2024/04/30

【リスク中心思考を身に着ける】アルパイン入門ルートの事例

■リスク中心思考を身に着ける

フリークライミングでも、クライマーとなるのに大事なことは、

リスク中心思考を身に着ける

ことです。これは、VUCA時代の生き方と同じです。

■ アルパインルートは、山+登攀、です。

私は、入門者時代、危険だ危険だと、私自身が全く危険を感じないのに言われて嫌でした…

たぶん、言っている本人が学習不足で、先入観で、私を心配していたようでした。そのために不必要にガイドを雇ったりなど、私の身の丈に合わない危険だコールを配慮したせいで余計なお金を使いました。あー損した。あのお金、みんな海外の登攀に使いたかったです。

例:阿弥陀北稜

1)どのような性格のルートか?知る

阿弥陀北稜と言えば、冬季登攀入門ルート。 雪山+登攀。

つまり、登攀は簡単で、環境だけが本格的、ということです。

入門者に高度な登攀は求められず、どの冬期登攀ルートに挑むにしても、共通項となる、前提となっている、リスクがマスクできるか?どうか?が問われます。

これはフリークライミングのルートでも同じです。違いはプロテクションです。フリーの入門ルートでは、プロテクション設置能力がほとんど問われない、というのが入門ルートの鉄則。(したがって40年前の入門ルートでボルト打ち替えが進んでいないものは危険です)

2)リスクを想像する

普通にシミュレーションするだけです。自己顕示欲のツールになると、このリスクを想像するプロセスが抜け落ちます。

山岳部などで、誰かに丸投げ、となっても、このプロセスが抜け落ちます。

年配の指導者は自分が教わった通りに教えることで、思考停止になります。

阿弥陀北稜を例にとると?

1)天候

2)寒冷

3)雪崩

4)道迷い

です。この4つがマスクできていれば、そうそう遭難しません。これらは、初級の雪山でも当然存在するリスクです。

阿弥陀北稜の遭難事例は、大体この4つとも全然、考慮しておらず、ガイドや指導者に丸投げ、って事例が多いです。

3)誰かに丸投げして、自分は思考停止、を避ける

これは日本人だけのリスクかも?海外であまり見ないメンタリティのような気がします。

誰が登るのか?俺、であり、私、ですので、いくら他の人が楽勝、と言ったところで、自分にとって楽勝かどうか?は別の話。

誰かと比較して、「○○さんに登れたから、俺も」とかなしです。私が登ったルートで、人が死んでいるルートはたくさんあります。40代のおばちゃん入門者が登れたからって、俺も…とあまりに準備不足で挑む人が多いので、大半の記録は消しました。

100歩譲って、楽勝自慢をしたかったら、もっと簡単な別のルートを選んでも、無知な一般市民は、すごいねーと言ってくれますよ(笑)。例えば、ガイド登山のエベレストとか。

現代の高所遠足、と言われています。

4)実際にリスクをマスクする具体的な行動をとる

1)天候…八ヶ岳の悪天候は南岸低気圧です。来たら行かない。天候リスクは、その山域に固有のものなので、固有のリスクをマスクするには、丸一年くらいは、その山域に通っている必要があります。

2)寒冷…八ヶ岳は国内トップレベルに寒いので、小屋前でのテント泊などで慣れを作ります。小屋泊りは卒業している必要があります。生活態度では、素手で金属を触るような人は失格です。皮膚を持っていかれます。また補給も考慮が必要です。慣れていないと補給がダメで凍傷になります。

寒冷になれるには、ワンシーズンくらいかかります。したがって、山岳部などで登山スタート一年目で行くのはお勧めはできません。若くても慣れと行動がセットで身につく前に、山に食われてしまいますよ。

寒冷への基本的対処方は、できるだけ動き続けることです。行動を止めると冷えます。なのでゆっくり歩くんですよ。汗をかいてはならない。そうしたことを学ぶためにロングルートを踏破している必要があります。

3)雪崩…どこが雪崩スポットか?はすでに公開されています。雪崩講習は受講済みである必要があります。

4)道迷い…ピークを見て、自分がどこにいるかくらいは目視判断できる必要があるので、八ヶ岳の全山縦走くらいは済ませておかないと頭に入らないでしょう。さらに山頂でどの方向に降りるか?でミスるひとが多数。コンパスも使えないとミスった場合にミスの回復が不可能になります。読図はマスターしておきましょう。

5)登攀

このルートは本来ロープを出すルートです。初心者はロープを出す。初心者とは4級が確実ではない者のことです。

したがってそのようなメンバーがいる場合は、ロープワークに習熟してから行ってください。

登攀能力は、無雪期マルチでは2グレード下。積雪期では3グレード下くらいでないと安全にならない。

この能力を人工壁で磨こうとしても無駄です。人工壁はオーバーハングです。冬季登攀の登りとなんら共通点がありません。人工壁で5.11(=6級)が登れる山岳部キャプテンって、何もスポーツクライミングのトレーニングをしていないのと同じことです。女性なら、3年かかる5.11は、男子は3か月、下手したら3週間で登れます。ホールドに手が届くか届かないかだけがそのグレードの課題だからです。

したがって、人工壁の6級では何も登攀を習熟したことになりません。アイスで4級がリードで登れるくらいになってから行ってください。

そうすると3グレード下になり、フリーソロで行っても楽勝です。

■ 私の阿弥陀北稜

私は、当然、登攀能力は、アイスクライミングで、氷柱の6級が登れるくらいと、楽勝になってから行ったので、リスクは自分ではほとんど感じませんでした。

アイス6級の登攀。

6級は当然トップロープですよ?




リード練習は4級で行います。6級がトップロープでホワイトポイントで登れる人しか、4級をリードするのは許されないからですよ?


これは5級寄りの6級です。下部は5級。上部で6級。

なので、下で落ちることは考えにくく、上で核心、なので、こうした課題で、6級を練習します。

スタミナのために何往復もしてください。
ほぼ全部6級。

完成形。

こういうのが、楽勝で(つまりホワイトポイントで)登れてから、4級のリード練習をスタートします。

岩場でも同じやり方でやりましょう。

登攀スキルのゆとりがリードクライミングには必要です。

トップロープノーテン(ホワイトポイント)で登れたら、もう俺は6級が登れる!と思うのは、間違っています。この愚かなリード事例を見て他山の石としましょう…。

これが阿弥陀北稜の登攀スタート部。けた違いに易しいのが分かるでしょうか?

ただのでっかい簡単な冬季ボルダーって感じでした。

当然ですが、アックスで登りました。岩を冬グローブで登る人、今時、いるんかな?

■ 山はインドアではない

山も外岩も、当然、天候リスクがあります。

従って、また下山時の道迷いリスクも高い。

八ヶ岳の場合は、どんなに晴れても、逆に晴れで安全であればあるほど、寒冷リスクは高くなります。

それらは、当然、雪山習得時代に、とっくの昔にリスクをマスクしているという前提が過去のアルパイン教育にはありましたが、昨今は、ジム上がりクライマーが、俺6級の人工壁が楽勝で登れるから…という理由で、阿弥陀北稜にで行く。

すると、やっぱり凍傷になったり、下山路を間違えて、阿弥陀南稜側に降りてしまったり…遭難が起こります。

何ができる必要があるか?を取り違えているからです。

私の場合は、寒冷リスクに対応する方法は、数年かけて雪山登山を独学で学んでから行きました。

みなさんも同じようにしてください。

ちなみに登攀が好きな人は、別に阿弥陀北稜、行かなくていいと思います。登攀スキル的には、なんてこともないルートです。

リスクに対するリワード、ご褒美を、登攀の面白さ、と捉える人からすると、リスクリワードレシオが悪すぎます。

フリークライミングでは、登攀の面白さ、をリワードと考えます。したがって、登攀の内容が、単調でつまらない場合、何もリワードがない…。

私にとって阿弥陀北稜をはじめ、八ヶ岳のルートは、八ヶ岳にあるというだけで好きなルートでした。

阿弥陀は特に冬季におすすめのルートが多く、阿弥陀中央稜、御小屋尾根、と次なるステップアップの位置づけとして、阿弥陀北稜に行きました。したがって、当然次は、阿弥陀南稜、次は阿弥陀北西稜と続くわけです。

そういう計画がない人が、なぜかアルパイン業界も増えました。みんな何を目指しているのか?

■ 昔の入門ルートは、現代の卒業ルート

阿弥陀北稜は、現代では、大学山岳部一年目の基礎的な山の位置づけとしてはふさわしくないルートです。おそらく、現代のレベルに適切なのは、年間山行数が50日と設定して

1年目は、歩くだけのルートで脚力と山の天候への対処、生活能力を高め

2年目は、沢でのロープワーク、スポーツクライミングで、登攀の基礎固め

3年目は、積雪期ロングルート、で防御力を高め、

4年目に、卒業課題として阿弥陀北稜、くらいでしょう。

昔の大学生は、年間130日山に行っていたから、先鋭的登山が可能だったんですよ?

今の学生にできるはずがありません。いくらインドアジムに通っても、基礎となる山での脚力も、思考回路、生活態度も見につかず、人工の環境では、当然ですが、自然界について学ぶことはできません。