◆ クライミングにおける「自己愛的ニーズの補填」とは?
■ 定義
本来、幼少期に満たされるべき
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承認されたい(見てほしい)
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価値ある存在として扱われたい
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無条件に大切にされたい
などの“自己愛的ニーズ”が満たされていなかった場合、大人になってから別の形でそれを埋めようとする行動が起こる。
クライミングは、
・達成
・称賛
・勇敢さ
・特別感
が得られやすいため、「自己愛的ニーズの補填」が非常に起きやすい領域です。
◆ クライミングで見られる典型的な補填パターン
① 「ランナウトを喜ぶ文化」と自己愛の補填
● 行動
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不必要に危険なルートを誇る
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「ここはビビったら負け」「本物はここを登る」などの“勇敢さアピール”
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他人が怖がる姿を見て、優越感を得る
● 心理メカニズム
本当の優越 ≠ 危険への耐久力
なのに、
“危険に耐えられる=自分は強い・価値がある”
と短絡的に結びつけることで、
本当は脆い自尊心を守っている。
② 「教える側が初心者にリスクを押しつける」
● 行動
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初心者にボルト間隔の広いルートを薦める
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セルフレスキューも知らないのにマルチへ連れていく
-「こんなの普通」「若いうちは経験」と言う
● 心理メカニズム
これは、
「頼られたい」「必要とされたい」という自己愛的ニーズ
が満たされるため。
本当は「技術的に教える自信がない」「丁寧に説明するスキルがない」のに、
“頼られる自分”という役割で自尊心を補っている。
③ 「上達した人に対してのマウンティング」
● 行動
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「たまたま調子良かっただけ」
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「海外は簡単だから」
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「最近の若い人は…」系の価値の切り下げ
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成果を喜ぶ相手に冷水を浴びせる
● 心理メカニズム
他人の成長によって、
自分の価値が脅かされたように感じるため。
自分の内側で“価値の土台”が安定していないほど、
他人の成功を攻撃して自尊心を補填しようとする。
④ 「安全配慮を“怖がり”と嘲笑する」
● 行動
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ちゃんとした確保技術を学ぼうとする人を馬鹿にする
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ヘルメットをかぶる人を弱者扱い、ロープ出す人を馬鹿にする
-「岩は危険なのが当たり前」と言う
● 心理メカニズム
安全を学ばないのは
自由や勇敢さではなく、自己愛的脆弱性の回避。
安全学習=自分の弱さを認めること
になるため、それを避ける。
結果として、
“危険に近い自分”を誇ることで補填する。
⑤ 「人を見下すことでの自己価値補填」
● 行動
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グレードで人を序列化
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トップロープをバカにする
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岩場で年齢・体格をネタにする
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初心者に対し、保護ではなく、優位性を取ろうとする
● 心理メカニズム
価値の源泉を“強さ”だけに置く
ことで、自分の弱点や不安を見なくて済む。
しかしこれは本来の自尊心ではなく、
脆弱な自我を守るための補填行動。
◆ あなたが感じている「違和感」は正しい
あなたが長年抱いてきた
「なぜ命を大事にしない文化があるのか?」
「なぜ初心者だけが過剰にリスクを負わされるのか?」
という怒りは、心理学的に見ても整合性がある。
そこでは、
本来“自分で満たすべき自己価値”を、
他人のリスク・恐怖・失敗を使って補填してしまう文化
が構造的に根付いている。
これは「個人の性格」だけではなく、
**集団に共有されたナルシシズム(集団自己愛)**でもある。
◆ もしあなたが望めば
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もっと精密な心理構造モデル(TEAモデルでの解析)
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あなたの遭遇した具体的な事例の解剖
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防御機制(知性化・投影・反動形成)との関連説明
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国際的な岩場文化との比較
もできます。
どれを深めますか?