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2024/11/26

【クライミングの因数分解】速報!ツクチェピーク前衛峰(6490m)北東壁 2023冬 講師●伊藤 仰二 氏

 ■ 本物のアルパインクライミングを!

いや~、すごく軽やかで、楽しく、冒険の楽しさが伝わってくる報告でした。

この報告を聞けば、今までの冬壁のイメージが覆るでしょう…

このロープを切ったらあいつが死んじまう…みたいな、イチかバチかヒロイズムを山に持ち込んだのは、新田次郎の小説なのでしょうか?それとも神々の銀嶺みたいな、登山漫画?

現実のヒマラヤクライミングの楽しそうな様子が伝わってきます。

私がしたいのは、このようなクライミングの、一般人バージョン、です。

■ なぜかM自慢だったこれまでの山

今までの山ヤの報告が、イチかバチかで、雪崩に遭いました、とか、仲間を亡くしました、とか、凍傷で指が5本亡くなりました…とかが勲章だったのは、Mな伝統で、本来健全に、つらいことはつらい、楽しいことは楽しい、と言い、

 どのような実力で、どこまでできる、というのが、合理的に、健全に判断できる、

というのが大事なことです。

そうでなくても、山は安全でないのですから、わざと安全ではないようにして、それを自慢してしまうような、愚かな行為は、易しい簡単なところしかチャレンジしていない、という証拠なんではないでしょうかね?

それで、

 俺ってすごんだぞ系報告

って、恥ずかしい…。この記録を、雌鉾アイス初登とか、クロステオテ谷エイド初登が、初登であれば記録だからというのでロクスノに出してしまった人に見てもらったほうがいいかもです。

これらをロクスノに載せてしまった編集者も、ちゃんと現代アルピニズムくらい理解できるようになってから編集者をやってもらいたいものです。

いやはや、苦言ですみません。しかし、冒険でも、チャレンジでもないものを冒険風に書いてしまってはいけません。それに騙されてもいけません。

■ スタイル

伊藤さんの報告は、従来の報告会の、あちら側とこちら側を隔てるノリと異なり、具体的で、何が核心か分かりやすく、アルパインクライミングを志す若い人には、何がどうできれば、どこに行って良いのか?が分かりやすかったんではないだろうか?と思いました。

まずは、Googleアースで、1か月半びっちりパソコンに張り付いて壁を探したそうです。

つまり、そういう探す作業ができる暇人が必要ですし、探す際に条件を分かっていることも必要です。

これは、国内で未踏の場所を探す場合でも同じです。私は氷瀑を探して回った経験がありますが、大体は、1)北面に向いていて、2)水量が多くない滝マークを探すことになります。このように、1)2)のように条件を絞り込める経験値も必要です。

条件を絞り込めるためには、あらかじめヒマラヤを登っている経験が多少は必要でしょう。

次に、スタイル。

・ずっとリードフォローで行きたかった

・1ピッチだけ残念ながら、荷揚げになった

・日本の屏風岩みたいな感覚で登りたかった

・トップ3kg、フォロー10kg

やっぱり、リードフォローで、快適に抜けたいですよね… カメラを持っているのが伊藤さんだったので、ずっと相方がリードで、伊藤さんはセカンドだったような印象を受けましたが、つるべだったのかなぁ。

私も、トップは軽く、セカンド(フォロー)が荷物を持つ、というスタイルで、インスボンなど登っていますが…インスボンは300mくらいの壁だけど、伊藤さんたちは、さすがの1700m…

一般人クライマー 300m

トップクライマー  1700m

1700mを登るには? 1700÷300=約5日? 4泊のビバークで、登って、その食料、生活ギア込みの重量がトータル13kgとは…軽い。

ギアを見てみましたが、アイススクリュー7本、カム一式、ハーケン9枚、ナッツ2セット、アルパインヌンチャク6枚、捨て縄用ギア4つ、あとはスリングと環付きビナって感じでした…

いや~、私、普通のクラックのリードでも、カム2セット、持って行っています…(笑)。これは怖がりだからですが、これを怖がりだというのは、正確な描写だけど、手繰り落ちること確実な、ランナウトしたボルト配置を怖がって、怖がりだと描写されるのは、不正確な描写です。リスクに正常に反応しただけ。

さて、ルートは、M7、AI5 R 1700mでした。ピッチ数不明。4日で登ったということなので、4で割ると、400mちょいくらいなので、60mロープで、7ピッチ~8ピッチと、スピードが、速いです。ミックスなのに…。

分不相応に難しいルートに、レッドポイントで取りついて波状攻撃しているフリークライマーは、さっさとは登れない… 高難度レッドポインターではなく、オンサイトで早く登れる能力が必要です。

高い標高なのに、普通に無雪期のインスボンくらいの速さだなぁ…と思いました。私と師匠の青ちゃんとで、インスボンのマルチ一本では時間が余って、2本目を行く日があったくらいなのですが、グレードが易しいので、ぱっぱと登ってくれたので、それでセカンドは普通に上がれば、一日の登攀距離は400mくらいだったかもしれない。

つまり、M7を、M5みたいなスピード感で登れないといけないってことですね…。ムーブ解決とか、やっている場合じゃない、ってことです。

これは、岩に置き換えると、5.11を5.9みたいにさっさと登れないといけないって意味です。

すごいな~、私にはありえないすごさだけど、昨今、男子が5段とか言ってるんだから、若い男性なら、M7(5.11)って普通にその辺の人も登るので、ありえないグレードではありません。クライマー最弱者の私でM5くらいなので。

それを確実にさらにスピーディに登れ、しかも空気薄くても…って話。

個人的に、6000m級で、ミックスルートを登り、未踏の壁を登る、ということの具体的事例で、必要な能力は何か?ということが、報告で因数分解ができました。

1700mをワンプッシュということになると、壁で4泊ビバークしなくてはならないので、もっと標高の低い場所で、壁内ビバーク経験を洗練させる必要があります。易しくするには、ルートも整備されたところで、壁内ビバークする。それは、一般的には、ビッグウォールの経験ってことになる。できない人は人工壁や近所の岩場で壁ビバーク練習するのが良いと思います。

このような理由で、ヨセミテのビッグウォールに行くことは、ヒマラヤの未踏峰の冬壁の訓練の一部ということですね☆

ヨセミテビッグウォールなら、まぁ、エイドで登れる人なら、誰でも行けるそうです。御年74歳だった米澤先生だって、俺も行きたいと言っていたくらいな場所です。もちろん、壁ビバークが不快な宿泊と言うこと以外は、私もやろうと思えばやれる。(やりたくないけど!おトイレ空中なんて…)

それ以外に絶対に必要なのは、やはり、雪上生活経験です。

これは、八ヶ岳で雪上テント泊していれば、十分。八つのほうが寒いから。6000m級でー10度くらいというのが一つの水準になっているそうでした。八ヶ岳だと、標高2000で、ー24度です。

大雪への対応力も学ばないといけないので、豪雪の山に行けば、夜中に除雪で寝床から起きなくてはならいというキャリアも積めます。

私も谷川岳周辺の山で、経験させてもらいましたが、一晩で1m40cmくらい積もってびっくり仰天でした。雪の量で言えば、日本の山のほうがシビアなので、雪への対応力の高さは日本の山のほうが高度ですね。濡れた雪だし。

そして、当然だが、アイスにプロテクションを取る技術。アイススクリュー設置能力。それも、岩の溝に詰まっているようなの。

それから、岩にプロテクションを取る技術=カムのプレイスメント。

そして、オールラウンドなクライミング能力。フリークライミングのムーブだけではだめですね。アックスでクラックを登る技術=ミックス技術=つまり、ドラツーのクラックバージョン。ドライもボルトルートではだめってことです。

また壁に行きつくまでに、読図が必要なので、沢登りもこなせないといけないです。

さらにどの壁を登るのが適切か?というので、ルートファインディング力…これはベテランの知恵が伝承されてほしいところです。ゼロから作るのは、かなり難しいです。登っている先で、ああ~プロテクションが取れない、けど、今、手も離せない!って羽目になるのは、普通のショートのゲレンデで、5.8しか登っていなくても、よく発生します。私も、初めて瑞牆で登った日にランナウトして、カムが玉切れになりました。登れたからよかったけど。

同じようなことを僻地でやって、それで落ちれば、即ピンチというか、救急車来ないので、そういう羽目にならない能力を培う必要があり、ランナウトを自慢話にしている場合じゃないですね。

当然ですが、テント泊技術が必要なので、当然、冬山の縦走や、雪稜登攀、無雪期テント泊も経験済みであるのは、基本のキです。そして、アイスとクラックは、そこそこ登れて当然…ということになります。

これらの上に、M7はフリーで登れ、M5を登るかのようなスピードでないといけない。エイドは5だそうでした。めっちゃランナウトって意味です。しかし、これは自慢する話ではなく、単純にやむを得ないって意味です。

大体登るより、降りるほうが難しいのが山ですが…帰りは、板状の岩が重なったところを降りるのを避け、遠回りして降りていました。

また、クライムダウンは、ロープつけてコンテで降りていました。40度だったそうです。これくらいの傾斜だと、懸垂では、ロープが地面についてしまうし、逆に遅いので、クライムダウンになると思うけど…、コンテで間にプロテクションが取れない場合は、トップクライマーの間でも、ロープをつけるかつけないかは意見が分かれるところだろうなぁと…。

片方が落ちたら、他方が巻き込まれるからです。

そして、体力温存。ビバークハンモック手作り。手作りのバックパックが50リットルで560gとウルトラライトでした。これ販売したら売れそうです(笑)。

全般に、いかに苦しかったか?という報告ではなく、いかに楽しかったか?という報告だったのが新鮮だった☆

非常に良い報告会でした。

先に聞いた若い方の海外クライミングの報告も楽しかったので、明日まとめます。本当に良い報告会でした☆

こういう報告会が多数行われれば、栗城劇場みたいなのは、起らなくなるでしょう。

正確に何がどうできれば、どの山に行けるのか?ということが、周知されると思うからです。

ヒマラヤって言っても、歩くだけのトレッキングから、M7で4ビバーク、みたいな山までいろいろあります。

富士山って言っても、夏山なら、初心者の山、ただ歩くだけでしょう。同じことです。


個人的に、伊藤さんは2歳年下。別の優秀でない2歳年下の相方のしりぬぐいをするクライミングをしてきましたが、優秀な方の弟が、まるで姉の敵を取ってくれたかのような報告に感じました☆ 

その個人的感想は別にしても、このような報告会が増え、現代のスーパーアルピニズムが正確に理解され、エイドクライミングではなく、オールフリーで、アルパインを志す若い人が増えてくれることを願っています。

クライミングで一旗揚げよう、という野心的な若い人が、いつまでも古い情報(エイド=アルパイン、日本全国、Ⅳ級A1)にしかアクセスできなかったことが、ここまで、アルパインクライミングの衰退を招いた元凶のように思います。

参考:トップアルパインクライマーであるピオレドール賞の受賞者たちのフリークライミング能力については、以下のような特徴が挙げられます。

多くの受賞者は高度なフリークライミングスキルを持ち、特に技術的に難しいルートを開拓しています。例えば、複数回受賞したアラン・ルソーやマット・コーネル(2023年受賞)は、北壁やミックスクライミングのルートでM7やAI5+などの非常に高い難易度のセクションを含む登攀を行っています【17】【18】【19】。

他の例として、複数回受賞者であるポール・ラムズデンやマレク・ホレチェクは、EDグレード(Extremely Difficult)の新ルートを含む登攀を成功させています。このグレードは、5.12以上の難易度のフリークライミングとミックスクライミングを組み合わせたものです【17】【19】。

まとめると、ピオレドール受賞クライマーは一般的に5.12から5.14クラスのフリークライミング能力を持ち、さらにアイスクライミングやミックスクライミングの高難易度技術を組み合わせたスキルを有していることが多いです。これらのスキルは、未踏峰や新ルートの開拓に不可欠とされています。

アルパインクライミングにおける「M7 AI5」の表記は、登攀(クライミング)ルートの難易度と特徴を示しています。それぞれの意味を以下に説明します。


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### 1. **M7(Mixed Climbing)**

- **M**: Mixed Climbing(ミックスクライミング)を指します。岩と氷が混在する地形を登るスタイル。

- **7**: ミックスクライミングの難易度を表します。Mスケールは通常1(最も簡単)から始まり、数値が大きくなるほど難しくなります。

  - **M7**はかなり難しいレベルで、垂直あるいはオーバーハングした岩場をアイゼン(クランポン)やアイスアックスを使って登る技術が求められます。

  - 高い筋力、優れたバランス感覚、的確なギアの使い方が必要。


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### 2. **AI5(Alpine Ice)**

- **AI**: Alpine Ice(アルパインアイス)の略で、氷だけで構成されたルートの難易度を表します。

- **5**: Alpine Iceスケールの中でも非常に高い難易度。

  - 急峻な氷壁(70~90度)や薄い氷、脆い氷を含むことがあります。

  - 安全なプロテクションを設置するのが難しい場合もあり、高度な技術が必要です。


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### 組み合わせとしての「M7 AI5」

この表記は、以下のようなルートを意味します:

1. **岩と氷が混在する複雑なルート**。

2. **垂直あるいはオーバーハングの岩(M7)と、急峻な氷壁(AI5)**を含む。

3. 非常に高い技術力、体力、そしてメンタルが求められるエキスパート向けの挑戦的なルート。

もし具体的なルート名や地域に関連する文脈があれば、それも共有いただければさらに詳細にお答えできます!

2024/11/25

【スーパーアルパイン】客観的なレベル判断を自分で!情弱から抜けよう!

 ■ 情弱:山岳会が教えているアルパインと現代のアルパインの溝を埋めましょう

20代でフリークライミングできた場所が登れなくなる(=フリーで登れなくなる)のは、老いるという動物である人間の定め。

現代の山岳会は高齢化のため、昔フリーで登れたところも、70代、80代ともなれば、当然フリーでは登れず、新人教育は、エイドクライミングを教えてしまう、ということになりかねません。

ところが、現在、エイドで使う残置は? 40年経過して支点が腐っていますよって話です。

現代の無雪期アルパインロッククライミングでは、残置を使わないのが普通なのです。

■おぜん立てされたルートで吠える?

ボルトが整備されたロッククライミングのマルチピッチは、山にあるルートではなく、フリークライミングを楽しむために整備された、いわば、おぜん立てされた課題です。

残置が、山にあるわけがないのですし、あったとしても、その残置が管理されているわけがないのですから、積雪期のみならず、無雪期のアルパインロッククライミングでも、残置は使わないのが普通です。例えば、錫杖の注文の多い料理店、です。

そして、それを支点を自作できない初心者でも登れるように、易しくしたもの、初心者向けのものが、支点が整備されたルートなのです。

初心者向きルートで支点が整備されているのは、初心者は、登ることだけでアップアップで、支点を作りながら登るには、ある程度のクライミング自体のゆとりが必要だからです。

カムをセットするには、最低でも片手は要りますし、ハーケンのセットなら、かならず両手が必要に。

以上のような理由から、ボルトを整備してありますが、それは

 練習のため

であり、そこから、ステップアップして行ってくださいね、って意味ですよ。

ところが、現代の新人さん、初心者さんは、フリークライミングのレベルが高く、一切支点を使わずにフリーで登れてしまうので、支点を作る心理的ニーズが長いこと湧きません。

自分で作った支点に落ちても大丈夫だったという経験が一つもないと、一発で死に至るとなれば、チャレンジできないかもしれませんし、そもそも、しんどいことが嫌かもしれません。

どっちにしても、結局は、軟弱化、日和るという方向性になってしまい、クライマーの二極化現象の理由になっています。

初心者クライマーは、おじいさん山ヤから、エイドクライミングを教わって、エイドクライミングのことをアルパインロッククライミングだと思い、50年、70年前の記録の書かれ方でルートを理解してしまい、現代の入門者向け、易しいルートを、命がけルートみたいな書き方をしてしまい…

本来ほほえましい、というべきチャレンジが、まるで、トップクライミングのような受け取られ方をしてしまいます。それを目撃してびっくりしました…

これがナルシストに賞賛と受け取られてしまうと、結局のところ、その人は客観的な実力を理解できないまま、どんどん賞賛をエネルギーに前進してしまい、死んで当然のところに出かけて行って、案の定死ぬということになってしまいます(栗城劇場)。途中で、何度も現実に直面する機会はあったと思うのですが…。

(昔の日本全国総Ⅳ級A1のエイドクライミング)と(現代のフリークライミングが前提のアルパインクライミング)は、全然、レベルが違いますよ… (汗)

九州の山岳会では、今だにマッターホルンヘルンリ稜がトップクライミング扱いでした…(汗)。

現代のトップクライミングの内容が一般の人に一切理解できなくなっているので、あたかも入門ルート程度を登ったことが、現代クライミングについて行っていない人には、トップクライミングに感じられてしまうかもしれませんが…

…というので、現代のトップクライミングを知ることは、このような情報弱者状態から抜け出すのに、大変意義があることです。

普通に俺すごいルート行かないし、という新人クライマーもトップクライマーの報告をアルパインの入門初期に話を聞きましょう。

そうしないと、

・簡単ルートを大げさに自慢する人に騙されてしまったり、あるいは逆に、

・インドアのグレードで外のルートを判断して、俺ってすごいなー

と思って、分不相応のルートに行こうとしてしまったり…

そして、もっと最悪なのは、昔の基準のままの、周囲のおじいさんクライマーから、でかした!と評価されることで、全然すごくない業績をすごいんだ、とか違いしてしまう羽目になります。

客観的な視点で、自己振り返りができない、実力判定ができないってことです。

ここから申し込み可能です。

https://friend.jma-sangaku.or.jp/t/jmsca/info/detail/12

以下引用

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前半は、2023年12月に登ったネパールのツクチェピーク前衛峰(6490m)北東壁のクライミングについて、伊藤仰二さんが報告。

厳しいビバークを重ねながらも粘り強く頂上を目指す様子を、スライドショー形式で解説していただきます。

後半は国内でロッククライミングを続け、パタゴニアやペルーでの登山を実践してきた王鞍彗介さんについて紹介。

登ってきた山や岩場をスライドショーで紹介しつつ、国際・AC委員の馬目弘仁とのトークセッション形式でクライミングに対する思いを語っていただきます。

海外の山に興味を持つ登山者や、クライマーの皆さまのご参加をお待ちします。

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1.ツクチェピーク前衛峰(6490m)北東壁 2023冬

講師●伊藤 仰二 氏

2.岩から広がる世界

講師●王鞍彗介氏

※都合により日程、および内容を変更する場合があります。

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◎日時

2024年11月26日(火) 19:00~20:50(18:30開場)

◎実施方法

会場 および YouTube Live

無料(ただし資料は配布されません)

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2024/10/31

【技術情報】トップクライマーによる、前衛アルパインクライミング情報が聞けます!

■ アルパインクライミングの話を聞こう!

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海外の山で活躍するアルパインクライマーたちの活動を紹介する「第2回アルパインクライミング懇談会」が2024年11月26日(火)に東京・錦糸町およびウェブ配信で開催

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というお知らせが来ました☆ 現地にいなくても、ネット参加可能。

 https://www.climbing-net.com/news/jmsca_alpine_2024_20241030/

みなさん、出ましょう☆

■ 伊藤さんの思い出

伊藤さんとお会いしたのは、荒船のアイスにドはまりしていたころでした…。

基本的にクライミングの習得って、

1)テクニカル要素を習得してしまったら、

2)次は長くしていく

のですが、湯川のアイスはみな短いので、習得後、私は4級で長くしていく必要がありました。

それで出てきたのが、4級の荒船山相沢大滝。長くて大きな滝、大滝です。4級なので、基本的に、技術的には初心者でも登れますが、まぁ、安全にリードするとなると別ですね。

4級の技術課題は、ムーブではありません。

・もろそうなアイスをたたかない(含、登らない判断)

・叩き壊して進路を破壊しない

・スクリューを打ちこむべき氷を適切に判断できる

・気温の上昇、壁面、太陽光など気象条件を見極められる (含、登らない判断)

・適切なビレイができる

などです。細かく言えば、もっと他にたくさんあります。

別にムーブは、誰でもできるような簡単なものです。4級と言うグレードがそのように定義されています。なので、登れたこと自体が自慢になる、という世界ではありません。

■ 現代の主流はウィル様登り

ただ、アイスのムーブに関して言えば、古い登りは、正対×ひきつけ 登り。可能なら、この段階、つまり4級で、ウィル様登りを習得したほうがいいです。ダイアゴナル、つまり、体を斜めに使えたほうが5級になった時、楽ですし、6級になれば、それしかないです。

余談になりますが、フリークライミングから入ったアイスクライマーは、4級が登れず、6級が得意です。これは、岩でスラブが登れず、オーバーハングが得意なのと同じです。

私は4級は、スタートした元年にすら、リードしていましたし、登れていましたが、チャレンジな課題を登る予定が先々あるなら、バラエティがあるアイスに接したほうが良いです。一か所に詳しくなること(ホームグランドを持つこと)も大事だが、様々な条件の氷に接することも大事、ということですね。”氷の見極め”が大事だから、です。そこが、安全か、安全でないかを決める要素です。

成長方法を簡単にまとめると、

人工氷壁→三つ峠→醤油樽→小滝→大滝→湯川→荒船 みたいな順番かな?途中に初級のルートを挟みましょう。

私は初級ルートとしては、広河原沢左俣に連れて行ってもらった後、同レベルの仲間で硫黄岳を詰めるジョーゴ沢に行き(自分がリーダー)、その次は、自分のリードで後輩を連れて、峰の松目沢に行っています(オールリード)。

私を羨ましがる人のやっかみが心配なので、念のため言っておきますが、アイスの師匠に出会ったのは、自分で小滝まで自力完結でき、峰の松目沢リードくらいは、自分で終わってからです。どうも、全部おんぶにだっこで連れて行ってもらってイイなと思うらしいんですよねぇ‥ そんなこと、起るはずないでしょ。

■ズルしないのが大事

その際ですが、GPSで入渓点を探るような”ズル”をするようでは、沢登りに差し戻しです。

ちゃんと、紙の地図を見て、〇〇から数えて2本目の沢…などと読図ができるような状態になり、地形を見る目も、寒さで時間的余裕が緊迫している冬ではなく、ちゃんとゆとりがある夏に、沢に行ってから行きました。

つまり、アイスのルートというのは、沢登りが済ませた人の、ご褒美、ということです。

その前に沢登りで、ひと夏をささげ、その夏は20本以上の沢山行を毎週のように、行っています。1本、2本、誰かに連れられて、沢に行っても、読図のあれやこれやは、身につかないと思います。(これは言葉の端に現れます。赤布を追っているような山をしてはいけません。)

当方のアイスクライミングの成長記録はこちらです。

https://iceclmb.blogspot.com/

さて、そのような何段階をものステップを経て、晴れて迎えた荒船時代…。

■ 華やかになった

その最後を彩ってくれたのが、伊藤仰二さんというトップクライマーでした。

伊藤さんは、師匠の飲み会に来てくれたので、私は大慌てで、知り合いの5.13男性クライマー全員に声をかけたのですが… みんな、ビビってきませんでした…(汗)。

私みたいな成人から山をスタートした人、しかも女性が、伊藤さんにあっても何を質問したらいいんだか…想像もつかない、と思っていました。(実際、その通りだった)

で、アイスクライミングにも来てくれたのですが…えー、荒船の大滝ですいません、というか…4級のアイスなんて、伊藤さんにとっては退屈なんではないか?と思い、もっと難しいラインを、と水を向けると?

「〇〇さん、私に何をさせようとしているんですか?」と…。

やっぱりちゃんとしている人は、変に粋がって難しいライン…=強点を行こうとかしない、確実堅実な登りでした。

その後、お隣のマルチに行ったのですが、伊藤さんペアはなかなか降りてこない…なんかトラブった?

私はその隣では、垂直の5級を初リードして、満足でした。短い5級です。氷が硬かったので、プロテクション面では、安心なんだけど、フィジカル面ではパワーが必要で、それが私は欠点であるので、ビレイしていた師匠の青ちゃんは寿命が短くなったみたいでした。すいません。

女性はやっぱり上半身が弱いです。最近、筋トレでラットプルダウンしているんですが、広背筋使う前に首が疲れてしまい、全然ダメ。ダンベルを持ち上げるやつも、たったの3㎏でふらついているという、よわよわ具合です。なので、私に6級のリードはないな…と自覚中ですが…まぁ5級までは体を戻さねば!とがんばっています。

さて、話がそれましたが…

伊藤さんはこのような、とても気さくなアルパイントップクライマーです。

アニキにいろいろ質問して、若いクライマーは、世界の山を目指しましょう☆

■ アックスで登るクラック

伊藤さんがプレゼントしてくれたもの、としては、私にとっては

1)伊藤さんはセルフを取る=軽いクライマーにはビレイ時にセルフは必至

2)アックスで登るクラック 

3)荒船昇天

の3つがありました。

私はそれまで、自分が軽くて小さいことに負い目を感じており、ビレイは、積極的に出来ませんでした。なんせ自分がぶっ飛んで、アイスに激突した、っていうのが、自立したアイスクライミング1本目の経験で、相手は80kgくらいありそうな男性でした。

その男性も初心者だったと思うので、その様子は、石田さんというガイドさんが、”それとなく” 危険予知してくれ、守ってくれたような恰好でした…。

その後、私はアイスクライミングのビレイが自分の核心だと心得、しばらくビレイのことばかりを考えて過ごしました。それで保科ガイドのクライミングに行き、リードのビレイを初体験させてもらったほどです。(しかし、何も教えてはくれなかった)

というのは、アイスクライミングでは、フリークライミングの外岩の時のように、

 直下には立てない

からです。そこには打ち砕かれた氷のかけらが落ちてきます。したがって、離れなくてはなりませんが、離れすぎてもリスク…。ロープが出ないとクライマーは登れませんし。

というので、立ち位置の研究。

そして、ビレイとビレイ器、ロープの相性、ロープのメンテナンスなどのワンセットで安全は成り立つものです。

■リスク管理は危険予知

リスク管理に無関心な人は、ビレイがいい加減なだけでなく、ビレイ器とロープの相性など考えたこともなく、ロープもアイス専用ではなかったりします。

専用にしないと毛羽立ちで凍り付いて、すべり、握っても、滑ってロープが出てしまいますよ?そして、登った後はコーティング剤を再度塗布して、ロープをメンテします。

こうしたことは師匠を見て、盗んで学びました。すぐにコーティング剤を買いにホームセンターに行きました。

こうしたことは言葉に出して、「こうしなさい」と言われたことはないです。たぶん、近年男子ができないのはここです。見て盗むということです。

というような様々な要素がすべてクリアされて、安全というものは積み上げられています。

■ なぜアックスでクラックなのか?

荒船のアイスでは、アックスで登るクラックを経験し、アイスと岩のミックスへ片足を突っ込みました。

私は6級にTRしに行くのは、すでにほかの人の手を借りずに、自分で行ける場所があり、6級も直上の氷柱は上手に登っており、誰かが動画を取ってくれたほどでした。

しかし、これを長くしていくというのが私のアイスクライミングにあるか?というとないでしょうし…長い6級(=パワー)より、岩とアイスのミックスと言うような悪さに対応できる力をつけるほうが、ルート志向の私のようなクライマーにとっては有益です。

自分の山で、穴が開いた氷瀑で下で水がジャンジャン流れているようなのに、もうすでに遭遇していましたし、そういうのを楽しい、と思うタイプなのです…

というわけで、易しいけれど危険な要素があるルート に行くためには、難しい&危険な要素があるというルートをゲレンデでは経験してギリギリに迫って、自分の限界はどこかを知る必要があり、それがアックスで登るクラックでした。これ、めっちゃ落ちましたけど、楽しいクライミングでした。

その結実で出かけたのが、荒船昇天。4Pのマルチです。セカンド。青ちゃんの復習山行のお手伝いガールです。2P目とかはただのアイスだったので、私でもリードできるかもしれませんでした。未知のルートはリードしていいかどうか?自己判断が付かない感じでした。2度目なら、まぁいいでしょう。

ここは、4P目の落ち口が悪かったそうです。私が行ったときは悪くなかったので、そこまで大変に感じず。アイスにせよ、アルパインのロックにせよ、その日のコンディションで難易度というのは大きく揺らぎます。ので、私が行ったから簡単だ、と思うのは早計です。

男性クライマーってどうしても、その発想から逃れられないみたいなんですよねぇ…。

でも、ロープ屈曲して、流れなくなり、自分で自分が登れないようにしているような段階の人って、フィジカル的に難しいのや、テクニカル的に難しいのに挑戦するのではなく、易しいルートで、ロープの流れをしっかり作れるようになる、っていうのが、その人に妥当な技術課題だと思います。

技術課題を克服せず、フィジカルの強度だけをあげて行って、

 身体エネルギーを発散したい人に向いているのは、ボルダリング

です。技術不要なので。今のクライミング界は、フィジカルの難易度を上げることだけがクライミングのすべてだ、という短視眼に陥っています。

高難度アルパインは、フィジカルの強さは、ただの基礎力。体力は、

 ・40㎏担げて歩きが遅くならず、

 ・5.12が、レッドポイントではなく、すいすいと5.9みたいに登れる力

が、

前提

です。そのフィジカルのさらに前提に

 ・確実なロープワーク

があります。誰ですか?ロープの計算もできない人は? 

そして、この2点が揃った後で、その上に、

 ・悪いところに対応する力(テクニカル)

 ・度胸

が来ます。度胸だけで、賞賛されると思ったら、大間違いです。それは九州だけの出来事ですよ。




2023/05/31

「クライミングに最近入ってきた人は、経験がなくてわからないかもしれないが…」

■「マーケットに最近入ってきた人は経験がなくてわからないかもしれないが…」

という田中泰輔師匠の言い方が気に入りました。https://www.youtube.com/watch?v=bJl7SzvXHko

経験者が経験値を語るときの、意図が明確になる良き言い回しではないか?と思います。みんなこれを言わないで、そういう時は丸々だ、と言うから、若い人に「過去の栄光」と言って煙たがられ、若い人は、”やっぱりやると思った…”と想定内の失敗を繰り返す…というサイクルになっている日本のクライミング界…。

■ 巨人の肩に乗る

例えば、医学で、もし医学部がなかったら、人は今の医療のことを一人で学習することができるでしょうか?できませんよね?

同じことで、人類の進化はすべて、ゼロから積み上げ、ではなく、だれかに教えてもらってある程度の最前線まで出てから積み上げ、で成り立っています。

だから、クライミングだと二世クライマーばかりですよね、まともな人は。

そうでないクライマーでまともな人っていうのは、

 講習会上がり 

です。裏道として、カラファテ店員になる、とか、ジムの店長、という道もありますが…

一般的に、どれくらいのグレードが取れるか?はスタートした年齢次第ですので、あんまり個人差は生まれないと思います。

成人してからクライマーになった人は、5・12に到達したら上がり、で、それより先に行く人はほとんどいないかもしれません。

逆に、未成年から始めるなら、5.12はスタート地点ですよねぇ。ので、基本、プロとアマは、アマのゴールがプロのスタートです。

■ 八ヶ岳の赤岳は一般登山者のゴールで山岳会所属のスタート

同じようなのが一般登山とアルパインの差で昔あったなぁ・・・

一般登山者のゴールは、アルパインクライミングのスタート…。

アルパインも5.11までしか昔風のアルパインでは要求されていないので、5.12をたとえ人工壁やショートの岩場でも登れるようになったしまったら… そのカテゴリーではトップクライマー?!って誤解が生まれてしまうかもしれませんね…。それは現代には通用しない恥ずかしい誤解なので、改めましょう。

とはいえ、アルパインクライミングという同じ名前を使い続けている業界のほうも、誤解を招きやすいので反省してほしいかもしれませんよね…

40年前のエイドで登っていた時代の評価基準から何もアップデートされていない九州を見て、こりゃ言葉が同じだから誤解を生むんだろう、と思いました。

現代のアルパインクライミングは、スーパーアルパインとか、ニューアルピニズムっていう風に名前を付けなおすほうが良いと思いました。

じゃないと一般ピープルのアルパイン男子が、誤解の上塗りで、ばたばた死ぬことになるんでは…?

あるいは人を殺しそうになるってことです。

■ フリークライミングの古いクライミングと新しいクライミング

普通の小川山みたいな伝統的なフリークライミングの世界にも、伝統派と革新派の軋轢があります。

なんせ、伝統のフリークライミング=花崗岩、革新派のフリークライミング=石灰岩と区別が明確でない…

アメリカのフリークライミングとラッペル主体のヨーロッパのフリークライミングは違うはず。その辺の事情を語られたものがないです・・

そのうえ、日本では、高齢化で、岩場の主問題があるんですよね…

過去30年の”失われた30年”で、老人資本主義をしていては、日本の未来はない、ということはすでに学習済みのはずです。

年配の人は、自分の主義を押し付けるより、若い人に技術を伝えたり、自分の山とある時間を生かしてできる開拓などの作業にいそしんだり、古いルートを整理して岩場を再生したり、過去の遺産の最大のもの…40年経過して役立たずというよりも、むしろ害悪、となってしまったボルトのリボルトなどにいそしんだらどうでしょう?

そういう活動は、上がりのクライマーとして5.13が登れるとかより、尊敬される立派な行為と思うのですが…

2023/05/24

【トップクライマー】青木達哉さんの鹿島槍北壁

【北アルプス 鹿島槍ヶ岳2889m】冬のアルパインクライミング 鹿島槍ヶ岳北壁中央ルンゼ 厳冬期2023年2月17日

青木達哉さんの記録です。

甲府にいる頃、私より登攀できない若い男性クライマーに一緒に鹿島槍北壁に、と言われて、"はぁ?おとといおいで"って思ったことがあったよなぁ…

私は自分が管理できる、鹿島槍鎌尾根とかなら、ロープ合わせや足合わせの意味で行ってもいいんですが、いきなり北壁って…。普通の無雪期の壁が登れていないのに北壁???って感じです。

男性の皆さんは、大体、行きたいルートのレベルが、
 
   初めての一歩

が高すぎます。

小さい一歩を積み上げていくということをしないから、死んでいるとしか思えないのですが。

それは、そのルートに必要になる体力度とか、登攀の困難度とか、あるいは必要な判断力がどのような内容なのか?ということが、伝わっていないからだと思うんですよね。

これをみても、人工壁のスポーツクライミングで5.12が登れるとか、無雪期のショートでしか登っていない仲間とロープが組める、とかが、核心じゃないですよねぇ??

核心=山の経験を共有して判断をそろえる

  リスク= 天候、早出、生活技術、雪上でのロープのリスク判断(凍って滑るとか)、落石、アイゼンワーク、下山の安全性確保、体力 
  
九州でも、そもそも実力を客観視できていない事態…

 例:根子岳が登れるアルパインクライマーになりたい!→ 足元が崩れる山のリスクはヘッジできない

 例:3級しか登れないのに2段のボルダーをノーマットで登る!→ 2段がフリーソロで登れるためには3段を落ちても登っている必要があるがどうやってそこへ達するつもり?!

…とか、そんな人ばっかりでした。バカは休み休み言えって感じ。

昔の山岳会の在り方…つまり、行くルートのリスクを先輩にダメ出ししてもらえる…CMCは毎週ミーティングがあるそうですよ…に含まれることができなかった場合(昨今は、会といっても名ばかりで、相互助け合いや監視体制はなく、技術も教えられず、ただお荷物なだけです…)、男性は、基本的に、

 過信

に傾くと思われました。過信した人は過信と全く分かっていない。事例は白亜スラブです。

しかも、もっと悪いのは、過信に傾いた人をヒーロー扱いする傾向です。

ちっともすごくない記録をすごい!と言っていたりします…(汗)。周囲の人も、ばかは休み休み言え!って感じ。

事例はこっちの若い人の会の記録です。フリーで登ったみたいにエイドの記録が書いてある。

いくら私が過剰適応したよいこで、相手に寄り添う人でも、さすがに ばかじゃないの?とわかりますよ…

もう、表現としては世紀末的状況、というのが正しい表現なのではないか?と…