2024/05/04

【リスク中心思考を身に着ける】安全は自分の中にある

 ■ 素朴な疑問:クライミングって危険じゃないんですか?

まぁ、当然思うよな~。やったことがない人は。

基本的に危険だと思ったら、行きません。

例えば、アイスクライミングで、

 危険で壊れそうなところに行く人=バカ

と相場が決まっています。

■ ハイキングレベルで行動原則を身に着ける & 自分なりの基準を作る

これは、ハイキングのレベルの時から、雨の日は行かない、などの原則によって強化される行動原理なのです。

多少の雨で行くとしても、雨合羽を持っていくとか、雨量が一時間50ミリだったら行かない、とか、いろいろ

 その人なりの基準

を作っていきます。

■ バカとトップがやっていることが素人からは同じに見える

もちろん、基準が高い人がすごい人。

ところが、これが内的基準なので、傍からは、同じに見える、という問題があるのです。

例えば、登山界で有名な頓珍漢に栗城さんがいます。栗城さんは、素人さんには、すごい登山家に見えてしまいます。

これは、例えば、多少の雨で行くとして、雨合羽持っていかない人が風邪をひいても、タダのバカでしょう?

同じことで、氷が薄くて危険だと分かっている時期の氷瀑や気温の時に登って、落ちても、タダのバカです。

栗城さんは、明らかに無謀と分かることをやっていて、死にました。

本当に、基準が高い人も世の中にはいます。例えば、世界的クライマーの山野井さんなどは、雪崩の中生還したりして、尊敬を集めていますが、間違っても、わざと雪崩に向かって行ったわけではないんですよね。そんなことしたら一発で終わりです。

■ わざとやるバカと仕方ないリスクの峻別が難しい

私が困っていたのは、わざと自分を破滅的な羽目に持ち込んで、周囲からの承認を得ようとする人が、私をクライミングパートナーにしていたことでした。

一緒に行ってくれる人がいなくて困っていそうだったんですよね… 

しかし、25mと35mのピッチを50mシングルで登ろうとすることは、最初から10mもロープが足りない訳ですから、わざと雪崩に向かって死んでいる人と同じです。

いくら、私にいろいろ技術があってもフォローしきれません。そもそも、登る前から遭難、です。

私の落ち度は、まさか、そこまで知性が低いとは思っていなかったことです。そこまでは読み切れんかった。

■ 危険だけれど、行かないといけない場合 = アドレナリン

しかし、危険だけれど、行かないといけない場合も出てきます。

ユージさんのデイドリームの後半では、オーバーハングを終わって、登り終わったところ、スラブで、落ちれない場面が出てきています。

あれは正当なランナウトです。プロテクションが取れない。

動画を取っているスタッフに、「グランダー、グランダー」などと自分が危険を認知していることを声掛けしています。

この声掛けが大事で、

 分かってるよ~ ここで落ちれないことを。

って意味です。ベテランクライマーは良くこうした声掛けをします。

逆に素人クライマーは、

 燃える~ 

と言ってこうした状況を歓迎しています。これが、アドレナリンジャンキーの正体です。

なんか、これを求めるように自分から向かって行ってしまうんですよね。みんな。

でも、楽しいのは核心部分で、ランナウト部分ではないんですよ。

私なんて、自分が楽勝で登れる5.8でも、ランナウトしていたら、真っ青です。簡単なルートなのにストレス。

■ 現代レベルと40年前レベル

ユージさんの登っている課題は、5.14bです。それで最後はランナウト。しかし、ランナウトの箇所は、当然5.14ではない。もっと簡単です。

ところが、昔の人って、5.8で40mランナウトさせていたんですよ…。

たった5.8ですよ?

5.8がどのようなレベルか?というと…?

私、クライミングをスタートして、まだ3カ月のころ、オンサイト(見て一発で登れる)しています。誰でも登れて落ちないようなのが、5.8って意味だからです。最低限の運動神経と言うか。

このころから男性の基準で裁かれており、40代の初心者の女性に対する処置としては厳しいと思います。頑張らせすぎです。私は後輩に教えるときは、こんな教え方しません。落ちても責任負えません。

当時41歳。20代男子ではないですからね…。

ちなみに、5.8 40mランナウトのルートが作られたのは、40年ほど前と思われ、作った人は、当時、若い男性、だったと思います。その基準を3か月前にクライミング始めましたという40代の女性に当てはめたわけで、現実認識がおろそかすぎますね。

昔の初心者って18~20代、男子、です。

さて、昔の初心者に該当する若い男子は、現代では、一般クライマーでも5.12は登ります。高校生など、その日に登ってしまいます。しかし、それは安全が確保された人工壁の場合です。安全が確保されているから登らせてOKなわけです。

つまり、(外岩の基準)と(インドアの基準はそれほど違う)ということです。

言い換えると、(5.8ランナウト)は、簡単でも非常に危険なので、登攀力のゆとりという保険なしでは、登らせられないということです。

一方、5.12で安全なルートであれば、現代ではクライマーとしてのスタート地点に立ったという程度の意味です。

■ 人が落ちて死んだことが、自己肯定感の源泉になっている

ところが、こんな低いレベルでも、最近のジム出身クライマーは登れず、落ちます。

というのは、外の岩場での、経験値がないからです

これは今も昔も変わらず、ただし、昔は、最初の外岩で、オンサイトを求められることなどなく、誰かにロープを張ってもらって、安全に5.8を何度も登って登れるようになってから、登ったのが習わしです。

現代ではこの習わしが無くなっている。

その上、死亡を含む重大事故が起こったことが、古いクライマーらの自己肯定感の源泉になってしまっているのです…。

俺もまだまだやれるなって言う…(汗)。

それは、若い男子が、ぽろぽろと落ちるからです。しかし、そんな不利な状況に立たされた人と自分を比べて公平な判断になると思います?ならないですよね?

たぶん、女性には、ランナウト=落ちないで登るよう指導がある、と思います。

これが、たぶん、男子にはない。

なんか男性は、命を大事にされていない?仲間意識で守られていない?むしろ、フレネミーのような扱いになっている?っていう感じです。

男子、お気の毒。

おそらく、40mランナウトを作った当時のクライマーたちが、自分が時代遅れになり、そうしたルートが真実の意味では、すごくない…ということに、気遅れや現実を受け取ることに、抵抗を感じているからではないでしょうかね?心理カウンセラーが必要なのは、この人たちのような気がします。

昔は俺だって…

そうですよね、確かに。あの頃はそれで大変でしたよね。

でも、時代は変わったんですよ。

現代では、無意味となってしまった場所で、簡単な場所だからランナウトしてもいい、と教えることは、そのクライマーは、ほんのちょっと偶然で、早晩、死んでしまって、もっと上のルートにステップアップできない、ということになります。

易しいところでできないことが、難しいところでできるはずがないでしょう。

もし、クライミングで若い人を応援したいと思ったら、簡単なところから確実にプロテクションを取る習慣づけが必要なんですよ。

ユージさんはランナウトしていますが、ハング終わりのスラブ、あれ難しいと思います?

難しくないですよね?

あそこで落ちるようなレベルだったら、最初から取りつかないわけですし、良く映像を見るとフィックスが他にも張られています。

私も、上で7mランナウトした課題を山梨時代にやりましたが、隣にフィックスが下がっていました。

いざとなれば、それをゴボウすることができる。クライミングの基本は、冗長、です。

そうしたことは、講習会以外では、言語化されては伝えられません。

日ごろのクライミングで、見て、盗むもの、なんです。

自分より上のクライマーの行動を見て覚えるのですが、最近は、ちゃんとしたクライミングに連れて行っても、肝心のクライマーが見て、学ばないのです。

師匠の青ちゃんとのインスボンに、相方を連れて行ったのはそのためですが、結局、彼は、青ちゃんを見て、何を学ぶべきか自体も、分からなかったようでした。残念。

豚の首に真珠、というか、馬の耳に念仏、みたいな感じなんですよね…

■ 現代のクライマー対策

となると、入門ルートと言うのは、そういうクライマーの実態に沿ったものである必要があります。

つまり、ボルトの場所は、

 下部で頻繁、上に行くほど少なくなっていく、という風に配置する必要がある

ということです。

彼らはセカンドで連れて行っても学ばず、すでにプロテクションが打たれたルートを自分でリードしながら、ボルトの配置事態を学んでいくという体制にあるからです。

昔の教え方では、教えられることができないんですよ。

私はHSPなので分かったんだと思います。ほかの人は私ほど良く考えていません。