My style

 ■ 原則1 オンサイト重視&ヨーヨースタイル  Onsight or Yoyo

私は、たとえケミカルに打ち換えられたスポートルートでも、安易に墜落してハングドッグするのは、ちょっとなーと思います。

安易な墜落をする人の言い分は、力をセーブしたい、という理由が多いです。

私は、オンサイトがダメなら、一度も落ちずに粘って、一旦クライムダウンして、ノーテンションでレッドポイントする。が、私の2番目に気に入っている登り方です。

 落ちる時って、落ちようと思って落ちている訳じゃありません。やむを得ず、落ちてる。

そこをあえて落ちて、ハングドッグで解決しよう、というので落ちるのは、安易に感じて、私の生き方と合いません。外道のような気がします。

大体、そもそも、ハングドッグで解決できた試しがありませんし(笑)。

ま、どうせ、ラッペルで作っているルートは、開拓者すら、オンサイトしていません。なのでこれは、開拓者に対するリスペクトがどうこうという話ではなく、自分がすぐロープにぶら下がるというやり方が嫌いなのです。

アイスだってトップロープ祭りですが、トップロープクリーン(ノーテンション)でしか登ったことがありません。

また5.10cのジャーマンスープレックスをTR→RPという手順で登り、そのあかつきに、

ガマスラブオンサイトをゲット、

というような、ある程度背伸びしたグレードでRPを稼いで、2グレード下に本気トライというのが安全な成長だと思います。つまり、5.12Aをオンサイトしたいときは、12cdをRP中ということになりますが、この幅は上達すると違うスケールなのかもしれません。

 ■ 原則2 ホームグランドを持つ  Have home ground

ホームグランドの山を持て、と習いました。つまり、あっちにいったりこっちに言ったり、色々な岩場を味見する前に、ホームグランドの山で技術を確立しろ、ということです。

ホームグランドの山では、何度も通うのが大事です。

フリークライミングの場合は、ホームグランドは、ジム、ということになると思います。

私のホームジムは、甲府のピラニア石和店、でした。

また5.10cのジャーマンスープレックスをTR→RPという手順で登り、そのあかつきに、

ガマスラブオンサイトをゲット、

というような登り方で、ジャーマンスープレックスはホーム課題ということになると思います。 

アイスでは私のホームは湯川でした。

■ 原則3 丁寧に登る God lives in details

簡単なグレードのところで学ぶべきことを学ばず、ロープワークがいい加減なまま、そのグレードを登る人が、当然、備えているだろうと思われる能力を備えないで、高度なルートに行くと、何かちょっとした掛け違いが起こった時に、

 死

という結末を迎えるリスクを単純に上げ続けているだけの活動になってしまいます。

その人はそれが山をやるということだ、と思っていて、そのような生き方が”かっこいい”と思っているので、改めることはありません。 

世俗的な言葉で言えば、ちゃっかり、ということです。真の実力はないにも関わらず、評判や名声だけは得たい、ということで、きちんとした努力をしていないのに、結果を求める心です。その人の世界観なので、山をする、しないに関わらないのかもしれません。

現代のクライミングは、一度もちゃんとしたクライマーになっていないと一般の人は実力が測りえない状況なので、ただクライマーってだけでスゴイ!と言われるという誤解があり、そこにちゃっかりが通用してしまう現状があり、それに便乗を許しているクライマーも存在する、という社会背景が、さらに同種の人を惹きつけ、簡単に得れた名誉に執着させます。(例:栗城さん、南谷さん)

そういうことが起こってしまうのは、山をするということが分かっていないためで、分かれば、そういうことはしなくなるものだ、と思っていたので、長い時間かけて、相手に教えようとし過ぎてしまいました…。あまり賢くなかった、死んだ弟を投影していたためです。

私個人は、実力で得たのではない栄誉をもらうことには、興味はありません。

今までそのような栄誉をもらったこともありません。

すべてコツコツとした努力が土台にあったと思います。運は、チャンスが来る前に努力によって準備ができている人にとって、チャンスとなるだけです。

努力が無ければ、運が来てもチャンスと見なして掴むことはできません。

■ 原則4 ロープドラッグした場合、完登と見なさない Rope drag is NOT a success

ショートでは、ロープドラッグした登りでも、ほとんどのクライマーは、オンサイトやレッドポイントと見なしています。 

しかし、これでは、山でロープを使うとあっという間に登れなくなります。20mしかないショートだから、なんとかなっただけです。ロープがスタックすれば、ビレイもきちんとされていません。=危険ということです。

 したがって、これを完登と見なす習慣は、山では通用しません(次の写真)。

下のアイスは、私がリードした結果ですが、どこにもロープドラッグはないです。このような登りを習得することが私がしたいクライミングです。丁寧に登れた時、深い充足というか、満足感を感じます。

完璧主義として非難する人もいますが、ただ登れただけで、ボルト一つに二人がぶら下がったとか、ロープアップできなかったのでセカンドには自己確保で登ってきてもらった、とか、私の中では全く成功とは感じられません。

そのため、セカンドに回収してもらうより、自分で回収したほうがいいと思っています。 

■ 原則5 クライミングカーストに屈せず、クライミングの多様な価値を推進する I don't worship climbing caste

これは、海外のクライマーのパートナー募集ですが、この人は若い男性のようですが、5cー6Bを登って何ら恥じることはしていません。

現代では、世界中で、子供、女性を含むクライマーが登っています。

誰もが同じ道を通るので、別に5.10代やナインを登って恥ずかしいことはありません。

クライミングカーストを押し付ける人には屈しません。

なんせ、登れる方がエライってカースト、クライミングの価値を貶めていますから。

指導者ですら、クライミングカーストにやられていることがあります。それは、ジュニアを育成するときに、相手にもっともっととけしかける暗示が、自分にも入ってしまったということでしょう。

5.14をビレイしている人が、「私はもう登れなくて、せいぜい8です」と謙遜しておっしゃります。

しかし、僭越ながら申し上げれば、グレードを上げることだけ教えるなら、馬鹿でも教えられます。指導者の真の価値は、クライミングの多様な価値を、子供たちに伝えてやること。クライミングの価値をできるだけ多く伝えることができる能力が指導者としての価値のものんさしであり、コーチ、指導者、ベテランの役目であり、登れさえすればオッケーというような教え方をした場合、なれの果ては、

  自己肯定感の低い大人クライマー

ということになります。超高難度を登るクライマーで、高難度以外の目標が見いだせない、そのような人はごろごろいます。

人間は誰でも、25歳ごろに肉体的な成長のピークを迎え、登攀の能力もそこから下がります。

2段を登る先輩が、「あの頃の俺はすごかった」と言っていました。30代の人です。したがって、大事なことはグレードに囚われず、クライミングに対して多様な価値を見出しつつ、良いインパクトを自分の人生に得て登る能力のほうです。

■ 原則6 仲間と助け合う…ギブ  Take care of each other

私が提供できる価値は、オールラウンドにクライミングを理解していることです。山のリスクも理解でき、トラッドも登れ、アイスクライミングも登れて、海外にも行けるクライマーは多くはありません。私はアイスクライマーです。

また、私が価値として持っているものは、その日の良きクライミングを組み立てる、ツアーコンダクト能力です。このままいけば、ヘッデン下山になるな…とか、すぐ感知できます。

迷ったときに道を見出す力である、読図も強みです。

ステップアップしつつ登るには、無理のないステップアップの課題を見出す力が、必須の能力ですが、これが失われたために、現代のクライマーは、ジムで選ぶのと同じようにグレードだけで選ぶしかなくなります。

■ 原則7 適切な適応行動をとる Take a proper educated action

開拓者によっては、中間支点の配置が下手くそで、2ピン目がランナウトしている場合もあります。ランナウトしていれば、ボルトが強固でもグランドフォールします。

ちなみにそのような配置をする開拓者は、地元では名前が割れています。九州では、新原さんのルートは危険と知られています。そのように、あらかじめ名前を聞いておき、その人の課題は避ける、というのが、適切な適応行動です。

ボルトが40年経過しているときに、バンバン落ちるクライミングを行うことは、不適切な行動です。正しい適応行動は、テンションで登る、落ちないで登る、です。

私は正しい適応行動をとる知性の高いクライミングを目指しています。

■ 原則8 合意形成を重要視する respect mutual respect

自分さえよければよい、という損得勘定でつながった関係で登りたいとは思いません。

双方が満足するクライミングライフを築いていきます。

クライマーと岩場のある地域自治体との関係も同じです。

仲間の安全は、自分の安全と同じように目を見張っているべきです。そうでなくては、クライマー失格というより、そもそも、人間失格、です。

過去、クライマー業界は社会不適応の人間失格者の集まりのようなところがありました。時代は変わりました。そのような人の掃き溜めにならない、クライミング教育の確立こそ、時代の要請、です。 教育がわざと社会不適応者を作り出すような行動は改めるべきと思います。