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2023/12/20

【セッション解説】分子栄養学に心理学が必要である理由

ボランティア募集中!こんな感じで、セッションは進みます。まだ新米だからうまく行っているのか?そこんところは、不明。

■ セッション解説

脂肪肝の栄養相談。初回ヒアリングで、脂肪肝のタイプは、アルコール性ではなく、非アルコール性の脂肪肝のようだった。

本人によると、3時に配られる職場のおやつ、が原因として思い当たるとのこと。

そこで、おやつにプロテインをプラスするようにアドバイスして、終了した。が、1か月後のヒアリングでは、なぜか

 行動化できていなかった

一般に、3時ごろにおやつが食べたくなるのは、悪いことではない。補食の時間に該当する時間だ。しかし、補食という限りは、不足を補う必要があり、過剰である糖質では補いにはならない。

相談時におやつにプロテインをプラスするように提案したのは、習慣の置き換えが、行動変容に対しては最もハードルが低いとされているからだ。しかし、結果としては、行動をスタートできていない。

これはまずいと思ったので、行動の動機を質問してみた。というのは、職場での団らんや集団への同調、などが食の動機として考えられるからだ。

しかし、本人の行動動機は

動機、原因と効果、結果が納得

できたら動くタイプですかね。

とのことだった。しかし、プロテインの重要さについては、すでに解説したので、原因と結果(自分の食行動が脂肪肝につながっていること)が、現時点で理解できていない人ではない。

行動変容が起こらない(抵抗)の原因を探る必要があると思い、職場での行動が、上記のステートメントと矛盾していることを、強い印象を持つたとえで、伝えてみた。(会社のために死ぬのか?)

3時のおやつは場の雰囲気なので

仕事の一部と割り切ってます。

という返事であったので、さらに、行動がステートメント(会社に命をささげるつもりはない)と矛盾することを伝えてみる。事実と行動が相反していることを伝える。

ここまでで行動変容が起こらない理由について、改めて本人に客観視してもらうと、理由に、線形化という言葉が出てきた。この言葉は、日常会話にそぐわない概念的な言葉なので、人間心理における防衛行動の一種である知性化が起きているのかもしれない???と思ったため、感情や感性に置き換えてもらった。

すると、”柔らかさ”、という言葉が出てきたので、その柔らかさを何に対して向けるか?を考えてみてもらった。この日は、ここで時間切れだった。

クライエントは会社勤めであるので、集団への同調がもっとも大きな動機であるかもしれないと思ったため、その方面に関する心理学的学術情報を後で送ってみた。知性という本人のリソースを最大限活用する作戦。

その後、柔らかさは、決断時に利用している、というステートメントを得た。

決断における柔軟性が、自身の健康にプラスに働いてはいないことを再度指摘するべきか?と一瞬迷ったが…これでは同じことの繰り返しになってしまうと思い、内的なゴールイメージを育てるほうが有効か?と思い、元気に海洋アクティビティをしている85歳の老女たちとの出会いの話をした。クライエントも、趣味を海洋アクティビティとしており、今回の相談のゴールイメージが、

 好きなだけ海洋アクティビティができ、昔作ったウエットスーツに入るボディ

であるからだ。合わせて、当人の非常に知的であるというリソースを生かすために、糖化に関する知的情報(学術サイト)を渡した。

以上で現在のところ、終わりで、行動変容につながるのか?どうか?興味を持って眺めている。

本当の主訴は、3時のおやつを健康に資するものへ転換する、そのための心理的抵抗を取り除く、ということになるのだろうか?

■ クライミングに応用すると??

残置のビナを持って帰ってしまう心理…とか、

不必要なランナウトをしてしまう心理… とか、

最も倫理的に行ってはならないチッピングをしてしまう心理…とか

その裏に隠された、真の動機…大抵の場合は、

本当は〇〇したいけど、自分でも顕在意識で、自覚できないが、なぜかビナを持ち帰ってしまうとか、不必要なランナウトをしてしまうとか、チッピングしてしまう…なぜか分からないので、なんとかしてほしい…みたいなことになるのかもしれません。

クライマーの真の主訴は、死にたい!けど死にたくない!みたいな、

 拒絶の傷

 侮辱の傷

って意味かもしれないです。侮辱の傷がある人は、わざと命がかかるような職業に就くことが知られています。



2023/08/29

【心理学】 クライミングにおけるダブルバインド

■ ダブルバインド

危険なカットアンカー&長距離ランナウトで登らなかったら

 → チキン呼ばわり

登って落ちて死んだら

 → 自己責任

と言う風に巧妙に支配の構造が見えます…。 前に「蛮勇」とか、「もうちょっとボルトを信頼して」とか言われましたが、そのボルト、海岸にあるカットアンカー… それを信頼する奴がいたら、バカである、って奴でした…。

ので、基本、「大丈夫?」と言ってあげたほうがいいのは、危険なボルトと知っていて、そこにバンバン落ちて、ロシアンルーレット状態を楽しんでいる人のほうです。

アドレナリンジャンキーになってしまっており、”中毒状態”ですね…。

https://www.youtube.com/watch?v=_5kWMeJUzCk

■ 私はチキンです!

私の知っている限り、きちんとしたクライマーは、自分が、臆病者呼ばわりされることを受け入れています。

怖いというのは、当然の感情です。ので、怖い場合は、それを受け入れることがクライマーとして大事です。

大体、俺は怖くないぞーとやらないといけない、というのは、思い込みです。

40mノーピンがいかに簡単でも、危険なものは危険だと分かる感性のほうが大事です。

■ ACの心理学と重なることが多い クライミング界

アダルトチルドレン系の心理学は、もともとはアルコール中毒患者の研究からスタートした、共依存関係の心理学です。

なんで、共依存の心理学が、クライミング界で有効なのだろうか?というと…

奥深いものがありますね…。

日本人は特に、クライミングするということに自尊感情の根拠を求めてしまい、怖いもの知らずの俺=かっこいい俺=自己肯定しやすいということになってしまっているような気がします。

怖いもの知らずの本場、ヨセミテでは、そっち系の人が究極のお手本(=死)を何例も示しているので、その行為の異常さがあまりにも明白なので、それに続く若い人が出ない。

一方、日本では、中途半端です。自分の小さい山で(周囲の人の間で)、10mランナウトより、20mランナウトがすごい、20mより40mがすごい、みたいなミニミニ競争になっています…。

しかし、エルキャップフリーソロの時代に40mランナウトを自慢しても、かなりちんけですよねぇ?

国内を見ても、甲斐駒スーパー赤蜘蛛フリーソロの時代なんですよ? 

5.8とかの40mランナウトで自慢になるんでしょうか?なりませんよね?

まぁ、自慢じゃないんだったら、ただ、怠惰なだけってことになりますが…。

私も小川山では、大ランナウトが核心の”春の戻り雪 3P”で、マルチの練習していましたけど、大ランナウトということを聞いて落ちれないルートだということが分からない初心者時代は、すでに抜けていました。

いまだに古いメンタリティで、小山に登って俺が一番だ!とやる自慢大会に陥っているとしか思えない九州のクライミングルート… 小学生レベルです…(汗)。

そんなのに、うっかり付き合わされないよう、若い人は気を付けましょう☆

こちらでは、古い山岳会に所属していた人は、すべからく、古い感性を身に着けているようで、山岳遭難の温床となる考え方に気が付けていません。

正しい感覚と言うのは、このようなものです。

■ 事例

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先日、シシ渕で滑落事故がありました。
事故当日の天気は登山口まで道路通行規制がかかるほどの土砂降りの雨。夜には多少弱まったものの、未明遅くまで降り続いていました。
滑落者はシシ渕で降雨のためできた水たまりを避けようとし、登山道に設置してる鎖から手を放し、崖側によった際、濡れた岩で足を滑らせ、約8m滑落して全身を強く打って亡くなられました。
登山道のほとんどが岩場の大杉谷は、私たち職員でも雨なら入山を躊躇・中止します。今回、遭難したパーティー(全員の登山経験が浅い)は、周りの忠告を聞き入れず、悪天候・悪路の中へ入山(ー> 周りの忠告を聞き入れず、カットアンカーや大ランナウトのルートへ、敗退準備なしで入山)してしまいました。
今回の事故は、リスク管理ができていなかった事が最大の原因だと考えています。
「大杉谷登山道は中級者以上向けの登山道です。」いただくお問い合わせに対して、いつもこう御案内しています。
・状況・危険を把握・想像する事ができる
・万が一の場合の対処を考えている
・撤退する事も登山計画として考えている
考え方は人それぞれだと思いますが、弊社では上記の様なリスク管理ができている者を中級者と考えます。
何時間もかけてせっかく来たのに、楽しみにしていた登山を中止したくない。気持ちはわかります。ですが、あきらめる事も重要な登山技術の一つと考えます。
(ー>ギリギリボーイズの方は常に敗退想定しています)
しっかりとリスク管理を行い、無謀な登山は絶対にやめてください。
説教臭くなってしまいました。最後になりますが、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
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九州には、リスク管理が必要なレベル感の困難な山が一個もないので、想像ができないのだと善意に解釈していますが、そう思えば、謙虚になれるはずです。

とはいえ、知っていても、きちんとリスク管理できていない自分を客観視することができない人も知ってはいますが…。そういう人とは、登らない、が唯一の選択肢です。

2023/01/12

クライミングの心理学 Trust But Check

■ Trust But Check

トラストバットチェックというのは、英語圏で良く言われることです。信頼するけど、ダブルチェックせよ、ということです。
 

日本では、儒教の影響が強いためか、上下関係がある間柄では、その上下関係が妄信につながりやすいです(ハロー効果)。

また、上の立場に立つ人は、下の立場の者がチェックすることを、相手が信頼していないと言って立腹するケースが多いです。 山ではそれではリスクにつながり、ダメです。

先輩がやったこと、リーダーがやったことでも、チェックが必要です。それは、リーダーや先輩、ベテランでも神ではなく、間違いを犯す可能性があるからです。山で死んでしまうより、失礼なほうがいいですよね?

 
 もし師匠が投げたロープがセルフがとられておらず、下降の手段をまったく失ってしまったら、それは、任せっきりにしたセカンドの私の責任でもあります。

私がとっさにロープを手に取ったのは、自分の責任であるという認識があったためです。多くの人は、セカンドをしていると、自分の責任に無自覚で、こちらが、懸垂セットしていても、ロープを持ってくれる人は本当に稀です。
 

トップが懸垂セットしていたら、

  •  相手のセルフが取れているか、
  •  懸垂のセットは確実か、
  •  ロープをたるませて一緒に手元を見ている

くらいのパートナーシップは必要です。
 

私の経験では、後輩君は、ほとんどの人が、”お客さん”状態 になっており、自分はどうするべきなのか指示がない限り、ただ立っているだけのことが多いです。
 

が、アルパインも、普通のクライミングも、やることは分かり切っているので、たいていの場合は、先の行動が予測可能です。
 

私自身も、まだ分かっていなくて、あたふたしている状態のころはあったので、厳しいことは言いたくありませんが、何も状況に貢献していないで突っ立っているだけの時代が、10年の人もいれば、1年の人もいます…
 

その差は何か? ちゃんとやらなければ死ぬかもしれないという自覚によるのではないか?と思います。


■ 比叡は落ちてはいけない 岩場ですよ… ボルト40年もの

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ちょっと前に比叡山でマルチピッチを登った時の相棒が20台の学生でした。4ピッチ目が5.11なので12クライマーの彼にリードを頼みました。核心部はスムーズに抜けて、見えなくなった頃、もう終了点のコールが聞こえるかな、と言うときに落ちて来ました。ランナウトとロープの伸びで10m以上は落ちたでしょうか?僕の方はあら落ちたって感じでしたが彼は結構ショックだったみたい。マルチでも別に問題は無いので次からも思い切り登ってくれると良いけど。

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というやり取りをしていたことが分かりました…。ここに

  ボタンの掛け違い

があったんですね。

私はバンバン落ちるクライミングをすることで成長が加速できる段階に来ているクライマーでしたが、

  九州では、バンバン落ちれるクライミングをしていい外岩環境

にあるルートは数えるほどしかなく、ほとんどがカットアンカーのルートです。

  とりあえずテンション登り(ショックロード1程度の墜落にとどめておく)

が安全です。ショックロード2の登りは辞めておきましょう…

もちろん、グージョンやケミカルに打ち換えられた課題ならOKですよ。

しかし、 

気楽な墜落癖をつけると、日本の他の岩場で通用しなくなる、というリスクがあるかもしれ

ません。

私自身も

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私も初めて落ちた時は、ビックリ仰天でした。知り合いの13クライマーが言うには、俺ら9割落ちてる。

支点がプアなアルパインだけしかしないと落ちれないので、落ちないところしか登らないようになり、成長が鈍化すると思います。

思い切って登るかどうかは 支点が重要だと。

後は、上なら上なほど地面から遠くてむしろ安全性が高まっているかと。

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と当時書いており、支点の重要性は認識したうえで、落ちるクライミングは、成長するうえで大事だという認識で、正しい認識だと思います。

たぶん、九州の人は、本気で、カットアンカーが強度不足の信頼してはならない支点だということに気が付いておらず、他の地域も、カットアンカーだと思い込んだままだったのでしょう…

しかし、勉強不足も良いところですね…(汗)。

■ 経験値が悪習慣につながる事例
 

懸垂下降で。
 

 懸垂のセットは失敗が許されない。
 

それで、師匠がロープのセルフを取らずに、ロープを投げたことがあった。私は、”ハッ!”として、とっさにロープを掴んだら、


”ロープばらけるまで、しばらく間があんねん。経験値が悪いほうに出た事例やね”
 

と分かってて、ルール違反したそう。
 

しかし、こういう事例を重ねて、信頼を積み上げるのだろうと思った事例。
 

信用しすぎて相手にゆだねすぎる、というのが一番クライミングでは危険。

 

  山では、お互いに、相手がやっているはず

 

と思う。

例えば、冬山では共同装備に入っていても、コッヘルストーブは自分のザックに入れている。一人で落ちたら、ツエルト、シュラフ、ストーブセットくらいはないと、私の体力では厳冬期八ヶ岳の夜を超すのは、かなりシビア。フツーにテント泊してても単独だとテント寒くて切ないもん… なので共同装備に入っていても、個人でも、ツエルトもシュラフもコッヘルも持っていく。

白亜スラブの、敗退ロープなし事件も、信頼しすぎ事件、だったわけですね。

相手にゆだねすぎ、安全は相手が担保してくれて当然だという慢心に負けてしまったわけです…

適切な問いを重ねることが大事ですね。

例えば、「敗退なしで行けると思う根拠は、なんですか?」とか…

登っちゃった後で、トンデモボルトと分かったんですよね… 落ちずに登って良かったな