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2024/05/09

【リスク中心思考を身に着ける】セッション解説 沢

NHKスペシャル] 4K 世界初!深さ200メートル以上の谷をロープ1本で命がけの垂直降下 | ヒマラヤ“悪魔の谷”~人跡未踏の秘境に挑む~ ...

沢もいろいろ技術がありますが、男子は見て盗め!ということで、言語化されて教わっていない上、見せてもらっても、盗めないのです…

というわけで解説します。

■ スタートの懸垂下降は、これは、繰り出し法です

懸垂下降するには方法がいくつかあります。

1)両方まとめて投げる
2)繰り出す

ブッシュが出ていたりしたら、投げるのは無しです。理由まで言わないと、想像力がない人は分からないか…(ため息) 当然、ブッシュに引っ掛かるからですよ。

ブッシュに引っ掛かって解かないといけなくなったことがある人は分かるはず。

末端は、結ぶのが教科書通りです。すっぽ抜け事故は、メインの過失事故です。一流以外の人は、全員結んでください。

繰り出し法は、セカンドが繰り出してあげます。難点は落石を巻き込みがちなことです。しかし、ロープの流れを丁寧に作れます。

■ 懸垂下降のセット

しかし、大西さん、バックアップついてんのかなぁ…見えない。たぶん、登り返す場合に備えて、グリグリなんではないかと思うのですが…。

セカンドの田中さんの懸垂は、エイト環のみでバックアップがない。たぶん、セカンドなので、下でコントロールできるからでしょう。下で、ロープを引っ張れば、セカンドは止まります。

慣れている人なら、途中停止は足に巻けば、できます。途中停止の方法も複数を知っていることが大事です。

■ 懸垂にはスタティック 

あと、このロープはスタティックです。

クライミングにはダイナミックロープしか使いませんが、これはキャニオニングなので…下るだけのつもりなのかなぁ…

降りてみて足りなかったので、別の日に、再度長いロープで戻ってきています。この判断は重要ですね。ロープが足りない場合、途中でつぎ足したくなりますが…懸垂で途中つぎ足したノットをまたぐのは…かなり面倒。できないことはないですが、空中懸垂でやるのはいやだなぁ…。

一般人のキャニオニングは、山梨なら、ほら貝のゴルジュです。あれ、めちゃ楽しかった、また行きたい!

■ 沢にボルト… 一番悪環境じゃん?

九州の人はリスク認知が全くできておらず、祝子川本谷に2名で、つまり、私と相方だけで誘われたので、さすがに危険だろうと思って、ある会を率いる会長に、判断を仰いでみたら…

「ボルトが打たれていてスポーツクライミングみたいなルートだよ」

ということでした・・・全く見当はずれです。

まずもって、2名で沢というのが、超・一流だけが許される形式です。私はベテランとしか2名での沢をやったことはありません。アラーキーはベテランどころか、その反対で、こっちが面倒見てやらないといけない対象なので、無理です。あと二人、だれかいたらいけるかもしれません。リスクがある山や沢は、最低4名です。リスクには相手も含まれます。

年中水がかかっているところに、ボルト打ったら、そのボルトを信用することはできないのが当然ですよね? 正解は、「ロシアンルーレットみたいなルート」です。

沢では、確保器も、外岩でのビレイとは話が違います。エイト環使いこなしてくれないと困ります。

ゴルジュにつかまったとき、流してくれないと溺れ死んでしまいます。そういうのが分かっていない人と行くと?まぁ、殺されますよね。

さらに言えば、徒しょうでは、私は軽いので流されやすく、チロリアン(斜張り)が必要なことがあります。

チロリアンって、やったことないです!ってクライマー男子が10人いたら、10人の世界なんですよ。

山岳総合センターでは、最初のころに教わります。ツエルト張るときに使えますよ。

ユースケさんの無人島探検でも、出ていました。チロリアンなんて、俺、要らないからやらない、という発想の人がほとんどなんです。

そういう人は、ジムと外岩ゲレンデ程度にしておくことです。ゲレンデで5.12が登れたとしても、男子が言っている、5.12って、何時間もうんうん唸ってハングドッグしての結果ですし、グレードは、彼がチロリアンを張れるとか、エイト環が使えるとか、リスク管理ができるという証明には全くなりません。

会を率いている、という実績?も、リスク管理ができている、という確証には全くなりません。

その人の言動から、推し量ると、やはり、人の命に責任を持つ立場、というのは避けたほうがよろしいのでは?と思える発言内容です。

■ ヒマラヤの”沢”?

いや~、ヒマラヤももう、ピークは登りつくしてしまって、もうめぼしいのはないって意味でしょうね…

こないだユースケさんとトシゾーさんも行っていましたよね、ヒマラヤの沢。

そりゃ峰が高ければ、渓谷も深いよなぁ。

コロナが開ければ、クロスケオテ谷なんて誰も見向きもしない…(笑)。エイドで初登なんて、現代では、誇りとなるより、むしろ、え?って記録だと私は思いましたが、コロナで国内で何か…ないかとなると残っているところがホントにない…ってことなんですよね。

しかし、エイドでは…。

本来フリーの時代になって、もう何十年もたっているのに…。

どういうスタイルが良いのか?ユースケさんの無人島の記録を参考にしてはどうでしょうか。

そういう意味でアップしてくれたんだと思うよ?

■ 心理学的欠落 … 男子が視野狭窄に陥る理由

人は、注意を向けたところ以外は、気が付かなくなる、という心理学の法則があります。


なので、いかに俺をPRするか、という視点しかもっていないと、

 他の人が行った危険行為  例:支点ビレイ

などが見えなくなるんですね。

初心者の時代のクライマーも、自分が楽しいだけでアップアップなので、ベテランがやった支点ビレイが、現代クライミングでは最初にされてはいけないこと、支点ビレイをされそうになったら、断りなさい、と言われているビレイだと、気が付くことが、そもそもできない。

右も左も分からない時代に、親に連れられて、一度渡った赤信号は、渡るのが当然になります。

なので、本に書いてあっても、ダメなのです。

しかし、見ても学ばない…。行動から意味を読み取る訓練、って、本を読まない人、にはできていないことが多いです。

男子は、”俺”に夢中…カッコつけることに夢中…だから、確証バイアスが作用して、お手本を見せたところで、学ばないんだということが5年かけて分かったことです。

2024/05/07

【リスク中心思考を身に着ける】セッション解説 デイドリ―ムPart1&Part2 :トップクライマーの登り方

【Vlog】平山ユージ&大西良治のデイドリーム part.2

■ セッション解説

1)どれくらいの期間をかけるか?で実力を示す

パート1 10月31日、パート2 11月7日、ファイナル2月28日。

期間的にも、シーズン初め、中、シーズン終わり際、という感じです。
ワンシーズン中3日の撮影。トータル20日だそうです。

終わらなかったら、来年になりますね。

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山梨県某エリアの「デイドリーム」(5.14b)は日本最難のフィンガークラック。日本のフリークライミング黎明期からトップクライマーの挑戦対象として認識され、未来の課題として継承されてきた。とりわけレジェンドクライマー、故・吉田和正が情熱を傾けたことが知られている。2020年1月、30年以上の挑戦の歴史に終止符を打ち、小峰直城が初登。浦野誠動が第2登、中嶋渉が第3登と続いている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ちなみに、”実力とは、かかる日数で示すものだ”という実力の示し方、も示されているような気がしますね。

1登 小峰っちは、何日かかったんでしたっけ?忘れましたが…。ロクスノの記録の文体がしょぼかったので、がっかりした私だったのでした…。しょぼかったことしか覚えていない(汗)。

3登の中嶋さんは、10日だそうです。

第2登の浦野さんは、かかった日数、ネットに出ていませんでしたが、48歳?!円熟クライマーだったんですね。年齢でも実力を、というか情熱を、示せるかもしれない。

たぶん、一般クライマーは、ルート名だけで実力を示そうとしすぎなのでしょう…

2)1ピン目は大事です!

1ピン目は、パート1では、赤キャメと青キャメで、固め取っていますが、ユージさんの墜落で、赤が飛んだので、2度目では、二つ連結して、強度を高めて使っています。

クラックのクライマーなら習っていて当然の技です。

1ピン目は、2個連結です。

3)ビレイヤーにコールして、キャッチの準備をさせる (行動プロテクション

ユージさんの登りは、登れなくなった時、「はい、テンション」と声をかけるので、私が習った登り方です。

勝手に、”テンション登り”、と呼んでいますが…

これが、九州では全然なく、違和感でした。

テンション登りが、不安なボルトで登る基本の登り方だと思います。

現代の人は、人工壁になれているので、黙って落ちます。

外岩では、落ちそう、とビレイヤーが予期していることが安全対策ですので、ふいに落ちる、アンコントロールに落ちるのはダメです。

リードする許可の有無が、アンコントロールな墜落をしないこと、です。

それに、ロープたるたるで落ちると、落ちる量が多いですよ。

インドアでは、わざとたるませて落としますが、それは常に被っているからです。外岩では、しません。

行動プロテクション:https://allnevery.blogspot.com/2023/05/blog-post_39.html

4)ボルダリングの安全管理 下降路を登る前に安全確保する

アップのボルダー 大ハングでは、まず落ち葉を落として下降路を安全にしています。

5)余計なチョークは落とす

どうも、パモは持っていないみたいですね。あそこ、いつもチョークついて固まっているので、滑る… 服でたたいてチョークをとしていました。

6)ボルダリングの安全管理 クラッシュパッドの移動

大西さんがランディングしたところが、ユージさんが移動したマットの上で、読みがぴったり。流石です。

7)得体のしれない道具は使わない

後ろに見えているパッドと梯子、誰のなんですかね…? いつもあるけど。っていうか、5年前からあるけどなぁ…。

8)プロテクションは厚めにしておく 

デイドリのピンクポイントで設置した、最後のナッツは、どうもユージさんも、登ってみたら、かける余裕はない、みたいでした。登り切ってから、かけるしかないと最終的に判断していました。

ボルトでも、設置してあっても、そこが、片手になれない、かけれない場所だったりしますよね。

事例としては、私にとっては、九州で最初に登った米澤さんの5.10aがこれでした。ボルト飛ばして、登りきるほうを優先したので、ランナウトを受け入れて登らざるを得なくなり、相方は渋い顔をしていました。結果的にはオンサイトでしたが、良いクライミングとは考えられない。米澤さんのグレーディングは激辛なので、あれは普通にアップで取りつくような10aではなかったと思います。

デイドリは、結局、どうせ最終ピンは、クリッピングするゆとりはないので、最後のRP完成動画のほうでは、設置されていませんでした。最後はランナウトを受け入れて登る系です。あっても使えない位置にあれば、意味がないので。

9)ピンクポイントで取りつく

レッドポイントするのに、最初はピンクポイントで登るんですからね。

トップロープで登れたら、はい次、といきなり、レッドポイントで取りつかないですよ?

カムの場所とか検討できないじゃないですか?いきなり本番では…(汗)。

私は、これ、されて嫌でした。私はクラックは習得途中でこっちに来たので、最初からそう言っていたのですが、どうしても疑似リードをする習慣がないみたいでした。カムエイドで、プロテクションを設置して登るのもしなかったら、いきなり登りながらプロテクションを設置することになり、ムーブによほどゆとりがないと登りながら、正確で落ちれる設置はできないですよね?

そこが、分かっていない人たちと登ると、トップロープで一回試登しただけで、あとはいきなりRPしてねーとなり、危険でした。リスクを回避すると、結局、カムに頼らないで登ることになるので、いつまでもプロテクションが確実にならない、ので、十分実力を上げる難しさの課題には取りつくことができない。悪循環です。

プロテクションを軽視している、というのはこういうことですよ。

ピンクで登るためにカムを入れるには、トップロープでぶら下がっている必要がありますが、それには、カムエイドしながらでも、まずは上まで行っている必要があります。

その辺は作業なので、動画には、出ていないです。

10)ビレイ位置

ちなみに故・吉田さんにビレイする場合は、ビレイヤーも、スタートのボルダーの上に上がってビレイしました。地面ではなく。そのほうがより安全ですが、落ちたら、ビレイヤーに激突するかもしれません。(当方、吉田さんの最後のビレイヤーです)

しかし、見ていて指が痛くなるクライミングでした。ユージさんは指にテーピングしていたけど、大西さんはしていないので、出血…。

やっぱ、フィンガージャムは痛いですよねぇ…。

余談ですが、14bはトップクライマー向けなのですが、近くに一般向けの10くらいの初心者向けフィンガーもあります。そっちはフェイスに逃げれます。フィンガーを覚えるところの人は、それで練習してくださいね。

関連記事

2024/05/06

【リスク中心思考を身に着ける】セッション解説:トップクライマーのお手本動画から盗む

【Vlog】平山ユージ&大西良治のデイドリーム part.3

■ 故・吉田さんとかと登る機会

私は、運よく、故・吉田さんとか、アイスでも伊藤さんとかとご一緒したことがあるので、トップクライマーの登り方というか岩場での過ごし方?を知っており、それが一般クライマーにはないので、分からないのかもしれない?と思います。

トランスコーチングのセッションと同じで、一般クライマーは、

 一流クライマーの登攀を見ても、そこから、盗んで学ぶことができない

のだろう…と思い至りました。そこで解説します。

■ 解説

1)本気トライレベルの選び方

・3回~4回くらい岩場に通うレベルが、適切な本気トライレベル

この動画は、5.14bのデイドリを狙ったものですが、世界的クライマーのユージさんで、20日、です。それ以上、通わなくてはならないようだと、RPで狙うにしても、レベル高すぎなのではないでしょうかね? 

まぁ、登りたい課題であれば、何日通ってもいいわけですが。しかし、3級しか登れない人が2段のボルダーに通うのは、さすがに離れすぎ、非合理的ではないですかね?

しかもノーマットって…。無謀です。

2)季節の選び方 2024年2月28日 

基本、フリクションクライミングだったら、季節は冬が最適です。ラオスの石灰岩でも暑いと登る気になれないので、日陰が志向されるくらいです。

スラブなら、本気トライは、当然、冬ですよ。日本は湿った国なので、湿度の高い夏は、本気トライは、ほとんどお預けです。

3)アップは丁寧に

ユージさん、大西さんのようなトップクライマーでも、アップは5級や3級

九州では、5級以下のボルダーは、8級でも9級でも全部5級のじゅっぱひとからげでびっくりした。つまり、基本や易しいルートをおろそかにしています。

たぶん、そんなことしているからいつまでも、リスクをとらえた思考ができないので、結果として、ちゃんとした記録も出せず、クライマーも育たないのでは…。

3級登った後、”1級はないな…”と大西さんがつぶやいていますが、このように、このルートは、自分の体感で何級かな?と考えながら登るのが、普通でした。

グレードが安定しているラオスでもそうでした。

たまに開拓直後でグレードが付いていないのがあり、それを、いろいろな人が登って、グレード談義して、大体落ち着くところがあります。

そもそも、大体、見て、自分が登れそうなのに取り付くんです。

後で何級か見て、合っていたら、自分の感覚があっている、みたいなグレードの使い方ですよ。

あと、当然ですが、ムーブは人それぞれです。 大西さんとユージさん、全然ムーブ違うし。

この動画で、ビデオトポなんて見ていないですよね?

4)マットは持ち寄り リスクコントロールの熟達は薄さと数の少なさで示している?

トップクライマー同士なので、マット薄いけど、細かく移動して落ちるリスクに備えています。

クラッシュパッドの数、薄さ、両方共、たったこれだけで許されるのは、リスクコントロールができる人たちだから。一般クライマーには、もっとたくさん必要です。各自持ち寄ります。

クラッシュパッド含め、ギアを自分で調達しない人とは登ってはいけない。

リスク管理が人任せだからです。リードなら、ロープです。自分のロープで登るのが基本です。

5)登る前にホールドとスタンスを見る

これやらない人が多いですけど…、取り付いてパンプするだけですよね?

6)ルートでも、クラッシュパッド

デイドリのスタートは3級のハイボルなので、その上にクラッシュパッド敷いていますよね。一本目を取る前に落ちたら、ビレイは意味がないからです。

スタートで被っているときは、ルートでも、普通に危険な時は、スポットします。スポットできない配置の時は、マット併用が〇ってことです。

7)緊張するべき箇所

一本目、赤キャメ取るまで、です。見ているほうも緊張しますが、ビレイヤーはできることはありません。早く取って…と祈るばかり。

赤キャメ、効いているか?見極めは、ビレイヤーもクライマーをサポートします。怪しいなと思ったら、「それ、ほんとに効いてる?」と聞きます。効いてなかったら、えらいことです。



あと、カムが上に引かれそうな場合は、一本目のカムは重要なので、下に引かれるように補強したりします。

この写真で分かるでしょうか。これはナッツですが。私はクラック登り初めに教わりました。

昨今、教わらないクライマーが多いのかもしれません。大事なことは一本目が大事だと分かっていることです。


ボルトルートばかり登っていたら覚えられないかもしれません。


2024/05/04

【リスク中心思考を身に着ける】安全は自分の中にある

 ■ 素朴な疑問:クライミングって危険じゃないんですか?

まぁ、当然思うよな~。やったことがない人は。

基本的に危険だと思ったら、行きません。

例えば、アイスクライミングで、

 危険で壊れそうなところに行く人=バカ

と相場が決まっています。

■ ハイキングレベルで行動原則を身に着ける & 自分なりの基準を作る

これは、ハイキングのレベルの時から、雨の日は行かない、などの原則によって強化される行動原理なのです。

多少の雨で行くとしても、雨合羽を持っていくとか、雨量が一時間50ミリだったら行かない、とか、いろいろ

 その人なりの基準

を作っていきます。

■ バカとトップがやっていることが素人からは同じに見える

もちろん、基準が高い人がすごい人。

ところが、これが内的基準なので、傍からは、同じに見える、という問題があるのです。

例えば、登山界で有名な頓珍漢に栗城さんがいます。栗城さんは、素人さんには、すごい登山家に見えてしまいます。

これは、例えば、多少の雨で行くとして、雨合羽持っていかない人が風邪をひいても、タダのバカでしょう?

同じことで、氷が薄くて危険だと分かっている時期の氷瀑や気温の時に登って、落ちても、タダのバカです。

栗城さんは、明らかに無謀と分かることをやっていて、死にました。

本当に、基準が高い人も世の中にはいます。例えば、世界的クライマーの山野井さんなどは、雪崩の中生還したりして、尊敬を集めていますが、間違っても、わざと雪崩に向かって行ったわけではないんですよね。そんなことしたら一発で終わりです。

■ わざとやるバカと仕方ないリスクの峻別が難しい

私が困っていたのは、わざと自分を破滅的な羽目に持ち込んで、周囲からの承認を得ようとする人が、私をクライミングパートナーにしていたことでした。

一緒に行ってくれる人がいなくて困っていそうだったんですよね… 

しかし、25mと35mのピッチを50mシングルで登ろうとすることは、最初から10mもロープが足りない訳ですから、わざと雪崩に向かって死んでいる人と同じです。

いくら、私にいろいろ技術があってもフォローしきれません。そもそも、登る前から遭難、です。

私の落ち度は、まさか、そこまで知性が低いとは思っていなかったことです。そこまでは読み切れんかった。

■ 危険だけれど、行かないといけない場合 = アドレナリン

しかし、危険だけれど、行かないといけない場合も出てきます。

ユージさんのデイドリームの後半では、オーバーハングを終わって、登り終わったところ、スラブで、落ちれない場面が出てきています。

あれは正当なランナウトです。プロテクションが取れない。

動画を取っているスタッフに、「グランダー、グランダー」などと自分が危険を認知していることを声掛けしています。

この声掛けが大事で、

 分かってるよ~ ここで落ちれないことを。

って意味です。ベテランクライマーは良くこうした声掛けをします。

逆に素人クライマーは、

 燃える~ 

と言ってこうした状況を歓迎しています。これが、アドレナリンジャンキーの正体です。

なんか、これを求めるように自分から向かって行ってしまうんですよね。みんな。

でも、楽しいのは核心部分で、ランナウト部分ではないんですよ。

私なんて、自分が楽勝で登れる5.8でも、ランナウトしていたら、真っ青です。簡単なルートなのにストレス。

■ 現代レベルと40年前レベル

ユージさんの登っている課題は、5.14bです。それで最後はランナウト。しかし、ランナウトの箇所は、当然5.14ではない。もっと簡単です。

ところが、昔の人って、5.8で40mランナウトさせていたんですよ…。

たった5.8ですよ?

5.8がどのようなレベルか?というと…?

私、クライミングをスタートして、まだ3カ月のころ、オンサイト(見て一発で登れる)しています。誰でも登れて落ちないようなのが、5.8って意味だからです。最低限の運動神経と言うか。

このころから男性の基準で裁かれており、40代の初心者の女性に対する処置としては厳しいと思います。頑張らせすぎです。私は後輩に教えるときは、こんな教え方しません。落ちても責任負えません。

当時41歳。20代男子ではないですからね…。

ちなみに、5.8 40mランナウトのルートが作られたのは、40年ほど前と思われ、作った人は、当時、若い男性、だったと思います。その基準を3か月前にクライミング始めましたという40代の女性に当てはめたわけで、現実認識がおろそかすぎますね。

昔の初心者って18~20代、男子、です。

さて、昔の初心者に該当する若い男子は、現代では、一般クライマーでも5.12は登ります。高校生など、その日に登ってしまいます。しかし、それは安全が確保された人工壁の場合です。安全が確保されているから登らせてOKなわけです。

つまり、(外岩の基準)と(インドアの基準はそれほど違う)ということです。

言い換えると、(5.8ランナウト)は、簡単でも非常に危険なので、登攀力のゆとりという保険なしでは、登らせられないということです。

一方、5.12で安全なルートであれば、現代ではクライマーとしてのスタート地点に立ったという程度の意味です。

■ 人が落ちて死んだことが、自己肯定感の源泉になっている

ところが、こんな低いレベルでも、最近のジム出身クライマーは登れず、落ちます。

というのは、外の岩場での、経験値がないからです

これは今も昔も変わらず、ただし、昔は、最初の外岩で、オンサイトを求められることなどなく、誰かにロープを張ってもらって、安全に5.8を何度も登って登れるようになってから、登ったのが習わしです。

現代ではこの習わしが無くなっている。

その上、死亡を含む重大事故が起こったことが、古いクライマーらの自己肯定感の源泉になってしまっているのです…。

俺もまだまだやれるなって言う…(汗)。

それは、若い男子が、ぽろぽろと落ちるからです。しかし、そんな不利な状況に立たされた人と自分を比べて公平な判断になると思います?ならないですよね?

たぶん、女性には、ランナウト=落ちないで登るよう指導がある、と思います。

これが、たぶん、男子にはない。

なんか男性は、命を大事にされていない?仲間意識で守られていない?むしろ、フレネミーのような扱いになっている?っていう感じです。

男子、お気の毒。

おそらく、40mランナウトを作った当時のクライマーたちが、自分が時代遅れになり、そうしたルートが真実の意味では、すごくない…ということに、気遅れや現実を受け取ることに、抵抗を感じているからではないでしょうかね?心理カウンセラーが必要なのは、この人たちのような気がします。

昔は俺だって…

そうですよね、確かに。あの頃はそれで大変でしたよね。

でも、時代は変わったんですよ。

現代では、無意味となってしまった場所で、簡単な場所だからランナウトしてもいい、と教えることは、そのクライマーは、ほんのちょっと偶然で、早晩、死んでしまって、もっと上のルートにステップアップできない、ということになります。

易しいところでできないことが、難しいところでできるはずがないでしょう。

もし、クライミングで若い人を応援したいと思ったら、簡単なところから確実にプロテクションを取る習慣づけが必要なんですよ。

ユージさんはランナウトしていますが、ハング終わりのスラブ、あれ難しいと思います?

難しくないですよね?

あそこで落ちるようなレベルだったら、最初から取りつかないわけですし、良く映像を見るとフィックスが他にも張られています。

私も、上で7mランナウトした課題を山梨時代にやりましたが、隣にフィックスが下がっていました。

いざとなれば、それをゴボウすることができる。クライミングの基本は、冗長、です。

そうしたことは、講習会以外では、言語化されては伝えられません。

日ごろのクライミングで、見て、盗むもの、なんです。

自分より上のクライマーの行動を見て覚えるのですが、最近は、ちゃんとしたクライミングに連れて行っても、肝心のクライマーが見て、学ばないのです。

師匠の青ちゃんとのインスボンに、相方を連れて行ったのはそのためですが、結局、彼は、青ちゃんを見て、何を学ぶべきか自体も、分からなかったようでした。残念。

豚の首に真珠、というか、馬の耳に念仏、みたいな感じなんですよね…

■ 現代のクライマー対策

となると、入門ルートと言うのは、そういうクライマーの実態に沿ったものである必要があります。

つまり、ボルトの場所は、

 下部で頻繁、上に行くほど少なくなっていく、という風に配置する必要がある

ということです。

彼らはセカンドで連れて行っても学ばず、すでにプロテクションが打たれたルートを自分でリードしながら、ボルトの配置事態を学んでいくという体制にあるからです。

昔の教え方では、教えられることができないんですよ。

私はHSPなので分かったんだと思います。ほかの人は私ほど良く考えていません。

2024/05/01

【リスク中心思考を身に着ける】マルチピッチに行く前の情報収集:何を問うか?

■ 事例

問い)マルチピッチのルートや初めて行く岩場について問い合わせるときに最初に聞くのは?

答え)下降法

歩いて降りれるのか?懸垂下降が必要なのか?で、ロープの構成もギアも違います。

問い)次に聞くのは?

答え)通常みんなは何メートルのロープで行っているの?

  つまり、ロープの長さ、です。

です。

■ トポ見れば分かる?

下降については、トポにはあっても、分かりづらいことが多い。

生の声を聴いたほうがいいです。


■ 認知の歪みチェック

もし、「敗退なしで!」と言われたり、ロープの計画を相方が相談してこないがそのことについて、相談できない、と感じる場合、

 相方を信頼いけないという認知の歪み=ロープの計画を聞かない

となるのかもしれません。ちょっと時間を取って、なぜ自分は相方にロープ計画について聞くということができなかったのか、胸に問うてみましょう。

クライミングパートナーを信じられない自分には価値がない、という認知の歪みを持っていると、山行計画を相談しない、という行動が結果として生まれるそう、です。

■ 正しい認知

初心者でなくても、10年くらい登っていたとしても、現代のクライマーは、適切なロープ分配計画ができない人は多い。

そうでなくても、人は過ちを犯すもの。

ロープの相談を最初にしましょう。

■ ロープの選び方

1)シングルで行くか?ダブルで行くか? ⇒ ルートがまっすぐか?屈曲しているか?

2)長さはどうするか? ⇒ 一本で行くなら各ピッチの倍の長さが必要。2本ならピッチの長さで多分足りる。 

※日本のルートは大体40mロープの時代に作られているので、どんなに長いピッチもほぼ35mで切ってある。現代主流は、50mロープ2本(ダブル)がノーマル仕様。

※ツインの出番は、屈曲が少ないクラックのルートで、敗退を確実にすると、ツインが便利です。担がなくてよいので。

※ シングル2本はダメです。念のため。ロープが太くてビレイ器から出ません。

■ 結論

”50mシングルロープでマルチに行く”という選択が、どれほど愚かで、物事を分かっていない行動か?ということですね。

しかし、なんでそういうことになったんだろうなぁ。

うかつだったという気がしますが、それ以上の心理的認知の歪みが、あるのかもしれません。

私の中に、

 パートナーを信じてあげたい

という気持ちがあった、ということは言えると思います。よくしてあげたいという気持ち。

さらに言えば、

 信じてあげなければならない

とか

 信じてあげないと私には価値がない

もあるのかもしれません。

仲間は助け合うものだ、という”善意”の認知をナルシシストに利用された、というのが正しい認知のような気がしています。

個人的には、え?!まさか、そこまで分かっていない人なの?!っていうのが驚愕だった経験と思っているのですが、深層心理的には、

 分かっていない人と思える、その相手をなぜ私は選んでしまうのか?

のほうが大事な反省要素。

クライミング界を向上させたいという気持ちが、良くなかったのです。人のことにかまけていないで、自分を向上させましょう…

それが起こった理由を考えると…

「おねえちゃんばっかり…」

という弟や妹の声が聞こえてきます。お姉ちゃんが幸せになることをねたむ声です。

■ なぜダメな男性ばかりを選んでしまうのか? 可能性の探索

歪んだ認知:

「彼を世話できるのは私しかいない」

「この人を支えられるのは私だけ」

「私は愛される価値がない」

背後の経験:

親に愛されなかった、失恋、など。「好きな人に愛されたいという欲望」の抑圧がある。

うーむ。心理学的には、一般的には、こういう話らしいですが…、確かにもっと親と楽しく遊ぶ経験が必要だったとは思いますが…かといって、

私は愛される価値がないと思っているような行動をとったとは思えないんですよねぇ…

私に認知の歪みは、

  愛せば、愛し返されるはずだ、

かもしれません。愛しても愛しても、よりよくなって返報性の法則で返ってくるはずなのに逆にあだになって返ってきているような感覚がありました。

■ 親切にすれば親切にし返される

というのは、返報性の法則ですが、返報性の法則が通用しない場面は以下のとおりです。

  • 相手が求めていないものを差し出したとき
  • 相手が気軽にプレゼントを贈れないとき
  • 見返りを求めていることが見透かされているとき

うーん?

単純に考えていない人だった、と言うだけの珍事件を経験した、ということのような?

私のほうが、世間知らずで、世の中の人はみな、自分と同じくらい、深く物事を考えている、という前提のほうが間違っていた…という苦い失敗のような気がします。

HSPあるある、なのかもしれません。





【リスク中心思考を身に着ける】チャレンジする前に考えてから取り組む

 ■ HSP向け動画



偶然見つけた動画ですが、これこそ、クライマーに必要な資質だ!と思ったので掲載。

『チャレンジをする前に考えてから取り組む』

考えていない事例:

1)ジムで5.11が登れるから、北岳バットレス四尾根に行ける。 

⇒ いけません。ジムのグレードとアルパインルートで必要になるリスク回避能力に何の関連性もない。

2)50mロープで、25mと35mのピッチをコネクトして登り、反省では「やっぱりロープは60mだね!」

⇒ 違います。足して60mのところは60mシングルでは登れません。どうやってアンカー作るつもり?ロープは2本、が正しい反省です。

3)3級しか登れないのに、マット使わず、2段をノーマットで登りたい。

⇒ 2段登れる前にケガするだけでしょう。

4)懸垂下降でロープが地面に届いていない。

⇒ 間違いに気が付いたときには一貫の終わりで、さよーならーですね。

5)5.10bとされているインディアンフェースを、5.11がほかで登れるまで登らないルート

⇒なら、インディアンフェースは、5.10bでないって意味ですよね。

6)下部核心のルートを初心者に進める 

⇒ 初心者は落ちるから初心者なんです 

7)屈曲したルートを初心者に進める‥‥

以下、エンドレスになりそうなので、割愛。

■ リスクが開示されていない

昨日アルパインのルートステップアップ法を記述して、気分が良くなり、フリーのルートステップアップ法を記述していて気分が悪くなった(笑)。

リスクが開示されていない、というのが、おそらくその理由だと思う。

リスクが開示されていなければ、リスクに備えようがない。

リスクが開示されているとは?

エクセルで、どの終了点が、ボロいボルトなのか?情報が開示されているってことですよ?

どれが何月何年にリボルトされたか分かるようになっていること。

開示されていないリスクには備えようがない。ボルトの強度なんて、手で引っ張ったくらいで分かるはずないですよね?

その場合激落ち無し、テンション程度で登るプリクリップ必須

これは、あなたがビビりだからではなく、ボルトがオンボロだから、ですよ。

まぁ、開示したら、日本中ほとんどの岩場ってことになると思いますが…。

謎なのは、JFAも、各岩場のリボルト情報を一覧性がなく、今までその岩場に縁がなかった人には分かりにくい状態にわざとしているのではないかということです。

何か、隠し事、あるんじゃないかな?


2024/04/30

【リスク中心思考を身に着ける】フリークライミングの入門ルート

さて、思考を進めます。

 ■リスク中心思考を身に着ける

フリークライミングでも、クライマーとなるのに大事なことは、

リスク中心思考を身に着ける

ことです。これは、VUCA時代の生き方と同じです。

■現代クライマーとは?前提が違ってきている

現代で、クライマーと言えば、ボルダリングジムでスタートした、フリークライミングのクライマーのことです。

この時点で、冬山というリスク要素は、ほぼ外れます。寒いところで一般的なフリークライミングはできないためです。

■ 前提が違うと何が違うか?を考える

フリークライミングとアルパインクライミングの差が最も顕著なのは、

 支点の強度

です。もちろん、フリークライミングにも、トラッドなど支点が自作しなくてはならないクライミングもあり、私はそちらよりですが、一般のクライマーは、

 ボルダリング⇒ ボルトルートのロープクライミング

と進み、ボルダリングで止まってしまう人が9割です。そのうち1割がリードに進み、さらにそのうちの1割が外岩に進みます。

したがって、そのような人を前提にした場合、フリークライミングの入門ルート、とは?

もちろん、支点が強固なルートです。

この点が九州では、転換が非常に遅れています。

■ リスク中心思考の原則

1)どのような性格のルートか?知る

2)リスクを想像する

3)思考停止を避ける

4)実際にリスクをマスクする具体的な行動をとる

です。

■ フリークライミングの入門にふさわしいルートとは?

現代のクライマーは、沢登りや雪山など支点構築やロープワークを経由して来ません。

ので、

1)ボルトが強固なルート

が初心者が登るのにふさわしいルートです。なにしろ、初心者というのは、落ちるもの、なのです。落ちることが死なずに可能なところに行かないといけません。

つまり、登攀は簡単で、外岩環境だけが本格的、ということです。

入門者には、高度な登攀は求められず、どのような登攀ルートに挑むにしても、共通項となる、前提となっている、リスクがマスクできるか?どうか?が問われます。

フリークライミングの場合、それは、プロテクションです。

フリーの入門ルートでは、プロテクション構築能力がほとんど問われない、すでに作られたアンカーにノットを結ぶだけで良い、というのが入門ルートです。それが確実なことが、第一歩だからです。

したがって、”40年前の入門ルートでボルト打ち替えが進んでいないプロテクションプアのルート”は、上級者向けであり、どんなに登攀が易しくても、初心者には危険、です。上級者のセカンドとして行きましょう。

現に比叡では報道されないだけで、死亡事故がバンバン起きています。

昔は、スラブは登山の延長線で登れるため、入門ルートとされていましたが、スラブを練習できるクライミングジムはないです。

したがって、昔から伝統のスラブルートを入門ルートとするよりも、ラオスにあるような石灰岩クライミングの5.8や5.9が続くマルチピッチを入門ルートとするのが良いように思います。

石灰岩のクライミングは、登り方がプラスチックと似ているためです。スラブはムーブ全然違います。

ここらは偉い人同士で話し合って決めてほしいものです。文登研あたりが決めればいいのでは?

ここでは、私が入門ルートとして登った、小川山の春の戻り雪4P、を事例として使います。

事例: 春の戻り雪

 1P目・・・5.7 30m

 2P目・・・5.7 30m

 3P目・・・5.6 25m

 4P目・・・5.7 15m

そもそもマルチピッチですので、マルチピッチ特有のトラブル…

例:ロープがアップされない場合などには、当然セカンドのクライマーも備えてから行きます。具体的にはロープがアップされなくても、自己登攀で終了点にたどり着ける必要があります。

■ 2)リスクを想像する

さて、春の戻り雪はボルトは確実で、行くことになったとしましょう。40代初心者の私にも勧められたルートですので、他の方には当然、薦められると思います。

最も長いルートで、5.7 30m。そこから、仮に敗退するとなると?

50mのロープの半分は25mなので足りません。60mのロープが必要ですね。小学生レベルの算数です。

この程度しか、このルートを経験していない人には分かりません。そこでリスク軽減のため、先輩に話を聞きましょう。

問うべき問いは

1)ヌンチャクは何本いりそうですか?

2)長ぬんは要りそうですか?

3)終了点からの懸垂に捨て縄は要りますか?

4)ほかにあるリスクは何ですか?

です。

私は、あそこはランナウトだけ、という回答をもらいました。

ランナウトがリスクってどういう意味?

ランナウトというのは、ロープが保険として機能しないので、落ちれない、という意味です。

したがって、5.8のここを登るには、2グレード以上のムーブ能力のゆとりが必要です。

そのため、5.10aのスラブ程度は、ショートのルートで登れるようになってから行きます。

他に当然、外岩ですので、季節の問題があります。梅雨時はスラブはつるつる滑りますので、チャレンジには向きません。乾いた季節がおすすめです。

他にルートまでたどり着けない、というアプローチの問題もあります。

さらには、ロープワークが稚拙で時間がかかってしまうというリスク。

混雑するリスクもあります。

フリークライミングの場合、対人リスクがあります。これを何とかできないといけません。

さらには、相方がビレイが下手、とか、相方が分かっていない奴である、というリスクもクライマーが何とかしないといけないリスクと、現代フリークライミングではされています。

人工壁で十分ビレイを確認してから、行きましょう。人工壁でOKの人でも、外岩ではNGのことが多いです。

特にスラブ。古いクライマーに教わった人は、流して止めるなどと平気で言います。現代のロープは伸びが良いので、ほとんどの場合、流す必要はありません。流して止めたのは、麻のロープの時代の知恵です。

例外も、もちろん、あります。下のビレイヤーが重たく、パッツンビレイでオーバーハング下に落とされ、振られて岩に激突する場合です。これはスラブに当てはまりません。

■ 3)思考停止を避ける

私は白亜スラブの登攀では、相方に同情していたので、「敗退なしで!」を受け入れた結果、頼りないボルト1点に仲良くぶら下がる羽目になりました。

これは、この人が、まさか25m+35mが60mであることを計算できないとは思いもよらなかったためです。

敗退シナリオを想定していかないということ自体が、傲慢です。

しかし、敗退できないということに追い込まれるのは良く起こります。その時どうしますか?

懸垂下降したくても、ロープが足りない場合の、ピンチ策を考えてから行きましょう。

そもそもそうならないクライミングをするのが大事なのは言うまでもありませんが。

敗退できない場合、最悪ヘリレスキューです。

さて、そのルートは、懸垂の失敗や、ボルトの欠落などで、自分が死んで元が取れるルートですか?

リスクとリワードの比率を考えましょう。

私にとって白亜スラブは、お付き合いルートだったので、自分の命がそこまで粗末に扱われたことについて深いショックを覚えました。

いくら傲慢な人でも、相手の命がかかわることで、傲慢さを発揮するとは思わなかったのです。この時発揮されたのは傲慢さではなく、計算能力の無さ、かもしれませんが。

計算能力の無さが原因だとしても、現代日本で小学生レベルの算数が計算できない人がいることを前提としていなかったのでした。

こういうこともあるので、事前の相談にはしっかり時間を掛けましょう。

もし相手がそうしない人だったら登攀自体を遠慮しましょう

■4)実際にリスクをマスクする具体的な行動をとる

1)”その岩場で出てくる”ムーブのスキルを磨いてから行く

2)ロープワークを磨いてから行く

3)懸垂下降に熟達してから行く

4)十分事前にルートのリスクについて相談してから行く

5)自己登攀は双方がマスターしている

6)レスキューを双方がマスターしている

です。

これらの3つができると、あとは、お天気が良く、岩が渇いており、平日の空いている日に、早い時間に取り付けば、ほとんどのリスクはマスクできたことになります。


【リスク中心思考を身に着ける】アルパイン入門ルートの事例

■リスク中心思考を身に着ける

フリークライミングでも、クライマーとなるのに大事なことは、

リスク中心思考を身に着ける

ことです。これは、VUCA時代の生き方と同じです。

■ アルパインルートは、山+登攀、です。

私は、入門者時代、危険だ危険だと、私自身が全く危険を感じないのに言われて嫌でした…

たぶん、言っている本人が学習不足で、先入観で、私を心配していたようでした。そのために不必要にガイドを雇ったりなど、私の身の丈に合わない危険だコールを配慮したせいで余計なお金を使いました。あー損した。あのお金、みんな海外の登攀に使いたかったです。

例:阿弥陀北稜

1)どのような性格のルートか?知る

阿弥陀北稜と言えば、冬季登攀入門ルート。 雪山+登攀。

つまり、登攀は簡単で、環境だけが本格的、ということです。

入門者に高度な登攀は求められず、どの冬期登攀ルートに挑むにしても、共通項となる、前提となっている、リスクがマスクできるか?どうか?が問われます。

これはフリークライミングのルートでも同じです。違いはプロテクションです。フリーの入門ルートでは、プロテクション設置能力がほとんど問われない、というのが入門ルートの鉄則。(したがって40年前の入門ルートでボルト打ち替えが進んでいないものは危険です)

2)リスクを想像する

普通にシミュレーションするだけです。自己顕示欲のツールになると、このリスクを想像するプロセスが抜け落ちます。

山岳部などで、誰かに丸投げ、となっても、このプロセスが抜け落ちます。

年配の指導者は自分が教わった通りに教えることで、思考停止になります。

阿弥陀北稜を例にとると?

1)天候

2)寒冷

3)雪崩

4)道迷い

です。この4つがマスクできていれば、そうそう遭難しません。これらは、初級の雪山でも当然存在するリスクです。

阿弥陀北稜の遭難事例は、大体この4つとも全然、考慮しておらず、ガイドや指導者に丸投げ、って事例が多いです。

3)誰かに丸投げして、自分は思考停止、を避ける

これは日本人だけのリスクかも?海外であまり見ないメンタリティのような気がします。

誰が登るのか?俺、であり、私、ですので、いくら他の人が楽勝、と言ったところで、自分にとって楽勝かどうか?は別の話。

誰かと比較して、「○○さんに登れたから、俺も」とかなしです。私が登ったルートで、人が死んでいるルートはたくさんあります。40代のおばちゃん入門者が登れたからって、俺も…とあまりに準備不足で挑む人が多いので、大半の記録は消しました。

100歩譲って、楽勝自慢をしたかったら、もっと簡単な別のルートを選んでも、無知な一般市民は、すごいねーと言ってくれますよ(笑)。例えば、ガイド登山のエベレストとか。

現代の高所遠足、と言われています。

4)実際にリスクをマスクする具体的な行動をとる

1)天候…八ヶ岳の悪天候は南岸低気圧です。来たら行かない。天候リスクは、その山域に固有のものなので、固有のリスクをマスクするには、丸一年くらいは、その山域に通っている必要があります。

2)寒冷…八ヶ岳は国内トップレベルに寒いので、小屋前でのテント泊などで慣れを作ります。小屋泊りは卒業している必要があります。生活態度では、素手で金属を触るような人は失格です。皮膚を持っていかれます。また補給も考慮が必要です。慣れていないと補給がダメで凍傷になります。

寒冷になれるには、ワンシーズンくらいかかります。したがって、山岳部などで登山スタート一年目で行くのはお勧めはできません。若くても慣れと行動がセットで身につく前に、山に食われてしまいますよ。

寒冷への基本的対処方は、できるだけ動き続けることです。行動を止めると冷えます。なのでゆっくり歩くんですよ。汗をかいてはならない。そうしたことを学ぶためにロングルートを踏破している必要があります。

3)雪崩…どこが雪崩スポットか?はすでに公開されています。雪崩講習は受講済みである必要があります。

4)道迷い…ピークを見て、自分がどこにいるかくらいは目視判断できる必要があるので、八ヶ岳の全山縦走くらいは済ませておかないと頭に入らないでしょう。さらに山頂でどの方向に降りるか?でミスるひとが多数。コンパスも使えないとミスった場合にミスの回復が不可能になります。読図はマスターしておきましょう。

5)登攀

このルートは本来ロープを出すルートです。初心者はロープを出す。初心者とは4級が確実ではない者のことです。

したがってそのようなメンバーがいる場合は、ロープワークに習熟してから行ってください。

登攀能力は、無雪期マルチでは2グレード下。積雪期では3グレード下くらいでないと安全にならない。

この能力を人工壁で磨こうとしても無駄です。人工壁はオーバーハングです。冬季登攀の登りとなんら共通点がありません。人工壁で5.11(=6級)が登れる山岳部キャプテンって、何もスポーツクライミングのトレーニングをしていないのと同じことです。女性なら、3年かかる5.11は、男子は3か月、下手したら3週間で登れます。ホールドに手が届くか届かないかだけがそのグレードの課題だからです。

したがって、人工壁の6級では何も登攀を習熟したことになりません。アイスで4級がリードで登れるくらいになってから行ってください。

そうすると3グレード下になり、フリーソロで行っても楽勝です。

■ 私の阿弥陀北稜

私は、当然、登攀能力は、アイスクライミングで、氷柱の6級が登れるくらいと、楽勝になってから行ったので、リスクは自分ではほとんど感じませんでした。

アイス6級の登攀。

6級は当然トップロープですよ?




リード練習は4級で行います。6級がトップロープでホワイトポイントで登れる人しか、4級をリードするのは許されないからですよ?


これは5級寄りの6級です。下部は5級。上部で6級。

なので、下で落ちることは考えにくく、上で核心、なので、こうした課題で、6級を練習します。

スタミナのために何往復もしてください。
ほぼ全部6級。

完成形。

こういうのが、楽勝で(つまりホワイトポイントで)登れてから、4級のリード練習をスタートします。

岩場でも同じやり方でやりましょう。

登攀スキルのゆとりがリードクライミングには必要です。

トップロープノーテン(ホワイトポイント)で登れたら、もう俺は6級が登れる!と思うのは、間違っています。この愚かなリード事例を見て他山の石としましょう…。

これが阿弥陀北稜の登攀スタート部。けた違いに易しいのが分かるでしょうか?

ただのでっかい簡単な冬季ボルダーって感じでした。

当然ですが、アックスで登りました。岩を冬グローブで登る人、今時、いるんかな?

■ 山はインドアではない

山も外岩も、当然、天候リスクがあります。

従って、また下山時の道迷いリスクも高い。

八ヶ岳の場合は、どんなに晴れても、逆に晴れで安全であればあるほど、寒冷リスクは高くなります。

それらは、当然、雪山習得時代に、とっくの昔にリスクをマスクしているという前提が過去のアルパイン教育にはありましたが、昨今は、ジム上がりクライマーが、俺6級の人工壁が楽勝で登れるから…という理由で、阿弥陀北稜にで行く。

すると、やっぱり凍傷になったり、下山路を間違えて、阿弥陀南稜側に降りてしまったり…遭難が起こります。

何ができる必要があるか?を取り違えているからです。

私の場合は、寒冷リスクに対応する方法は、数年かけて雪山登山を独学で学んでから行きました。

みなさんも同じようにしてください。

ちなみに登攀が好きな人は、別に阿弥陀北稜、行かなくていいと思います。登攀スキル的には、なんてこともないルートです。

リスクに対するリワード、ご褒美を、登攀の面白さ、と捉える人からすると、リスクリワードレシオが悪すぎます。

フリークライミングでは、登攀の面白さ、をリワードと考えます。したがって、登攀の内容が、単調でつまらない場合、何もリワードがない…。

私にとって阿弥陀北稜をはじめ、八ヶ岳のルートは、八ヶ岳にあるというだけで好きなルートでした。

阿弥陀は特に冬季におすすめのルートが多く、阿弥陀中央稜、御小屋尾根、と次なるステップアップの位置づけとして、阿弥陀北稜に行きました。したがって、当然次は、阿弥陀南稜、次は阿弥陀北西稜と続くわけです。

そういう計画がない人が、なぜかアルパイン業界も増えました。みんな何を目指しているのか?

■ 昔の入門ルートは、現代の卒業ルート

阿弥陀北稜は、現代では、大学山岳部一年目の基礎的な山の位置づけとしてはふさわしくないルートです。おそらく、現代のレベルに適切なのは、年間山行数が50日と設定して

1年目は、歩くだけのルートで脚力と山の天候への対処、生活能力を高め

2年目は、沢でのロープワーク、スポーツクライミングで、登攀の基礎固め

3年目は、積雪期ロングルート、で防御力を高め、

4年目に、卒業課題として阿弥陀北稜、くらいでしょう。

昔の大学生は、年間130日山に行っていたから、先鋭的登山が可能だったんですよ?

今の学生にできるはずがありません。いくらインドアジムに通っても、基礎となる山での脚力も、思考回路、生活態度も見につかず、人工の環境では、当然ですが、自然界について学ぶことはできません。


2019/10/31

登攀のさらなる地平線を求めて

■ 本格的登山の成功の要因

私は一般の人ができないような本格的な登山をすることができるようになりましたが、これは登山においてやってきた質問が良かったからだと確信しています。

その問いとは?

ーーー
最悪の場合、どういうことが起こるか?
それに対処できるか?
ーーー

です。本格的登山では、敗退できる限り、どのようなリスクを取ることも可能です。

■ 目標達成のための質問

「どんな結果を出したいのか?」
「どうして欲しているのか?」
「達成するためには何をすべきか?」

私にとっては歩荷トレでした(笑)。あと週二日半年のビレイ習得。

今は山が端境期で、新たな目標が、経済的ゆとりになってしまいました。

■ 自分を力づける質問

「これの素晴らしいところは何か?」
「この問題の良い点は何だろう?」

■ ネガティブをポジティブに変換する質問
 
「どう使えるか?」
「(〇〇のために)この状況をどう利用できるか?」

■ うまく行かないことをやり遂げる場合 

「どうしたらより良くできるか?」 

何をやるにせよ、最初はうまく行くことを期待してはならないというのがポイントと思います。

山も、最初は一人で山に入れないくらいビビっていました。レイプされた事例とか人殺しにあった事例を持ち出して脅されていました。

■ プロセスを楽しむ

「このプロセスをどう楽しめるか?」

何を達成したかではなく、どう達成したか?が大切です。

マイケル・ジャクソンは成功していますが、不幸です。不幸であれば成功しても意味がない…なぜなら、なぜ成功したいのか?というと、幸福になるためだからです。

■ 「今、何を与えることができるか」

これはすでに熟達者の域です(笑)。

与えたことを気が付かない人もいますが、そうであっても、念押しはしないようにしています。

■ 最近の収穫は何か?

「この経験で何を学んだか?」

日ごろよくやっている。

■ 割合

質問の作成に8割の時間を割くそうです。実際、私はそうしているような気がします。

問いの作成が時間がかかる。データの収集期間だからです。私は山をやっているときは、

「山をやるとは何か?」

という問いを持っていました。

登攀になってからは、

「登攀で死なないためには、何をすればよいか?」

が大質問でした。ほかに

「登攀を含む山をやるとはどういうことか?」 → 相互協力して山を作れる人間性
「クライマーとはどのような人たちなのか?」 → 無邪気な人たち
「クライミング人生における成功とは何か?」 → 登攀で死なないこと&死ぬまで登ること

等の問いを持っていました。すべて答えを得ました。ほかに

「大体の日本の登攀ルートを登れるだろう登攀グレードは何だろうか?」
 (仮定:5.11登れれば日本中の登攀ルートはほぼほぼが登れるのでは?)

「自立したクライマーとは何か?」
「なぜギリギリボーイズに参加する最低要件は、40kg 5.12なのか?」 →リーダー要件
「20代の男性山岳部部員が目指すべき実力の目安とは何か?」→ 40kg、5.12
「なぜ日本の課題は私にとって楽しくなく、海外は楽しいのか?」→ ランナウト
「確実なビレイをしてもらうには、私は何をすべきか?」→ 落ちる
「私がクライマーとして成長するには何が必要か?」→ オキシトシン
「私はクライミングで世界に何が貢献できるか?」→ 別に貢献しなくていい
「〇〇さんは、なぜ私と登ってくれるのか?」→ ビレイが上手だから
「落とされて殺されないために何をするべきか?」 → ビレイ徹底解剖
「このクライマーに私が教えてあげられることは何か?」→ ありすぎ

というような数々の問いを持っていました。

■ 大きい山&マルチピッチ

「なぜ私は大きな山には燃えてこないのか?」

という問いも持っていました。簡単なマルチであれば、今のスキルでも、やはり、私も高いところが楽しいようです(笑)。高さは怖くなくて、高さではなく、

パワー消耗が怖い

みたいなんですよね。要するに上半身に自信がそこまでないって話。

師匠の青ちゃんなどどっかぶりアイスでのパワー持久力系で、超やる気スイッチ入っていました…超逆三角体形ですもん…。高さに惹かれるだけなら、傾斜が寝たトワンソンポッポが一番、と言うハズです。アイスは簡単なので、早晩距離や高さでは感動しなくなります(笑)。

私が問うべき問いは、

 「私が登って楽しい登攀ルートはどこか?」

で、米澤さんが教えてくれたところがぴったりでした。また後輩を連れて行きたいです。

それには誰が必要か?となると、そこに行ったことがない人で同レベルの人か、ビレイが確実でなくても、まぁ落ちないので、後輩が必要です。

■ 問題解決にかかる8:2の法則

問題解決そのものは、2割で良い、そうです。確かに問いができてしまえば、あとは問題の探求に突き進むだけで、データ収集の時間です。

■ しつこく続ける執着心

問いは、問い続けると、答えが得られます。答えが見つかった時、その問いの使命と、その問いによる成長が終わった時と感じます。

最近、私にはあるお別れがありました。それは、

 師匠の庇護のもとで登るクライミングは終わったよ、

という意味でした。

 あなたはもう十分クライマーとして自立できるよ

というのが天からのメッセージでした。

私は人生で明らかに問い続けていることが別にあります。

「私はどのようなミッションを抱いて生まれてきたのか?」

です。私はクライマーとしては、3流どころか、4流、5流ですので、クライミングができるということは、私の人生にとって何らかのツールであるはずです。

英語ができるということもツールでしかありませんし、外国に強い、とかもツールでしかありません。

私の生まれ落ちた環境…

 日本人であること、
 シングルマザーの生まれであること、
 女性であること、
 長女であること、
 もともと体力が高いらしいこと
 子供がいない女性であること

は、おそらく、そのミッションを遂行するために必要な資質であろう、と思います。

そのミッションが、分かりやすいもの… 田部井さんみたいな女性初〇〇峰初登頂、みたいなものであることは絶対にないです。それは外野の根拠なき期待と思います。

しかし、私に与えられた福音(ラッキーさ、選ばれている感じ)は、とても強く感じます。

この運命の糸がどこに私を手繰り寄せようとしているのか?

というのが私の現在の質問です。

以上質問そのものは、マイケル・ボルダックから引用しています。