昨日は山に行っていました☆
教えたことリスト
1)登山道の等級
2)スラブはジムでは学べないこと
3)落ちて死ぬ衝撃が何キロニュートンか?何メートルから危険か?
4)5級の傾斜と4級の傾斜が幅広く、異なること
5)ルートファインディングしてから登る重要性 (石垣利用)
6)登る前に降りる方法を確認する重要性
山で
7)ギアの分担
8)尾根地形と谷地形、トラバースの見方
9)懸垂下降のさわり
10)現在地確認 方角、距離、緩急、標高差
11)大体早めに感じすぎることが多いこと
12)ヴィアフェラータの確保
■ 読図初心者は尾根を行くのより、沢沿いに下る破線ルートが苦手っぽかったです
読図というより、地形を読む、っていうことですが、尾根を素直に登るのは、登山道がない場合でも、初心者でも難しいと感じることはないようでした。
が、廃道気味の破線ルートで、現在でも、一応登山ルートになっているところを最後に歩いたら、不安に襲われたみたいでした。つまり、破線のほうが、恐怖心を感じたようです。
そこ、
1)なんとなく、沢沿いに行って、
2)進退が極まるたびに、補正すれば、
3)なぜか、いつも道に出る、
という、人生の縮図みたいな成り立ちの道なので、どちらかというと、
思考プロセスが山ヤだったら、みんな同じなんだよなーな道
なんですよね。
行詰まるたびに、補正すると、なぜか赤テープやロープが出てきて、ここだったんだなぁと分かる。事後承認付き、練習課題、みたいな感じです。
登山の王道は、
道迷いを内包しながら歩く、
ということです。
ただ誤解がないように言っておくと、今回、同行者たちが不安に思った道は、ピンクテープを探せ!式歩行スタイルでも、歩けます。まだ、上級向けとはいえ、一応、登山道なので、赤テープ追っかけも、できるんですが。
初めてそこを通る人はビビっていました(笑)が、それが今回の目的なので、良かったです。
まぁ、その心理を味わうのが、目的で、この怖さがないと、地図をきちんと見て歩こう、という意識づけが、そもそも根本的に生まれないので、初めに道迷いはありうる危険なのだと認知するために、ビビる体験をするのが、良かったのではないかと思います(笑)。
■人の手で整備された道=レールの上
こういう体験がないと、人の手によって整備された山を登り続けて、異様に自己肯定感が高まってしまうことが起こるんですよね…。
体力や登攀グレードで、行けるか?行けないか?の判定をしてしまうと、行けない山は、日本国内には、ゼロです…。なんせ、富士山は日本一の標高ですが、初心者でも行けますから…。
いくら体力があっても、私がいないと、このビビりルートに行くことはできなかったので、遭難時の心理の疑似体験ができてよかったのではないかと思います(笑)。
失敗の保険になるのが、先輩の役目なので。
■ ヒヤリハット
今回は、私は大きな反省点がありました。それは、髪の毛の巻き込み、です。
初心者の方が懸垂下降する場合、パニック耐性が、3人3様に違うことが分かりました。
私は、生い立ちから、不安に対する体制がかなり強いタイプなんです。ほとんど、パニックにならない。むしろ追い込まれると、冷静さが増します…。というわけで、三つ峠は2度目から、リードです。
でも、そんな私でも、1回目の懸垂下降を山岳総合センターで、やった時は、やっぱり、え?ってなりました…。
センターのやり方では、講師が横につかずに、一人で降りる。ので、私は、懸垂下降のセットや、自分がコントロールしている器具の操作が、自分がこれでいいのか?納得がいかない感じで降りた(自己信頼が育っていない状態)のが、嫌だったので、
反省で、
・両足で立てるところで、
・グリグリで(ATCではなく)
・一度手を放して全体重をロープに預けても、落ちない、という感覚を習得して、
・下でロープを引けば、落ちない(だけでなく、降りることもできない)という
確信を深めた後
・傾斜が変わるところが恐怖を感じやすいことをあらかじめ警告して
・さらに失敗に備えて、ノットを結ぶ
ことで、保険付きにし
・降りる量が10m超えないミニサイズ
・さらに隣で講師がぶら下がっている状態で教える
ことで、共感ベース強化
という、普通に教えられている懸垂下降(ATC使用、介添えなし、途中停止なし、ノット無し、基本20m程度)とは、サイズ感も保険の量も、だいぶ違うのですが…。
まぁ、やっぱり怖いですよね。初めてのことをする怖さは、誰にでもあります。
徐々に装備も、グリグリ→ATCみたいに、ステップアップすることだと思います。
■ 巻き込み
今回は、盲点だったのは、怖いとロープにしがみついてしまいますので、ロープが髪の毛の近くに来るということです。
ローワーダウンでも、荷物のようにズリズリとおろされている人がいますが、あの状態になってしまうと、体が座った格好にならずに、立っている状態になるので、髪の毛がロープの近くに来てしまいます。
髪の毛の巻き込みは、頭皮の剥離、になりかねない重大事故の原因ですので、髪を切る必要があり、それには、救助者が上からアプローチする必要があるので、再度、上に回ろうとしたのですが、仲間の一人がショルダーをしてくれたので、うまく髪の毛を巻き込みから抜くことができました。
体の体制をどうつくるか?というのは、かなり大きなポイントだということが分かりました。
水難事故のレスキューでも、水難者はしがみつきにより余計溺れてしまいます。水泳でも、頭を上げようと、もがけばもがくほど、逆に体は沈んでしまう…というパラドックス…。私も最近、やっと水泳のもがき動作を克服しつつありますが…
このパラドックスの登山バージョンが、
懸垂下降での体制、
なんですね。
何が本当に危険か?は認知には、知識教育が必要なことが分かりました
パニックによるとっさの反応でグリグリを握ってしまったら落ちてしまいかねないですし、ロープを握って、かかっていた体重を、ロープから手に移動すると、逆にハーネスが緩んで危険になってしまいます。
ロープに体重を預けず、腕力…手でロープにしがみつけばしがみつくほど、余計、懸垂下降は、難しくなるのです。
■ 一般登山道での経験が逆効果になる
一般登山道にある鎖やロープは、ゴボウ(しがみつき)による安全を象徴することになっているので、むしろ、害になっているかもしれません。
鎖やロープは、引っ張って、使わず、保険として使う
ように一般登山道時代から、習慣づけるのが、伝統です。
■ 懸垂デビューから心理ショックを排除するのは難しい
しかし、難しいのは、怖い気持ちに配慮しても、リアリティがない設定でやっても、身につかないし、先に登ることだけ覚えてしまうと、”登れても降りれない人”になっちゃうし…
心理的なハードルをどんなに下げても、どのようなことにも一回目はあるので、恐怖心をゼロにして懸垂下降する、というのは、非常に難しいです。
■ チェストハーネスはむしろ危険かもしれません
座った体制を作るための、定番が、フルボディハーネスで、今回は、幅広スリングでフルボディハーネスを作ったのですが、ロープがむしろ、顔の近くを通れてしまうので、
チェストハーネスをつける場合は、より、 髪の毛の巻き込みに注意が必要
かもしれません。一般にチェストハーネスって安全の代名詞になっていますが…。
■ 方針転換しました
器具を本人に使ってもらうのが大事だ、
という大方針でいましたが、自立のタイミングは人それぞれ、なので、器具を指導者がコントロールして一緒に降りる、振り分け懸垂のほうが、彼には良かったと思います。
判断の分かれ目は、感覚的にロープに全体重を預けられるかどうか?だと思います。
懸垂下降では、ロープから体重を抜いてはいけない。
預けられない人は、振り分け懸垂で、最初は懸垂下降を体験するのが良いかもしれません。
https://stps2snwmt.blogspot.com/2015/06/blog-post_86.html
今回は、この降りる人がどのような行動をとるのか?最初に予見できなかったのです。
先の2名はスムーズに降りれたので。最後の人はハーネスで不利だったのですが、ハーネスの機能の不利より、不安にドリブンされた影響のほうが大きかったと思います。
というのは、ハーネスは幅広スリングでのボディハーネスで、これは救助で使うのと同じにしたからです。
■ 対策
・顔の近くにロープを持ってこない注意喚起
・ロープに全体重を預ける感覚の獲得強化
・恐怖がある人には、緩傾斜での懸垂下降
・不安がある人には、振り分け懸垂での体験
■ その他、良かった点
・ルートファインディングの重要性を教えるとみんなすぐ分かる
・降りることは、登ることより、誰にとっても機会が少ないせいで、恐怖が先立つ
・降りることは、登る回数と同じだけついて回るので、降りることに心理的な慣れを作るほうが先決
・破線ルートでの道のロストについては、道を見出す、思考回路を教える
・3人、4人などの多人数での参加で、緊張緩和
・ピンチの人をショルダーしてくれた人がいてすごく助かった。
■ お勧めギア
・ペツル スパサ https://amzn.to/4co6nWv