固定アンカーの安全性に対して責任を負わないと明記しており、安全管理はクライマー個人の責任となります。
要するに、ヨセミテの管理書は「アンカーをゼロにする」ことではなく、「クライマーが自ら環境を守り(自主規制)、不必要な改変を避けることで、行政による強制介入を最小限にする」という相互協力の姿勢を「良い」ものとして強く求めています。