ラベル 屋久島、Yakushima Island の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 屋久島、Yakushima Island の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019/01/01

屋久島フリーウェイの研究 その② 見通しを持つ

http://kokuryoukai.sakura.ne.jp/2-5-8-1.html より引用

これは、まぁ見たらわかるけど、屋久島フリーウェイのトポである。以下の研究は、断っておくが自分のためではない。攻略法というか、物事を達成するために、どういう方法論が考えられるか?ということを考えるのが、もしかしたら、苦手な人なんじゃないだろうか?という友人のために考案した攻略法…あくまでも案だが…を書いたものだ。

■ その① 全体で390mの壁。

405mの壁としている資料もある。どちらにしても、400m前後の壁と言うことだ。

一般に、登山においては、標高差300mを1時間でハイクアップするのが、日帰り装備を背負った人の一般的なコースタイムだ。

中高年登山だとおそらく、このスピードはやっとこさ。私は1時間楽に歩いて、440m上がる。プロのレベルは?体重の20%を背負って、600~800mくらいです。オールアウトだと1000mだそうです。

しかし、これは垂直ではなく、歩ける勾配、においての話です。

クライマーは、垂直になったとたん、スピードについては無頓着になり、登れるグレードだけを気にします。

ここに20mの5.9があるとしましょう。5分で登れる人と10分で登る人では?

フリークライミングにおいては、どちらも同じスキルですが、倍のスピードが違うということは、スキルの差があります。

しがたって、400mの壁に挑む資格が十分あるかどうか?は、グレードもですが、むしろスピードです。

400mを6時間ですから、100mを1.5時間で上がれないといけません。20mの課題であれば、5本です。1時間半で5本も、いつも登っています?登っていませんよね?

私は、ラオスに行ったときは、毎日5~8本登ります。一日8本も登ればくたくたです。ラオスの課題は長いので、一本30mとしても、150m~240mしか登っていません。

ちなみに8本は結構多いです。私はアルパイン系なので、難しいよりも量を取った登り方をしています。大体のフリーのクライマーは、本気モードの時は4~5本、リラックスの時は5~7本で時間切れになる。大体、易しい課題をたくさん登る動機がフリーのクライマーにはないからです。

したがって、400mを6時間…つまりゲレンデにおいても大体一日の時間と同じ…で登れるか?というと、その実績は、フリーをやっている限り、まだできていません。

結論的には、グレードを上げる登り方をしていてもダメ。いくら5.12が登れても、それはスピードとは関係がありません。

つまり、タイムトライアル的なクライミングをしている必要があります。

■ その② ピッチ数が多い 12ピッチもある 

ピッチ数12本。つまり、ロープアップ12回ってことです。昨今のフリークライマーは、ロープワークは下手くそです。

ロープ一本まとめるのに、どんだけかかってんの?っていうかかり具合です。

実際、フリーをしていていも、ロープをまとめる必要が出てきません。ロープバッグに入れておしまいだからです。 したがってフリーでの実績は、まったくマルチのスピードを考慮するにあたって何の参考値も提供しません。

したがって、ロープ処理の遅さ、が、クライミング時間を押す=ビバークの可能性を高める、という可能性があります。

■ シミュレーションする

とりあえず、ショートピッチしか近所のゲレンデにはないのですから、適度な5.10Aくらいの課題を100m分、つまり、その課題が20mなら5本、25mなら4本連続で登ってみて、何分かかるか、調べてみるのはどうでしょう。

少しは手掛かりになる数値的根拠が得らえるのではないでしょうか。

ほとんどの時間は、初見の場合、ルートファインディングに費やされるわけですから、これで予測可能な数値が導き出せるとは思いませんが、ないよりはましでしょう。

そして、しばらくはグレード追及は辞め、ストレニュアスなクライミング…つまり持久力系です‥‥で、クライミング距離を延ばす、と言う山をするべきでしょう。

しかも、オンサイトで距離を延ばす経験値が必要です。

オンサイトで距離を延ばす、というのは、アイスに慣れている人には、アイスは毎回オンサイトなので、そう難しいことではないかもしれませんが、岩の課題と言うのは、毎年同じものがそこにあるだけなので、オンサイトと言うのは一生に一回の機会ですから、なかなか設定が難しい事だと思います…

しかたありませんから、自分が追い求めているグレードではなくても、オンサイトであることにこだわって、ルートファインディングにかかる自分の能力…時間的能力…を見極めていくしかないと思います。

■ まとめ

1)とりあえず、100m分ショートの課題を登って時間を計り、それを4倍してみる。
   合格ラインは、90分で登れる、です。満たない場合、それを目指して登る。
2)12回ロープワークしてみて、それに何分かかったか、時間を計る。
3)2)を初期値として、フリーでも、登るたびにロープセットしてみて、セットに慣れを作る。
4)慣れたのち、定期的(1か月に1回くらい?)短縮したかどうか時間を計る。

5)ストレニュアスな課題を連続登攀する
6)ルートファインディングにかかる時間を見極める工夫をする

■ パートナーは後から

これだけできて、おそらくやっとパートナー探しの段階でしょう。

志を同じくする人であれば、一緒に練習してくれるでしょうが、そんな奇特な人がいるとは限りません。憧れを共有することは大変難しいことです。

通常は、パートナーシップが熟成されて、一緒に山を徐々にステップアップしていく中で、最終的に見えてきたのが、このロングピッチの屋久島フリーウェイ…というなら、話は分かります。それが通常の流れでしょう。見えてきた山を登るのが普通です。

しかし、そうじゃない。初見の人といきなり、このチャレンジのためにパートナーを組もう!というならば、だれでも、相手のスキルに証明を求めるのが普通でしょう。

でなくては、酷い目に会いに行くだけなのが火をみるより明らかだからです。

一般にチャレンジには、長い準備期間と、少なくとも実績、最低でもプレ山行が必要です。プレ山行は、クライマー間ではゲレンデをご一緒することで行われていますが、屋久島フリーウェイの場合、通常のゲレンデでご一緒して、さぁとは行かないでしょう。ゲレンデ共有では、不十分でしょう。長いからです。

自分がオールリードで時間内に登れる目途がたっていないのであれば、パートナーにはビバークを強いることになり、そんな状況が、予想できる場に、自分のお金で、わざわざ飛んで火にいる夏の虫をやってくれる人は、まず世の中にいないでしょう。死にに行くようなものだからです。大枚を積まれても、ビレイヤーとして雇われたとしても、ヤダ!というのが正直な一般クライマーの声でしょう。

現在行われているフリークライミングは、タイムトライアル的なクライミングではなく、時間も、環境も、気温も、恵まれた中で、自分のレッドポイントグレードを上げていく、という活動です。

くどいようですが、フリーでは、5.12登るのに100本打ちこんでも、10本でも、おなじ5.12クライマーなのです。

ですので、屋久島まで行くのにそもそもお金がかかり、アプローチも屋久島内のルートの中では、近いと言え、日ごろ親しんでいるゲレンデとは比較にならず、早出が必要、しかもルートに取り付いてからも、ルートを楽しむというよりは、とにかく急いで登らなくてはならないロングピッチ・・・・ということであれば、フォローですら、かなりの負担があります。通常はお断りでしょう。

急いで登るためにエイドを出すということにでもなれば、何の楽しみもない、と言うことになります。クライミングはあくまでフリーで登るから楽しいというのが本質です。

そのような負担を相手に強いようというからには、トップにはそれなりの責任感が必要でしょう。

■ 前の記事
屋久島フリーウェイの研究 その①


2018/12/28

屋久島フリーウェイの研究

■屋久島フリーウェイの研究

ピッチ グレード 距離 ボルト数  ボルト間隔(距離÷ボルト数+1)

1P目 5.7 35m B1 (12.5m)
2P目 5.10d 25m B10 (2.5m)
3P目 5.10b 32m B10 (3.2m)
4P目 5.8 43m B6 (7m)
5P目 5.10a 25m B2 (12.5m)
6P目  5.9 30m B8 (3.8m)
7P目 5.10c 40m B20 (2m)
8P目 5.10a 45m B4 P1 (9m)
9P目 5.10a 25m B10 (2.5m)
10P目 5.10c 35m B25 (1.4m)
11P目 5.7 30m B3 (10m)
12P目 5.9 30m B6 (5m)

■ 感想

ボルト間隔が、興味深い。
5.7では10m以上のボルト間隔。
5.8では、5m以上のボルト間隔。
5.9では、5m以下のボルト間隔。

ナインアンダーでは、基本的に5m以上なようだ。しかし、10mのボルト間隔で、墜落したら、たぶん20m落ちるよなぁ(笑)。
このルートは、基本的にフリークライミングのルートであるはずで、本チャンアルパインのルートではないため、基本的に墜落を前提として、墜落しても死なないボルト間隔になっているはずなのだが…それでも1P目の5.7で1ボルトでは墜落はありえない。

まぁマルチなので2P目以降は、どこで落ちてもグランドフォールはない。が、スラブということはどこで落ちても、壁にぶつかるということはいえる。

興味深いのは、5P目。5.10AもあるのにB2本とは…説明を見るとワイドクラックとあり、要するにプロテクションが取れなかったのだろう。

さらに10P目は、ボルト間隔が異様に近い。単純計算で1.4m間隔とは…私の身長より低いボルト連打だ。これは、被っているのか?と思い説明を見ると、傾斜の強いスラブだった。スラブの5.10cだそうだ。

しかし、その前の8,9p目は対照的で、同じ5.10Aなのに、8P目は、ボルト間隔が遠い。9ピ目は2.5m間隔と近い。

記述を見ると、8P目は緩いスラブ。9P目は盛り上がったスラブ。

このルートはどちらにしても、かなりのスラブ力を必要とするルートだろうと思える。基本的に易しいスラブでは、ボルト間隔が遠い…

スラブって自分を信じる系、なんだよなぁ…。


■ 『屋久島の白い壁』より備忘録

・1962年より中央陵登攀より、幾多のアタック
・南壁 右:上下2段スラブ  左:傾斜が緩い 複雑な構成 ブッシュが多い
・左 93年台風でブッシュがはげ落ちた
・モッチョム岳で最後に残された部分として、まったく新しいライン
・1回目:96年 5月2日~5日
・2回目:96年 8月9日~11日
・3回目:96年 12月28日~1月1日
・4回目:97年 4月25~29日
・5回目:97年 8月11日~13日
・6回目:97年 12月27日~30日

・核心は2P、10P
・ルートの核心は、デルタハング直下のトラバース
・390m 12ピッチ、最高ピッチグレード5.10d、6時間
・5ピッチ目 パワーが必要
・6P目 デルタハング
・8P目ビバークバンドあり
・最終ピッチから灌木帯へ入り50mで山頂
・現在のところ屋久島におけるもっとも困難、かつ快適なルートだろう

ーーーーーーーーーーーー
岩壁の中に一本のルートを刻み込む。それはクライマーの夢であるとともに、クライマーとしてのセンスが問われる行為でもある。私はルート開拓について、空白の部分をただ埋めるだけでは十分とは言えない気がする。登るのならば、ルートのもつ必然性を感じさせるものであってほしい。岩壁に新しいラインを付け加えようとする場合、それは壁の核心部に引かれなければならない。また理想とすれば、ボルトの連打を避け、少なくとも、フリークライムが大部分を占めるルートなのが望まれる。私はフリー至上主義者ではないから、必要を感じたときにはボルト連打も辞さない。ただし、単調なアブミの架け替えが続くのみならば、現代のレベルに達したルートとの評価はできないだろう。
ーーーーーーーー


■ 屋久島フリーウェイの研究 その2へ続く