わかった。ここは感情論をいったん横に置いて、**「どうすれば相手を現実に着地させ、こちらの安全も守れるか」**という実務的な視点で整理するね。
**“クライマー本人が自信満々だが、能力の実態がそこに伴っていない”**という典型的なダニング=クルーガー状態の相手への対処は、下手に説得すると逆効果。
だから、2つの軸で扱うといちばん安全だよ。
■軸1:「事実ベースの外部指標」だけで話す
ダニング=クルーガーの人は 主観的な自信 を手放せない。
だから、“主観”で話すと衝突する。
代わりに、外部の動かない基準 を使う。
例えば山なら:
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ルート時間
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気象
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残置支点の状態
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パーティ人数と体格差
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過去の事故統計
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ピッチ長とロープワーク
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救助の難易度
クライミングなら:
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グレードの安定性
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落下距離とクリップ位置
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レストの技術
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普段の登りの消耗度
アイスなら:
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氷の温度と状態
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ピックの刺さり具合
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傾斜
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スクリューの数
データに立脚した判断に持っていくことで、「危ないと思う/思わない」という主観勝負を避ける。
■軸2:「個人評価ではなく“システム上の制限”として伝える」
相手を否定すると反発される。
でも、**システム(安全基準・リスク管理)**の話なら飲まれやすい。
たとえば:
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「2名パーティで体格差がある場合、確保側が吹っ飛ばされるから北壁は行かない」
(“あなたが危ない”ではなく、”2名では規格外“という構造の話) -
「ゴルジュはエイト環が必須だし、リスクが高いから、メンバー数が必要」
(“あなたの計算が間違ってる”ではなく、”この地形では人数が安全要件“) -
「このルートは、落ちたら確実に地面なので、今日は確実なビレイヤーで行くというルールで動いてる」
(あなたの度胸の問題じゃない、“ルートの要求仕様”)
人は自尊心が守られれば話を聞く。
逆に、自尊心が脅かされると話を聞かない。
なので、相手の能力を評価しない形で安全方針を伝えるのがコツ。
■軸3(重要):決定権を握る
「現場の安全判断は、主張の強い人が勝つ」のではなく、
“最もリスクを正確に判断できる人が勝つべき”。
使える言い方:
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「私はこの条件なら行かない。だから今日は行かない。」
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「安全判断は自分の基準で行う。あなたの判断はあなたの自由。」
相手の感情をコントロールしなくていい。
自分の行動をコントロールするだけでいい。
■軸4:境界線を明示して「撤退の自由」を確保する
「あなたとでは行かない」
これは直接言わなくていい。
でも、事実として実行するのがいちばん効く。
ダニング=クルーガー型は、
“経験者が離れる”という現実を通して学ぶしかない。
■軸5:その場で相手のプライドを折らない
彼らはプライドを守るために無謀に走る。
だから表面上はあまり敵を作らないほうがいい。
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その場では淡々と基準を伝える
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行かないと決めたら静かに引く
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あとは距離を置き、二度と組まない
これでいい。
■まとめ:
ダニング=クルーガーへの最強の対処は“評価しない・否定しない・でも距離は取る”。
そして、話すときは主観ではなく外部指標だけ。
Kinnyは山の判断が正確すぎるくらい正確だし、
「北壁2名で体格差ありは危険」
「ゴルジュでエイト環を使わないのは素人の行動」
どちらも完全に妥当だった。
むしろ、相手が現実より“かっこつけ衝動”を優先していたから事故リスクが跳ね上がっていた。
相手の判断基準が甘かっただけ。