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2024/04/23

【クライミングアドバイス】宇宙クライミング…健全な市民クライミングに必要なこと

 2022年1月2日の記事です

■ 仏教説話

私は毎日仏教説話を聞いています。今日の仏教説は、願行具足、のお話でした。

願いと行いの両方が十分に満たされると

成就する

ということで、逆に言えば、

2つのことが揃わないと、成就しないということです。


願い=というのは、私がラオスで垣間見た、”健全な市民クライミングの実現” です。

海外の市民クライマーたちは

 ・5.10aテンションも、5.12aテンションもやっているのは同じこと
 ・誰だって低グレードから高グレードの順にステップアップする
 ・嫌がっている人、ビビっている人にリードを無理強いしない
 ・一般市民レベルのクライミングは、エリートクラスのクライミングとは別話
 ・クライミングを楽しむ

トニーなんて、リードを無理強いされている私を助けに来てくれたくらいです(笑)。

私が想像するには、単純に日本人が楽しい市民クライミングの在り方を受け入れられないのは、エゴによる干渉を受けているからだと思います。 

また、昔と今では、評価される基準が大幅に違ってしまってしまい、クライマーの間で尊敬を得られるレベルも大いに変わり、正当な評価が得られにくいと思います。

昔:山→沢→雪→岩→氷→フリー とオールラウンドクライマーがノーマルコース
今:ジムからいきなり外岩。結果、外ボルダーだけ、外リードだけ。

昔の人の中に、本当にすごい人がいたのは、その通りなのです。山や壁が要求する困難は、絶対値であり、その要求は、50年や100年そこらで変わるものではないので。

その絶対的なものに立ち向かっていた人たちに光が当たらず、先入観や誤解など、誤った基準でスゴイということになってしまった、本来はその敬意に浴すべきでない人に、光が当たっている…おかしな状況…なのも、その通り。

岩場再生で、5.11にグレーディングされた古い課題を登っていたら、有段クライマーがうんうん唸ってやっとこさ登れる、ということもあると思います。

”行”ですが、私の場合の行は、行政などへの働きかけです。

私の場合は、地域おこし、農業、林業、などの人手不足の分野に、若い人材を取り込める可能性を開く魅力としてのクライミングを行政に提案しています。飴ってことです。これは、私の前職である三井物産での新事業開発室勤務の経験をプロボノ中ということです。

■ 願と行の詳細





何のために → 事故を減らすため

正しく理解 → 市民クライミングと競技クライミングは異なる

技術を学んで → 知識を普及する手段を得る = 行政のパイプと繋がる

実践する →  様々な手段で、事情を説明して回る

です。

■ なんで自分の得にはならないのにやっているのか?


私は、すごく良い師匠に恵まれ、頼まなくても向こうから師匠がやってきました…。

なので、自分一人が楽しく登っている分には、何にも問題がない時代が山梨時代でした。

とっても楽しかったので、他にも人をお誘いしようとしたのですが、なかなかうまく行かなかったです。平たく言えば、師匠らのお眼鏡にかなう人がいなかった、です。

このボルトは、ペツルのハンガーが付いていても、カットアンカーであって、施工が良くて15kNしか強度がなく、ガンガン落ちるようなクライミングには耐えられないだろうから、テンション程度にしておこう…というような知識に基づく知恵が現代クライマーにはない、です。

グージョンとカットアンカーが見分けられなかったら、分かるはずがありませんし、落ちないように登る知恵も出てこないです。

ずばり、現代日本のフリークライミングに必要な教えは

1)3ピン目を取るまではクライマーは、決して落ちてはならない

2)本チャン(マルチ)は、2グレード下げる

3)山の支点(ゲレンデであっても)を全信頼してはいけない 残置は信頼してはいけない

です。

4)岩場のグレードを信頼してはいけない

5)ボルト配置が適正ではない課題を見極めて登らないといけない

5)ギリギリに迫っていいのは、人工壁のスポーツクライミングだけ

です。

外岩のボルトルートはスポートルートと呼ばれ、建前上、バンバン落ちながら登っていいという定義がされています。しかし、それは信頼できるボルトがある場合のみ。現代の岩場ではほとんどの岩場がボルトが40年経過しているし、しかも、当時のボルトなので、必要な強度がありません。しかも、異種金属とか、カットアンカーとかです。

ギリギリに迫っていいという建前は、現実のものではない。が、現実の岩場では、”3ピン取るまで落ちるようなクライミングをしてはいけない”、です。

ラオスでは、例外的に、ボルト配置が極めて安全志向で、近くに打たれています。つまり、5cというグレードなら、5cを登るクライマーのためにボルトが打たれています。

国内岩場では、ケミカルにリボルトされた岩場であっても、ボルト配置がそのグレードを登るクライマーのために打たれているとは限りません。また、安全なボルト配置は、登るクライマーのリーチによって変わります。

海外では、どんなリーチのクライマーにも安全なように、ボルトが打たれた岩場が登場しています。

が、日本の岩場はそうではありません。文句を言っても、今後10年以内に状況が変わる可能性は、ほとんどゼロです。

ならば、建前に拘るのではなく、現実に合わせた方針を新しいクライマーに指導するほうが現実的です。

実際、クライミングがメッカの山梨では、そのように指導されていたと思います。

それでも、無知なクライマーによる事故が完全に防げていたとは思えず、無防なチャレンジで事故る若いクライマーは後を絶たないようでした。しかし、だとしても、事故は、中山尾根とか、阿弥陀南稜とか、本格的なアルパインの入門ルートであり、ある程度、ジムデビュークライマーならば、無知も仕方がないなという、高度な場所でした。しかし、九州では、事故が起こっているのは、四阿屋とか、比叡のような”ゲレンデレベル”の場所です。

この記録は、私の2018年4月22日の四阿屋でのグランドフォールを目撃したときのものです。

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グランドフォール

今日は四阿屋の岩場でグランドフォールをみました。

インディアンフェイスというルートで、2ピン目から3ピン目までがランナウト気味、つまり、

(最終クリップから出ているロープ長)と(それより下で出ているロープ長)が、ほぼ同じくらいになっていました。

背の高いクライマーを同じくらい背が高く、細身のクライマーがビレイしていたのですが、たぶん、体重は釣り合うくらいですが、クライマーが落ちると、ロープの伸びがあるので、結局伸びの分でグランドフォールしていたと思います。腰を打ったようで、病院へ行く、ということでした。

私は岩場でグランドフォールを見たのは、自分が落ちて頭を7針縫った以外は初めてです。(アイスは2度見ている)

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理由は、グレードが適切でないため、です。

別にジム出身クライマーでなくても、5.10bだったら誰でも取り付いてしまいますよね。

これらの事情により、九州福岡では無謀な人だけでなく、普通に慎重に正しいビレイで登っているクライマーまでもが、取り返しのつかない事故を回避できないということになっています。異様にグレードを辛くつける習慣は、おそらく九州の文化的なもの…一か八かがクライミングなんだ、という誤解…によると思われます。どうも、大阪から西はそうらしいです。

さらに、ボルト位置の問題、適正ボルトではなく、ボルト間の距離が遠い問題は、全国で共通しています。

これはリーチの問題が、多くのクライマーに理解されていないためです。誰にとっても、難易度は同じである、という間違った前提に立っていて、ジム上がりではないクライマーでも、そのことを理解していません。

ボルトの配置が適正でない場合、正しくビレイしていても、ランナウトしていれば、落ちればグランドフォールになる。そのような、ルートの作り、岩場の作り、のために、適正にビレイしていても、落ちれば、この四阿屋のように腰椎骨折の事故に遭うことになります。

その原因は、クライマー側の無知を有知に変えてやる、指導者側の一種の手薄さ、があると思います。

つまり、”3ピン目取るまでは決して落ちてはいけない”、とか、”マルチでは2グレード下を登る”、ということを明示的に教えることです。


■ クライミングは楽しむために登るもの、自慢するために登るものではない


楽しくなかったらクライミングではない!なぜなら、クライミングは余暇、レジャーだからです。楽しく登る=上達の秘訣、でもあります。

そもそも、自尊心を守るために登らなくてもいいのです。すべての人は存在だけで生きる価値があるからです。

それよりも、クライミングは、過度に集中を要求する活動なので、他がおざなりにならないように気を付けないといけません。

■ 事故を減らす
今までの経験で行くと、私は弟を早くに亡くしているので、いわゆる、

”登れるだけで危険認知が伴っていないクライマー”

に同情的すぎる、甘い傾向があります。それは私の弱みとなっています。

自分自身を振り返っても、私も分からない時代があったので、人に厳しくするのはどうか…という気持もあり、つい脇が甘くなりがちです。

クライミング事故のすべてが無くなり、すべての人を救うのは無理だとしても、”3ピン目を取るまでは決して落ちてはならない”という教えを普及することで、多くの人が事故らず済むような気がします。

昨日は、JFA発刊のフリーファンの『安全ブック』を精読していましたが、あの書き方では、たぶん、現代のクライマーは、どう行動に落とし込んでいいのか?分からないのではないかと思います。

行動に落とし込む、というのは、”3ピン目を取るまでは決して落ちてはいけない” など、具体的にどうすればいいのか?を教えた内容です。



2023/05/26

【クライミングの町おこし】クライマーの町〇〇をリスク認知なしにできない理由

 ■ 九州の問題点のまとめ

1)ボルトが40年もので、国際基準の強度を満たしていない

2)教育機関がゼロ

3)高齢化で個人的に指導できる人もいない

4)結果、若い人は指導者ゼロでもなんとかなるボルダーを志向中

5)ボルダーでも、わざと命を危険にさらすクライミングになってしまっている人もいる

です。

このままの状態で、”クライミングの町〇〇” をやると、町としては、

 「こんなはずではなかった」

という事態に陥ることが確実です。

■ ボルトが40年物

ボルトが40年物で国際基準を満たしていない点については、比較的解決が容易です。

ボルト代を行政が負担。行政の規模感で考えると、たいして費用は掛からないです。数百万円レベルを超えることはないのです。

施工する相手については、

・国際クライミングに慣れており、

・基本的に適正ミニマムボルトの感覚を正確に身に着けているクライマー集団

に、依頼する必要があります。

なぜなら、日本のクライミングルートは、自分以外の他者がそのルートを登るための配慮がいらない時代に作られたものが多く、地域外からやってくるクライマーつまり、事故などのリスクを背負えない人…海外で事故にあったら医療の手続きが大変面倒です… には、不適切なリスクテイク(クライミング専門用語で、ランナウトといいます)が大きく、多くのビジターに楽しんでもらうという目線では、不適切であることが多いためです。

国際的に普及している、一般市民が趣味として楽しむクライミングの主流は、

 落ちても死なない

前提になっています。もちろん、打ち所が悪いなどで、落ちて死ぬ場合もありますから、例外はありますが、一般的には、ちょっとしたケガ程度が許容範囲であり、わざと自分を死に追い込む世界観はプロのもの、とプロとアマは区別されています。

この区別があいまいな過去がありましたが、それを引きづっているのが九州で、時代の流れにより、昔はプロ級とされたルートも、今ではアマチュアが楽しんで登るようになりました。

そのため、初登者は命がけで登ったところを、現代では命を懸けずに楽しんで登れてしまう。そのことが気に入らない、悔しいという心情は理解できます。

しかし、観光資源としてのクライミングルートを考えた場合、そこは

 命の尊さ

が優先されるべき点です。もちろん、町にとっては、不名誉な事故はできる限り未然に防ぐ、ということが大事です。

そのための第一の安全策は、

 国際グレードが理解できる円熟したクライマーに適切なボルト再整備を依頼する

です。

この場合、海外登攀の豊富な経験値はマストです。

■ 教育機関がゼロ

私は、積雪期ガイドステージ2の資格を途中まで取って、危急時対策のあと一つ終了すれば終わりというところで取得を控えています。

それは、九州でのガイド活動には、身の危険を感じたからです。(お客さん自体もリスク認知が甘い土壌にあり、ガイドに無理な要求を押し付けがち)

しかし、取得している中で、

 九州にはきちんとした山の技術を教える学校自体が存在しない

ことがわかりました。

こちらをご覧ください。

九州最大の都市福岡の県岳連サイト

https://fukuoka-mscf.com/

実際に行われているのは、スポーツクライミング、つまりインドアの大会だけであることがうかがえます。スポーツクライミングをいくら教えても、アウトドア、つまり、本当の山や岩場でのスキルには全くつながりません。

こちらは大阪府岳連のサイト

https://sangaku-osaka.com/

非常に講習が豊富であることがわかるでしょう。このような活動が本来、普通なのです。

こちらは東京都岳連です。

https://www.togakuren.com/

九州での山や育成は、距離的な近さから、大阪府岳連に助っ人を求めるのが良いのではないかと思います。

これらの私立版もあります。プライベートで登山学校をしている人もいます。

https://greenfield.style/article/11817/

一番良いのは、佐賀の樋口先生がしているように、指導者を招聘して、講習を開いてもらい、手を変え、品を変え、入れ替えて、良いとこどりをすることです。

■ 高齢化

山の世界の高齢化現象も、大阪・東京の都会よりも、地方都市では著しく、指導者の発見自体が困難になっています。

一方、地方の行政は、地域おこし協力隊に、若さだけを求める性向性があり、それは、その行政が必要とする知見と、必ずしも結び付いていないことがあります。

必要な知見は何なのか、地域自身が規定できないと、ミスマッチが起こります。

結果、就任した地域おこし協力隊員にクライミングで町おこしを、いう気持ち自体があっても、当人にその知見がない、ということが起こりえます。ただ若けりゃいい(あわよくば定住)という人選が、ミスマッチの元なのです。移住するにしても、だれでもいいわけではないでしょう。互いがハッピーに暮らせるという視点が必要です。

人選してしまった後で、何とかクライマーに仕立てよう、としている自治体も知っています。

これらの事柄は、自治体自体に調査スキルが不足しているために起こります。その場合は、適切なアドバイザーを起用することです。

クライミングなんて、若い男子なら誰でもできるでしょ、という先入観もあります。肉体能力的に登れる人が、事業創造に向いているわけでは必ずしもありません。

その場合、適切なアドバイザーをそろえる必要がありますが、クライマーの世界では、大体アドバイザーとして適切そうな人は、すでに名前が有名です。

本を書いていたり、あるいは、東京、大阪などで、指導者として有名になっている方が多いです。何人かに打診してみて、比較することで人選は容易でしょう。合い見積もりと同じことです。

フリークライミングだと、第一人者は、平山ユージさんです。私もビレイを務めた吉田和正さんはなくなってしまいましたが、北山真さん、東秀樹さん、草野俊平さん、なども有名です。

アルパインのほうだと、ピオレドール賞を受賞した人を検索すれば出てきます。

日本では、ロッククライミングという括りが発展しておらず、フリークライミング陣営とアルパインクライミング陣営が、二大政党みたいな形で対立しています。どちらも、これこそがロッククライミングだ!という自負が経験の上に成り立っており、構造的に譲れないので、

 外の岩場を登るロッククライミング

という視点で安全対策を入れたい場合、両方から知見を得ないと、偏った知見になってしまいます。

例えば、アルパインクライマーにとっては、支点を自作するのは普通ですし、懸垂下降もできる前提でしか、山に行きません。しかし、フリーのクライマーは、支点を作った経験もなく、懸垂下降もしらないまま、世界の最高難度を登って栄誉を得る最年少組の人も現在では出ています。これはクライマーとしての評価の尺度が違うためです。

日本では、

 ロッククライミングという尺度で統合された資格やスキルが認知されていない

ので、技術講習に出た人でも、その違いの隙間の落ちてしまうことがあり、その典型は、懸垂下降や登り返し技術を知らないフリークライマーです。

懸垂下降、登り返しなどのエイド技術を教わっていないクライマーが各地の岩場で問題を起こし批判されていますが、現在の日本のクライミングの教育システムでは、教えられそこなう仕組みに構造的にあります。そもそも、登り返し技術はエイドクライミングなので、フリークライミングをするクライミング教室で教えないのは当然のことです。 結果的にフリーもアルパインも、横断的に登るクライマーだけが安全ということになります。(詳細はこちら

■ ボルダーの指向性

結果的に、指導者がいなくてもなんとかなる、ボルダー、に若い人は偏って活動することになっています。

幸い、ボルダーについては、一流の課題がそろっています。

海外のクライマーの受容もボルダーからスタートするのが良いように私には思えます。ボルトの整備がいらないからです。

この分野は、九州では、小山田大さんという巨人がおり、小山田さんにアドバイザリーになってもらうのが、最も良い施策であると個人的には思います。

ちなみに一般的に、ボルダーの安全対策は、ランディング(着地)です。

十分なランディング練習とマットの使用法の習熟が、ボルダーの講習会ではメインの要素となるはずです。

安全器具である、クラッシュパッドを、町が貸し出すことは、大変大きな、訪問クライマーにとってのメリットです。

海外には、ボルダーで非常に有名な町が多数あります。海外の情報については、ChatGPTに聞けば、大体のことはわかります。もちろん、裏取りは必要です。

■ わざと危険を冒すクライミング文化

クライミング文化として、

 わざと自分を危険な目に合わせることでアドレナリンブーストを得る

ということが、クライミング文化の基調に長く伝統としてあることは否めません。この分野では、ヨセミテのディーン・ポッターという人が、有名で、むささびみたいなボディスーツを着てジャンプするスポーツで、死亡しています。死を美化する伝統もクライミングの中にあります。

しかし、現代は、そうしたリスクを前提とするクライミング以外にも、市民の健全な趣味としてのクライミング、も当然ですが、並行的に存在しています。

 クライマーはすべからく命がけすべきである、そうでなくてはクライマーでない

という時代は、かなり昔のことになっていますが、日本では、その伝統をいまだにひきづっています。

 市民の健全な遊び、レクリエーションとしてのクライミング

は黎明期、といったところです。どう転んだところで、クライミングにはリスクがつきもので、たとえインドアジムであっても死亡事故は起こっています。

ので、リスクをゼロにしたい人は、クライミングをしない以外の選択肢以外ありませんから、ゼロを目指すのは適切な行為ではありませんが、わざとリスクに身をさらす、ということとはまた別の話です。

九州の場合は、指導者の不足もあり、若い人は全く無自覚に、さらさなくてよいリスクに命をさらしています。

たとえば、ボルダーの場合は、ランディングについての注意がゼロです。公に催されているボルダリング大会でも注意喚起ゼロという事例を見ました。つまり、大会主催者もリスク自体を認知できていないのです。

ランディングに十分習熟してから登るというのが、ボルダーの基礎講習です。

また、クラッシュパッドの隙間に落ちて、足をくじくというのが最もポピュラーなボルダーの事故です。

つまり、一人で登っていたら、下でマットを動かしてくれる相手がいないので、かなりリスク大です。ボルダリングこそ多人数で行き、各自がマットを持ち合うというのが安全対策です。

以上、クライミングによる町おこしへの提言でした。







2023/05/17

クライマーの心を伝える文章とは何か?クワンデ北壁vs〝Romance Dawn〟5.14- FA

■ 若い人はアルパインもフリーも指導者がいない

最近のジム上がりの新人クライマーはクライミング技術といえば、ムーブのことだと思っており、クライミングを理解していない。

のは、クライマーが書いたクライミングのことを読まないからではないか?と思うんだが…

アルパインクライミングでは、山行報告書の習わしで、文章を書くのが当然の習わしになっているが、フリークライマーは、登攀そのものの時間的にも短いだけに、その登攀の

  個人的な価値

について書くことがすくない。そもそも書かれたものが少ないから模倣もし辛い。だから、若いトップクライマーも登攀について語らない。

だから、読む人も少なく、後進の人が登攀の実際のことが分かるようにならないんではないだろうか?

以下、一流のアルパインクライミングと一流のフリークライミングの記録を、事例として研究してみたい。

■ 事例1 アルパインクライミング クワンデ北壁

https://koyaken4852.hatenablog.com/entry/2016/11/30/165211  より引用

赤字当方。

ーーーーーー

  翌日はお日様がすっかり昇り切ったころの出発となる。ここから第1の核心と思われる右上するジェードルに入っていく。僕がジェードルの入り口までロープを延ばす。双眼鏡で偵察したときはジェードルの下部がこれほど薄氷だということが分からなかった。登れると思えば登れそうだがプロテクションはほとんど取れないのでミスは許されない。傾斜は70~75度くらいだろう。相方が核心に入る。「悪っ」と言いながらジリジリと登っていく。カナダで鍛えた薄氷登りのテクニックを見せてくれる。“よくあんな所を登っていくわ”と僕にとってはひとごと。薄氷の部分さえ抜けてくれれば僕はそのあとの厚く張った氷をリードするだけだ。

 今日の行動食はスニッカーズだ。スニッカーズは何度食べてもうまい。3分の1を二口で食べ、3度に分けて食べるのが僕流の食べ方だ。こうすればたくさん食べた気になるし、身体にたくさん吸収されているような気がする。口から入れたものはなるべく吸収して出さないほうが効率がいい?

 “くそっ、あんな所で切りやがった”まだロープは余っているのに上部に見えるさらに険悪な薄氷の下でピッチを切った。僕がビレー点に着いたら一言、相方が「お前にも面白いところ残しといたで。」僕も一言「有難う。」“仕方がない、行くか”当然プロテクションは取れない。岩から1箇所と気休めにスカスカ氷に半分しか入らないスクリューを決める。

 ここからはピックが1cmほどしか入らないパッチワーク状の薄氷だ。クランポンを置く氷がミシミシと音を立てる怖くない。落ち着いている。5m、10m取れない。途切れ途切れの厚い氷になり、気休め2号を放つ。次第に氷は厚くなり第1の核心は抜けた。ジェードルは計4ピッチ、上部2ピッチは氷が厚く快適な登りだった。さらに1ピッチ延ばし岩の下にビバークをすることにする。登攀を開始するのが遅かったため6ピッチしか進むことができなかった。お互い「今日のピッチは難しかったからしゃあないわ。」と慰めあう。

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・オブザベして、そもそも、自分が登れるかどうかを判断するものだ、ということがわからないと文章の意味が味わえない

・下部のほうがより危険で落ちれないことが分かっていないと味わえない

・傾斜70度=初心者でも登れる=難易度は、リスクと無関係だと分かっていないと味わえない

・薄い氷=危険と分かっていないと味わえない

・ピッチを切る切り方にクライマーの考えが現れるものだと知らなければ味わえない

・悪い=リスク=面白い が分かっていないと笑えない

・ ピックが1cm=かなり入っている方…女性のわたしだとアックスを振り下ろす力が弱いので、1cm入れば上等です。もっと入らなくても登ります。

・5m、10mのランナウトが悪いと分かっていないと味わえない 

・気休め2号 プロテクションの意味が分かっていないと味わえない

・ 6ピッチしか 普通は20ピッチくらいが楽勝だと分かっていないと味わえない

大事なことは文章から、

 リスクテイクのあり方がリアルに伝わってくる=手に汗握る

ってことで、そのリスクが分かるには、ある程度、知識と経験が必要です。

トップクライマーでも5m、10mで緊張している=つまり、死を意識している

のに、一般市民クライマーに40mランナウトを期待していたらしいんですよね、九州では…(笑)。今は、20mランナウトくらいだそうですが、

 市民が、生涯スポーツとして楽しむのに適したリスクかどうか?

議論が待たれているでしょう。なんせ、

 ”1億総おれもいつかはピオレドール賞”だった時代

は、とっくに終わって、

 ”今どきの山や”は、結婚して子供も作る(驚き)

もとっくに終わって、”今だと、

 おれ、在宅勤務なんでジム行くことにしました。憧れはマルチでーす(はあと)

って人が新人なんですよ… その時代に

 お前も20mランナウトに燃えろよ

って(汗)。

■ 事例2 フリークライミング  Romance Dawn 5.14A

 Yuta KashikiのFB投稿より引用。赤字当方。

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 2023.4.27
8年前に自らボルトを打った地元広島:三倉岳のプロジェクトが登れた。
もともとリングボルトが打たれ、基部はキジ場と化していたこの壁は、フリーでまともに試みた人がいないにも関わらず長年プロジェクトと言われていた、そんなラインだった。
さこそ全長15m弱程度だが120°は優にある花崗岩のフェイスは日本では稀有な存在で、プロジェクトとして文句無しのビジュアルだった。
実際に上からチェックしてみると奇跡的にホールドは繋がっていてトップロープながら曲がりなりにもムーブを起こす事が出来たのでボルトを打つ事に決めた。
だがほどなくして仕事の関係で広島を離れる事になった。その片道500kmの現実に事実上通ったり、自分の好きなタイミングやコンディションでトライする事が難しい環境に、本当に終わらす事が出来るのか自信は全く無かった。だが、常に頭の片隅にこのプロジェクトはあった。
内容はショート系のハードルート
離陸した瞬間からボルダーグレードで2〜3段程度の動きから始まり、息つく間も無く縦に距離感のある人工壁のようなムーブが続く。そして、レストポイントを挟みラストはランナウトした状態でシビアなムーブをこなしてトップアウト。終了点は源助崩れのテラスにある木でよくみんなが荷物を広げている場所だ。妥協点は最小限、自分で言うのも憚れるがコンパクトながら素晴らしい内容だ。
しかし、その恐ろしく難しく感じていたこのプロジェクトだったが、登れる時はあっけなく、澱みなく終わった。月日が経ちどうやら少しは強くなっているようだ。思いがけず突然に終わってしまったのでグレードもはっきり言ってよくわからなくなってしまったが、これまで登ってきたどのショート系の5.13台よりも別次元に難しかった事ははっきりと言える。実際はもっと簡単かも知れない。でもこれから色んなクライマーにトライされ登られ、議論して色んな意見が出ればそれで良いと思う。
昔は自分のクライミングの為だけに通っていたこの山も今では仕事で訪れる事の方が多く、付き合い方も変わってきた。だからこそ、その逆境の中でどうプロジェクトと向き合っていくのか、チャレンジしていくのか考えさせられた気がする。そして苦労して乗り越えられた今、クライマーとしてまた少し成長させてくれたと思う。今も昔も自分のクライミングの原点であり、常に厳しさを教えてくれたホームの岩場、これからもお世話になります。だけど、この自己最難クラスの登攀がこれからのクライミング人生の夜明けであるように

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・フリーで長いこと登られていない、見捨てられたルートの発掘 

・長さより、傾斜や難しさ

・ビジュアル

・奇跡的にホールドがつながっている

・課題との付き合い

・登れる自信はなくても頑張る

・ハードかどうかが問題で大きいかどうかは問題ではない

・いろいろなクライマーにトライされ、登られることが価値

・人的成長

・厳しさ、苦労 でも 自己最難

■ アルパイン&フリーの比較とまとめ 

アルパインの価値          フリークライミングの価値

大きさ&悪さ              難しさ&見た目

ピッチ数                 NA

スピードの速さ           見ているだけも含めた長い付き合い 

リスクによって山と向き合う      難しさによって課題と向き合う

核心は悪さ              核心はムーブがつながるかどうか 

隔絶                 みんなに登ってもらいたい

逆境はスノーシャワー         逆境は仕事

本当に向き合っているのは自分     本当に向き合っているのは自分

おれはこのリスクを取れるのか?と向き合う おれはこの難易度が登れるのかと向き合う

■ まとめ

いかがでしょうか?

フリークライミングは、特に前提知識がなくても、クライマーが向き合っている対象がわかりやすいと思うのですが、アルパインクライミングになると、ある程度の知識がないと、そもそも書かれている文章を読解することができないのではないか?ということが伺えます。

そもそも、文章を通じて、

 自分が何と向き合ってきたか?

ということがよく分かる文章が、クライミングに関する文章としては良い文章と言えるのではないかと思いますが、そこには、

 価値観

が当然現れており、アルパインクライミングとフリークライミングでは、価値観は全く違います。

アルパインの人は、壁がデカくないから、と言ってバカにしたりしますが、小さくても難しい壁は、日本にはいっぱいある。

一方、フリークライミングの人は、ムーブがつながる、の意味が理解していなかったりします… チビにはムーブ繋がりませんよねぇ? 

余談ですが、小鹿野で初登と違うホールドだからって岩のホールドが加工された事件が合ったようですが、初登者の自分に使えないホールドを女性や子供を含む他の人が使えることは普通のことで、リン・ヒルの著作にも、手の大きいクライマーが使えないホールドを使ってリンが登ったことが書かれています。

つまり、課題の岩が奏でる歌は、身長別だったり、手のサイズ順だったり、ってことです。

そんなのビレイ中にクライマーを見ていれば、分かるようになると思うんだけど…。

人工壁をクライミングと教えてしまうと分かるようにならないかも知れませんね。

 

一般の人バージョン

ジャム中のわたし

 

フリークライミングは、ボルトルートで覚えるより、トラッドで覚えるほうがやっぱり安全と思う…



2023/05/13

【原理原則】花崗岩のランナウト、石灰岩のランナウト

 ■ 垂壁のランナウト  ランナウト許容度 △


 花崗岩(スラブ)のランナウト ランナウト許容度 大

■ 石灰岩(オーバーハング)のランナウト ランナウト許容度 小

これが年配の人は、一緒くたで考えているんではないですかね?

今の時代って、ボルダーもですけど、最初っからどっかぶりです。 15度の傾斜なんて、初心者向け、とされており、私でも登ります。甲府の人工壁は40度で5.11からしかない。それを15度にして練習で登っていました。

15度でも、下部では落ちれない。

一方、スラブで85度の傾斜は、易しくはないですが、よくある傾斜、つまり普通です。スメアで歩ける場合もある。これで落ちるのは、後ろに走れ、とよく言われます。

私はこんなので落ちるのと、オーバーハングで落ちるのが混同されて議論されているから、結論が出ないのだと思いますが、ちがうのかね?

山梨で初心者の岩場とされている西湖の岩場は私も通いましたが、上部ではありますが、ランナウトしています。

いっぽう、どっかぶりは、上に行けば行くほど、安全になり、ランナウトによる地面激突より、ソフトキャッチのほうが大事になります。

被っている下部核心の課題、っていうのが初心者が最も取り付いては行けないリード課題で、まぁ大体ボルダーっていうのは、いきなり被っています(笑)。マットに落ちて死なない高さにしておく&マントリングで落ちない、が大事です。

2023/05/07

【ネタ提供】 ミニマムボルトって一言で言っても…

 ■ミニマムボルト論争

エイドのミニマムボルトとフリークライミングのミニマムボルトでは、意味がちがうよなぁ。

A)エイドのミニマムボルト=ただ距離を稼げばいいだけの思考停止ボルト配置

B)フリーのミニマムボルト=岩と対話しつつ、ここだけは外せないというところに打つボルト

ただの思考停止でしかないA)のボルト配置が、B)の栄誉ある配置と同じ厚遇を受けることになっているのが問題なのであって、

ミニマムボルト自体は、自然界を保護し、フリークライミングのスタイルを向上する素晴らしい理念

です。

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ミニマムボルトとは?

・自然の保護と調和: 自然環境への配慮や保護を重視し、岩や地形の自然な特徴を活かすことを目指します。
 

・ボルトの最小限の使用: ボルトは必要最低限の場所にのみ設置され、クライマーが自己保護やフォールのリスクを最小限に抑えながら登攀できるようにします。
 

・伝統的な保護具の使用: ナチュラルプロテクション(結びつけたナットやカム)などの伝統的な保護具を活用し、ボルトに頼らずにルートをクライムします。

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そもそも、エイドで打てば、自然地形は全く生かしたことにならない。

日本のクライミングの国内事情的に、A)で打った人が、Bの理念にフリーライド、つまりタダ乗りしている。

フリークライミングで、価値があるのは

1)そもそも前提として、フリークライミングで登られていること (初登がエイドって…汗)

2)ボルトがプロテクションとして機能すること(ランナウトしてはただの飾り)

3)必要最小限(ミニマム)であること 使える場合は、ナチュプロ

4)グランドアップであること

です。

この前提が崩れて自己規律がなく、

・エイドルートなんですー (グランドアップっていう言い方してるけどね!)

→ フリー時代になったので、そのままボルトうちましたー (しかも上からぶら下がって)

=日向神

みたいなことになっているとしたら、かなりイケてないです。上記のシナリオになっているかどうか?は個人の開拓者のポリシーや倫理観によるのかもしれませんが、クライマーって

「ねぇねぇ、最近はラッペルOKなんだってよー」

「ほんと?ぶら下がってボルト打てるの?ラッキー。ラクな時代になったねぇ」

とかって、自分のラクな方向に物事の意味捉えていませんかね??

ラッペルルートができた理由って、そもそもグランドアップでは、かなり易しい課題でないと、ボルトうち資材一式持って登るの無理!みたいなことになったからだと思うんですが…。

随分前にリンヒルが女性クライマーだけで開拓する動画みましたが、彼女が日本の開拓結果を見たら、Oh My God!なんじゃないですかね…もったいなさ過ぎて。

岩の形状を活かす、とか、課題の質…って事を考えず、量産、ってことを考えた結果なんだろうか…。

国内の地域クライマーは、変なコンプレックス持っているから、あんまり思想的な正しい内容を語る人がいても、話を聞かないかもしれないですね…。

都合いい解釈に収まるほうが先になっちゃって…。

だれか、きちんとグランドアップで開拓されたミニマムボルトが、安全の確保に必要最小限で、素晴らしく美しい調和を持っている様子を語ってください。

そういう詳述がないと、言語化能力が足りなくて理解ができないのかもしれない。

今では、どっちが命知らずクライマー化の競争みたいなことになっている。俺だって命かけたんだぞ-、みたいな。確かに抜け落ちそうなピトンに体重預けるのって、勇気がいりますよね。 フリークライミングだからって威張るな!みたいな感じなのかな?

そんなことを思いました。

伝統的クライミングのスラブで、ランナウトしても、落ちる時、体の摩擦で停めたらいいだけですけど、同じ距離のランナウトをオーバーハングでやったら?とか、発想自体ができないのではないかしら?

みかんとりんごを比べるようなことになっているってことです。

日本は儒教の国なので、後発のフリークライミングが割を食って、日本にはアルパインクライミングのエイドクライミングで開かれたルートはいっぱいあるけど、それがそのままボルトになってしまっただけで、岩の形状を活かしたわけでもないし、そんなところにボルトあっても落ちれないから、ただのお飾りだし、スポーツクライミングのルートとも言えないし、というなんともどっちつかずなことになっている、というのが現状の岩場の正しい認識なのかもしれません。 特に九州の岩場。 

世界で名をあげている日本人つよつよクライマーと違って、 日本のクライマーの平均像は、あまり知性は高くないです。しかも、価値基準が、俺がかっこよく見えるかどうか、です。たとえ、誤解による称賛でも、称賛である限りなんでもいいから欲しい!みたいな感じです。たぶん、ちょっと発達障害なんですよね。しかし、悪気はなくて、単に理解力が表面的なだけです。

大体、著名になっている若い強強クライマーって、慶応大卒とか早稲田卒とか、偏差値で言って私と同じような大学出身者ですが、今増えているクライマーってそういうレベルではなく、坊っちゃん大学出とかです。つまり、もともと知性の面でクライミングが気に入ったわけではなく、オールアウトできるから好きってタイプ。地方都市に残っているのは、都会の大学にいかなかった人なので、そういう人が多いのです。ロープを買うときに濡らしては行けないくらい学ぶはずですが、そういう風には、なぜかならない。

つまり、先手を打って、どういう行為が称賛されるか?を教えてあげることが、適切に導くコツです。

たとえば、このように…

台湾では、エクセルシートでボルトの具合が管理されています


2023/05/01

小川山のグレード改定について (簡単な教習所化)

 

 ■ カサブランカ 10A→ A10B

グレード改定になっていた…。

改定はどういう風に話し合われ、どういうふうに改定になったのだろうか…

(別に改定に文句はない。念のため)

カサブランカって、小川山で一番、基本的なクラックの5.10Aだと思うんですが…

そのため、ガイドさんが、横にグリグリでぶら下がって、講習生が設置したカムが決まっているかどうか?をチェックしながら登らせていました。 

おかげで長蛇の列で、普通に登れる人は超メイワク…なんですよね。

私も3回目くらいには、だいぶ余裕で登るようになったのですが…。その後が…です。

フレアしているので、TRでゆとりがでたからと行って、次は、リードって…そこは、なんか違和感ありますよね?

その後、三倉のクラックに行ったが…男子のクラックの習得の仕方が超怖いということがわかった…のだった。

つまり、

一度登れたというだけで、プロテクションの技術を学ぶことなく、いきなりリードで取り付く

という方法論だった。

ま、人のことは言えず、小川山レイバックでは、私も、「あれ?これ、登れるな」と思ってしまい、2度めでビレイヤーを連れて行ってしまったが。

というので、ガイドさんがぶら下がってプロテクションをチェックするのはいいと思うが、それをカサブランカでやるのは、いかがなものか?って感じではないだろうか…

カサブランカは、”練習課題”ではなく、”目的課題”、だろう…

それなのに、カサブランカでカム設置練習をやると、超・迷惑だろうなぁ…。

■ 提案: 練習課題

 ・カムへの信頼を築くために、時間をかけて登ってもいい、

・歩いてトップロープが張れる

練習課題として適しているもの

というものを小川山でも設置したほうがいいのではないだろうか?

偉大な芸術家だって、最初から芸術作品を描いていた訳では無い。練習課題があり、カサブランカは目標とする課題。そうなれば

  下手くそに合わせて、グレードを改定したりしなくて良いわけで…。

カサブランカが5.10bだと思って育った日本のクライマーは、ヨセミテに行ったらどうなるんだろう? 

ヨセミテって三倉グレードだそうでした。私はとりあえず、小川山レイバックはRPできたんですが、その程度で、三倉の5.9に取り付いたら、あちゃーってカムエイド状態でした。

ヨセミテに行ったら同じ事が起こるよなぁ。

つまり、簡単な教習所で教わったドライバーは運転下手、ってこと。それはやばい。

今、日本のクライマーが海外で強強なのは、日本の落ちれない外岩育ちだからだと思うんですが、ちがうんですかね?

■ 花崗岩グレードvs石灰岩グレード

小鹿野の問題は、石灰岩なので、現代のクライマーにとっては楽勝系のほうです。むしろ。

それに石灰岩のランナウトは、即、死につながる。大根おろしくらいの話では済まない。

石灰岩、私はジム育ちではないので、日本の石灰岩は5.8でも登れませんでした。スラブなら、10cまでRPできるのに。

ランナウトしていないラオスなら、楽しく登れ、6Aまで行けます。日本には、私が登れる石灰岩なんてあるんだろうか?ってレベルです。

それくらいスタイルがちがう。ちがうスタイルの登りを同じモノサシで語っているから、クライマー同士の喧嘩になるんだろうと思いました。

 なんせ、アルパイン出身のクライミングって、そもそも、信頼できないエイド用ボルトに細引きかけて、抜けませんように!と祈り、南無三!とやるのが、クライミングですよ~と教わっていたわけですよ。

それが叩き込まれた人と、基本的に落ちてもキャッチしてもらえる前提のフリークライマーが話をすれば、そりゃ、喧嘩になるでしょう… そもそも、何をクライミングだと思っているか?が大きくちがう。

高みへのステップにもフリークライミングのことは書いてありませんでしたし。

ちなみにリンヒルは著書の中で、さっさとアルパインは捨てていますよね…。スポーツのほうが彼女には合っていると思ったそうです。体操の演技と同じで、緩急やフローがあるのが気に入ったそうです。

バレエで言えば、パの繋がり、アンシェヌマンですね。私はアイスクライミングが好きでしたが、それはバレエのワルツステップと同じだからです。岩では、私のフィジカルではパが繋げられないから、好きではないです。特にカチ系課題。指痛くなるだけでおしまい(笑)。

昔は、5.10Aだったカサブランカが、10bに改定になったのは、現代のクライマーが下手くそになったこともあるが、山岳会による教育システムが存在しなくなり、先輩に連れられて、トップロープで岩に慣れるという時期を過ごすことができないためだろうと思う。

誰だって3年フォローで育成してもらえたら、5.11くらいは登れるようになるものなのだ。

しかし、後発クライマー(クライミング界の弱者)で、なおかつ師匠についていた私でも、湯川を1日登り放題しただけで、次からリードしているんだが(デゲンナー5.8)、それでは、ガタガタの湯川のプロテクションをきちんと決める根拠にはならないであろう…

ベテランでもプロテクションの習得は技術指導の仕方がわからない… 新人はトップロープが自分で腫れないので、自学自習もできない…となれば、八方塞がりになる。

とどうなるか?こんなコミュニケーションがまん延するのである。

 

とにかく卑屈にならないといけなくなる。それが

ラオスの岩場がいい理由
日本の岩場がよくない理由

それで、安物を大金出して買わされる羽目になる。そこにガイドが群がる。

そういう話になっているのが日本の岩場だよなぁ…

関連記事

https://allnevery.blogspot.com/2020/03/blog-post_26.html

2023/04/29

【高みへのステップ 4】 ランナウトを避ける配置

■1ピン目より、2ピン目が重要
この図も誤解を産むよなぁ。一ピン目の位置を同じにして、2ピン目の距離で落下係数を比較する図にする方が良いと思います。これだと遠い一ピン目に悪用する人がいるでしょう… 

7mから落ちたら人間は死にますよねぇ… 
 
しかも、この図だと、屈曲が一番強いところにランニングが入っているので、絶対に長ぬんが必要な配置になってる… 

そうじゃなくて、傾斜が変わる前に一本入れるのがいいのでは…?アイスでは傾斜が変わる前に一本と教わったけどなぁ…

 

もうホント語りたくないんだってことがにじみ出ている文章(笑)

それくらい考えてくれよ、登ってりゃ分かるでしょ、と思うよねぇ…私も思うが。

しかし、教えてくれる人も分かっていない現代クライミング…スポーツクライミングのインストラクターで普段やっている人は、外岩で下部核心のルートを初心者に進めてきたり、短しいルートを登れと言ってきたりしますから、こんな程度の書き方では、指導者自信が理解を深めることがたぶん、無理だと思う。

したがって、この文章を見せて、「ちゃんと教えてるじゃないか!」と言質を取ることには無理がある。

なにもかもが、

  自分でプロテクションを打たない習慣

に根を発する

  思考停止

だと思うんだけどなぁ。 

2023/04/21

米国債権 その2 無税政府システム リボルト代捻出

 ■ 米国債権の研究 その2です。

債権=株式のリスクヘッジ

です。

■ どの商品を選ぶか? 現物か、ETFか、ファンドか? 

1)現物 現在楽天証券で買えるのはこれらです。

米国ストリップス(米国国債)2029年8月償還      3.36%

米国ストリップス(米国国債)2044年8月償還    3.76%

米国 トレジャリーノート(米国国債)2025年8月償還  2.00%     3.68%    

米国 トレジャリーノート(米国国債)2029年8月償還     1.625%     3.35%

ドル建ての定期預金みたいなもの。

参考:https://www.americakabu.com/entry/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%B9%E5%82%B5

2)米国債権を購入するETF

・購入時手数料がかかる = 一括投資向き

 参考:手数料無料ETFリスト 

 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/etf-etn-reit/lineup/0-etf.html

・利率が分配金で再投資できない(複利効果が生まれない)= 毎月 再投資する手間がかかる

 https://investment-by-index-invest.com/method-re-invest-etf/

余談ですが、ETFの投資で毎月生まれる分配金利をボルト代にしたらしたらいいかも?、ですね。

3)ファンド たわらノーロード 

・これなら毎月、画面操作しなくてもOKです。

・これはNISAにも対応しているので、Nisa口座を持っている人にオススメ。

■ 当方の所有銘柄

BIV、BND、AGG ですが、どれも経費率(0.03%程度)、変わりません。好きなのでいいと思います。 

AGGは、iSharesブランド、ブラックロック社, BIVとBNDはバンガード社です。

どっちも大手なので、マイクロソフトとアップルのどっちがいい?程度の差です。米国債権が主たる投資先です。

■ アメリカがデフォルトに陥るか?というのが、最大のリスク

アメリカが、ギリシャとか夕張みたいになるかどうか?というのが、債権投資の主たるリスクです。

なりそう…という人もいます。ドルが無価値になる、と予言する人は多いです。

円が価値ゼロになるって人もいるからなぁ…

しかし、円が価値がなくなったとしても、人々の実体経済で、円を使うしか他に、いまのとこ、手段無いですよね…。ボロいボルトでも、それしか無いみたいな(笑)。

円は、世界最大の債権国の通貨なので最強と思いますが、日本国債は、全然評価されていないので、なんか通貨として見たら、気の毒系です。いい人過ぎて、漬け込まれているみたいな(笑)。

債権投資については、こちらを参考にしました。

https://www.youtube.com/watch?v=5oW1LBKYD90

売買タイミングについては、移動平均線と出来高、MACD程度しか見ていません。

■ 為替の損益分岐点の簡易計算サイト

https://www.sc.mufg.jp/products/bond/fdb/detail.html 

■ 狙い

誤解がないようにと言うので、メモっておくだけですが、

経済的自立は、大人としての最低限の自己責任。

あのピオレドール賞受賞女性アルパインクライマーの、谷口ケイさんも、死後700万円の遺産を残し、後進クライマーへの基金となっています。

私の出身企業の創始者である松下幸之助は、

 無税政府

の提唱者です。要するに、政府が税を上手に運用すれば、利息を払わずに、公共投資に必要なお金が出せる、というものです。

つまり、お金をスッカラカンと使い切ることに専念している現在の行政のようなことをしていると…毎年、必要のなさそうな道路工事を3,4月にやっていますが… そうじゃなくて、それを運用すれば、翌年に必要な税はその分、減るよねって言う話です。

私はクライマーのボルト財源は、運用益によって捻出すれば良いのではないか?と思っています。

保守的な運用でも、年利で4%は取れるはずだからです。100万円なら4万円です。

4万円分のボルトならば、2、3ルート分です。翌年も、2,3ルート作れる。

一般に老舗山岳会には、60年分の会費徴収のお金が何百万も溜まっています。

ただの内部留保になって、何を買おうか?、テント?、でも、もうあるしなぁ…という状況です。

そうしたお金を4%で運用すれば、元本は減らさず、年に10本のルートを開拓することは十分可能です。300万円の内部留保がある山岳会は、ふつーです。

一般に会の新人さんは、一人か2人しかいないので(笑)、10本も開拓するとなると、一年で手一杯のはずです。 

開拓王ではないのですから…一日10本!とか欲張らず、よくよく考えに考えて、ボルトを打てば、そのプロセスで学ぶことは、この上なく多いハズ…です。

最初は、下手くそな場所にプロテクションを打ったとしても、やり直しが聞く、アイスクライミングで、もし凍らない地方であれば、トラッドで、打つ場所の吟味をする事を進めます。

なにしろ、そういうことをしなかったせいで、なんかボルト配置的にビミョーな下手くそ系課題が、できてしまっているようなのが現状ですから…。

自分にとって十分に難しい課題で、打てば、誰でも適正ボルトになるはずです。

5.12が登れるくせに、日和って易しい5.9のボルトを打つのは辞めましょう…(笑)

意味のないラインナウトって、日和っていた印みたいなもんですよ。ランナウトしなくても、十分難しければ、燃えるはずです。



2023/04/17

クライミングもメタ認知が必要… クライミング紛争の根本的原因はこれでは?

■ いがみ合いの人々 = メタ認知が低い人びと

クライミングを始めた初心者の頃から、いつも思っているんだが、

  メタ認知

というのが、ほとんどのクライマーに欠如している資質なのではないだろうか?

というのは、わたしが、かなり後発のクライマーで、クライミングの歴史を知らないせいで、蚊帳の外感があるせいだと思うが、

A)アルパインのクライマーはフリークライミングの人たちを、初登じゃない、と言って否定し

B)フリークライミングのクライマーは、アルパインの人たちを、下手くそだなぁ!なんで、こんな簡単なところでエイド出すの?

と思っている(らしいことが今回判明)。

そのどちらにも属さない、残されている道を行くと

 第三の道: フリークライミングなのに、落ちれない(落ちたら死ぬ)でも、スイスイ登れるだけの力をつけて、オンサイトする

しか道がなくなる。

これを地で行っているのが、現代の(主に)2世エリートトップクライマーです。 

しかし、23歳のクライマーでは、古いクライマーたちが何をめぐって言い争っているのか?わからなくて当然です。

私だってスタート43歳なので、全然分からなかったです。

■ すぐハングドッグに逃げるのは悪いスタイルですよ?

RP主体の現代のクライミングでは、インドア人工壁上がりの人は、指力のセーブのためにすぐ落ちて、ハングドッグします。

しかし、すぐ諦めて、墜落してハングドッグすることが悪いスタイルであることは、現代の一般クライマーは教わっていません。ので、ボルトにテンションしないでヨーヨースタイルで登る人をバカにしてしまいます。

ヨーヨースタイルのほうが優れたスタイルですよ?最悪はエイドです。

一方、紛らわしいですが、

 ショックロードなしのテンションは安全対策、

です。ボルトがボロいルートでは、墜落はせず、テンションにとどめておきます。

しかし、若い人は、結局、どのルートが落ちれるルートなのかの情報の見極めが難しいため、岩場で誰かがハングドッグで問題解決している姿を見て、自分もその通りにする、という、

 ものまね戦略

が命を守る解、になる。だから、人気が特定のルートに偏る。しかし、墜落&ハングドッグと、ボロボルト対策のためのテンション登り、は似ているけど、異なります。

ものまね戦略のおかげで、

 ハングドッグ2時間みたいなクライマーが量産される

ことになる。

故・吉田さんは、執着心で登るクライミングスタイルを広めた人だが、別にハングドッグが長い人ではなかったです。

しかし、執着心のところだけが取り出されて、誤解され、現代では

 ハングドッグが長い=執着心=良い行動

と誤解の上塗りが、現代の標準クライマーの標準的な行動になっている。

それを見た、もともとアルパインをやっていたクライマーたちは当然だが、そんな姿を好ましくは思わない。すぐハングドッグする=すぐ諦める、という、基本的に執着心と反対の行為だからだ。”お前、そんな簡単なところですぐ落ちるなよ!”が本音なのだから。

しかし、ジムクライマー出身の若者の側からすると、ルートファインディングを登る前に行うっていうのが無理!って話なのだ。なんせジムでは、赤いホールドを見て追いかけてください、って話なんですよ? 岩を見て、ムーブを想起するとか、自分が登れるか?登れないか?すら、ただの生岩を見ただけでは、分からず、グレードによって、予め、教えてもらうしか無い。 

■ 日本のトップクライマーがたどる厳しい道

その時期を過ぎたか、あるいは、クライマー一世の親によってエリート教育を幼少から受けれた(クライミングは、非日常動作なので、幼い頃スタートするのが超有利です)クライマーは、第三の道の結果として

 落ちれないルートをオンサイトで落とす

結果になるので、現代の日本人若手クライマーは、世界に突出して、すごい技術の持ち主ばかりだ。海外に行けば、あっという間にトップクライマーです。

中島渉さんの動画みましたか? いやマジ大変そうでしたよね?

しかも、そこまで行くのに、

 A.幼少期から学ぶ、もしくは、

 B. クライミングに人生をかける、

もしくは、両方ということが基本。 

これでは、細い道すぎます。

■ 一般クライマーに同じことを求めるのは非現実的

問題は、これを、

 日本の現代クライマー全員に適用しよう、というのは、現実的に無理!

ってことです。

第一に、”落ちても死なない”というのが、オーソドックスなフリークライミングのお約束です。(もちろん、RとXの符号付きを除く) 

第二に、一般的なクライミンググレード(ムーブの能力)は、5.10代の人が25%で最多層です。

海外のアンケート調査が示していますが、そうでなくても、12登る人だって最初から12を登るはずがないです。誰もが5.10時代、5.11時代を過ごして、5.12になるのです。そこまで行く途中で死んでるって話なんです。

日本では、5.12は、登れて当然の中級グレードになってしまいましたが、それは、それくらい登れないと、日本の岩場では、ランナウトした10代が特に危険で、安全に登れないからです。岩場に行き始めると、誰でもそのことは分かるのにもかかわらず、トップロープだと馬鹿にされるので、結局、メンツに拘る人以外は、命と岩場では、誰が考えても、命のほうが大事なので、どんどん一般的な思考回路の人は、淘汰されることになるからです。けっか、メンツのほうが命より大事な人だけが残る。

他のクライマーから仲間とみなされるのに、人生と命をかけないといけないのでは、要求が高すぎます。

第三に、今人口が増えている一般市民クライマーは、 趣味の人たち、で、クライミングに人生を捧げている人、なんていません。もともと、肩こりにいいからボルダリング、始めました、みたいな人に命がけを求め、そうでなければクライマーじゃない!というのでは、求めるほうがが求めすぎなのは、日を見るより明らかでしょう。

そりゃ、命がけでクライミングしてきた往年のクライマーよりも、命をかけていない現代クライマーのほうが上手なのが、ムカつく、というのは、私にも理解できます。が、仕方ないでしょ。若くスタートしたほうがラクなんだから。

ウエアが高級なのがムカつく、とか言っても仕方ないです。

ということで、今の日本の岩場の現状は、

 普通の能力の人にとって、無理ゲー

になっています。

■ 歴史的経緯を知る恩恵

それは、小川山育ちのわたしでも同じで、たとえば、ジョコンダって、腐ったハーケンが一ピン目でしたよね(笑)。

しかし、そこで、一緒に登っている人たちからは、「このハーケンは、このルートの歴史を示すためにそこにあるのだ」と聞かされるわけです。

そこで、そーっと、手で抜けるハーケンを、フレークの割れ目に戻しました(笑)。

 

腐食で膨らんで、かなり年季の入ったハーケンでしたが、別の岩場では、それくらい腐ったハーケンでも、”まぁ、とりあえず何もないよりはマシかもしれん”と思いながら、スリングをかけておいたことがありました。(注:ドローは使わない、タイオフ)

ということで、わたしのような、師匠に恵まれた幸運な人ではない、一般的にジムでクライミングを教わって、インドアのリード講習に出て、インドアリードがアウトドアリードと同じだと思っている人は、腐ったハーケンを全信頼してしまいます。そこにそのまま置いてある理由が、歴史的経緯を示すため、だとはわからないからです。

年輩のクライマーは、腐ったハーケンを置きっぱなしにしている理由は、”残置を信用するなよ”と若いクライマーに教えるためだ、ということが、若いクライマーには、全く伝わっていないことがわかりません。 

彼らの時代は、クライミングというのは、”一流大学の若者” がやる活動で、そのへんの偏差値50みたいな人ではなかったからです。つまり、これくらい分かるはず、という基準が、高いのです。現代の一般の人は、もっと噛み砕いて説明してやらないと分からない人が主流です。それは同じ大学の後輩に対しても、です。全体にまんべんなく物事に対する理解力が下がっているのです。

ちなみに、私は天下の東工大(理系の東大)の院生を、蒼氷(名門山岳会)の先輩につけて、エリート教育をしてあげたことがありますが、蒼氷のエリートを付けても、その子は、一年後、だらりんビレイをしていました。人は教えられたように、ではなく、他の人がやっているように、やってしまう生き物なのです。蒼氷で教えられないんだから、誰だって教えられなくて当然です。東工大の知性でわからないんだから、それ以下の人は全部わからなくて当然です。

■ 山の世界も同じだった

山の世界でも同じで、百名山の山行脚が山登りだ!と思っている人は、山頂で「オタク、何個目?」とか聞いてしまいます。その人にとってはスタンプラリー競争が登山の全てで、他のスタイルがある、とは思いつくことができないからです。

聞かれた人は、”なんのことだろう…???”となってしまってしまいます。

本格的という形容詞がつく登山の方では、高所登山の人は、体力一点豪華主義で、読図もクライミングもてんでダメというか、登山技術として身につけなくてはいけない、とそもそも、思っていない。下手したら、雪崩の知識もないかもしれません。なんせ、チームに専門家がいて、その人が判断し、自分は登るだけだからです。

読図ができる沢屋さんたちは、今度はクライミングは下手くそなので、クライマーに異様に高い信頼を預けてしまい、中間支点がない崩落箇所でもクライマーならリードできる、と誤解していたりします。脆いところにいくらハーケンを打っても、打った岩ごと崩れ去るだけです。

ね?群盲像を評す、でしょう?

これら全部が、

 メタ認知

の不足から来ている、というのが私の見立てです。群盲像を評す、ということになっている。

みな、一つのクライミング、という世界の話をしているのに、相手が見ている世界が分からず、自分が見ている世界がすべてだ、と思ってしまうということです。

今回の小鹿野の騒動も同じではないでしょうかね?

というのは、平山さんはジムオーナーなので現代クライマーの現状を見知って知っていると思いますが、古いクライマーたちというのは、自分の仲間内の狭い範囲でしか、クライマーと接しないからです。 

この推測は、当然間違っている可能性もありますが、菊地さんや中根さん、あるいは、若手のガイドできちんとアルパインとフリーの両方が分かる人たちは、大体、自分たちと一般クライマーを区別して考えているのに、古いクライマーはそうでないような気がするからです。

■ 安全マージンは、個別です

現代の一般クライマーの安全マージンと 中島渉さんのような2世エリートクライマーが取れる安全マージンは、全く違います。

私は安全マージンが厚すぎると文句を言われたことがありますが、43歳でスタートした女性の安全マージンが厚いのは、理性的な合理的結論で、18才でスタートした男性と同じだったら、その人の知性を疑うべきです。

■ 典型的現代クライマー像

現代の一般クライマーは、最初の5年くらいは、5.11がインドアジムで登れるから、バットレス4尾根はオレ楽勝!と思うくらいのクライミングに対する低理解度です。

トラッドクライマーでも、最初の10年ほどは、カムの配置が悪いとロープが流れなくて登れなくなる、その程度のことが分からないくらいの低理解度です。

インドアリード出身だと、5.12が登れても、長ぬんで伸ばすとか知らないです。

これなど、昔のクライマーで5.12といえば、会を率いるエース級ということなので、そんな人が自分の首を絞めるクライミングをするなど想像すらできないでしょう。

さらにいえば、カムでとった中間支点による安全の確保は、身長によってちがう、 ということもわかりません。

遠いピンが身長の低い人にとっては、危険だ、ということが40年登っていても理解できないのは、セカンドを務める経験が、リーダークラスの人には、皆無だからです。盲点になっている。つまり、古いクライミング文化では、経験が限定的で、気がつくチャンスがなかった、ってことです。

今、挙げた事例は、山岳会で登っている重鎮と言われる人たちには、全く気がつくチャンスがないです。

こんな低い理解度で、今の若い人達は、クライミングしているんですよ?

■ オススメ 海外の登攀に行く

年輩のクライマーにとって、メタ認知をつける、オススメの一手が、海外へ行き、海外の外国人若手クライマーと登ること、です。

自分の会の若い人を引き連れて、登れるオレ、を見せつけるために海外に行っている場合ではありません。

海外の若者と登れば、日本の現代の若者や、山岳会の後輩に対する変な期待…オレが○○歳の頃は、これくらい登れたぞ…なんでお前が登れないの?がない、ので、

  へぇ~、今の若者はこんなふうなんだー

と中立的視点で納得できます。

たとえば、私はアメリカ海兵隊の若者を日向神につれていきましたが、初夢は登れないそうでした。海兵隊の人なんだから、勇気がないとか、体力がない、ということが問題になっているわけではないですよね?

■  開拓者としてほそぼそとやる

さて、どっちを向いても、やれやれ、という状況なのが日本のクライミング界ですが、そういう中にあって、ゆいつ安全なのが、開拓者として、山や人生を終わることです。

開拓者になれば、現在の開拓スタイルは、グランドアップではないので、ラッペルでぶら下がって、岩にご対面。…つまり、命はかけていない…のに、初登の栄誉は得られます。

ラッペルは、若い人にさせると危険ですが、熟練クライマーにとっては、全くリスクゼロです。

もちろん、開拓は、ブッシュの整理とか、苔落としとか大変ですし、ボルト代も負担がありますが(ちなみにやったことがあります)、年をとると時間もカネもあるので、問題は、そこではありません。

それを盾に開拓者への感謝を要求するのも変な話で、感謝されなきゃ、やらないっていうのなら、やらないで、岩場を次世代に残し、のんびり縁側でお茶でも飲んでいてくれてもいいわけです。

クライミングは、登る方も開拓も、あくまで、自分がしたいからやっていることでしょう。

問題は、国内では、大体、主要な岩場は、すでに開拓され尽くしていて、新たな岩場は、かなり僻地にある、ということです。

なので、フルタイムの仕事を持っていて、現役世代の忙しい人はやれない。しかし、リタイヤ後であれば、自由な時間は持て余すほどあるので、そういう時間が取れる。つまり、 

 世代間分業 

が成り立ちます。としたら、定年退職後は、チャンス到来、です。終了点だけ打ちましょう。あるいは、開拓許可だけ取りましょう。

時間の問題は、自分がその僻地に住み込んでしまえばいいとも言えます。実際、故・吉田さんが取ったのは、その戦略です。

決して行ってはならないのは、地権者の許可なしの開拓。負の遺産になります。 

お金があれば岩が付いている山ごと買い取るのがオススメ作戦です。

■ 僻地住み込み型開拓に、地域おこし協力隊制度を活用する

私が提案したいのは、これの若者バージョンです。

開拓ができるレベルに成長した、海外の適正グレードが理解出来、5.14のルートを5.15と間違って発表しないレベルのクライマー限定

ですが、当人が地域に住み込んで、開拓するとするならば、僻地にある岩場で、現代の基準に合わせたボルト強度と、グレード付与、そして、適正ボルトの岩場を作ることができます。

あるいは、そのような人を招く才覚がある人が地域おこし協力隊に就任する。たとえば、岐阜の岩場のように、です。小山田さんが開拓応援に行っていますよね。

平たく言えば、インドアジムでスタートした人が外岩デビューするにあたって、落ちれる岩場を作ることです。

もう変なメンツは捨てて、5.8で若者が落ちてもいいじゃないですか。5.8だからって何が何でもボルト2本じゃなくてもいいじゃないですか。たかだか、5.8のルートなんだから。

20mのルートだったら、適正ボルトは、グレードに関わらず、5~6本くらいでしょう。

なんせ、5.8とか、5.10代とか、今では雑魚みたいなグレードなんだから、大して貴重な課題でもないし、仮に、すごく面白い5.8なら(小川山の愛情物語とか、川上小唄みたいに)、「これは簡単だけど、上手になってからしか登れないよ」とトポに書いておけばいいことです。

つまり、どの5.8も同じ扱いにせず、課題によって、価値に差がある、という現実を認める、ということです。しょぼい5.8もあれば、素敵な5.8もあるのは、現実であり、仕方ないです。

開拓者にもいい開拓者とそうでない開拓者はいます。それはどこの世界でも同じです。

■ 現実逃避を辞めることが唯一の正解

こんなにインドアジムが増えて、ジム上がりのクライマーが量産されているのに、受け入れる側が古い価値観と古い現実認識のままでいるから、岩場では、重大事故になります。

かといって、現代クライマーの側に、おまえらもっと勉強しろ、と言ったところで、じっと座っているのすらできないような人(発達障害)が増えている現代なのですから、かなり無理な要求です。昔のように、優秀な人がクライミングに来ているわけではないのです。

岩場での死亡事故や重大事故を防ぐのは、すでに岩場でたんまり楽しんだ人に課された使命と思って諦めて、現実を受け入れるしかありません。

じゃないと、日本中アクセス問題で登れる場所がなくなります。自ら首を締めます。

岩場を公開しなければいい、という問題にしてしまおうというのは、それこそ、姑息です。

■ 自分の正義を押し付けない、相手の事情を推し量る

クライミングっていうのは、基本的に誰が何をしているか?でリスクの内容が変わります。

例えば、1例で、プリクリップをあげましょう。

同じところに立っても、背の低い人には、クリップできない位置に、ボルトがありますから、その人がプリクリップするのは、マイナスをゼロにする行為で、他の人と同じ安全を確保するだけのことです。プリクリップして、やっと平等。

おなじプリクリップでも、普通に手が届く人が、プリクリップしたら? それは、日和ってる。弱虫、チキンということでしょう。

プリクリップという一つの行為にしたって、どういう条件の元での行為か?その人の持っている身体条件からみて、その判断がどうなのか?を見ないと、

  勇気がある・なし

ですら、正確に把握できません。

事例2です。

普通に考えて、20歳の若い男性が40kgの荷物を担いでいても、たぶん全然きつくないです。しかし、60代の女性が20kgの歩荷で、山小屋に食料を運んでいたら、すごいですよね?40kgを70代男性に担がせたら、いくら元アルパイン出身でも、虐待です。

そういうのがまったくなく、

 全部ひとつのスケール=グレードで測るだけ、

という前提になっているのが、おかしいのです。

…というか、登っていたら、普通は、誰にとっての、どんな内容が本当に偉業なのか?ということは、分かるようになってくるものです。

 分かるようになってこない=真面目にクライミングに取り組んでいない

んじゃないの?と邪推してしまいそうです…

■ 自分のこと

私は、43歳でスタートして、アイスクライミングは良き師匠を得て中級者、岩は3年でインスボンセカンド、ラオスと台湾は一人で出かけ、日本人パートナーではない外国人と組んでマルチまで登っています。

私は山岳総合センターで雪上確保から教わったので、アルパインの人たちにも受け入れられ、故・吉田さんのビレイヤーをしていたので、フリークライミングの人たちにも好意的に受け止められ、そのお陰であり、これは、一般的ではない達成だとは思いますが、それを行うのに、

 5.10代のスキルしかいらない

ということに若い人は気がつくべき、勇気をもらうべき、と思います。 

■ ロープワーク講習会×海外

ムーブ習得より、大事なのは、リスク管理です。

ジムで5.12登れるより、先にロープワークを講習会への出席と独学で確実にするほうが、自由に外岩で登れる道は広がります。

海外で登る、という選択肢は、日本の外岩で登るにしても、ブレークスルーの道です。

日本の5.10台では、落ちれませんが、海外の6Aでは落ちても、ほとんどのケースで大丈夫です。もちろん、クライミングですから、100%安全ということはありませんが、ビレイヤーが悪いというリスクも加味して、ボルトがうたれた岩場もあります。(例:ラオス)

しかも、激安です。2週間8万円でお釣りがくるほどです。

親は孝行するもので、スネをかじる対象ではありません。同じことで山岳会というのは、貢献するために参加するもので、無料の登山学校代わりにするものではないです。

そんなチンケな手段にとらわれず、恐れず、海外に進みましょう。

ラオスでは一見の旅行者でも、講習を受けて登ることができます。そんなのを恐れてどうするんでしょう?

私が海外で一緒に登った方々、フランス、シンガポール、ドイツ、アメリカの人たちです
 

【参考】

当ブログのトップ人気記事です。現代九州クライミングの実情を知るのに、合わせてどうぞ。

https://allnevery.blogspot.com/2021/12/blog-post_16.html

2023/04/15

若者よ!目を覚ませ!!

■ 責任最小

このところ、アキレス腱の断裂で、再度、まとまった時間ができたので、資産整理をしていて、自分の投資ヒストリーを振り返り、色々と理解している。

弟が死んだ、26歳の春。熊本に飛んだが、すでに8年、弟を始め、家族とは会っていない期間があり、それは私が大人になるために非常に苦しんだ期間だった。蛹から蝶というくらいの大変革だったので、まぁ、私に再会した人は別人と思っていたと思う。

私は、”責任” が、そのまま形になって生まれて来たような人、と表現したらいいと思う。

6歳で、4歳の弟、2歳の妹の面倒を見る、というのが、”責任”として、姉の私に降り掛かっていたためなので、”責任”は、後天的な資質だが、”責任”の大小が景気循環の波のごとく、多いときはリセッション、少ないときは景気が良い、とそういう感じだ(笑)。

今は、責任が最小の時期にいるので、自分を振り返ることができる。

■ エースだった時代

さて、私は開発部にいたのだが、当時松下は、ロボット開発では、かなりの後発部隊で、真似下とやゆされるような状態だった。

それを返上しよう!と意気込んだのが私のいた開発部だった。さしずめ、私は、当時のエース扱いだった。実際、私は、男性一色の開発部に女性雇用の道を開いたと思う。

しかし、なんと松下さんはロボット開発事業から全面的に手を引いたんですよね。

まぁ、全社的な視点で見ると、不採算事業だったからなんだが。夏に事業部解散の噂が流れた。私が不安がると、直属の上司が耳打ちして、「たとえ、多少の解雇があったとしても、あなたが解雇されるのは、一番最後だからね、安心してね」ということだった。当時、個人事業主として独立したばかりで、私は、組んでいるプログラミングの師匠である前川さんに5%を払って、口座を通過させてもらっていた。

松下みたいな大企業は取引先を査定しており、誰でも仕事ができる訳では無い。私は4年の信用で、取引を始めた。が4年では口座が作れない。前川さんは15年松下とやっており、前川さんの口座を通過させてもらって、仕事の代金を受け取っていた。前川さんとは、お互いウィンウィンだった。なにしろ、プログラミング業界って力仕事で、若い私がコーディングできる簡単な部分が8割、核心の1、2割を経験値の高い前川さんがやったほうが、効率がいいからだ。私は5%払っていたが、5%だって800万の5%だから、40万円。何もしないで手にするお金としては悪くないだろう。

前川さんからすると、私みたいな若いのがあと4人いたら、いいなぁ、なんて言っていた。

ちなみに、私以外で、私の年齢でこんな職業形態になった26歳の男性なんて周囲には誰もいない。みんな、就職氷河期で、仕事自体が見つけられず、実家に帰ってプータローとかだ。

しかし、残念なことに松下は事業部解散。そして、解散のときは、「あなたは、雇ってくれるところがあるから…」という理由で、松下さんは、PCの前に座っても8割は寝ていることで有名な男性のほうの雇用を守ったのである(彼も非正規雇用だったが)。

その男性は、でも、ほんとに、松下が雇用してやらなければ、他に雇用先がないだろう・・・と思われた。彼は、突発的優秀性というか、非常に才能が偏っていて、他の誰もがしたくないコードのデバッグをしてもらったら、役立つという感じだったんだよな。その代わり、8割は寝ているんだけど(笑)。

クライマーで例えるなら、普通クライマーが大好きな、岩場のクライミングが全然ダメで、しかも、デブで歩けもせず、荷物をもたせたら、更に歩きが遅くなり、もう歩荷もダメで、クライミングもダメ、と、”なんで、お前 山やってんの?”みたいな人が、ラッセルさせたらモーレツなラッセル力を見せるみたいな、そんなかんじだ。特殊な単機能型ってことですね。

ま、要点は、パナソニックという会社は、本当に家庭的で良い会社だったってこと。それが裏目に出て日本の国力低下につながっているってこと。つまり、落ちこぼれから拾ってくれるのが日本社会ってわけですね。言葉は悪いが行くところがない人。日本の地方が今、そうなっている。

で、私は失業したわけだが、それは前川師匠も同じだった。それどころか、プロパーの人も同じで、全員バラバラの配属になった。ので、別に自尊心は傷ついていない。松下の正社員だった人でも、やっていた仕事がなくなり、全員が事業部解散の憂き目にあったのだ。

私は渡りに船で、ドイツの外資から歯科営業の仕事のヘッドハンティングをもらっていたので、困ったら、そこに行けばいいか、という感じだった。歯科タービンってモーターなんで、モーターの塊のロボット開発部の人からしたら、単純な仕組みだからだ。

当時、私より10歳くらい上の30代後半の若手エースに、MITに社費で留学した人がいたんだが…彼も、結局、転職した。上と意見が合わなかったようである。(MITはマサチューセッツ工科大学)

私自身もそうで、エンジニアとして仕事していたのに、松下さんが提供しようとした仕事は広報…なんのわたしの強みも活かせないではないか・・・というので、外資に行った。

この経験でわかったことは、会社っていうのは優秀な人から辞めていく、と言われるが、実際にそれが本当に起こっている、ということだった。

それは、情、というか、人間同士の温かい気持ちから起こっている。そりゃ、他に行くところがないんだから、誰だって彼に席を譲るだろう。譲られた本人は、それが譲られていることだとは、全く気がついていないと思うが。まぁ、”甘ちゃん”っていうのは、そんなものだ。 大事にしてもらって気が付かない人のことが、甘ちゃん、なのだから。

これでは、日本企業は弱体化していく。だいたい、ヘッドハンティングというのは、海外スタートの習慣なので、外資に抜かれることが多い。

しかも、外資のほうが待遇自体も良い。ので、どんどん、日本人で優秀な人は外資系企業に吸われて行ってしまう。

日本では、あらゆる組織が同じかもしれない。つまり、山に例えるなら、山岳会、ということだ。

実際、横山ジャンボさん、佐藤ユースケさん、花谷泰広さん、菊地さん、ヒロケンさん・・・とあらゆるクライミングの著名人を見ても、誰も、”山岳会”を背負っていない。

スポンサーも、アルテリアとか。(え?外資?)

名刺交換するときに、「○○社でございます」と昔の人は自己紹介する。しかし、私が、労働市場にいた時代から、できる人は、「エンジニアの○○です。△△をやっています」と自己紹介するものだった。当時で、すでに20年くらい前である。

日本では、メンバーシップ型から、ジョブ型に移行中だが、これを山の世界でいうと

山岳会から個人の時代

である。

残念なことは、労働市場で起こっていることと同じで、やはり、山岳会に残らない、あるいは、山岳会をお荷物だと感じる、付き合いきれない人は、どこに収束するか?というと、海外、なのである。

■ レガシー

日本の岩場では、古いクライマーが、”俺が初登者だ。俺の登ったとおりに登る以外は許さん”と言って、今では陳腐化した”俺のクライミングの歌”を理解されたがり、その根拠は、そのほうが、”後に続くクライマーのためになるから”、ではない。

俺が(あるいは、私が)、”理解されたい”、つまり、”共感されたい”からで、それってかなり、個人的な理由である。

つまり、要約すれば、それは、”視野が狭い”、と言われる状況だ。

現代では、子供も登り、女性も登る。つまり、公共の意味する内容は、広がった。

時代の流れは、理解したくないが、自分の事情は理解してもらいたい、というのでは、態度としても子供である、ということは否めない。

伝統という言葉は、そうした個人の甘えをカモフラージュする口実に使われているに過ぎない。

もちろん、自分以外のクライマーのことを考える年配の人もいる。米澤さんは自分のためにボルトを打っているのではなく、現代の(登りが下手な初心者が中心の)大学生山岳部のために打っていたので、クラックの横にボルト、になってしまっていたのである。

(ちなみに、入門レベルのクラックでは、それでもいいのかもしれないという現象がアメリカでも起きているようである。人気がありすぎるルートでは、まだトラッドクライマーとして、クラック慣れする前のクライマーが来てしまい、プロテクションをきちんと設置できないので、事故が増える。事故を起こしてしまうくらいなら、ボルトを打っておき、そこでクラックに慣れてもらうのも手、ということだろう。クラックルートなら、なんでもかんでも、打っていいという話とはちがうだろう。しかも、同じサイズのカムが10個必要なルートとか、一体、誰がそんなに同じサイズばかり持っているって話ってなるし)

結局、若手で優秀な人は、海外に押し出されざるをえない…。つまり、日本の岩場ではなく、海外の岩場で登る…ってことだ。

それは、結局のところ、日本に優秀な彼らを活かす受け皿がないため、というのがわたしの主張だ。

日本の岩場で頑張っている小山田さんですら、別に会は背負っていない。

例えば、山岳会で、”若い人が来ない”という嘆きはよく聞く。

しかし、若い人が活躍できる場がない山岳会には、その会で育った人ですら残らない

なら、その会に恩も何も無い人に、貢献を期待するのは、虫が良すぎる話だろう。(九州で何の好い目もみていない私に同郷のよしみで”見返り”を期待されてもねぇ…)

若い人の山岳会の側では、”もはや、伝統的に強いクライマーを輩出してきた山岳会の○○会ですら、アドバイザーとして、もはや機能できないのでは?”と思ったところで、代打が見つけられないので、くすぶっている、ということになっている。

若いだけに、誰に話を聞くべきか?という見極めすらできないでいる、というのが、実情だろう。

20年は長いようだが、短い。ゼロ歳だった子供は大人になる。20代だった人は40代になり、40代は社会を動かす主軸だ。しかし、40代だった人は、60代になり、60歳は個人差が大きい。70歳ともなれば、個人差は消え、もはや社会に何か価値を提供する活動をするという年齢ではない。林住期に入り、自分の人生を見つめ直す時期だ。

したがって、現在のアルパインクライミングを60代、70代がメインの構成員の山岳会…ほとんど中高年登山というジャンルのハイキングクラブと化している会に期待しても無駄だ。

では、誰に?

アルパインをしたいクライマーなら、アルパインを教えると題している講習会に自腹を切って出るしかない。

フリークライミングだったら、アルパインほど状況依存が少ないので、たぶん、ちゃんと菊地さんや北山さん、中根さん、海外のギュリッヒの本などを読めば、大抵のことはカバーできる。(外岩に登りたい人が、スポーツクライミングの本を読んでも仕方がないですよ? 別物なので)

そして、一通り外岩でフリーが登れるようになったら…私がやったように、海外に出ていくのがオススメである。

最初は、ラオスがいいと思う。もう山岳会の冬合宿も、ラオスにしてしまうのがいいのでは?と思うくらいだ。

なんせ、アルパインの基礎力はフリークライミングなのに、若い人が身につけそこねているのは、フリークライミング能力なのだから。そのフリークライミング能力の意味するところは、決してムーブではない

海外では、20代の若い男性が、5.8でパートナー募集をしている。ちょうど、初心者バンド仲間募集くらいのノリだ。おれギターやるから、誰かベースやらない?程度の話で、プロ級の腕前も要求されない。

これは、5.8で落ちても死なない、整備された岩場環境があるからで、日本の岩場では同じことはできない。

クライミングというスポーツの裾野は海外のほうが当然広い。5.8しか登れない初心者のクライマーも、もちろん絶対数として海外の方が多い。

日本の男性は、”ねぇ、お母さん、見て見て!”を卒業しないといけない。ジムで自信をつけて、外岩に来るのはいいんだが、それと同じことを外の岩でやって、「よくできました☆」と言われたがっている…というのは、見ていれば理解できるが、全く外岩は別物なので、頓珍漢な行為だ。そもそも、誰かに見てもらって感心されたいという気持ち自体を卒業しないといけない。

外の岩とボルダリングジムの壁は全く別物だ。外岩にはスタイルの問題がある。ただ登れた!だけでは、「よくできました☆」とはならないのだ。まぁ、初心者が完登したら、誰でも親心で言ってはくれるが、ボルダーのように登れさえしたら何でもあり、ではない。

そんなことも、10年登っていても分からないのが、現代のクライマーのあり方だ。それはどれだけ長く岩に接しても、主眼になっているのが、俺がかっこよく見えるかどうか、だからだ。最初の入り口としてはいいが、いい加減、目を覚ましましょう。現代クライミングって、V15って世界なんですよ?

しかし、そんなことすら、自分で理解できないようでは、誰もヘッドハンティング(師匠になりに)に来てくれない。

断っておくが、私に2名の師匠がいたのは、私が師匠を求めたからではない。あっちから来たのだ。

40代のおばさんクライマーが、一撃できるような課題を、粋がって登るような人には、要するに、”誰も付き合いたくない” のである。5.12が登れても、トポも用意してこない人も同じだ。

なんせ、ローワーダウンの練習せずに岩場に来てしまった、みたいな理由で、落ちて死なれても、後味が悪い思いをしたり、レスキュー出動するのは、同行者である。

岩場のローワーダウンで、「僕、降りれませーん」という人は現実に存在する。課題のランナウトで、課題に、”来るな!”と言われる以前の問題だ。登ったら降りないといけない、のは、誰でも考えたら分かることなのだから、降りる練習くらい、下界でやってから行かないといけないことくらい、猿でも分かる。

アメリカに要る頃、語学学校に留学した友達が、全然、喋れるようにならなかったので、愚痴っていた。「考えてみたら、語学学校にはアメリカ人はいなんですよね」なんて言っていた。が、そんなの、日本にいるときに考えたら、すぐ分かることでしょう… 

こんな調子で、日本の若い人は、伝統的に 思考停止 しているわけである。

従って、年配の人がもはや頼りにならないのは、”いい加減、目を覚ませ”って言うわけなので、良いことなのだ。

語学学校に行ってもアメリカ人はいないことが事前に分からない人が行くのが、山岳会、である。

登山の技術を教えてもらいたかったら、登山技術を持っている人が開いている講習会、に行かないとその技術は手に入らない。

そんなの、当然のことですよね。





2023/04/08

小川山トポ、お取り寄せ 石灰岩派と花崗岩派でいがみ合っている?

 ■ 新・小川山トポを取り寄せました

そこに簡単に小川山の歴史がかいつまんでありましたが… クライミング界って

 花崗岩派 vs 石灰岩派

でいがみ合っているんですかね?

■ どっかぶりでランナウトしたら、ただのバカです

幸いなことに、アイスクライミングの業界では、歩ける傾斜の2級も、ロープがいるかいらないかの境目の4級も、一般的に確実にロープが必要とされる5級も、どっかぶっていて現在のアイスクライミングの主流の6級も、みなひとつのアイスクライミング、なので、傾斜によるクライマー同士の仲違い、(例:遠藤さんvs平山さん ??)はありません。

前にアイスで組んでいた、かっちゃんはフリークライミングの出身なので、6級は上手でしたが、4級は腰が引けて登れず、アルパインアイス出身の私がリードしたほうが上手でした。

私は山出身なので、傾斜の見極めは、だいたいできます。これは○級の傾斜だなーとか、そういうのです。

大体、フリークライミング出身のクライマーって、ただ歩くだけの2級の歩きが下手くそですよね。登れても歩けない。すぐ疲れるとか。

前に、保科ガイドのアイス講習に行ったら、ヨロヨロ歩いているおじいさんがクライミングに来ていて、気の毒だったので、荷物もちましょうか、と言って歩荷してあげたら、そのおじいさん、氷爆についたら、スイスイと上手に登ってビックリ。垂直までのクライミングは、バランス感覚なので、体力、とくに荷物を担ぐ能力、っていらない。もちろん、オーバーハングになったら、上半身の力が活かせます。

あ、話がそれましたが、アイスでは存在しない、

 傾斜によるクライミングの安全確保の違いに端を発する諍い

が、ロッククライミングでは、存在するようです。

ロッククライミングでは、岩の質の違い=傾斜の違い、なので、

 ミニマムボルト

を巡って、

 クライミングエシックの諍い、

に、発展しているようです。傾斜が違えば、確保条件は違ってきて当然です。

それを互いに、同じ前提で話すから、互いに正しいことを言っているのに、相手が間違っていることになる

どっかぶりのオーバーハングでランナウトしたら、まぁ、大体の人は落ちたら、死にますよね。 傾斜が寝ているスラブで落ちても、大根おろしになるだけです。

全くリスクが違いますよね。

■ 古いクライマーは現代クライミングをイメージできないのでは?

昨今、オーバーハングでも、落ちる気配すらなく登れる最近の若いクライマーのレベル感を、古いクライマーは、そもそも目撃したことがないのでは?と思います。

なんせ、古いクライマーは、石灰岩のクライミングを知っている人が超少ないですよね?

なんせ、わたしと一緒に登っていた5.12RPレベルの人…山梨では普通の人…が、「お前は、すごく登れるな~」と自信をつけてしまうレベルなのです。

山梨時代は、自分の立ち位置の認識があっていたのに、九州に来たら、あっという間に自信たっぷりになってしまいました。 つまり、相対的地位が上がったってことだと思います。

しかし、九州のリードするクライマーって、ちゃんとしたレベル認識をできるような、高難度を登っている人は、ほとんどいません。山梨ではゴロゴロしていたのと大違いです。

なので、外岩クライミングを教えているベテランが目にするのは、5.8も登れないアウトドアブランドで店員やっているような若者や大学生で始めて、山岳部やってます、みたいな新人で、インドアジム上がりで外岩に来た人ですらありません。 (断っておきますが、インドアジム上がりの人が優れているという意味ではありません)

その意味では、こないだサチさんが、大ヤスリ岩のエイドルートをフリーで登っていましたけど、あれとか、ほんとにすごいですよね。

あと、倉上さんのマラ岩正面フェースとか。 

そういうのを、九州の山岳会の重鎮は見たことがないし、想像すらつかないんだと思います。

なんせ、最近の九州の山岳部の若者って、ローワーダウンでも、僕怖くてできませーんとか、5.7でも登れません、とか言っているレベルなんですよ?

そういう人をなんとかクライマーにしようとすると、クラックの横にボルトを打たざるを得ないですよね。

九州の、3~5級の”寝ている”ルートでランナウトして威張っている重鎮の人たちが分かっていないのは、

今どきのフリークライミングで、命知らず自慢になるのは、どのレベルか?って話 

なのだと思います。

その無理解をなんか変だな、とは思わず(というか、思えるだけの判断材料がなく)、九州の若い人は、そのまま受け入れてしまっているので、下の写真は私がリード中の日向神の課題ですが、このレベルで、めっちゃブイブイ言わせてしまいます(笑)。

ま、カワユイっちゃ、可愛いですよね…

これをオンサイトした頃、まだ私は九州の実情を知らなかったので、”これくらいは登らねば!”と思ってリードしていました… 当時は、まさか九州一円が40年前のカットアンカーの岩場である、とは知らなかったので。 

なので、たぶん、九州の人からは、やるね!と見ていたんでしょうね…別に怖がらなかったので。

※ 当然ですが1本目はプリクリップしました。私には届かないからです。

■ 小川山仕込みでよかった…

私はフリークライミングをスタートした初期から、小川山で登っているので、小川山仕込み、と思いますが… 

だから、九州での一本目の日向神のランナウトも別に登っていますし、比叡もリードしています。

結局、小川山で鍛えられていたから登れた、ということでしょう。

同じ課題、ヨセミテ仕込みの海軍アメリカ人は登れなかったし、九州では比叡は事故だらけのルートとして有名です。

事故があるだけではなく、ボルトが未だにカットアンカーで超・ボロい。40年経過している。

それを知らず、本州のクライマーは、名ルートとして、味わいに来ていますが、本州の人は小川山で鍛えられているので、問題にならない。落ちて死んでいるのは、地元のジム上がりの人です。 ジムではロープワークは教えないし、スラブが登れるようにもならないです。

カットアンカーについては、比叡だけでなく、超安心のフリークライミング課題と目されている長崎の岩場…野岳とか、龍頭泉やら、でも同じです。九州一円、ぜんぶ同じ。

長崎には長崎フリークライミング協会があるのに、ボルトのことはスルーしていたんですねぇ…。ということで、大分の本庄も同じかもしれませんね。あそこ、どっかぶりだから、余計シビアと思いますが。

というわけで、小川山仕込みであったことで、九州では命拾いしました。

いやぁ、拾った命、何に使って生きていこうかなぁ…

■ レベル低下が目撃したことだった

43歳でクライミングスタートした人が3年程度、真面目に修行した程度で登れるような内容のところを、今の若い人は、きちんとリードもできない。

さらに、今の山岳会の人は、いくらジムで登っているような意欲が高い新人さんが来たとしても、きちんと指導する能力がそもそもない、ってことです。

小川山でクライミングデビューして、ホント良かったです。

ジムだけで登っていたら、たぶん、殺されていたでしょう…。

これがリードできるぐらいでブイブイ言わせているなんて奴はダサい

 


2023/04/05

日本のクライミング状況を理解したら恐ろしくレガシーレベルだった

 やっぱり夜中に目が覚めてしまう… 現在夜中の2:40。足首が痛くて目が冷めた。

目が冷めたついでに、なんとなく気がついてしまったのだが…

もしかして、日本のクライマーって

アルパインクライミング → 昔のエイドクライミング時代のままのアルパインクライミング

フリークライミング → 昔のハードフリーのままのフリークライミング

なんじゃないのだろうか?

ピオレドール賞を受賞するようなクライミングの内容をきちんと追っかけていれば、現代のアルパインクライミングが、普通みんながクラッギングで、岩場でエライ時間かけて…例えば何日もかけてレッドポイントで登っている5.12を、全く時間をかけず、まるでかつての5.7か5.8みたいに、フリーソロでスイスイと登ってしまうのが、現代のアルパインクライミングなんだなーと分かるような気がするんだが…

たぶん、そういうふうに時間が何分かかったとか、一撃で5.12の箇所も突破したとか、記録には、書いていないので、昔のクライマーは、俺の時代感覚のまま、どうせエイドしているんだと思っているのかもしれない。 

そうでなければ、俺だって結婚して子供さえいなければ佐藤ユースケだったのに…と思ってたりしないよなぁ。

なんせ、古いクライマーの米澤さんは、トニー・コールドウェルが、ドーンウォールを登る姿を映画で見せても、なんと「初見じゃない」と言って、侮蔑の眼差しを送っていたんですよね。

でも、今、どこにも初見で、記録的に難しい場所なんて、地球上にはないです。もう登り尽くされて100年近くたっているんで。 

未知の場所が、もうなくなったから、困難を追求する時代になったんですよ。 

そんな歴史の流れを教えてやらないといけないのでは?と思えるような、米澤さんの反応だったんですよね…

米澤さんはご高齢とはいえ、一度は九州のトップライマーだった人です。

そのような人で、この解釈だから、結局、他の人は押して図るべしで、

  現代のトップレベルのクライミングの凄さ

が、全く咀嚼できていないので、世界のトップクライマーのトニーですら、

 なんだ、たいしたことないやつ

と思えてしまうのです。トニーと米澤さんだったら、勝負にならないほどトニーが登れるはずです。同じ年齢のときの能力で勝負したとしても。

でも、トニーのドーンウォールを見ても、そうとは思えないから、けっ!と思ってしまうわけなのでしょうから、そもそも、

 5.13以上の困難さ

をアルパインのクライマーは、感知することが不可能なのかもしれません。

5.13というのは、米澤さんの限界は、かつては5.12くらいにあったのではないか?とボルト間隔の観察から思えたからです。

■ 適正ボルト

大体、開拓者って、自分の限界グレードで適正ボルトになってきます(笑)。

つまり、適正なボルト間隔って、そのグレードがギリギリの人にしか、設定できないもの、みたいです。 

5.9しか登れない人が、ここにボルトが必要だ、といえば、それが適正なボルトでしょう。

日本の岩場の場合は、大体は、エイドルートの置き換えなので、適正ボルト間隔、というのは、永遠に絵に書いた餅でしょう。

エイドルートの置き換え=ランナウト 

なので。なんせ、エイドで登っているときは、落下率2のときのロープストレッチは考慮されずに、手が届く限り遠く、って論法でボルトが打たれているからです。

エイドでスタートした岩場ではなく、普通にフリークライミングでスタートした岩場で登るほうが、安全です。

岩登りとしては楽勝の阿弥陀北稜 5級はないと思うけど、落ちれない。これが外界にあれば、登る人は超少ないはずだ。


2023/04/02

アルパインクライミング=エイドクライミングだったダークな?過去

 ■ なるほどね~ なコメントをもらいました

古いクライマーから、なるほどなーてコメントをもらいました。

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若い頃は、がむしゃらに能力も無いのに高みを目指していた。
まだ、8環、トロールのシットハーネス、ハーネス、アブミの雰囲気が残っていて、谷川に通っていた。明神にマニフェストなどのハードフリールートを作った頃だな。

自分はアブミの掛け替えでそれらのルートに取り付いていた。

ーーーーーーーーーーー

心のなかで、わ!ハードフリー、出た!と思っちゃった。

「昔はフリークライミングのことをハードフリーって言ってたんだよ~」って、師匠もいっていましたっけ?

現代のフリークライミングと同じものなんだろうと思っていました。違いがわかりません。

 で、この方は、アブミの掛け替えで、そういうのに登っていたそうです。

そういえば、西湖の岩場で、会の先輩に、「エイドを教えてください」と言ったら、「日本のエイドでいいの?」とか言われたんですよね?

エイドクライミングに、日本のエイドとそれ以外のがあるということすら、普通、新人さんは知りません。本を読んで知っている世界です。

なので、本を読まない普通の人は、もっと知らず、クライミングの中に、エイドクライミングというものがあるということすら知らない。

今のアルパインルートでも、フリークライミングの基礎力がない人は、連れて行かないので、エイドって、エイドルートという特別なルートってことになっています。例えば、瑞垣の大ヤスリ岩とか。

 エイドルートこそ、中間支点依存なので、支点がボロかったら、死活問題なんじゃないですかね? まぁ、衝撃荷重こそ、かかりませんが。

■ 九州の現状

この会話で気がついたのですが、九州では、アルパインクライミング=エイドクライミングなのかもしれません。

というのは、OldButGoldは、フリークライミングのルートとして、OldだがGoldなルートという意味だと思いますが、その1つとしてでかけた矢筈岳のマスターズルーフ、1P目が5.9ということになっている実は、5.10cですが…若い男性がエイドで2時間半もかかって登ったんですよね…

私も落ちるよりは、別にフリーにこだわらずにエイド出していいと思うけど…最初からエイド前提。1ピッチ登るだけに2時間半って、初めて会った!くらい、めちゃ遅い登攀でした。

10cなんて、アルパインでは出て来ない、と言える難易度ではない…。

もちろん、私が行くような易しいルートには出てきませんけど、私が昇仙峡で登っていたアダモの上のクラックは、吉田さんには10Aと言われていたけど、後で5.13登れる人と行ったら、5.10cでした。ハンドジャム効くところ、2箇所しかなく、私の手のサイズではスカスカ。

それで、なかなか登れず、手間取っていたら、彼は不満そうで、その人からすると、えー、これくらい登ってよ、みたいなグレードらしかったです…それで10c。 

当時、5.9がやっとでーす、という下手くその私に対してすら、そんな要求度だったので、俺、5.12って言っている人が、エイド、しかも、二時間半ってのも驚いた。それで、許されるんだ~みたいな驚きです。

山梨で一緒に登ってくれた5.13クライマーだったら、もう二度と付き合ってくれないレベルかも知れません。その人、カムエイドなら簡単だよーと言いながら、登ったんですよね。

カムを引っ張りながら登るにせよ、ボルトにアブミをかけるにせよ、エイドで登ったら、エイドでしかなく、なんというか、日々、フリーを練習しているのは何のため?的な感じがどうしてもしてしまうので、現代クライマーにとっては、残念感というか、そういうものがあります。

昔の人は、その残念感がないんですかね? そういえば、矢筈のその若い人もなかったよなぁ…と気が付きました。 だから、記録には、達成感と楽しさしか書いてありません。

あれを読んだら、普通の人は、普通にフリーで登れたんだろうと思ってしまうよなぁ…。

というのは、現代のアルパインクライミングって、一応前提がオールフリーだからです。フリーじゃなくなったときは、断っておく。

そのことが古いクライマーには認知されていないので、どんな高難度なアルパインルートをフリークライミングというスタイルで成功しても、その成功の価値が認知されないのかもしれません。つまり、みんなエイド時代の頭なので。 

現代のトップクラスの、アルパインクライミングって、しつこいようですが、スーパー赤蜘蛛フリーソロレベルなんですよ?

現代のフリークライミングの基礎力をベースにしたアルパインクライミングは、ニューアルピニズム、とでも名前をつけて、別のもの、と区別したほうがいいのでは?

■ リーダーが墜落して恥ずかしいと思っていない

だから、山岳会を率いるリーダーレベルの人が、

「残置に足をかけて、ルートを探ったら、その残置が崩壊して落ちて大怪我しました」

と恥ずかしさを感じずに言ってしまえるのかもしれません。

このときは、ほんとにびっくりして、え?!と思いました。

  山の中の残置を信頼してはだめだ、

というのは、本当に、アルパインの初日に、言われるようなことだからです。

立ち木で支点を取るときも、木の太さやら根張やら、吟味しますし、アルパインって一応、高い山って意味なので、一番の基本は、雪にあるっていうか… 私も初めて教わったのは雪上確保で、スノーバーとか、スノーボラートの作り方からでした。その後、立ち木だったり、灌木を束ねて強度を出すメザシだったり、でした。

実際、ルートに出るようになると、初心者は、易しいルートからなので、三つ峠でもすでに支点があったりはするのですが、それはあくまで、落ちないためではなく、マルチの手順を覚えるため、みたいな感じでした。猫の頭みたいな、でっかい巨大な鉄製支点を指して、

「こんなん信用したらあかんで!!」

と師匠は叫んでいました。どうせ使わない支点でも、です。

それでも、しょぼいオンボロ支点しかエイドに使えないときように、細めのケブラーでタイオフする裏ワザとか、ナッツでタイオフする方法とか、絶対使いたくないような技を、念のため、教わっておくのが、そういう初期のころでした。今でも持っています。

どれもこれも、フリークライミング、と言えるグレード感の登攀がまだできないから、仕方ない場合はこうしなさい、みたいな、しぶしぶというか、やむを得ない場合の手段という感じでした。

ので、私はそんな危ない話なら、さっさとそんな危険な橋を渡るのは辞めて、フリークライミングの能力をあげるほうが楽しい上に安全だな、と私は、エイドを教わった初日に思ったんですよね。

■ もし、矢筈岳のあの登攀が成功した登攀と数えられるなら…

私の、おっかなびっくり登った、2度目の小川山レイバックとか、ほとんど全部カムエイドだった三倉の入門クラックとか、みんな、成功した登攀になっちゃいますね… 

私の感覚によれば、カムにテンションしただけで挫折感、みたいな感じですが…。

たぶん、城ケ崎では普通の感性だと思うんだけどなぁ… 

どうも、九州では、エイドを失敗とみなさないみたいなんですよね…

たぶん、そのために、

 支点がボロい=受け入れる=未だに制動確保(流して止める)

を受け入れて、”ビレイは流す” を基本にしている上、スポーツクライミングの影響で

 クライマーは、平気でポロポロ落ちる

という最悪の条件が重なっているような気がします。

それじゃ事故は減らないし、別にランナウトしていなくても、グランドフォールになります。

現代のクライミングでは、制動確保は終わって20年くらいたっているし、外岩では、人口壁のようにポロポロ落ちてはいけない、少なくとも3ピン取るまでは落ちない、というのが常識です。

エイドによる残置利用を当然と考える前提じゃなかったら、会を率いるような立場の人が

 ”山のルートで残置利用して落ちた”、

なんて、普通は恥ずかしくて誰にもいえません。

フリークライミングの領域ですら、ラクを掴んで落ちたのですら、誰にも同情してもらえないものですよ…。

なんせアルパインのルートでは、岩は叩きながら、ゆるくないか確認しながら登るものですから。フリーだって、開拓直後の岩場など、そうします。

それに、前述のように、今どきだと、アルパインのルートでも一流クライマーは、みんなフリーで登っています。リードする人がフリー(ということはオンサイト)なのは、当然のようなのですが、フォローも、チーム全員がフリーで抜けることで、その登攀の価値が高まるようですよね。

そういう価値観でしか、アルパインのルートも見ていなかったので、エイドでしか登れなかったことが

 達成感になる & 自慢の種になる

っていう世界が全く初めてでした。九州では今でもそうなのではないでしょうかね?

 

初心者の頃のアブミの練習



2023/03/17

小鹿野のニュース

■ロクスノに載ったらしい

こんな投稿が回ってきたので引用の上、当方の意見を述べます。 

追加情報: https://www.taru-shiru.com/noboruahou/archives/futago1.html

ーーーーーーーーーーー以下、引用ーーーーーーーーーーーーー赤字当方

二子山及び小鹿野クライミング協会について新しいロクスノに各自の意見が載っていますが購入していないので内容を知らないです。でも自分なりに書いてみました。


サバージュ・ババージュの補強したことについて
 

「ホールドとして使用できなくするために埋めた」というショッキングな情報が一部で話題になっていますが、これは間違いです。「使っていたホールドが埋められて登れなくなった」としてください。(3/16追記:補強時に主体的なホールドとしての認識はしていませんでした。しかしその後該当個所を使用して登った人がいた事を知りました)なお該当する人がいればぜひ私まで直接連絡をください。話を聞かせてください。よろしくお願いします。
 

経緯:昨年春に再登した時にクイックドローのカラビナがちょうど当たる位置で岩が欠けているのを見つけました。そしてこの欠けた先が大きなコルネにつながっており、将来的に岩が大きく剥がれる可能性があると認識しました。そして昨年の二段壁整備の時に委員会に処置を依頼しました。
 

リボルトでも補強でも何かしらの現状に関わる行為がありますが、様々なケースがあり手を加えない場合が良いと考えることももあるし、手を加えてた方が良いと考えることもあります。例えばホールドだけど落石となる恐れがある場合など大きく撤去することもあると私は考えます。今回については補強した方が良いという考えに至っています。
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グレードについて
個人的には今更興味がなくてどうでもいいです。
グレードはクライミングを面白くしている大きな部分でもあるけど、でも真逆にクライミングが嫌になる原因の一つでもあるわけで、あまり深く考えない方がいいのかな...
グレード感より難しかったりやさしかったりというのはそのルートのスパイスでそれはそれで結構楽しめます。
 

そもそも昔の似たような身長の成人男性しかいなかった時と違って、今は女性も子供いる状況でグレードを細かく付けるのは無理な気がする。
 

ただ自分の基準をグレードに頼っている人は辛いだろうなと思います。クライミングという行為そのものに楽しさを見つけるといいんじゃないかな。クライミングは冒険が原点にあるので、自分なりに小さな冒険でも大きな冒険でも見つけるともっと楽しくなると思います。
だいぶ話がそれた。グレードはそんな問題じゃないのだけど、まあでも表記に関わらずグレード感を喧々諤々統一していけばよいんだと思います。つける基準についてはオンサイトではなくてより楽なムーブで登れた時のグレードで付けた方が良いです。
 

そのグレードが限界の人が感じるグレードではなく、より高グレードが登れる人が感じるグレードにした方良いです。結果としてそのグレードが登れるはずの人が登れない課題があることになります。この部分は反対する人が多いと思うけど、それがクライミングの本質的なところに関わっていると思います。
(但し、競技クライミングとしては別)
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小鹿野クライミング協会について
 

関わっている人たちは、みんな二子山という岩場をより良くしていきたいと積極的に活動している人たちです。自分達が優遇されるとか他者を排除したいと思ってる人はいないです。
今回、活動の一部が問題視され、問題だと思ってる人からすると悪者とか敵みたいなイメージで対立してしまっている印象がありますが、これはとても残念なことです。
 

より良いクライミングをし後世に受け継いでいくんだという心が各自にあれば、お互いを尊重し議論し建設的に話もできると思います。
あと疑問に思ったことや意見などあれば積極的に委員会メンバーないし委員会へ連絡した方が良いと思います。
さらにもっと積極的に関わりたいという人は委員会の活動へ参加していけばよいと思います。
小鹿野クライミング協会は将来的にもっと活動を大きくしたいと考えています。そのためには沢山の人の協力や意見が必要です。
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自分が設定したルートについて


城ケ崎のエアダンス、二子山のジョナサンと穴のムジナ、小川山の子忍者が誰かによってリボルトされています。そしてリボルト時に私へは一切の連絡はありませんでした。
連絡は簡単にできたはずですが...
 

結果として
エアダンス:1本目のボルトが高い位置に変更されプリクリップが前提ルートとなる!勘違いしている人がほとんどですが初登時にはもちろんプリクリップはしていません。
ジョナサン: 終了点の位置がオリジナルから左へ1m以上変更されています、結果的にラインが変わっています。
穴のムジナ: 1本目のボルトがおいしいよと共有になる
 

ラインやボルト位置の確認はもちろん「リボルトするけど任せてね」的な連絡、事後連絡は一切ありませんでした。現在の状態については納得できていません。
 

小鹿野クライミング協会による昨年の二段壁整備については数か月前から連絡がありババージュ・サバージュ、ふりかえるな(*)のリボルトについて位置やラインについて細かく協議してから施工がおこなわれています。
*正→ふりかえるな、誤→振り返るな
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おまけで
 

今のクライミング界をみていて思うこと
 

今のクライマーは想像もできないと思うけど...
自分を含め1960年台半ば生まれは大体1980年台半ばからクライミングを始めていて当時第2世代(フリークライミングの)と呼ばれていました。そしてちょうど自分たちが20歳前後の時にヨセミテを主体とするアメリカスタイルからフランスやドイツのハングドックスタイルに世の中が変わっていきます。つまりスポートクライミングの第1世代ということです。
 

何が言いたいかというと当時クライマーは若者しかいなかったということです。ほとんど10代後半から20代前半で年長者でもせいぜい30代前半です。
 

そんな中、城ケ崎シーサイドや小川山、そして二子山が開拓されていきました。導いてくれる年配者はいません。全て自分たちの想像や考えを元に行動してきました。もちろん傲慢だった部分も沢山あり御前岩の登攀禁止など失敗もあります。


そんなわけで若い世代に日本の未来を考えて主体的に行動をすることを願いします。じゃないと年配者が考えた年配者のための世界になってしまいます。年配者に遠慮する必要はありません。自分の未来は自分がつくるのです。

ーーーーーーーーーー引用終わりーーーーーーーーーーーーーー 

■ 開拓者に断りもなく、リボルトされている上、ルートが改悪されているってびっくりですね!

ルートが改悪されているっていうのがびっくりですね!

開拓者には、きちんとした人もいれば、そうでない人もいる、というのが、最近私が九州で学んだことです。

屋久島フリーウェイを開拓した米澤さんは、とても立派な開拓者だったと私は思っていますが、彼のルートは、激辛というか、ピンをつける論理がフリーの論理、つまり、”ガバで一本”にはなっておらず、”ガバ=ピン飛ばし”、になっています。ピンというのは、中間支点という意味です。それはなぜか?

70代後半の米澤さんの生きた世代を考えると、上記の第1世代より前の世代です。ですから、その前の時代の人の制約として、フリークライミングにはそこまで詳しくない、他のフリークライマーとセッションして登ったりした世代ではない、と思います。

たぶん、私が知る人の中では、故・吉田和正さんが第一世代になるのかなと思いますが…(もともとはアルパインのクライマーが開拓していたところにフリークライミングを持ち込んだ人たち)

吉田さんはフリークライミングのショートのルートで不適切に1ピン目が遠いということが、”そうあるべき”とは考えていなかったです。まったく。

日本中、1ピン目が遠い課題だらけですが、それは、フリークライミング以前のクライマー、古いアルパインのクライマーの価値観なのではないでしょうかね?未だにエイドで初登がかっこいい時代の価値観のままなので…。昔はエイドで登られたルートも、今では完全フリー、が普通の時代なのに。

■ ロクスノ

それにしても、ロクスノ… もう雑誌の編集能力を失っているんではないでしょうかね??

それで、なんでもいいから、楽に文章を手に入れようとしていないかな??

例えば、故・吉田和正さんの残したデイドリームを小峰っちが登った時、記事は見開き半ページで終わりで、デイドリームをきっかけに吉田さんの業績を紹介することができたはずでしたが、そういうものは全くありませんでした。ちょちょっとネット検索すれば、吉田和正の記録くらい出てくるし、まとめたものを、年配のクライマーに、ちょちょっとチェックしてもらえば、間違いは拾えます。もう、そういうことをする余力もないのかも?

だから、同じ号で、ボルダーのチョーク特集14ページでした…チョークってエイドですよね?つまり、 フリークライミングの、道具を使うべきでないという理念からは、必要悪、程度の扱いなのがチョークです。私は汁手ではないので、チョーク使わない派です。ニーズを感じたことがないです、まだ。エイドに頼って登る、のでは、エイドクライミング時代に逆戻り、ですよ?

この時の違和感は、”ロクスノ、もしかして、何も分かっていないのではないか?”というものでした。

その違和感が、確信に変わったのは、二口渓谷のアイス、6級の第二登が2行で、雌鉾大滝が4ページだったときです…というのは、私はこのクライマーたちを知っていたので…。

方や、ワールドカップの出場者(二口)、方や5.12登れると言って、5.9もとい10cで、支点ビレイされているとも気がつくことすらできず、二時間半かかって登った人…(つまり、下手っぴってこと。私はこのクライミングでおったまげてしまったのです。いつももっと上手な人と登っていたので) 

どっちの人が本来、スポットライトを浴びるべき人なのか、実際会って、見て知っていました…。私はアイスは初級を脱し中級者の域まで抜け出ましたので、アイスなら正確な評価ができます。

こちらに古いアイスクライミングの写真がありますが、古い山ほんの記録っぽく記録を書けば、おじいさんクライマーには受けが良いですが…古川純一さんが、黄蓮谷アイスを登った時代はこんなクライミングですよ?

あー、アックステンションしちゃってる…。

しかし、現代はふつーの人がこれの時代…ふつーの人っていうのは、私みたいな人って意味です。

 

私が進みたいのは当然ですが、現代風のアイスです。私のアックスは、当然ですが、ストレートシャフトではありません(笑)。テクニカルアイス用です。アックステンションなんて、初心者の頃教わって一度か、2度緊急事態用に覚えただけです。テンションレス、つまりクリーンで登れないなら、初心者時代から挫折感を感じていたくらいです。

古川さんの時代にやっていたことを、現代の技術でやれば、そりゃ超・楽勝になります。

現代の技術になったのですら、もうとっくに20年以上は過ぎており、アイスは5級は誰でも登れるとアイスの教本にすら書いてあります。特に上半身が強い男性なら、ムーブがゼロでもリードできます。アイスはアックスバチ効きにしていれば、リスク限りなく小さくなるので。だからこそ、アックステンション、が軽蔑される、ということになります。

氷、そのものが壊れるリスク、っていうことであれば、壊れそうなアイスに登る=愚か者、って意味なんですよ? 

れっきとしたアルパインクライマーこそ、きちんと勝算があるリスク以外は、取らないです。いきがって敗退ロープなしとかやらないです。きちんと根拠がある。

現代は、初登頂に意味がある訳では無い…。今更、近所の5.9を初登してロクスノに発表します?しないでしょ? 

例えば、これは、ヒマラヤでも同じことです。シェルパに工作してもらった初登頂が意味ある記録か?というと、初登頂という意味では、意味はないです。近所の丘に登って初登頂というのが意味がないのと同じです。意味があるとすれば、そのルートとの関わりの長い歴史とか、長い憧れとかそういうものです。であれば、誰がどういう経緯でそこを見つけ、どういう縁でシェルパの助けを借りることとなり、どういうメンバーがどういう理由で集まり、とそういう言う事を語らなければ、その登頂の意味を正確に知ることはできないのに、未だに、マスコミはクライミングを理解していないので、エベレスト初登頂時と同じ価値観で切った記事しか出していません。つまり、マスコミがバカ、なのです。

これはNHKでも同じです。前に師匠と一緒に見てわかりました。NHKでも嘘ばっかりです。

同じことがロクスノで起こっているようで、これでは、分かっている人は誰も見なくなって当然ですね。

ロクスノは、トポ発表サイトとしての機能すら、昨今では怪しいものです。高最難のルートを初登した場合は、第二登が出ないと、そのルートのグレードは確定しません。ので、海外のクライミングサイトに発表するのが良いと思いますよ?でないと、自分が5.15と思っているだけで、実は5.14だったら恥ずかしいでしょう…

巷を見ると、そもそも雑誌というメディア自体が時代の波の中に葬りさられようとしています。

時代はYouTubeに移動して久しく、Youtubeですら、終わりを迎えつつある現代。

いつまで、日本の古いクライマーは、陳腐化してしまった価値観に固執するのでしょうか?

■ トップクライマーはわかっている

そういえば、三澤さんは、比叡のランナウトしたボルトのことを、”今はそういう時代ではないと思っている”、とおっしゃっていました。もともと国家官僚だったくらいの知性の人ですから、それくらいは分かる訳ですよね…。ただ、整備が全然、進まないのは、昔の栄光にこだわる仲間への義理立てがあるから、のように思われました。

ので、現代クライマーの能力を持ってすれば、ランナウトなんてしても、全く問題なく登れるわけですから(なんたって、43歳からフリーを始めて3年しか経っていないわたしがリードできたくらいなんで)、別に若い人は、比叡のようなスラブは楽勝になってから登ったり、スルーしていればいいのではないでしょうかね?インスボンのほうが楽しいと思いますよ。

私は菊地(ガメラ)さんの講習にも出ていましたから、ガメラさんから見れば、私の登攀力がどのようなものか?見てわかっていると思いますが… エー、あの人にリードさせたの?!というような、現代のクライミングジム上がりのクライマーたちと比べれば、外岩でしか登っていない私のフリークライミング能力が非常に低いレベルであることは分かっているはずです。当時で、10cが2,3便でRPでき(例:ジャーマンスープレックス)、5.9はグレードに嘘がない限り、大体オンサイトできる(ガマスラブ)、というレベルでした。

その当時、初めて組む人にリードを無理強いされたのですが、今思うと、私の意味からは、”あんまり登攀力がないです”と自己申告しているつもりの、5.10cというレベルが、”私って登れる女よ、どんどん任せてね”という高度な登攀力、という方に、古いアルパインクライマーに誤解されたのではないか?と最近、気が付きました。昔の基準では、5.9が登れるだけですごいクライマーだったそうです…(汗)。5.9って最低限って意味です、今では。

九州の情弱レベルは強烈で、情報が40年前のままで、たぶん、登攀力の判定基準も昔のまま、だからです。

開拓者でもない、普通のクライマーの私が、”ボルトなら、FIXE社よね”とグーグル検索し、どの型番を購入したら良いか?を問い合わせする時代に、ホームセンターで、より安いカットアンカーを探して回っているくらい情報が古い、ということです。

しかし、その人達が自身が撒いた種であるのです。情弱は。インターネットってここ30年で、これ以上ないくらい、使い勝手は簡単になったので。私は14歳からパソコン使っています。Google先生を使い始めたのは、28のときですから、22年も前です。

というので、まとめると、その情弱のつけを払っているのは、誰か?というと、儒教の教えか、男尊女卑の習慣なのか知りませんが、年配の人は正しいことを知っている(はず)と、ダブルチェックもしないで、盲目的に受け入れてしまっている若い人たちの方です。

普通は、25kNの強度があるグージョンで登っている時代に、5~15kNしかないカットアンカーで、”わ~、ペツルだー”と落ちて安心、と思っているのでは、自己責任力、が足りていません。

同じことが、”終了点では、ロープ直がけしてもいい”とか、”ATCで保持するときはグリップビレイ方式”とか、にもいえます。そんなの、ペツルの技術サイトを見れば、間違った行為だということくらい、すぐ分かります。年配の人がそう教えるのは、ネットを知らず、ペツルの技術サイトを検索する能力がないからです。若い人はダブルチェックするべきです。

九州では、リスペクト、を男子が得るには、命がけをしない限り得られない、という暗黙の前提も強く働いています。

しかし、例えば、『九州の岳人たち』を読めば、阿蘇でどれだけ沢山の人が、クライマーといえる能力を身につける前に落ちて死んでいるか?もわかります。先人の事故から学ぶ、というのは、昔から、トップクライマーがやっているリスク回避の方法です。雨宮さんも、事故事例を読み込んで、自分が同じ轍を踏むのを避けたそうです。

クライマーなら、肝っ玉ではなく、本来のクライミングの能力で、栄誉を得ましょう。

さらにいえば、別にクライマーとしての栄誉が得られなくても、現代は、一般クライマーであるだけで、昔の先鋭クライマーと同じことが楽勝で楽しめる時代なんですよ? まるで自己承認欲求の塊のような行動のほうが、むしろ、恥ずかしいことのような気がしますよね。

私自身も、アルパインに行くときは、”ルート名” ”事故” で検索して、その場所で起きている事故を理解してからいきます。小川山の屋根岩2峰程度だって、すっぽ抜け事故で死んでいる人がいるんですよ?フリークライミングのルートとして整備された場所でも、懸垂では失敗が許されません。懸垂下降の失敗は、クライマーの責任以外は、支点崩壊くらいしかないです。

長々となりましたが、最後に言いたいのは、

相互にリスペクト、という点です。相互に、というのは、一方的の、反対語です。当然ですが。

こちらが、年配の人を尊重していても、尊重のお返しがないのが九州での経験です。男性も同じで、お返し無しで、ありがとーと受け取っておしまいです。

■ 見て盗むもの、言葉ではなく行動から学ぶもの

現代の若い人は、自信がない人が多く、若さゆえか、自分で考える力がない人が多いようです。

私のところに来る人も、私が支障についていたことを勝手に誤解して、まるで手とり足取りの、師弟関係を期待して、私が何もかも言語化してくれることを期待する人が多いです。

私は、3人師匠がいましたが、どの方も、こうしてこうしてね、と教えたことは一度もありません。

師匠からは見て盗むものです。

見て盗むとは?

例えば、二人目の師匠の青木さんは、私と組む前に、レスキューの復習を公園でみっちりやりました。これを私がどう学ぶか?というと、”ははーん、初めて組む人とは、レスキューを先にやれってことだな…”という感じです。

そうすれば、相手がどの程度セカンドとして信頼できるか?を見極められ、自分がどの程度ロープをこなせるか、相手に見せることができ、知識も共有され、思い違いが減ります。

私はある経緯があって、これをしなかったため、白亜スラブでは、えっと驚く登攀をする羽目になりました。リードをきちんとできる能力がない人のセカンドになってしまうと、セカンドでも命がけです。

師匠の行動どおりにしていれば防げた事故でした。楽勝で登れるところで、ロープ合わせをするべき、ということです。ロープ合わせというのは、レスキューのすり合わせだったり、ロープ自体への能力や理解を見る行動です。別に試験ではないので、落とすためにしなくても良く、相手が分かっていないなら、分かっていないことがわかっているのが大事です。

これまで見たダメクライマーはだいたい、みな、自分が分かっていないことが分かっていないです。指摘すると、俺はあなたが思うより分かっている!と反発します。そういう人は反省力が足りていないので、永遠に分かっていないクライマーのままです。

昨今は、トップロープクリーンで登って、オンサイト!と言っているクライマーが自信を持っている時代です。

トップはこれくらいのことはわかっているだろうという前提で、一緒に山に行くと、知識の間違い、ロープワークの間違いが継続したまま、行く山の困難度だけが上がって行くというロシアンルーレット状態にいます。

現代のクライマーは、行くルートの困難度だけで、中身を問われずに実力誇示できる(グレード主義に染まっている)ので、どんなにしょぼい内容でも、行けた、行った、という結果だけを申告してきます。 

いくら、高度なルートに行っていても、内容がショボければ、すごいのではなく、知性が低いだけです。下手したら、落ちたルートでも、武勇伝になっているから要注意です。

見分けるポイントは、謙虚さですが、これも、見せかけの謙虚さ、というのもあります。

分かっていない人は分かっていないこと自体が分かっていないので。行ったルート名ではその人の能力は、想定できません。その人の行動を見ましょう。きちんとしたクライマーは組む前に、住所氏名、緊急連絡先、事故時の対応、そして上記のようなレスキューの共有くらいはするものです。

2023/02/23

指導目標の設定

 これは個人差があって当然のものです。私の場合を書きます。

クライミング以前 … 山の生活技術の習得、天気の学習、経験値の獲得 

クライミング0~1年目 … ビレイの習得(=人工壁通い)+ 体験クライミング、基本ムーブの習得

クライミング1~3年目 … 経験値の獲得 初心者用の岩場、インスボン、台湾、ラオス

クライミング3~5年目 … 国内岩場めぐり  (主に九州の岩場)

クライミング5年目以降 … 小川山など、国内岩場 …海外には初心者向けのボルトの新しい岩場があるが、国内では限られてしまいます。リボルトで、ボルトが新しくてもランナウトしていてはリスクは減りません。

■ ロープワークの習得、基本ムーブの習得、経験値の獲得

私はロープワークは講習会で学習した後に、友人レベル、山岳会レベルで行く山に参加しています。ので、お金を払わずに、教わったことはありません。

たぶん、ほとんどの人は、ここをただで済ませたいがために、経験者と登れ、と言われていると勘違いしているようなのですが、お金を払ってクライミングガイドと登っても、

 エイトノットはね…

とか起こらないです。そこに深い誤解が横たわっている。

例えば、アンザイレンのノットは自分で選択するものです。エイトノットがコンペでは義務付けられていますが、ブーリンの人もいますし、ボーラインを勧めて来る人もいます。(解きやすいため) しかし、選ぶのは本人です。私は、薦められたとしても、エイトノット。ベテランぶる必要がない、どころか、むしろ、エイトノットでいるほうが安全の管理に良いと考えるためです。

目標をグレードにするしかなくなるのは、クライミングの総合性を理解しそこねているからかもしれません。

10年登っていても、カムの配置が悪いとロープが流れなくなることを学習できていなければ、ちょっと視野が狭窄していたということが言えます。そんなことはまずいと常識でわかるどころか、実際にロープがでなくて登れなくなるので、初歩的な失敗であるからです。あんまりリードはしてなかったのかもしれませんが、原因はともかく、常に自分のクライミングの欠点を反省する姿勢がクライミングには必要で、天狗になる、というのが最も避けるべき事態です。

ムーブを習得したかどうか?というのは、素人である初心者クライマーが見てもわからないです。経験値が高い人に判定してもらいましょう。ムーブがダメでも、パワーがあり、確実性があれば、リードはできます。男性はこの路線が多いです。リードできるからムーブが習得できている訳では無いということです。

人をだんだん老いるので、パワー依存のスキル習得はだんだん通用しなくなりますので、子供や女性、高齢者のように、ムーブ習得中心のクライミング活動に入るのも、手です。男性でもこの路線の人はいます。ジムでよく長ものを飽きずにやっていたりするような人です。

一方、パッと見に同じスキル追求型でも、突破力系のボルダーの人は、力を発散したい、オールアウトしたい、という真の欲求の現れのような気がします。

どちらでも別に良いと思いますが、自分の欲求が、すべての人と同じである、と誤解しないことが大事です。オールアウトが誰にでも気持ち良いわけでなく、そうすることで、リスクが増える人もいます。(例:迷ったらハードプッシュ)

言うまでもないですが、目標は随時バージョンアップします。

しばらく前は、ワイドとクラックを頑張っていました。

現在は私の目標は、基礎体力回復です。そのためにテニスをしています。

2023/02/21

クライミングの指導者向け教本 目次(案)

 これはテニスの指導者教本からの全面応用です。これだー!!と思ったので。

 ーーーーーーー

第一章 テニスの特性と歴史

1)テニスの特性

 1.競技としての特性

 2.生涯スポーツとしての特性

 3.商業スポーツとしての特性

 4.施設・用具の特性

2)歴史と現状

第二章 テニスと指導者

1)指導者の現状

2)指導の必要性と指導上の課題

3)指導者に必要な知識と能力

 1.指導者に必要な知識

 2.指導者に必要な能力

第三章 テニスの科学

1)テニスのバイオメカニクス

2 )運動生理学

3)栄養学


第四章 テニスの技術

1)技術と技能特性

2)技術構造とその仕組み

 1.技術構造

 2.技術の仕組み

3)グリップ

4)ボディコントロールとボールコントロール

5)基礎技術

6)応用技術

第五章 テニスの指導法

1)指導の基本課題

 1.個人特性とテニス指導法

 2.動機付け

 3.指導対象に応じた指導計画と指導内容

2)技術指導法と指導内容 

 1.技術指導の基本的な考え方

 2.技術レベル別の到達目標と段階的指導法

 3.示唆による指導

 4.送球技術

 5.技術指導の留意点

 6.技術の矯正法

3)ゲームの指導(初心者)

1.簡易ゲームからゲームへの導入

2.シングルス

3.ダブルス

4)テニスの指導実践例

1.レッスン指導の進め方

2.ジュニア

3.マスター

4.シニア

第六章 トレーニング法

1)ウォームアップとクールダウン

2)体力トレーニング法

3)技術トレーニング法

4)メンタルトレーニング法

第七章 テニスの指導での健康管理と安全対策

1)テニス指導における安全対策

1.メディカルチェック

2.テニス選手の健康管理

3.障害防止の安全対策と指導

2)テニスコートでの応急処置

1.救急救命

2.一般外傷(RICE)

3.出血している傷

4.代表的な傷病とその救急処置

3)テニス選手に多いスポーツ障害とその予防

4)テニス選手に必要なコンディショニング

5)テニス選手に必要なテーピング

第八章 テニス指導と運営

1)施設・用具に対する知識と管理

2)テニススクールの計画と運営・管理

3)テニス協議会の計画と運営・管理

4)テニスクラブの運営と管理

 1.地域スポーツとしてのクラブ

 2.学校運動部としてのクラブ

 3.商業スポーツとしてのクラブ

第九章 テニスのルールと審判法

1)ルールの解説

 1.テニスのルールとは?

 2.テニスの規則の解説

2)テニスのマナー

 1.プレーヤーとしてのマナー

 2.観戦者としてのマナー

3)審判法

 1.審判技術の基本

 2.審判方法の変遷

 3.試合方法による審判法の違い

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■ クライミング版

赤のところが、特にクライミングで、”明示的に”、語られそこなっていると、私が思う点です。

明示的である、というのは現代では重要で、現代の若い人は、昔のような選び抜かれたエリートではなく、普通の市民です。

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第一章 クライミングの特性と歴史

1)クライミングの特性

 1.競技としての特性 → スポーツクライミングとフリークライミングは異なるクライミングです。

 2.生涯スポーツとしての特性 → コンペクライミングと生涯スポーツとしてのクライミングは異なるクライミングです。コンペの攻めの姿勢・・・グレード至上主義・・・を、外岩で行うことが通常である一般市民クライミングで行う必要はありません。


 3.商業スポーツとしての特性 → 商業ジム、ボルダリングジムやリードジムでは、基本的に管理者がおり、課題に対するグレーディング、安全性(マット等)が管理されています。外岩は管理者がいません。

 4.施設・用具の特性 → 

人工壁では、墜落時の衝撃係数が0.3になるように逆算されたボルト距離になっています。したがって墜落のリスクは、最小化されており、ほとんどありません。

外岩では、ボルトはいったん設置されたのち、管理者不在のまま40年以上が経過しています。またボルトの距離も、墜落を前提とした配置にはなっていないことがあります。(ランナウト)。またボルトそのものの強度や品質も、過去と現代では大違いですが、その反映は実際岩場には、なされていません。

このことは世界的に問題になっており、古い岩場は人気を集めない理由になっています。結果として、日本では、特定の人だけが岩場を独占する特権的地位を守る結果になる、主たる要因になっており、そのことはご都合主義によって指摘されていないかもしれません。

結果、市民クライミングを普及させたい商業ベースのクライマーと旧体制の間で、既得権争いの様相を呈しています。

2)歴史と現状

第二章 クライミングと指導者
 

1)指導者の現状 → 高齢化で指導体力は全くなくなっています。日本にはクライミングの指導者を育成する公的機関がなく、クライミングのインストラクター教育の内容は、努力している個人の努力に任せられ、第三者が吟味したもの、基準を満たしたもの、というよりは、慣習的なもの、身内主義的なもの、という原始的な内容にとどまっています。

2)指導の必要性と指導上の課題 → 今日、クライミングは、一般市民に受け入れられ、クライミング人口はウナギ登りですが、指導者が不足しているため、市場ニーズに答え切れていない。

そのため、インドアジムで登れるだけで、そのまま外岩で登れるという素朴な前提で、外岩に行ってしまい、重大事故を起こすことになっています(例:腰椎損傷)

3)指導者に必要な知識と能力 
 

 1.指導者に必要な知識  → 指導者に必要な知識は、ロープによる安全確保技術+登ることそのものを意味するムーブであるが、一般的なクライミング(クラッギング)で必要になる前者の技術を伝える場がなく、どのような内容が伝えられていないか?が精査されていないため、善意のインストラクターがいたとしても、伝え漏れが存在する。

特に伝達漏れがあるのは、

 トップロープが必ずしも最も安全なクライミングではないケースがあること、 ロープの屈曲、カムの習得方法、ザイル通過(ノットの確保器の通過)、ダブル、シングルロープの使い分け、本チャンでのロープの選び方、個人の体格によるロープの選択、人工壁ビレイと外岩ビレイの差、後ろに走る確保、など

です。


 2.指導者に必要な能力 → 指導者に必要な能力は、かつてはリーダー性があると判断された個人が、山岳会等において、リーダー教育を受けるということで成立しており、口伝のような曖昧なものだった一方で、現代では、クライミングジムのスタッフ(最低時給程度で雇われている人)に役目が期待されており、まったく、責任と対価が、噛みあっていない。

”一般にクライミングジムオーナーはクライマー出身である”という前提も崩れ、純粋にビジネスの勝算による営業ジムが増えたため、指導者に必要な能力を欠く人材による指導しか、クライミングジム出身のクライマーは得ることができない。山岳会出身のクライマーも同様。

そもそもどのような能力が指導者に必要なのか?が精査されていないため、そのような指導者の下で育ったクライマーは、さらに間違った技術を伝播してしまう(例:終了点ロープ直がけ、ATCなのにグリップビレイ、リードクライマーに支点ビレイ)結果になっている。

もとより、アルバイト等に過ぎないスタッフに指導力を期待する事自体も筋違いである。

一方、伝統的に指導者とされてきた山岳会も高齢化で、機能はしていない。 

クライミングガイドも指導内容が統一化されていないので、漫然とトップロープを貼ってやるだけ、という結果に陥っている。

第三章 クライミングの科学
 

1)クライミングのバイオメカニクス → 内藤さんらによるクライミング教本等で、すでに詳述されている。


2 )運動生理学 すでに詳述されている

3)栄養学   『アスリートのための分子栄養学』が最適。海外のヴィーガンクライマーには鉄分不足の懸念をする必要がない。小麦粉に鉄と葉酸が法的に強制添加されているため。日本で菜食によるアスリートの能力向上を行うのは時期尚早。


第四章 クライミングの技術

1)技術と技能特性

→ クライミングの技術が何なのか?自体が伝達されそこなっている。

一般クライマーは、ムーブのことをクライミング技術だと誤認識し、登攀グレードが上=上級という誤解が通じてしまっているが、上級グレードとされる5.13が登れる者であっても、ヨセミテ等の初級とされる5.8のスラブで落ち、重大事故になる。これは岩の傾斜ごとに必要なクライミング能力が違うためであるが、その認識自体が欠けてしまう業界の構造にある。クライミングジムでは、一般にオーバーハングを登る能力以外は身につかない。ジムで登れる技術を身につけても、スラブを登る能力はつかない。

したがって、この盲点は、業界の仕組みからくるものであり、個人に過失責任を求めても、事故は減らないであろう。

2)技術構造とその仕組み

 1.技術構造 → ロープによる安全確保技術 + ムーブ = クライミング技術

 2.技術の仕組み → 経験値による習得が大きい。経験値による習得が主体だということは、個人の能力・理解力による、習得・理解の度合いの差が大きいということである。

どんなに経験年数が長くても、意識的に学ばない人は一生学ばない。事例としては、10年クラックを登っていても、カムの配置が悪くロープをスタックさせることがリードクライマーが行き詰まる、登れなくなる要因でありうるとはわからない。あるいは、最初の1~3ピン目のカム配置が、身長の差によって違い、安全性の差が出るということが40年登っていてもわからない。ビレイの体重差も同様。

これは、想像力という資質の差であり、個人によるこの能力差を埋めるような、明示的教育をしなければ、どれだけ経験値、という時間をその個人に与えようとも、解決はされない。

3)ムーブ → ムーブは 内藤さんらが詳しく書き記している

4)ボディコントロールとロープコントロール

→ ロープによる安全コントロール能力が付く前に、外岩に出るという失敗が多い。末端が届いていない懸垂下降、すっぽ抜けするロープ長のショートでの登攀など、だ。ザイル通過については無知な人が多い。二本のロープの連結についても無知な人が多い。

セルフビレイの重要性については、全く知られていない。伸びないスリングにセルフを取った場合の墜落による衝撃が大きいことも、メインロープによるセルフの重要性も、知られていない。

自己の肉体が耐えうる衝撃の量についても学習が不十分であり、12~13kN(120kg~130kgの衝撃)ですら、人体が壊れるには十分なのだ、という知識が共有されていない。


5)基礎技術 

→ 何が基礎技術なのか?という合意形成がされていない。危急時講習で習うロープワークは基礎技術にすぎない。


6)応用技術

→ 何が応用技術なのか?という合意形成がされていない。レスキューが相当する。
 

第五章 クライミングの指導法  → 全般に全く議論されていない


1)指導の基本課題

 1.個人特性とクライミング指導法

背の高いクライマーと低いクライマーではリーチに差があり、そのまま核心前にクリップできるできない、のリスクに置き換えられる。おそらくメタボであるか、ないか、も同じ意味があり、指にかかる体重は、個人差が大きいが、指が出せる力には、個人差が少ない。結果、背の低い人、太った人は、著しく不利になる。その他、子供、シニア、女性などが、身体面で不利を抱えない一般成人男性と同じ、画一的基準で教えられると、無理をきたす=事故につながる、と思われる。

 2.動機付け

内的動機と外的動機。

 3.指導対象に応じた指導計画と指導内容

成長期への指導計画が、老年期のクライマーと同じであるはずがない。

2)技術指導法と指導内容 

 1.技術指導の基本的な考え方

ムーブの習得に先に目を向けさせ、フィジカルによる我慢のクライミングは後回しにするほうが、一般に予後が良い。フィジカルが高すぎる人は一般にムーブの習得が遅いので、疲れてから、登るほうが良い習得結果を生むことがある。


 2.技術レベル別の到達目標と段階的指導法 → 全く議論されていない。事故につながっている。山には順番がある、と言われる内容と思われる。これの標準化がなされれば、事故が減るだろう。


 3.示唆による指導 → なされていない。一般にメンタリングがない。

 4.ビレイ技術 → ビレイが技術であるという認識がそもそもされていないので、早急に技術であるという認識の確率が必要。ビレイも段級制を採用するといいのかもしれない。ビレイ一級、ビレイ二級、みたいに。

 5.技術指導の留意点 → 議論がない。スポーツクライミング出身の人は、外岩で落石があるところにザックを置いたり、逆にアルパイン出身の人は人工壁で怖がったりと誤解が多く蔓延している。ラッペル時代に突入したフリークライミングで、未だにグランドアップと言い続けるなどの時代錯誤も多い。

 6.技術の矯正法 → 議論がない。ボルダームーブの人がリードに進むと、デッドやランジばかりで、危険でリードさせられない。

3)本ちゃんの指導(初心者)
 1.易しい本ちゃん(ゲレンデ)から、本格的な本ちゃんへの導入 → 代表的な到達基準となるルートをアルパインやフリーでも示すべき。エイハブ船長=一級、みたいな感じで、多くの人が目標として、登れる基準。 各地方ごとに必要。そうでないと東京近郊以外の人は不利になる。

2.指導者の後について登る → 大体の山岳会の様子。通常、5年、20~30山行程は、あれやこれやを学ぶ修行時代とされている。この段階から上に行けない人や、指導者不足でこの段階をすっ飛ばして、理解が乏しいまま、3.に進む人が多い。

3.同レベルのクライマーと登る → 同人と言われる会の様子。指導者について登る山を十分消化しないで、この段階に行ってしまい、事故って死ぬ人が多い。(例:宝剣での滑落。涸沢岳西尾根での滑落死。白亜スラブ。)

 

4)クライミングの指導実践例 → 週2半年人工壁でビレイ習得、などの期間的な基準を示す。何も目安がないと、確保器を購入しただけで、落ちたクライマーをキャッチした経験もないのに、「ビレイできます」というクライマーが大半を占める。何ができたらビレイができるという意味なのか、共有がされていないため。

1.指導の進め方  → クライマーの個別性を認識する。高校山岳部、大学山岳部と同じ内容で、社会人クライマーが育つわけがない。資質が違いすぎる。社会人の場合、山の体力強度を下げる必要がある。社会人の場合、自分には、行けないレベルがあることを受け入れる必要がある。(例、女性の厳冬期北ア。7日間雪洞泊に耐えれるか?)


2.ジュニア  → のりしろを取り切る、早くから海外登攀を経験させる、など。できるだけ広い視野を持たせるような内容が良い。

3.マスター → 自律的にチャレンジする。自分のオリジナルの目標を見つける。ワイドの帝王、ヒマラヤの未踏峰、南極横断、などなど。既存の枠にとらわれないクリエイティブなクライミングに注力すべし。 

4.シニア  → 老いる体と折り合いをつける。記録より充実感。成熟にふさわしいクライミングを行うべきで、ランナウト自慢などはそれには当たらないだろう。一般に温暖地でのクライミングが好まれる。

5.女性  → 女性の有利な特性、不利な特性を知る。RPでの瞬間風速的な記録を求めるメインストリームにはない、強みの発掘。(例:指の細さを活かしたシンクラックのリン・ヒル)女性ならではの持久力を生かしたクライミングの記録、など。女性だけの沢、登攀、アイス、アルパインロック、などのクライミングでは、男性の基準とは違う基準を打ち立てることができるはず。

第六章 トレーニング法  → 個人の特性別 年齢×性別

1)ウォームアップとクールダウン

2)体力トレーニング法

3)技術トレーニング法

4)メンタルトレーニング法

第七章 クライミングの指導での健康管理と安全対策

1)クライミング指導における安全対策

1.メディカルチェック → そもそもクライミングに必要な体力があるのか?指が変形=必要な強度がなかった事例。その場合、変形を受け入れる必要がある。

2.クライマーの健康管理 → アスリートとしての自覚に基づくべき。

3.障害防止の安全対策と指導 → 岩場までの運転直後×初めての岩場で、フル装備で岩場に出ない、空荷で偵察を行う (目視による危険認知を先に行う)

2)クライミングでの応急処置 → 日赤救急救命の義務付け 

1.救急救命  クライマーならジムクライマー以外は、全員受けていて当然

2.一般外傷(RICE) 同上 

3.出血している傷  止血法を学ぶ

4.代表的な傷病とその救急処置

3)クライミング選手に多いスポーツ障害とその予防

4)クライミング選手に必要なコンディショニング

5)クライミング選手に必要なテーピング

第八章 クライミング指導と運営 → 上級クライマーによって語られるべき。

1)施設・用具に対する知識と管理

2)クライミングスクールの計画と運営・管理

3)クライミング協議会の計画と運営・管理

4)クライミングクラブの運営と管理

 1.地域スポーツとしてのクラブ 

助け合い、相互扶助を旨とするので、単独で行くよりも安全にならない場合は、なんらかのボトルネックがある。(例:3人凍傷者を出した阿弥陀北稜。地図を持ってこない高齢登山者。あるいは、必要な体力の共有認識がない、など。)

 2.学校運動部としてのクラブ

ここで基本的技術を学ぶべきだが、指導者が専門家でないという一般的欠点がある。専門のクライミングガイドや登山ガイドに引率をアウトソースするべきだ。(那須岳の雪崩遭難)

 3.商業スポーツとしてのクラブ

一般の山岳会ではなく、ガイド講習の講習性が自主的に講習上がりの人で作った会などは比較的技術がしっかりしている。ガイド講習はここを目指すべきで、卒業生のアルムナイ的な会が良い。事故が少ない。入会基準を、ガイド講習卒業生に絞るなど、レベル低下への対策も立てやすい。

第九章 クライミングのルールと審判法

1)ルールの解説
 

 1.クライミングのルールとは? → フリー、スポーツ、アルパイン、ボルダー、ドライ、アイス、など、種別によるルールの違い オンサイト、レッドポイント、ビデオトポによる視認、など多様化するクライミング形態の解説をすべき。


 2.クライミングの規則の解説 →それぞれの解説。レッドポイントだけでなく、ヘッドポイント、グリーンポイント、ピンクポイント。ワンプッシュ、ワンデイ、継続(パチンコ)など。


2)クライミングのマナー  

→ 全く欠けている。モラル不在で、終了点の窃盗、ラッセル泥棒、ルート泥棒、ロープのタダ乗り、ドレイヤーが、まかり通っている。公開された岩場でのノーマット問題。 駐車、うんこ問題。山火事問題。棲み分け問題。環境保護。

 1.プレーヤーとしてのマナー 

終了点を盗まない、終了点を独占しない。ドレイヤー扱いしない。人のロープでリードしてはいけない。人のギアを無心してはいけない。けが人を保護する。リードを無理強いしない。危険なことは危険であると指摘する。


 2.観戦者としてのマナー → そのような現場を見つけたら、注意喚起する。公開されたボルダリングの岩場でノーマットで登る、などの迷惑行為を見過ごさない。

 3)審判法  → 全く語られていない。そのため、称賛に値しない記録が記録として持ち上げられる結果になっている。 例:ラッセル泥棒で行った中山尾根。40年前の基準によるアイスクライミング記録。


 1.審判技術の基本  → 上級クライマーによって語られるべき。
 2.審判方法の変遷  
→ 上級クライマーによって語られるべき。
 3.クライミング種別による審判法の違い  → 上級クライマーによって語られるべき。

全体に何が価値あるクライミングなのか?が語られていないため、世論の形成もされず、価値のない内容でも発表してしまったもん勝ち、あるいは、単なるグレード競争に陥り、リスクから身を守るための防御力が欠如したまま、クライミング山行を重ねる結果につながっている。

過去の記録の表現車と比べて、現代クライマーのボキャ貧にもつながっている。
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