2020/01/07

2020 JFAリボルト講習会のまとめ

注:全15記事、ですので、15記事全部読んでいただくようお願いします。

■時間的経緯

現代では、1985年から数年間のラッシュ時に打たれたボルトが更新期(30~35年)を迎えている。

逆に言えば、新しい岩場であれば、ボルトはまだ新しいため比較的安心 と言える。

 ・2000年以前の岩場 落ちない登り
 ・2000年以降の岩場 フリークライミングの岩場

■ UIAA 基準の強度

 25kN 

■ 現時点での強度を満たすボルト

25kN
・M10グージョン 
・ケミカル
・ケミカル強化された全ネジボルト

5~15kN
・カットアンカー
・M8以下のもの

できれば使いたくないもの
・オールアンカー
・リングボルト
・ハーケン

■ ボルトの安全性の見極め原則

1)材質 
2)種類
3)サイズ
4)施工者

■ 材質

 ・異種金属の組み合わせ=コロージョンによりNG
 ・コロージョンがない場合は、応力腐食による破断がありうる
 ・鉄=酸性雨によりNG
 ・消去法により、ステンレス、もしくはチタン等上位金属

■ 種類
 
 ・カットアンカー = 異種金属のためNG 施工後、効きが確認できない
 ・グージョン =OK  ほぼ360度方向の拡張、効きが確認可能
 ・ケミカル  =OK

■ サイズ

 ・M8 = 細すぎて強度不足
 ・M10 = OK
 ・M12 = OK

■ 施工者

ヒューマンエラーの可能性。施工ミス。多くは下穴が大きすぎるミス。粉塵の除去。

■ 現在危険視されているボルト 

ペツルの刻印があるケービング用ボルト

 ・マニュアル値 15kNしかない
 ・3cmしか穿孔されていない
 ・異種金属 3つのコンビネーションでできている

■ 現在推奨のボルト

 新規 = グージョン、もしくはケミカル
 リボルト = ケミカル

景観等の配慮のため。

■ ケミカルボルトの特徴

 ・景観等になじみ目立たない (アクセス問題再燃中)
 ・ドローに優しい
 ・敗退可能
 ・コスト高
 ・施工が難しい
 ・逆クリップが許されない

■ 1ルート当たりのコストの変化 

高価格化ということです。

 昔 支点一つ数百円 5中間支点として、ボルト数7 数百円×7=7000円~
           長いルートでも、1ルート1万円程度

 今 支点一つ最低1600円 1600×7=11200円 + 日当(人件費) 
           1ルート 3万円程度~

日当:特A級 時給2000円 施工スケジューリングができるレベル。かなり敷居が高い。すでに開拓慣れしている人ですら、B級で精いっぱい。日当が出るため、いい加減なレベルの人は雇用できない。そのためリボルト職人の講習会がある。

■ 個人の時代から、組織の時代へ

ルートへのコストが倍増したため、

 「個人のポケットマネーで施工できる時代は終わった」

という井上さんのセリフが印象的でした。まさしく、そうですね。

しかし、クライミング界への周知は、まだまだなようです。高額なボルトを打ち換えてまで、そのルートを登りたいという魅力があるルートは今後打ち替えが進むでしょう。

高額なため、受益者負担の原則を貫くとしても、ローカルな岩場のメンバーが情報網を持つ必要があります。

■ 記事まとめ

以下の記事が私の今回の、リボルト講習会で学んだことのまとめ、です。

1トピック、1記事の原則になっています。全部読んでくださいね!読まないと、このページの、まとめだけでは分かりませんよ!

17ミリのスパナを持ち歩きましょう
ケミカルアンカーでは逆クリップが許されない
ケミカルアンカーの理由
ボルト=負の遺産となっていないか?
ペツルだからと言って信用できない事例
山岳会代わりにJFA加入しましょう
JFAリボルト講習会 Day2
JFAリボルト講習会 DAY1
悲報: JFAのリボルト講習会に見学で参加してきました
ボルトの見極め まとめ マインドマップ
カットアンカーは、時代遅れ
ボルトの安全性 情報量少ない

■ 当方のボルト吟味の歴史

スタートは油山川で開拓者に会い、ボルトを見せてもらったこの山行(2018年11月)


から、正確な知識を得るまで(2020年1月)、約1年2か月かかっています。

この開拓者の方とは4か月程度でご一緒しなくなり、現在はボルダーをメインに頑張っていますが、ボルトに意識を高めようとして、研究したのが以下の記事です。

ボルトの質や配置については、疑問に思えることが多く、この山行で最初の気づきを得ています。

その後、日向神の支点、比叡のマルチに行くことで、かなり疑問を感じ、比叡では、打ち替えに検討されているボルトが、規格に見合ったものなのかどうか?という疑問を持ちました。結論的に言えば、検討されていたボルトでは、現代の要求するレベルには達していないようです。

こちらの図が、ボルトを見決める際のマインドマップです。大事なことは 

・M10グージョンが良く効いている
・もしくは、ケミカル

の2つ以外では衝撃荷重ではなく、静荷重にしておくなど、用心が必要ということです。

「バンバン落ちるクライマーは、俺、嫌い」と言った青ちゃんの言葉は、現代の岩場事情をよく理解し、反映したものであった、と言わざるを得ません。さすが長く岩やっているだけのことはあります。

小川山のように気軽な墜落は遠慮しましょう。 やはり、国際基準でのボルト整備が、着々と進んでいる岩場は、安心の上、安全です。安普請のツケは命で払うことがないようにしたいものです。後世に負の遺産を残さない、これを目指しましょう。