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2023/07/20

【ボルト位置】ボルト位置に知性が表される

■ ボルト位置に、開拓者の知性が現れる

ベテランの人に、いまだに気になっている九州の課題について聞きました。

というのは、ボルトの位置って、開拓した人がサボっているのではなくて、開拓者本人もアップアップでどこに打ってよいのか、わからなかったため、悪いのかもしれない。つまり、本人も悪気がないのかもしれないと思ったからです。

というのは、私自身もクリッピングするゆとりがないときに、クリップを飛ばすことがあるからです。

あとは、ラオスでクリップが近すぎて忘れたことがありました。日本の遠いクリップに慣れていたからですね(笑)。あれ、もうクリップだったの、みたいな?

というわけで、ボルト位置は、ゆとりがありすぎてランナウトするというのではなく、クライミングが難しすぎてボルトを打つゆとりがない、というのも考えられますよね。

ボルト位置などは、後世の人に悪いことをする気がなくても、やっちゃうってことは、人間なら誰しにもありますよね。まぁ、そういう場合は、間違いを指摘されたら、あ、ごめん、と言うと思いますが。

で聞いてみたら、

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ボルト位置というのは設定者の知性が現れます。

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ということでした。

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おかしなルートを作ると、あいつは馬鹿だと思われます。あいつのルートは危険だから登らないとなるでしょう。

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■ ドイツ式 vs フランス式

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ドイツ式 : 試登せずにいきなりラッペルしてボルトを打つ。

ステファン・クロバッツが小川山「Ninja(5.14a)を開拓したのがこれです。1メートル以上のスリングを掛けないと登れないルートになりました。トップロープでの試登はしません。

フランス式 : フランス式というのはトップロープで試登し、それからボルトを打ち、トップロープでトライを繰り返し、レッドポイントします。

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■ Ninjyaは悪い見本

…ということは、Ninjyaは悪い見本を提供していますね。JFAのリボルトの経緯を読んだ記憶がありますが、もうかなり苦戦してリボルトしたみたいでした。

…ということは、Ninjyaをあがめているというのは、悪い見本をあがめているということになり、日本人の西洋人コンプレックスの現れ、なのだろうか?

現代の若者が登攀力だけでボルト位置の悪いルートを克服している事例https://allnevery.blogspot.com/2022/10/ninjya514a.html

今あるボルト位置が絶対だとなると、克服する側の能力は異様に高くならざるを得ない、っていう事例かもしれません。

発達障害気味のお母さんを持つと、子供は異様に”できる子”になってしまう…みたいな(笑)?

ちなみに、故・吉田和正さんは、フランス式でした。私は、一本、吉田さんと一緒に開拓中のルートがありました。正確に言えば、私に初登させようと、吉田さんが選んだルートがありました。それで、吉田さんがフランス式と言うのが分かります。

■ 現代では、ボルト位置は、慎重に設定するべき

カムで登ったり、ハーケンで登ったりして、セカンドが回収するのなら、プロテクションの位置は、その時、たまたま気に入った箇所でもいいと思います。

現代の開拓では、初登する人には、かなり大きな権利が与えられています。

その最初のボルト配置は、未来永劫、そのまんま、という権利です。

しかし、その最初の配置が、

 テキトー

で、

 熟慮を全く含まないもの

であったとしたらどうでしょう?

たとえるなら、

 落書きにモナ・リザ(傑作)と同じ著作権を設定

してしまうようなものです。

いやピカソは落書きでも立派でないか?と言う声がありそうですが、ピカソの模写、みたことありますか?ものすごい精密画です。それだけ高度な能力を有してから、らくがきみたいに力を抜いているので、らくがきでもパーフェクトバランスってことになります。

一方、ただの落書き、に陥っているらしいのが、ラッペルしただけで試登せず、いきなりボルトを打っただけのルート

九州で有名なのでは、八面のカプチーノがそうでないかなと思います。なんか疑問が残るボルトの位置でした。このベテランによると有笠山南国エリアの白と黒5.11bもそうだそうです。

■ ハングの扱いが変なのでは?

九州では、ハングの乗越がある場合に、ボルトの位置が微妙だなー、これ、いまいちだなーと思うことが多かったです。

というのは、その位置では、岩の上でヌンチャクが寝てしまい、空中にゲートが垂れていない、と言う事例が多く、ロープをかけると、岩にロープが当たってしまいます。

もしくは、凹にボルトが打ってあるので、岩の下で長ぬんがいることになって、あまりプロテクションとしては機能しない、と言うことになる。

    事例:アッポロ11号。これじゃロープが流れないのは当然。長ぬんがいります。

たぶん想像するに、こういうのは、そもそも、アルパインロック(リッジ登攀)の凹凸があるルートを十分登りこんでいないで、岩場に来た人がボルトを打つと、こうなるのではないだろうか?

易しいルートで学ぶべきことをすっ飛ばして、開拓しているってことです。

■ ハングがある場合のボルト位置

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傾斜が垂直の部分から、例えば50センチのルーフを越えるとします。

ルーフの下にボルトを打っと、通常のヌンチャクではロープの流れが悪くなります。(日向神ではこれが多い。上記のアッポロ11号参照)

さらにルーフにエッジがあれば、墜落したらロープに損傷が起きるでしょう。(ロープがエッジにこすれると切れます)

それらを考慮すると、ルーフの上で、カラビナがルーフに当たらない位置がいいです。

しかし、安定した態勢でヌンチャクを掛けられない、しかもランナウトするなら、墜落しても危険でない位置にボルトがあるべきです。そのボルトがルーフ上のボルトと近くてもいいでしょう。

この様なルーフ上のボルトが遠いルートでは、クリップ側のゲートが開けたままにできる、スティッククリップが有効です。

岩の傾斜、オーバーハング、ただの前傾か、ルーフかで、この辺は変わります。

つまり、ロープがドラッグしない、クリップに危険がないのが前提です。

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きちんと安全が確保されていない、あまり知性が感じられないボルト配置のフリークライミングのルートでは、

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無意味なプレッシャーが入ります。

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とのことで、私が感じていた、”精神的プレッシャー”は、これではないか?と思います。

”無意味な”プレッシャー=ボルト位置悪いよ = 不必要に危険、ということ。

■ プレッシャーにはもともとめちゃ強いほう

…というのは、私は、自分を強くする、良いプレッシャーっていうのは、どちらかと言うと歓迎で、山でも、リスクには立ち向かうタイプだったからです。じゃないと、一人で海外へ行って働いてきたり、卒業課題を一人でこなそうと、阿弥陀北稜に行ったりしますかね?

ロープが出す・出さないの判断がありますが、こりゃいらねーだろ、みたいなところで、でも精神的に怖い人もいるんだし、勇気がないのを責めるのは、かわいそうだから出してあげようねーってタイプではありません。それは、今時の若い男子のほうです。

私が判定しているな、ってところは、ここで落ちたら一巻の終わりという、確実にリスクが見えているところです。

ので、岩場でも、別に怖がりではないんですよね。高いところが怖いってないし。

いつだったか、ボルダラーでリードに進みたいとかいう人を岩場に連れて行きましたが、アプローチで、フィックスロープが出ているところでも、怖がって降りてこれない始末でした。ボルダラーは歩けない。


無意味なプレッシャーの事例: これは最初の見た目から、初心者向きでないルート。凹の中にボルトがあると、屈曲が大きくなる。ルーフの上のボルトは、スティッククリップしないと、リーチが短い人には、安定した位置からは、ロープがかけられない。かけられないで落ちると、どうなるか?下の突起した部分に激突です。これはクライムダウンで降りました。

■ 精神的な苦悩

私はかなり我慢強いほうなので、数々の、ん?んん?ってできことでも、相当に我慢を重ねたと思います。

しかし、登る人としての基本的な安全管理の認知能力が働いてしまうと、どっちかというと自分が悪いってよりは、ルートの質がどうなんだろう?と思ってしまうんですよね…

これは、他責 ということではなくて、

 客観的なジャッジメント

のような気がします。


2022/06/10

婉曲な表現では、最近の人は学力低下で受け取れない人が多数です…

 ■ クライミング界も努力はしている 

けれど、”婉曲な表現” や ”角が立たない表現” を選ぶと、結局、受け取る側が、それをポジティブに受け取るので、全く効果がない という結果に陥っているのだ、と思います。

例: 〇〇会で死に一番近い男 → 真意:あなたはリスク認知がおろそかですよ!

                 本人:死に近い男?!うれしい!褒められてる!

例: チャレンジャー → 真意: こんなところにリングボルト打つ奴、アホちゃう?

             本人:チャレンジャー?!うれしい!褒められている!

■ 以下ネットより 引用・・・

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チャレンジャー

いま開拓中の岩もそうですが、古くから登られている岩場に行くと必ず「ハーケン」や「リングボルト」を見かけます。

その中にはとんでもない場所に打たれているものもあります。

写真は岩が周囲からセパレートされ、凸型になった部分に打たれたリングボルトです。
この岩の周囲には隙間がありますので、「人工登攀用支点」とはいえどれだけの負荷に耐えられるか不明です。
私は建設エンジニアですので、このような強度が不確かな部分にボルトを打つことは絶対ありません。
でもこの上下にもリングボルトは打たれていましたので、設置主はこの支点を使って登っていたことは確かです。

この方は強度の分別を心得た観察眼の鋭いクライマーか、強度など全く意に介さず必要な間隔でボルトを打っていくチャレンジャーのどちらかだと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー太字当方

■ クライマーは究極にポジティブシンキング

防衛的悲観主義が発達しているとクライミングで死なないで済みますが…、それは備えを怠らないという意味です。

一方、クライミングにおけるポジティブシンキングは、どちらかというと、ご都合主義、自分が手抜きをしていても、まぁ許される方に働き勝ちかもしれません…

強度など全く意に介さずに… という言葉が、たぶん、どちらかというと、良いほうに聞こえるのではないか?と思います。

これは基本的なコミュニケーション能力の問題かもしれません。

言いにくいことを伝えるときに、遠回しに”チャレンジャー”とするのは、大人の配慮でしょう… 真意は不適切な場所にリングボルトが打たれているということです。一方、昔の価値観では、自分一人が、その時、なんとか持ちこたえるだけの強度しか要らないわけで、自分のためのボルトなので、抜けようが何しようが、本人が面倒を被るだけなのです。

なので、他人から、打った場所にあれこれ言われなくてもいいというのも真実。

■ ボルト再整備する人は、昔打たれているところに打ち直すだけではダメです

しかし、問題は、ボルトの再整備をする人が、すでにある場所を無批判に全肯定してしまって、すべてを受け入れてしまうという点です。

ボルト再整備する人は、それではいけません。なぜなら、そのボルトは、打った人だけが利用するものではなく、今後ここを登るすべての人が使うものだからですし、再整備するとなれば、過去の間違いを引きつかず、熟慮し、安全面で最善と思われるところに打つべきだからです。

再整備する人のほうが、より困難で難しいことを要求されるわけです。

リボルトしたい人は、ボルトの最適位置はどこか?という視点を持たねばいけません。

その問題意識の上に、知識と経験を積み上げていくべきで、待たれているのはそのような知識と見識についての業界全体のコンセンサスの形成です。 

2022/01/07

ラオス方式を検討

■ クライマーには難しすぎる

前の記事の

ピンAの打つべき高さ=(前のピンまでの高さ×2)×(0.9、もしくは0.7)- (止めてもらいたい高さ)

という公式は、とても瞬時に暗算可能ではないので、ラオスで一般的だと登りながら感じられた原則を考えてみます。

・1ピン目の高さに関わらず、2ピン目は、1ピン目+1m
・3ピン目以降は、ずっと2m置き

です。

3mで考えてみると…

≪1ピン目3mのケース≫
1ピン目:3m地点
2ピン目:4m地点
3ピン目:6m地点
4ピン目:8m地点
5ピン目:10m地点
6ピン目:12m地点

≪前項の4mの1ピン目でケース 日本で1ピン目が遠い課題として一般的≫
 現代の30%伸びるロープの時代
1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :4.6m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :6.84地点(地上1mで止まる)
4ピン目 :8.576地点(地上1mで止まる)
5ピン目 :11.0064地点(地上1mで止まる)
6ピン目 :14.40地点(地上1mで止まる)

となり、大して差がない…。 1m上に最初のピンを上げても、稼げたのは2.4mだけ。

ボルトを取らないのは、ミニマムボルトの原則と思いますが、ミニマムボルトで登るためには、大墜落を出来るだけしないというクライミングスタイルが必要ということですね…

30%も伸びるような墜落をしないということですが。

大墜落というか、普通に落ちて安全なのは、オーバーハングの岩場です。

オーバーハング=宙に落ちる、

だからです。 基本、日本にはそんなに存在していないです。




2022/01/06

1ピン目3mを起点にした場合のロープストレッチを加算した、正しいボルト配置

 ■ 正しいボルト距離は…?

昨日、試し算した内容では、正しい2ピン目の位置、3ピン目の位置が決められなかったので、再度、チャレンジします。


≪基本形≫

1ピン目 3m

2ピン目 6m

3ピン目 12m

4ピン目 24m

  トータル:24m

■ 2ピン目の位置?

6m全長が出ているときに、どこにボルトがあれば、落ちれるか?を計算します。

10%のロープストレッチの時、0.9掛け = 5.4m地点 (±0)
30%のロープストレッチの時、0.7掛け = 4.2m地点 (±0)

±0というのは、ロープの伸びでちょうど地面に着く、ということですから、ゆとり0です。
せめて、地上50cm上では止まりたいですよね?身長なども考慮したら、1m欲しいかもしれません。

加算すると

10%のロープストレッチの時、0.9掛け = 5.4m地点 (±0)-1m=4.4m
30%のロープストレッチの時、0.7掛け = 4.2m地点 (±0)ー1m=3.2m

3m地点に位置ピン目が合って、3.2mと20cmしか離れていないところに2ピン目が合っても、衝撃荷重の墜落をすると、地上1m上で止まるということで、2ピン目がえらい近いですね…誰もこんなところには打たないですし、1ピン目で落ちるというのは、大墜落は考えにくいので、10%を採用して、

1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点

とします。

■ 3ピン目の位置

とすると? 3ピン目は、4.4mの×2倍の8.8mの全長のロープで落ちても大丈夫な地点を探すということになります。

10%のロープストレッチの時= 8.8×0.9 =7.92m地点(±0)-1m=6.92m
30%のロープストレッチの時= 8.8×0.7 =6.16地点 (±0)ー1m=5.16m

10%想定の場合 つまりテンション登り
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :6.92地点、

30%想定の場合 つまり、足元下でのフォール許容
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :5.16m

どちらのボルト配置をよく見かけるか?というと???

3m、4.5m、7mみたいな配置のほうが、3m、4.5m、5.2mみたいな配置より、圧倒的に多く見かけます。3ピン目が2ピン目にごく近く打たれているケースというのは、あまり見かけない。

つまり、2ピン目と3ピン目が離れていることは、よく見かけるリスクということです。3ピン目を取るまでは、テンション登りやAゼロにしておいて、気軽に墜落しない方が良いということです。

実際には、3m、4.5m、7mみたいな、よくある配置で、2ピン目と3ピン目の間で落ちたら、テンションと叫んでも、実際はフォールファクター2の墜落。つまり、2,3ピン目の間に核心があるルートも危険ということです。

さて、4ピン目をよくあるケースで、10%&1mで、算出するとこうなります。

10%想定の場合 つまりテンション登り前提
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :6.92地点
4ピン目 :11.456地点

ちなみに4ピン目を取る前に大フォールで30%のフォールを許容したい、つまり核心がある場合

1ピン目 :3m地点 
2ピン目 :4.4m地点 約4.5m
3ピン目 :6.92地点 約7m
4ピン目 :8.688地点 約8.7m

に打たないと、地上1mの地点で止めてもらえないということになります。実際は、前のピンの倍もは、距離は離せない、ということが分かります。

■ 一般的に1ピン目が遠すぎると言われる4m上で試算

4m上の1ピン目っていうのは、まぁ、誰が見ても、”遠いなぁ~”というものだと思います。

佐久でも遠かったです(ーー;)。同じ計算をしてみると、4mの遠い1ピン目のルートでは、10%のロープストレッチの想定で

8×0.9=7.2、14.4×0.9=12.96 となり、

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :7.2m地点(±0)
3ピン目 :12・96地点(±0)

です。この位置だとちょうど地面にヒットするという意味ですので、ー1mすると、

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :6.2m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :11・96地点(地上1mで止まる)

となります。これでも、前提が10%の伸びですから、テンションしかしない前提のボルト配置です。

ビッグフォールの30%だと?

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :5.6m地点(±0)
3ピン目 :7.84地点(±0)

地上1m上で止めれるように設計すると?

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :4.6m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :6.84地点(地上1mで止まる)

となります。それにしても、2ピン目が近い。60cm先です。こんな配置見たことないくらい、3本目も近いです。

元の基本形と比べるとイメージの差に驚くと思います。

≪基本形 1ピン目4mの場合≫

1ピン目 4m

2ピン目 8m =1ピン目の2倍

3ピン目 16m =2ピン目の2倍

4ピン目 32m =3ピン目の2倍

1本目が高い課題は、全然珍しくなく、1ピン目が高いのは、基本的には、下部が簡単な5.4とか5.5だったら、出来るだけ高くに1ピン目を設定したほうが、上でボルト数を節約できるという発想のためですが… そのイメージすら間違っている…。

現実の数値を比べると、30%伸びる時代で地上1mで止まるはずの配置は、驚くほど、2,3ピン目が近くにあることが分かると思います。

       昔の伸びないロープ時代 vs 現代の30%伸びるロープの時代
1ピン目 :4m           vs    4m地点 
2ピン目 :8m           vs    4.6m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :16m           vs    6.84地点(地上1mで止まる)
4ピン目 :32m           vs    8.576地点(地上1mで止まる)
5ピン目 :64m           vs    11.0064地点(地上1mで止まる)
6ピン目 :128m          vs   14.40地点(地上1mで止まる)

現実には、4m上に位置ピン目があることはとても多く、2,3ピン目でこんなに近いことはめったにないです…

クライマーは、2,3ピン目の間が最も危険だということは、感覚的に体得していると思いますが、具体的に数値にしてみると、現代の伸びの良い細い径のロープでは、ホントにほんのちょっとのダラリンも許容できないことが分かると思います。

■ 原則にまとめると?

原則にまとめると

1ピン目=Ym
2ピン目=2Y×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
3ピン目=2ピン目の距離×2×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
4ピン目=3ピン目の距離×2×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
5ピン目=以下続く…

0.9=10%の伸び 静荷重
0.7=30%の伸び 衝撃荷重

です。核心前のボルトでは、0.7掛けを採用したほうが良いと思います。

べき乗で、ボルトの位置が離れて行くという伸びないロープ前提のイメージとは、現代のロープクライミングであるべきボルト位置は、かけ離れた数値で、オールドクライマーが一概に怖いもの知らずだったという話ではないだろうということです。

べき乗の増分イメージから抜け出せていない開拓者は、自分の思いとは別に、危険なボルト配置をしてしまうこともあるということです。

誰も悪者がいなくても、危険な岩場になってしまう、危険な課題になってしまうということです。

       これくらいでビレイしないと危険です。

2022/01/04

ロープの伸びが考慮されていないボルト配置

 ■ 完全にロープストレッチを除外して考えたケース

1~3本目のボルト位置について考察します。

まずは、ロープの伸びがないケース。 

1ピン目、3m上で考慮します。

3m=通常、許容され、落ちても、致命的な怪我にはならないだろうと想定される。ボルダーの高さ。

原理をもとめるものなので、岩場の形状は考慮せず、単純に上に登っていくものとします。

1ピン目が3mにあるということは、2ピン目は最低3m以内で、打たないといけないという意味です。2ピン目が6m地点にあるとすると、ロープ全長6mですから、次のピンは6m離して良いということになります。同様に、4ピン目は、12mのロープ全長ですから、12m離して良いということになります。(24mで4本)

≪基本形≫

1ピン目 3m

2ピン目 6m

3ピン目 12m

4ピン目 24m

トータル:24m

さて、これが安全なのか?どうか?試し算をしてみたいと思います。

■ ロープの伸びを考慮すると

これはロープの伸びが考慮されていないので、現実には、この距離だけ、離して中間支点を入れると、確実にグランドフォールになります。

一般に、ダイナミックロープは、衝撃荷重で30%、静荷重で10%のロープの伸びがあります。

10%伸びる=テンション、30%伸びる=足元以下に支点があるときのフォール、です。

■ 10%

上記の支点間隔に10%の伸びを加算してみます。

1ピン目:3m

2ピン目:6m 2ピン目直前で落ちると、6mの全長のロープストレッチの分、グランドフォールになる つまり、このピン配置は危険

3ピン目:12m 3ピン目直前で落ちると、12mの全長なのでロープストレッチの分、グランドフォールになる つまり、このピン配置は危険

ということになります。では、次のピンを打つときに、手前の支点までに、10%の伸びを配慮したらどうでしょう?

1ピン目:3m地点

2ピン目:5.7m地点 (3m×0.9 +3m)

3ピン目:10.83地点 (5.7m+(5.7×0.9)

この配置で行くと、1ピン目を取って、2ピン目を取る前の5m地点でフォールすると、5m×1.1=5.5mのロープストレッチとなり、地上3mの支点では、50cmしか地面から離れていないことになってしまいます。つまり、2ピン目直下は落ちられないということです。たぐり落ちと同じような状況ですね。

2ピン目を取って、1m程度登った6.7m地点でのフォールでは、6.7×1.1でロープストレッチ7.37mは、支点は、地上5.7mですから4m地点で止まることになります。トータル墜落距離は、約3.3mです。けっこう落とされますね?

3ピン目を取る前の、たとえば、10mの地点で落ちれば、確実にグランドフォールします。ロープ全長10mに10%のロープストレッチを入れると11mで、5.7m地点の支点2で折り返すと、5.7m-11m=5.3となり、確実にグランドフォールです。

つまり、この設定での3ピン目の位置では、2-3ピン目の間では落ちれないです。安全にしたかったら、もっと手前で3ピン目を打たねばなりません。ではどこに打てば安全になるのでしょう? 2ピン目に、3mを加算した8.7mで試算してみます。

1ピン目:3m

2ピン目:5.7m 

3ピン目:8.7m(5.7m+3m)

この3ピン目が安全なのか確かめるために、3ピン目の1m下、7.7m地点でクライマーがフォールしたとします。7.7m+ロープストレッチ0.77m=8.47mがロープ全長ですから、2ピン目の位置が5.7mとすると、8.47-5.7m=2.77、つまり地上約3mの位置で止まることになります。7.7mから3mまで落ちるのですから、約4.7mの墜落とけっこうな距離です。

これは、ロープ伸び率10%、つまり、ロープ全長は1.1倍の計算でこれです。

実際は、5mのフォールはロングフォールで、30%のロープ伸び率です。1.3倍のロープ全長で計算しなおしてみますと…

7.7m+ロープストレッチ2.31=10.1mがロープ全長、2ピン目の位置から引くと、10.1の全長で、5.7m地点から落ちると、地上1.3mで止まることになります。7.7mから1.3mまでおちるというのは大フォールですね。

ということで、3ピン目が2ピン目と離れていない、というのは、非常に重要なことなのです。

■ 考察

昔の人は、ロープの性能が低い時代に登っていました…つまりロープの伸びということを、ビレイする際に考慮せずに済んだ、という気配が濃厚です。

その分、人体が衝撃吸収体になってしまい、墜落でクライマーが衝撃を受けてしまい、人体が壊れる事故は多かったのではないかと思います。

しかし、現代のロープは衝撃吸収能が良く、ロープは大体、大フォールで30%伸びるように設計されています。

大体ロープには、どの体重で、というのも書いてあると思いますが、軽い人は伸びの良いロープ、重たい人は伸びないロープ、です。

■ 四阿屋の事故

四阿屋へ初めて行ったおり、3ピン目を取り損ねてグランドフォールした人を見ましたが、ビレイヤーの立ち位置は、1ピン目の真下で、2mもは離れておらず、きちんとしていました。それでも、グランドフォール…つまり、ボルト配置の設計が悪いということです。

こうした配置の悪さが、なぜ起こってしまったのか?というと、昔は、ロープが伸びなかったから、ということが言えるのでは?と思います。

このボルト配置の問題は、当時の装備では仕方なかった、という問題なので、普遍的で一朝一夕には替えようがないです。

また、一般に自分でプロテクションを打ちながらリードする習慣がないボルトクライマーにとっては、理解が難しいはずです。

逆にオールドクライマーにとっても、ロープの伸びでクライマーを守る時代になっているということは気がつきにくいです。ロープはそう頻繁に買い替えるものでない上、一度分かっていると納得してしまうと、再考しない傾向があります。

いくら支点が強固になっても、ロープストレッチによって、3ピン目以下のボルト配置が、クリティカルになっている、ということは、なかなか理解しがたいのではないかと思います。

■ ラオス

ラオスでは、この問題をどういう風に解決していたか?というと、大体3m離れる前、2m置きにピンが打ってありました。3m離れるということも少なかったので、1ルート20本もヌンチャクをぶら下げていくことがありました。

1ピン目:2m

2ピン目:3m 2ピン目が近いことがポイント!1mくらいしか離れていない

3ピン目:5m 2ピン目から2mしか離れていない。3m地点からロープストレッチを加算した2.6m落ちると、地面まで40cmしかないので、この近さでもギリギリ。

4ピン目:7m 3ピン目から2mしか離れていない。例えば、地上6m地点から、ロープストレッチを加算した7.8mの距離を落ちると、地面から2.2mしか離れていないので、すごく安全という訳でもない。

ということになり、”2m間隔で打ってあるよ”ということが、すぐさまチキン(=臆病)ということで馬鹿にできる状況ではないのが分かると思います。

ラオスに行って楽しかったからってキチンクライマーということには、ならないです。それなりに危険です。やはり、3ピン目を取るまでは落ちるべきでない、というのはその通りです。

■ 逆にインスボンのような大ランナウトの岩場では

師匠が、韓国人のクライマーの馬鹿にされ、登り方を変えたために、自分のカムを取ってすぐに墜落し、10mも落とされたと苦情を言っていたのですが…。

支点を取ってすぐでも、現代のロープはとても良く伸びるので、落ちたら、けっこう距離を落とされます…。

テンションと言われて、テンションを掛けるのでも、ロープストレッチ分を手繰るのに、ロープが長く出ていれば出ているほど、ビレイヤーは手繰る回数が増えます。

ランナウトを楽しむ岩場では、ロングフォールはありえないと心し、支点を取ってすぐでも、ヤバいと思ったら、支点下の、反対側のロープを掴むなどして、フォールを自分で阻止するか、落ちる前にカムエイドしてしまうほうが良いのではないかと思います。

もちろん、それがオールフリーを賭けた記録的クライミングなら、カムを握ってしまった時点で、あーあ、Aゼロしちゃったよーとなるわけですが…そういう記録的登攀を登っているのではないかぎり、落ちることのデメリットのほうが、必ず大きいと思われます。師匠の場合は、かかとの骨折でした。かかと程度でも、日常の不便は計り知れません…特に足はクライミング自体ができなくなります。

大ランナウトの岩場は、もしかすると、2グレード下というよりも、何度もセカンドで登り、自動化してから、リードするのが良いかもしれません。

自分の墜落が予想できない、とか、ちょっとでも負担があるとすぐにあきらめて落ちる方針で日ごろ登っている、とかそういう場合は、ほんの些細な墜落をしているつもりで、予想以上の距離の大フォールになる可能性があります。

とくに、スラブは、寝ているので、どこで落ちても大根おろしですし、フェイス、クラックのような垂壁でも、3ピン目を取るまでは、墜落は禁忌、です。

昔の課題は、現代のロープのロープストレッチ(伸び)を考慮していないため、です。

  これは私がリードした、アイスクライミングでの支点の配置です。2ピン目と3ピン目が近いのが分かるでしょうか…。

今打たないとどうなるか?安全か?危ないか?は、自分で打ちながら、リードしていないと分かるようにならないような気がします。

セカンド(ビレイヤー)でも、きちんとしたリードクライマーのリードの様子を見ていれば、身につくのかもしれませんが…。考えていないビレイヤーだと、「もうそろそろ取らないと危険だよ」と下から声をかけることがビレイヤーの義務と気がつかないかもしれません。

■ 2006年の最新アルパインクライミングに…

『最新!アルパインクライミング』にこのような記述があります。

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いわゆる「ロープを流して止める」制動確保は30年ほど前までは、ビレイの鉄則だった。

それは、ビレイ方法も「肩がらみ」だったからという前提がある。

中略

70年代前半~中盤で、おりしもビレイは「グリップビレイ」そして「エイト環」と大きく変わりつつあり、さらに現在のビレイデバイスが登場するにいたって、確保方法はロープを瞬間にロックする「静的確保」(スタティック)へと決定づけられたのである。

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『最新!アルパインクライミング』が出版されたのは、2006年と、16年も前です…

2006年の30年前は、2022年の46年前。グリップビレイは、1970年代の技とすれば、もはや50年前の技術です。

スタティックに取るようになってから、すでに50年もたっています…(溜息)