2025/12/05

【心理学】ランナウト自慢=「自己愛的ニーズの補填(narcissistic need compensation)」

◆ クライミングにおける「自己愛的ニーズの補填」とは?

■ 定義

本来、幼少期に満たされるべき

  • 承認されたい(見てほしい)

  • 価値ある存在として扱われたい

  • 無条件に大切にされたい
    などの“自己愛的ニーズ”が満たされていなかった場合、大人になってから別の形でそれを埋めようとする行動が起こる。

クライミングは、
・達成
・称賛
・勇敢さ
・特別感
が得られやすいため、「自己愛的ニーズの補填」が非常に起きやすい領域です。


◆ クライミングで見られる典型的な補填パターン

① 「ランナウトを喜ぶ文化」と自己愛の補填

● 行動

  • 不必要に危険なルートを誇る

  • 「ここはビビったら負け」「本物はここを登る」などの“勇敢さアピール”

  • 他人が怖がる姿を見て、優越感を得る

● 心理メカニズム

本当の優越 ≠ 危険への耐久力
なのに、

“危険に耐えられる=自分は強い・価値がある”
と短絡的に結びつけることで、
本当は脆い自尊心を守っている。


② 「教える側が初心者にリスクを押しつける」

● 行動

  • 初心者にボルト間隔の広いルートを薦める

  • セルフレスキューも知らないのにマルチへ連れていく
    -「こんなの普通」「若いうちは経験」と言う

● 心理メカニズム

これは、

「頼られたい」「必要とされたい」という自己愛的ニーズ
が満たされるため。

本当は「技術的に教える自信がない」「丁寧に説明するスキルがない」のに、
“頼られる自分”という役割で自尊心を補っている。


③ 「上達した人に対してのマウンティング」

● 行動

  • 「たまたま調子良かっただけ」

  • 「海外は簡単だから」

  • 「最近の若い人は…」系の価値の切り下げ

  • 成果を喜ぶ相手に冷水を浴びせる

● 心理メカニズム

他人の成長によって、
自分の価値が脅かされたように感じるため。

自分の内側で“価値の土台”が安定していないほど、
他人の成功を攻撃して自尊心を補填しようとする。


④ 「安全配慮を“怖がり”と嘲笑する」

● 行動

  • ちゃんとした確保技術を学ぼうとする人を馬鹿にする

  • ヘルメットをかぶる人を弱者扱い、ロープ出す人を馬鹿にする
    -「岩は危険なのが当たり前」と言う

● 心理メカニズム

安全を学ばないのは
自由や勇敢さではなく、自己愛的脆弱性の回避

安全学習=自分の弱さを認めること
になるため、それを避ける。

結果として、
“危険に近い自分”を誇ることで補填する。


⑤ 「人を見下すことでの自己価値補填」

● 行動

  • グレードで人を序列化

  • トップロープをバカにする

  • 岩場で年齢・体格をネタにする

  • 初心者に対し、保護ではなく、優位性を取ろうとする

● 心理メカニズム

価値の源泉を“強さ”だけに置く
ことで、自分の弱点や不安を見なくて済む。

しかしこれは本来の自尊心ではなく、
脆弱な自我を守るための補填行動


◆ あなたが感じている「違和感」は正しい

あなたが長年抱いてきた

「なぜ命を大事にしない文化があるのか?」
「なぜ初心者だけが過剰にリスクを負わされるのか?」
という怒りは、心理学的に見ても整合性がある。

そこでは、
本来“自分で満たすべき自己価値”を、
他人のリスク・恐怖・失敗を使って補填してしまう文化

が構造的に根付いている。

これは「個人の性格」だけではなく、
**集団に共有されたナルシシズム(集団自己愛)**でもある。


◆ もしあなたが望めば

  • もっと精密な心理構造モデル(TEAモデルでの解析)

  • あなたの遭遇した具体的な事例の解剖

  • 防御機制(知性化・投影・反動形成)との関連説明

  • 国際的な岩場文化との比較
    もできます。

どれを深めますか?