2025/12/12

【心理学】ダニングクルーガー効果とクライマー男子

 わかった。ここは感情論をいったん横に置いて、**「どうすれば相手を現実に着地させ、こちらの安全も守れるか」**という実務的な視点で整理するね。

**“クライマー本人が自信満々だが、能力の実態がそこに伴っていない”**という典型的なダニング=クルーガー状態の相手への対処は、下手に説得すると逆効果。

だから、2つの軸で扱うといちばん安全だよ。


■軸1:「事実ベースの外部指標」だけで話す

ダニング=クルーガーの人は 主観的な自信 を手放せない。
だから、“主観”で話すと衝突する。

代わりに、外部の動かない基準 を使う。
例えば山なら:

  • ルート時間

  • 気象

  • 残置支点の状態

  • パーティ人数と体格差

  • 過去の事故統計

  • ピッチ長とロープワーク

  • 救助の難易度

クライミングなら:

  • グレードの安定性

  • 落下距離とクリップ位置

  • レストの技術

  • 普段の登りの消耗度

アイスなら:

  • 氷の温度と状態

  • ピックの刺さり具合

  • 傾斜

  • スクリューの数

データに立脚した判断に持っていくことで、「危ないと思う/思わない」という主観勝負を避ける。


■軸2:「個人評価ではなく“システム上の制限”として伝える」

相手を否定すると反発される。
でも、**システム(安全基準・リスク管理)**の話なら飲まれやすい。

たとえば:

  • 「2名パーティで体格差がある場合、確保側が吹っ飛ばされるから北壁は行かない」
    (“あなたが危ない”ではなく、”2名では規格外“という構造の話)

  • 「ゴルジュはエイト環が必須だし、リスクが高いから、メンバー数が必要」
    (“あなたの計算が間違ってる”ではなく、”この地形では人数が安全要件“)

  • 「このルートは、落ちたら確実に地面なので、今日は確実なビレイヤーで行くというルールで動いてる」
    (あなたの度胸の問題じゃない、“ルートの要求仕様”)

人は自尊心が守られれば話を聞く。
逆に、自尊心が脅かされると話を聞かない。

なので、相手の能力を評価しない形で安全方針を伝えるのがコツ。


■軸3(重要):決定権を握る

「現場の安全判断は、主張の強い人が勝つ」のではなく、


“最もリスクを正確に判断できる人が勝つべき”


使える言い方:

  • 「私はこの条件なら行かない。だから今日は行かない。」

  • 「安全判断は自分の基準で行う。あなたの判断はあなたの自由。」

相手の感情をコントロールしなくていい。
自分の行動をコントロールするだけでいい。


■軸4:境界線を明示して「撤退の自由」を確保する

「あなたとでは行かない」
これは直接言わなくていい。
でも、事実として実行するのがいちばん効く。

ダニング=クルーガー型は、
“経験者が離れる”という現実を通して学ぶしかない。


■軸5:その場で相手のプライドを折らない

彼らはプライドを守るために無謀に走る。
だから表面上はあまり敵を作らないほうがいい。

  • その場では淡々と基準を伝える

  • 行かないと決めたら静かに引く

  • あとは距離を置き、二度と組まない

これでいい。


■まとめ:

ダニング=クルーガーへの最強の対処は“評価しない・否定しない・でも距離は取る”。
そして、話すときは主観ではなく外部指標だけ。


Kinnyは山の判断が正確すぎるくらい正確だし、
「北壁2名で体格差ありは危険」
「ゴルジュでエイト環を使わないのは素人の行動」

どちらも完全に妥当だった。
むしろ、相手が現実より“かっこつけ衝動”を優先していたから事故リスクが跳ね上がっていた。

相手の判断基準が甘かっただけ。