2025/12/01

盲点:「落ちた人をキャッチした経験がないとビレイができるとは言えない」回想録21

 ■キャッチという言葉

盲点である「落ちた人をキャッチした経験がないとビレイができるとは言えない」って点ですが、人工壁のクライマーなら、ほぼ毎回落ちるので、ほぼ毎回キャッチしていると思うんですが…

このキャッチという言葉も、松井さんに「そんな言葉聞いたこともないよ」とさも私が非常識であるかのように言われたことがあるのですが…。

えっ?!でした。

海外のビレイ習得動画ではフツーに出てきますけど。

これで思い出すのは、御坂山岳会の時に、「末端処理、なんて聞いたことがない、端末でしょ」と言われたことです。どっちにしても、ロープの端っこのことだと分かればいいのではないでしょうか?

ムンターをムンターと言わず、半マストとか、仮固定とか言いますし、クローブヒッチは、インクノットとか、固定とか言ったりします。

どの言葉も全部知っていればいいだけなんですけど、自分と一語一句一致する言葉でないと、相手を否定する、除外するというのも、どうなのかなぁと思ったりしました。田舎者の証拠っぽい感じというか。

というのは、畑仕事で、畝たてするときに、九州では、雨が多いので高畝が基本なんですが、私が畝を立てれないと、「畝たてもできんのか」と言われたんですが…山梨では、畝は要らない、乾燥しているから、畝立てすると作物、逆に育たないんですよ。でも、九州の人は自分の狭い了見がすべてになっているんです…。

山梨でも、「かけい取ってきて」と言われ、かけいって何ですか?と聞き返したら、そんなこともしらんのか?と言われたんですよね…。ハンマーだそうなんですが。田舎はこういう感じで、自分以外は全部ダメ、になっているのが特徴的です。

それとビレイのキャッチの件は似ていました。

技術そのものより「言葉の違い」にこだわりすぎて、本質が抜け落ちる場面って、登山・クライミング界隈では特に多いんですよね。

海外のクライミング動画・教本では “catch a fall” は完全に一般用語です。日本語圏でも最近の講習やジムでは普通に使われますし、「落ちたクライマーの荷重を安全に止めること」を表す明確な単語としてはむしろ便利です。

「そんな言葉聞いたことがない」という反応は、学んだ時代やローカル文化が違うだけ なんでは?

クライミング界にはよくあることで、

  • 古参が覚えたのは和製クライミング用語

  • 最近の世代は海外の技術から直輸入された用語
    …というギャップがそのまま出ているのではないでしょうかね?

■青ちゃんのザイルダウン事件

そう思うのは、インスボンで、「ザイルダウン」と一所懸命、青ちゃんが叫んでも、誰も気にしてくれず、私が『ロープ!』と叫んだら、OK~とみんなが見てくれたからです。

ザイルって、英語じゃなくて、ドイツ語なんですよ。別に日本でいう分には、どっちでもいいですけど。

日本のクライミング用語って、ドイツ語が多いですよ。語義的にもちょっと疑問な用語もあります。いつも、なんでザイル通過って言うんだろう?と思っていましたが、通過するのは、ノットですよね。

こんな感じに、まぁ言わんとすることは分かるけど、ちょっと突っ込みたくなるクライミング用語って結構あります。

奥村さんあたりが統一用語集作ってくれないかな?

現状では、いちいち気にしないで、都度何のこと?と聞きなおして、コミュニケーションのすれ違いを避けるのが大事です。

■落ちた人を止めたことがないから、真っ青になっている

御坂山岳会にいたころ、自衛隊出身の人が私と同期入会者でした。その人の自己申告では、九州にてクライミング歴5年。なんせ自衛隊ですから体力もあるだろうと、期待の的でしたけど。

でも、その人、蓋を開けた見たら、ビレイも分かっていないし、そもそも、フリークライミングになっていなくて、全部のヌンチャク引っ張りながらリードするんで、ぜんぶAゼロ

赤岳に全員連れていかれ、見極められるんですが、アイゼンワークもいい加減だな、と私は思いました。

それで、沢では死者も出ている滝をノーザイルで取りつこうとして、本人は自分の何がまずいのかわかっていないという行動があったりしました。

さらに言えば、最後は誰も登ってくれず、九州にいる私にクライミングに混ぜてほしいという連絡が来ました。周囲の人が誰も登ってくれないからだそうでした…。だって彼のクライミング、フリークライミングになっていないんだもん。

で、その人は九州でずっと登っていたそうなのです。5年と言っても年に一回が5回のことだったそうです。だから、分かっていないことが分かっていないまま、5年過ごせてしまったんですね。

この彼には引っ張り落とされそうになりました。私が人工壁をリードしていて、かぶりに来た、一つ目の核心、で、ロープを出してくれないんです。引っ張るなー!と私は言わないといけなくなり、隣でやっていた人がそれを見て「僕がビレイを代わりましょうか?」と言ってくれたので、変わってもらいました。

その後、もうビレイが何か、もう見てわかったかなと思い、再度自衛隊の彼に代わってもらおうとすると、「できません」ってことでした。

こんな感じで、ビレイも、動画とかで、先に座学で勉強しないと、自衛隊という人の命を守ることに使命感を持っているはずの人種ですら、逆に相手を殺してしまいかねません。

この人は、トップロープでも、引っ張るので、「引っ張らないで!」と声を荒げることになり…。

結局、当時も私はほんとに苦労してきたんですよ。

だから、これくらいわかっていない人の相手はもうしたくありません。

“分かっていないのに、分かっていると思い込んでいる”

という構造です。

これはクライミングで最も危険なタイプです。


技術が低いだけなら、教えれば伸びる。


しかし、“自分はできている”と思い込み、失敗の原因を理解しない人は事故を起こします。

特に…

  • A0が「普通の登り方」だと思い込んでいる

  • 全ヌンチャクを引っ張って登る(=確保を理解していない)

  • 落ちる前提のフリークライミングを理解していない

  • フォールを止めた経験がなく、フィーリングでビレイしている

  • トップロープですら引っ張る

これは 基礎の基礎が欠落したまま“登ってしまっていた” 典型例です。

■比叡で

私は九州の宇土内谷というアイスに興味があったので、福岡山の会の山本さんの主催で企画されていたので、それに参加して入会を見極めてもいいなと思い、出かけてきました。

が、そこで会った山本さんの弟子?かな、車を出してくれた方が、この元・自衛隊の方と同じだったんではないかと思われました。

というのは、山本さんが墜落して、その墜落を見て真っ青になっていたので、ビレイはさせられないと思い、「ビレイ変わって」と私がビレイを取ると、素直に従ったからです。

心理的に動揺していたんですよね。

というので、落ちた人を止めた経験がなかったんだろうと分かりました。

スラブでも、フェイスでもあるいは、オーバーハングでも、クラックでも、すべからく、外の岩場に出る前に、人工壁で、すくなくとも100回くらいは、落ちた人をキャッチして、人の体重がビレイ器にかかる感覚をつかんでおかないと危険ですよ。

不安なら、トップロープから。グリグリからスタートすればいいです。

というか、山本さんはアルパインクライマーなので、山本さんが落ちることがないので、後輩であるその人は落ちる相手をビレイでキャッチするという経験値を積めないのだろうと思いました。

また、この時は、私は初めて組む相手であるにもかかわらず、しかも、カムを持ってきていない予定外のクライミングであるにもかかわらず、リードさせられ、しかも、ザック付き。つまり、私の普段のクライミングより重たく、負担増。

しかも、私のリード中に、別のクライマーがスタートして、山本さんは一人で2名をビレイするという反則。

ああ、落ちなくてよかった。

初対面&予定外で、装備も不十分で、「重いザック背負わせてリードさせる」って、これは技術以前に クライマーとしての判断として完全におかしい ですよね。リード経験者なら誰でも分かりますが、
  • 荷重が増える

  • バランスが変わる

  • 重心が下がる

  • 体力の消耗が早い

  • フォールの可能性も増える

つまり「事故確率が上がる」ことを意味します。完全初対面のクライマーにやらせてよいことではありません。完全に“やらせている側の無自覚な暴力”です。

ホントに落ちなくてよかったです。っていうか、山の会って新人にリードしてもらって登る会なんだ、地に落ちてるなという印象でした…高齢化なんでしょうね。

これ、入会したら、完全にババ抜きのババつかみですよね?

 一人で2名を同時にビレイに関しては、完全にアウトですし。これは明確な「安全規範違反」です。商業講習でも、山岳会でも、国際山岳ガイドでも、同時に2人をビレイするのは重大NG行為。理由は簡単で、

・片方が落ちた瞬間、

・もう一方がノー確保になる、

・どちらの安全も保証できない、

・人間の注意力は二分できない、

・物理的にロープコントロールができない。


さらに言えば、私がほかのクライマーをビレイするときは、体重が軽いので下にセルフを取るのですが、その時も、適切にセルフを取っているのに「間違っている」と言われ、どこがまちがっているのか?と聞いたら、「うっ」となっていらっしゃいました。

要するに新人には正しいことをしてもダメ認定する自動的な行動になっているようでした。

マウントとりたかったんですかね?

いくら正しい行動をとってもダメってやるってことの中身は…。

・上下関係だけ強い
・技術検証が曖昧
・安全文化が属人的
・後輩が経験を積む機会ゼロ
・新人は何をしても叱られる

私がそこで感じた「違和感」や「危険察知」は、すべて正しいし、むしろ非常に鋭いものですが、それができたのは、山岳総合センターの先生たちから、こうあるべき、みたいな正しい側の態度を先に教わっていたからです。

そうでなければ、状況全体を冷静に把握できないで、間違った態度を正しいもの、と受け入れてしまわざるを得ません。

新人さんたちの不可解な行動はこれのためでは?

何で九州はこうなっちゃったんでしょうかね?アキさんなら、山の会出身なので、理由が分かるかもしれませんが、私はこれ以上自分の身を危険にさらす意味なし、と一回目のクライミングで判断しました。

これは愚痴や相手の糾弾ではなく、私がどういう経験から、この結論を導いたのかという判断の解説です。

こんな状態で、それでランナウト大好きなんて、どんな危険集団??って感じになってしまいます。

さらに、ランナウトしているからという理由で、5.8までしか登らないとすれば、なんかクライミングというゲームの本質が、違うものに変化している、って予感がしました。

それで、フリークライミング全盛時代に得るものがあるかと言われると、疑問でした。

●“新人=常に間違っている”扱い

●技術ではなく上下関係で評価

●間違いを説明できないのに否定だけする

●自分の無知に気づいていない

これって、ホント、九州の指導者たちには自覚してほしいです。

■指導者の指導者

樋口先生は、佐賀県の助成金で、日本中のトップクライマーの指導者と接点がありますから樋口先生が指導者の指導者って感じでいいのではないか?と私には思えました。

対抗意識ではなく、樋口先生を見て盗んで学べばいいのでは?

九州外からいろいろなクライミングインストラクターを招聘すれば、そのうち、何が正しいかということが、平均値的にたまるんじゃないでしょうかね?

なぜ地方の山岳会はこうなりがちか?

① 技術のアップデートが止まっている

30年前の知識のまま“教える側”になってしまいがち。

② 用語・慣例・上下関係の固定化

技術より“俺が上、相手は下”の文化になる。

③ 若手の流入が少なく、緊張感がない

結果として安全意識が緩む。

④ 国際標準との断絶(UIAA、AMGA 等の最新技術が入ってこない)

ほんと、僻地ってことですよね、一言で言えば。