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2022/01/09

奥村講習2022 たぐり落ちのキャッチ

 ■ 動画


これくらいできる人のビレイでないと、ギリギリに挑戦する気になれないなー
なんせ外では、後ろに走るとかできる下地ないのに、なんで、リーチが短い私に、ギリギリクライミングを要求するのか?意味不明です…

■ 四阿屋インディアンフェイスの3ピン目での墜落をどう止めるか?もしくは、関西の”斜陽”をどう止めるか?

人工壁のリードでは、たぐり落ちは、”やってはいけない事例”として、かなり有名です。ので、わざとやる人はいないと思います。

その一方、アウトドア、外岩のリードで、たぐり落ちと同じような状態になるのが、

 ランナウト

です。私は、昔のクライマーは、10%の伸び率を考慮してボルトを打っていなかったため、明らかなランナウトでも、見逃してしまったのではないだろうか?と推理していました。

どうも、違うようです…(汗)。昔からダイナミックロープの伸びは10%だったそうです。

岩場にある課題のランナウトが、どのような理由で起きているものであれ、状況は一朝一夕には変わりそうにありませんから、

 備えなくてはなりません。

その備え方はどうしたらいいのか?

ということの答えが、たぐり落ちキャッチ練習、です。

■ 基本的に手繰り落ちてはいけないが、練習するなら、人工壁で。

この練習を外岩でするのは、かなり無理があります…が、実は私も外で一回、たぐり落ちして、墜落をキャッチしてもらった経験があります。小川山屋根岩1峰に、5.13を登る強いクライマーとお出かけした時に、私が登れる10bは近所に一本しかなく、クリップが遠く、かけようと手を伸ばした後で、バランスを崩し、落下。ビレイヤーは地面にお尻をついて止めてくれました。いや、あれはまずかったです…。

その日は、”今日一番危険なクライマーアワード”を受賞し、その日以降、万全のクリッピング体制以外は、クライムダウンです(笑)。

これ以外でたぐり落ちしたのは、まだ筋力が十分ついていないころ、無理強いされたリードで、腕力も握力も使い果たし、終了点が開けれなかった、というものです。

これはインドアの壁だったのですが、インドアの壁って高さが低いので、たぐり落ちたら、床まで50cmでした…。その場の全員が凍り付きました。

”だから、嫌や~、ゆうたやん…” 

と思いましたが、これは先輩格だと勝手に本人が思っている会の女性が私に無理強いしてきたリードでした…その人は、自分がビレイ経験を積みたかったのです…。私も軽いクライマーですが、私より軽いクライマーの彼女は、ビレイしても、誰も落ちない… 大体、分かっている人は、軽い女性相手のクライミングで、落ちるような登りはしないものです…。

というので、バンバン落ちあっているというのは、人工壁で初心者時代のラッキーな経験かもしれません。

私も74kgあった師匠の青木さんと組んでいた時は、青木さんの墜落をキャッチしたことは一回もありません。なんせ74kgvs48kgなので、私の方が吹き飛びますから、お互いにそれは納得ずくで、”テンショーン、あいよー”の関係性でした。

私の最初のパートナーの岩田さんは、68kgでしたが、けっこう落ちました…ので、岩田さんの落を掴んだふい落ちとか、ハング1ピン目の落下とかは止めています…。

■ ビレイヤーが脳しんとう

あんまり、落ちられるとビレイヤーが危険なのは、68kgの人も同じだったので、一度は、キャッチしたものの、2度目は私は自分が脳しんとうで壊れると思ったので、「誰か代わってもらえませんか?」と周囲の男性に頼んでビレイ変わってもらった…という思い出があります。

パチンコ状態=落ちてきたクライマーにビレイヤーが弾き飛ばされる…になると、ビレイヤーは、かなりぐったりします…。

この件ののち、下にセルフビレイが取れるか、常に木の根などを探すようにしています。あるいは、その課題は断るか、ですね。なにも1ピン目核心の課題を選ばなくても、課題はいっぱいあるわけなので。

■ たぐり落ちキャッチ、もしくは、ランナウトキャッチのやりかた

・うしろにさがる
・うしろに走る
・ロープを大きく後ろに引く

です。

このほか、岩の下にジャンプする、というのも知っています。例えば、川上小唄で落ちるなど…。

しかしながら言いますと…四阿屋のインディアンフェイスでは、基本的に後ろに走れるような下地ではないと思います。

この動画は、非常にうまい、ビレイ慣れしたビレイヤーですが、この動作をするゆとりが、四阿屋であるか?というと??

それは悩ましいだろうと思います。人工壁だから、このようなキャッチができる。動いている量も、そこまで大きくありません。

■ 斜陽

関西に斜陽という有名な課題がある。6件も重大事故が起きている、ランナウトした課題で、初登者はボルト位置のうち替えを拒んでいるそうだった…(今もそうなのかは、知らないが)

http://kkinet.sakura.ne.jp/oshirase/2016/160308_iwabamondai-osirase.pdf?fbclid=IwAR0ltdwHsnwz1QR_omhr00VNgBJoK9UbIJtLdzyC16wMEZAbL27X8Jv_zzQ

初登者いわく、「後ろに走ってビレイしろ」なのだそうである。きっと斜陽は下地が良くて、後ろに走れるほど、平なのだろう…

この斜陽は、関西ではかなり有名で問題視されているらしいが、四阿屋のインディアンフェイスは一体どうなのだろうか?トポになにがしかが記述されているのは、見たことがないが…。


九州にはもう4年もいるが、どの課題がアブナイというのは、聞こえてきたことがない。

■ 事故防止

当時も考えたが、やはり事故防止は

1)自ら、ランナウトしている課題かどうか?を見極める目を身に着ける

が、第一義的に大事であろう…。

落ちないで登れるなら、ランナウトだろうが、一向にかまわないわけで、ランナウトしている課題にはすべて取りつかない、ということは、必ずしも必要はない…(比叡とかリードしてしまった手前、こういわないとつじつまが合わないというのがあるが(笑)。ランナウトすると燃える、というのは、クライマーならというか、人間なら誰でもある)

ただし、適切にビレイしても、落ちたらグランドフォールすると分かっている課題に、落ちそうなグレードしか登れない場合に、取り付いて、本当に落ちたら、ただのバカである。

予測との一致、が重要だ。

しかし、最初から、ランナウトしている、ということをオブザベで出来ていない、というのが、基本的には、現代の外岩クライマーの問題であると思える。

2)ビレイヤーとして備える

ランナウトした課題にパートナーが、ホイホイと取り付いてしまう場合、
 
 ・制止する
 ・落ちても止めてあげる

の二つの選択肢があるが…。オブザベしない人は、大体イケイケの人が多い。いかんせん、言うことを聞かない。

なにしろ、最近のクライマーは、一度も外でリードしたことがなくても、インドアで5.11が登れているから、自分も当然、外岩で5.11が登れるはずだと思っているのだから…。グレーディングシステムによってミスリードされている。

ので、制止する、という選択肢は、大体、消える(笑)。

となると、落ちても止めてあげる、という選択肢になる。

その選択肢が取れるためには、人工壁でのたぐり落ちキャッチというビレイ達人技、が必要になる。

これがどれくらいの達人度合いなのか?ということは、この動画を見れば分かるはずだが…、イケイケクライマーの方はこれと同じ達人度を、相方のビレイヤーに要求しているとは、よもや思ってもいるまい…

あー、私はいいビレイヤーだったな~、ホント。ちゃんと止めてやるし、自分はバンバン落ちる登りをしたりしないし…

3)トポに明記&適正グレード

現代クライマーが、ランナウトした課題には取りつかないという知恵を発揮できないのは、オブザベ能力に欠如する、という問題もあり、それは、情報過多で自分で考える力が不足している、という根本原因もあるには、あるが…

クライマー側にも情状酌量の余地があるのは、このインディアンフェースは、5.10bではなく、5.10d、であるということ。ぜんぜんグレードが適正でない。

また、トポのどこにも、そんな危険は指摘されていない、ということ。

つまり、ひっかけ問題化、しているということだ。

意図的に、わざと、間違いを誘発しやすい状況になっている、ということ。間違いを犯したくないと思っている人にとっても、用心している人にとっても、ひっかかりやすいということだ…。

これは、比叡の白亜スラブのボルトがカットアンカーっていうのと同じだ。ボルトを見たらペツルと思っているクライマーは、普通にいる。

カットアンカーとグージョンの違いを教えてくれる登山学校なんて、いままで見たことない。師匠らから、リスクを指摘されたこともない(というか、師匠と仰いだ人がカットアンカーを打っていたんだが…汗)

ので、クライミング界全体がひっかけ問題ちっく、である。

その理由は、前述の記事にあるように、悪者を指摘しないように配慮されており、間違ったものや危険なものを指摘しないように配慮している、ということがあると思う。

したがって、ここでの作戦は、王道以外登らない、みたいなことになる。小川山だったら、例えば、クラックなら、小川山レイバック、カサブランカ、ジャク豆、みたいな順番があり、その順番を業界のあれやこれやが分かるようになるまでは、まじめに守る、ということが身を守る気がする。

4)トップロープ + RP で登る

これは、欧米の市民クライマーの皆さんでは、ごく普通に受け入れられている登り方で、欧米人は、市民クライマーであれば、日本人みたいに、オンサイトにこだわる人は少なかった。

私自身も、山梨時代は初心者だったこともあり、ほとんどの課題が、TR+RPだ。

いきなりリードで取りついた課題は、めったにない。例えば小川山レイバックは、TRで登ってから、3年後にマスターでリードしている。

これは悪い作戦ではない。なにしろ、ラッペルの課題は、実は開拓者でも、試登という名のTRをしてから、RPして、初登へ至っている。ので、なにがなんでもオンサイトに拘る登りをしなくてもいいのではないか?とラッペルの課題については思う。

また、登れるようになったルートを後輩にリードしてやり、トップロープをかけてやることは、そもそも、そんなに恩を売るような偉大な行為ではない…どっちにしろ、リードするのだし、そのあと抜かないでいるだけで、当人に特別、余計な労力がかかったわけでもないからだ。

大体が先輩のアップの課題が、後輩のアップアップの課題でTRで登っていれば、万事都合よく運ぶ。

グランドアップで開拓された課題については、グランドアップだけにランナウトしているということも含めて、つまり、恐怖グレードも含めて、力量であるはずなので、オンサイトに拘ることには意味があるような気がするが…。

例えば、私は、がまスラブ5.9は、オンサイトしかしていない…そのために、ジャーマンスープレックス10cをRPで登っているので、がまスラブは当然オンサイト出来る力量がある、ということだったからだ。

■ ルート指南

こういうルート指南、というのが、基本的には、トポの役目のハズなんだが…、基本的に、日本のトポは、課題名とグレードくらいしか書いていない。つまり、貧弱だ。

課題の長さ=ロープ長を決定するのに必要、
ボルトの数と課題の長さ=ランナウトを吟味するのに必要
開拓者名=ボルトの信頼性を審査するのに必要
開拓年=ボルトの信頼性を審査するのに必要
Rつき
Xつき
TR限定

などの表記が、全然、基本的になされていない…。その代わりに要らないムーブ情報が出ていたりして、えーこれだとフラッシュなのじゃ?と思える時もある。

ので、トポがトポの役割を正しく果たしていないので、トポを見て、何から登ろうかな~とならない…。せいぜい星の数を数えるくらいだ。

これが、海外のトポを知ると、いかに異常事態か?ということが分かる。海外のトポだと、最初の数ページに、岩場の成り立ちが書いてあり、いつ開拓されたか?ボルトはどのようなものが使われているか、書かれているし、事故時の連絡先病院まで載っている。支点の強度評価が載っているものもあり、当然ロープ長を決定するために、課題の長さも載っている。

ので、一つの岩場をどう戦略的に攻めようか?というのは、クライマー個人が自分の責任で考えられるように十分な情報が与えられている。

もちろん、海外の充実したトポを相手にしても、最終的には偵察して、登る課題を目視で決めるわけだが…。目で見ないで決める、ことはないにしても、それでも日本のトポはひっかけ問題になっているだろう。

充実した海外トポブックを見ると、日本のトポでは、なんとなく、不平等条約を結ばされているような気分になってくる…が、実際そのとおりなのだろう…。

昔のクライマーは、その不平等なところは、先輩後輩の中で、口承されたり、易しいところから順繰りに登ったり、岩だけでなく山のトータルな危険認知力があったり、そもそも山岳部に入るような若者=大学生で、頭が良い人限定だったり、したわけだ…

現代では、それこそ、口承される機会はないわ、クライマーの資質は千差万別だわ、ということになっている…

■ フリークライミングのビレイでも、後ろに走る練習はあり

奥村講習は、とても優秀な講習で、講習生のリクエストにも答えてくれる。

そのため、このようなたぐり落ちビレイのデモンストレーションも行われた…

が、講習生が実践することはない。

つまり、講習生のレベルで練習させると、墜落役の人が危険ってことだ(笑)。

これらを総合するとやはり、インドアクライミングジムで、クライミングのパフォーマンス能力だけを特出して向上させるという作戦は、事故につながりやすいということではないだろうか…。

なんせ、インドアで登っていて、一番ビレイの練習をするのには最適な状況にいても、インドアのビレイをそのまま外岩に持ち込めるわけではない…が、そのことが理解できるようになる時間を取らずに、パフォーマンスが伸びると…リスクの認知はおろそかになる。

もう、これは構造的問題で、昨今クライミングをスタートして、この構造的問題を逃れたクライマーというのは、かなり珍しい存在だろうと思う…。まぁ、私自身も、その珍しい人種なのだが…。

それは、講習会に出るという機会を掴む気持ちや、上級のクライマーから盗もうとする、あるいは、自分でペツルのサイトを調べるなど、総合的なものだと思う。大体の人は、技術講習をいやがり、パフォーマンスだけを高めることに興味がある。

強いから組みたいという人とではなく、そのように珍しい人種で、リスク認知とビレイスキルというクライミング技術が揃っているから登りたいという人と登りたいものだ。


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自分もアブナイ、相手もアブナイ






奥村講習2022

 ■ 2度目の奥村講習

に出かけてきた。今回は、座学がパワーアップしていた。また、奥村さんの教え方の特徴は、

してはいけないこと

を例示しないことだ。

私の考えでは、奥村さんの”やさしさ”が、そこに現れている。なぜなら、してはいけないこと、を言ってしまうと、どうしても、悪い人が一杯出てきてしまうため。否定されたり、責められたりしているように感じる人が出てきてしまう…。

なので、結果としては、してほしいこと、を聞いてもらえなくなる。

一番、分かりやすい事例が、壁から離れたビレイだ。

例えば、これ。


このビレイは、非常に危ない。し、クライミングシステムが、どのようにクライマーの安全を担保しているか全く理解していないことをデモンストレーションしている。

しかし、これを指摘しても、ビレイヤーはビレイを改めない。理由は、ビレイヤーには、クライマーの墜落の衝撃は、まったく伝わってこず、ビレイヤーは前に引かれて壁に激突する、ということはないから。

では何が衝撃を吸収しているか?といえば、1ピン目の支点と、クライマー。クライマーは、このビレイでは、ロープをクリップしたいと思っても、ものすごい力で引かないと、ロープを貰えない。また、落ちたら、バッツンビレイなので、壁にたたきつけられる。

これは、大きいビレイヤーと小さいクライマーとの関係でよく見られ、大きいクライマーが小さいクライマーに負担を強いている事例だ。

極端に重さがあるうえ、1ピン目でロープの屈曲が90度近くもあるので、ダイナミックロープとしての性能をほとんど発揮していないようなロープ使用になっている。

これが、下が軽く上が重たければ、前に引かれるというのは、必然になり、ビレイを見直すきっかけになる。

ところが、これくらい体重差があると、まったくビレイヤーは問題を認知せずにスルーできてしまうわけだ。

親が子供を危険にさらしているが、子供の方は、当然だが、それが危険だと分からないので、甘受して登る、ということになり、子供が超・きのどく、という事例。

このビレイヤーは、制動している手も、確保器より上にあり、確保器の操作自体も間違っている。




…ということを、奥村さんは、指摘しない

ということが、一番、勉強になった。

これは方法論的に全くの正反対なのである。 しかし、弁明をさせてもらうなら、初心者時代に私は師匠や先輩のきちんとした指導は受けていない。ので、どうしたらよいか?わからなかったので、自分で勝手に、ペツルのサイトやビレイデバイスのカタログを読みまくっていたのである。どうしたらいいか?を解決する先として、選んだのはペツル社や、その他の権威ということだ。

ここで多くの人は間違うのだろう…大体みな、

周りの人がどうしているか?を参考にする=日本人にありがち…ということだ。

そうすると、周りの人はだいたい9割の人が間違った技術を行っているので、正しくないビレイや間違った技術ばかりを目にすることになり、間違った技術が継承される。

支点ビレイもそうだろうし、ATCを使ったグリップビレイもそうだろうし、終了点直がけトップロープもそうであろう…

■ ペツルのカタログ

私が人工壁にデビューしたころは、次の人に教えるのは、ペツルのカタログを一冊渡せば、大体必要なことはすべて書いてあった…

が、昨今メーカーは、紙のカタログを出さなくなった。

ので、ペツルのサイトを読んでおくように、と後輩に言い渡しても、大体の人は読まない。

紙のカタログを渡しても読まないかもしれないが、ネット社会になって、さらに知識を求める人と求めない人の差は大きく開いたと思う。