2022/01/18

弟よ…という思いを込めて。根子岳へ行くな

■ 根子岳へ行くなへのある誠実なクライマーからの回答

根子岳の登攀について、福岡の若い人の会から、回答が来ました… 

同じような人がたくさんいるのではないか?と思うので、公開回答します。

このような件について、ベテランからの知恵が得られる場、SNSがあれば良いのではないか?と思いますが、現在、それは望みえないことなので…。

■ 万人が登れるわけではない & 高齢化 & 成長戦略の不明化

いわゆる山ガールでも高齢者でも登りに来る”一般登山”の山岳会…つまり、誰でも登れる山しか登らないって意味です…

そこから、ある程度、山に選ばれた人しか登れない”アルパインクライミング”へのステップアップで、山に選ばれた人ってどういう人なのか?という事例、指導者や良き模範となる人が、昨今は、高齢化で、身近にいない、そのため、成長戦略を立てられない、という問題が克服できないでいる…ということもあるかと思いますので、公開返答という形で、考察してみたいと思います。

≪法則≫
 一般登山の山=基本的に誰でも登れる
 アルパインの山=その山に選ばれた人しか登れない

■ 根子岳が脆くて危険か?

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・震災後の根子岳に登ったことがない奴が語るべきでない 
 → 登るべきでないところを登れというのは、挑発であり、無理強い
 → しかも、万人が登れる山でもない(吉川さんの書籍参照のこと)

・岩質は阿蘇の鷲ヶ峰と異なり、しっかりした岩が多い 
 → 地震で変化する

・震災の影響で崩れたり、脆くなっている
 → そりゃそうだ…地震なんだから…

・現地で見ると、脆いところとしっかりしたところはっきりわかる 
 → 地質の中身までは分からない ボルトの内部劣化と同じ 
 → 経験の量が増えてから、その判断力が付くが、基本的に初級ルートに行くようなアルパイン初心者にその判断力はない。

・現在、登られているルートは、地震や風化の影響がない比較的安定した箇所 
 → それは、どう、誰が判断したのか?判断した人を個人的に知っているなど、根拠が重要。例えば、八ヶ岳の中山尾根は、無雪期にも登れるが、一般の人は、漠然と脆いと嫌って登らないが…個人的に、それが確証で言える人を知っており、具体的な指導を得ることができれば、話は別になる。ブログで見た、というのは、これに含まれない。

・根子岳の山域全体を危険として否定するのは、もったいない。九州には他に入門向けルートがない 
 → 損得で判断するより賢愚で判断すべし。この思考法だと、”せっかく北アに来たから無理をする”と同じになる

・直近の根子岳の事故は、懸垂下降の失敗によるものと想像 
 → 懸垂は失敗が許されない
 → 他山の石とし、懸垂程度は確実になってから出かけるべし
 → バックアップのとり方は知っているか? 懸垂下降のオーダー(降りる順)は分かっているか?すっぽ抜け対策は出来ているか?途中停止はできるか?
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吉川満 『九州の山歩き』


■ 考察

脆い岩場をどう処しているか?

この会の人は、上級クライマーの対処法を観察する機会がないのではないだろうか?

上級クライマーというのは、マッターホルンのヘルンリ稜(一番簡単なルート)をガイド登山で登る人の事ではなく、マッターホルン北壁(40~50ピッチあるそうです…)を登った人の事である。

どんなに有名な山を登ったとしても、ガイド登山で登っているかぎり、その人の”山力”は、一般登山者と同じであり、リスクに対処する能力は、ぜんぜん育っていないので、ガイド登山で、海外の山に登ったという人を尊敬するようなことは、まぁ、分かっていない者同士の関係でしか起こらない。

≪法則≫
 登山客=ガイド登山で登る
 登山者=自分でガイドと同じ見識をつけて登る

■ 上級クライマーの作法 その1 労山事務局長川嶋さんの事例

それで、私自身が目撃した、上級クライマーの作法を上げてみたいと思う。

労山の事務局長川嶋さんは、K2に登っていることで、”上がり”になったクライマーである。K2も、昨今は地に堕ちてしまい、今ではエベレスト並みに、登山者が行列を作る山になってしまったそうだが、おそらく川嶋さんの時代は、まだそうではなく、きちんとした山やしか登れない山だったろうと思う。

さて、川嶋さん、東沢釜の沢での沢講習で、サブをしてくれた。その時に印象的だったのが、

チェストハーネス

だ。東沢釜の沢と言えば、日本三大デート沢に数えられるくらいで、簡単な沢、渓相が良く、入門の沢として知名だ。その沢で、K2に登った人がチェストハーネスをしてくるというのは、どういうことか?

それを見て考える力が、山やの成長に必要な力だ。

≪法則≫
 一流クライマーは安全対策にぬかりがない

■ アイスクライミング歴40年の青ちゃんの選択

私の長野の師匠、青木啓一さんは、会ったとき、すでにアイスクライミング歴40年だった。

私は、彼からじかにパートナーとして、アイスを教わっているので、小屋番をしている沖田君の次に教わった人、ということになる。

青ちゃんは大阪労山登山学校の校長先生だったそうで、私が大阪での栄光を知らないので、もっと評価してほしかったみたいで(笑)、一杯、昔登った山の話をしてくれた。いわゆる、自慢話というやつだが…一般に若い人は嫌うが、その話の中にも、聞くべき体験、知恵みたいなものは隠されていると思うし、そもそも、アイス歴40年の人と組めて、光栄だと思ったので、アイスのサイトは別に立ち上げている。ビレイの仕方などが、アイスでは、特殊である。

私は1シーズン35回アイスに登った。関東では8年分を1シーズンに登ったことになる。ラッキーでも年に1回しか登るチャンスがない九州岳人の経験値と換算すると、35年分の蓄積で、そう簡単には追いつけないと思うが…、九州の人に「アイスなら、〇〇さんに教わるといいよ」とか言われて、絶句した…。たぶん、教わる立場ではなく、教える側になると思う。いや、もっと悪い。自分が一番登れるのに、誰も言うことを聞かないという立場に陥り、望んでもいない危険な目に遭わされそうな気がする。要するに、それならお前がリードしろよという話になり、全くなっていないビレイでリードさせられる羽目とか…。そういえば、比叡で事実、そうなったよなぁ…。

赤岩の頭というバーチカルアイスがある。初級のアイスだ。これに頑として、青ちゃんは、行かなかった。同じ青木君という名前で、長身で気持ち良い、まだ20代の若いクライマー君がいた…一緒に、相沢大滝に行った子だ。

彼は、赤岩行ったんだが、骨折して帰ってきたんだよなぁ…。推して図るべし。

■ 飛竜

飛竜を計画した時も、青ちゃんは、私が懸念したように、お前が一番登れるんだからリードしろ、という流れになり、したくないリードをさせられる羽目になることを予期して、来なかった…

飛竜は、めったに凍ることのない幻の滝、と言われている甲斐駒アイスである。

ギリギリボーイズの人でも、飛竜?行くんなら俺も行く、と返事するようなところである。

≪法則≫
 分かっていない人に分かっている人の方が追い詰められるような場合、行かないことが唯一の安全対策。

■ 鎌ナギ

南アルプス深南部は、関東の登山者からすると、憧れの地である… 山が深い。九州で言えば、脊梁みたいなところだ。ただし、もっと深いけど。

そこに鎌崩(カマナギと読む)という場所がある。

これは、『俺は沢やだ!』を書いた成瀬さんのパートナーをしていた、トシゾーさんとの通信記録だ。彼は、5.13代が登れ、40kgが担げ、海外の沢経験も豊富だ。

これは、会話のコピペ。
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※鎌崩へ行ったことのある人の弁…ここから…

妻が鎌崩を300mほど巻き下がって登り返したことがあり ますが、かなり大変だったそうです。 過去、死亡事故も起きているため、鎌崩は要注意です。 

脆い鎌崩に行くにはそれなりの力量のあったパーティーで行 くべきでしょう。

でなければ滑落事故や遭難になることが予想されます。

装備ですが、もちろん登攀道具一式です。 プロテクションは出だしは灌木、途中は大岩にシュリンゲを巻き付けた記憶がありま す。ランニングは取れなかった記憶があります。まあ人数は私とパートナーの二人でしたので、ロープは1本で十分でした。

以上、引用終わり…

というのがトシゾーさんの回答で、これになんと、標高差300mを1時間で歩くという基本的体力もない人を連れ、ロープワークの経験がある人は、リーダーと私だけという状態で行ってしまったのが、鎌崩という山でした。リーダーはベテランでした。

九州では、根子岳に相当すると思っています。

■ 一般登山の上級とアルパインの初級は、要注意

この鎌崩、ガイドブックには、”念のため、ザイル使用”、とかあり、一般的な縦走で出てくる危険個所通過程度しか想定されていない。これは、ガイドブックを書く側も、一般縦走レベルしか、個人的に体験がない人が書いているために起こる現象のようで、これは、特に、一般登山から、アルパインへステップアップする途中の山で顕著に起こる現象だ。

例えば、厳冬期の赤岳は、アルパインでは入門にすらならない、歩けて当然の山だが、一般登山では、上級の5に分類されている。『のぼろ』の読者ならガイドをつけて登るのが厳冬期赤岳だ。

しかし、私でもそうだが楽勝すぎて日帰り。もはや一般ルートなど歩く気になれない。ある山友達など、楽勝すぎて、一日に赤岳三周したくらいだ。だから、アルパインの本には楽勝と書いてある。

このような性質の山は、アルパインの入門書を参考にすると、簡単だと思って、舐めて取り付いてしまうリスクがある。実際、アルパインの人には簡単だが、一般登山者には上級で、男性の友人に簡単だから…と連れられた、ごく普通の一般登山者の女性が、泣きながら降りてきた、という事例を知っている。

自分がまだ一般登山者のレベルなのか、アルパインの脚力があるのか?は、山岳会1年目の人には、自分のレベルを知る機会は限られ、講習会に出て分かるくらいだろう…山岳総合センターのリーダー講習では班分けがあり、班分けで、ある程度、自分のレベルは想定できる。そうでもない限り、標高差と距離で脚力を客観データ化し、登攀力をひたすら高め、日々ロープに触るしか、能力を高める方法はない。

まぁ、基本的には、性別、年齢順、で、ある。例外は、オフィス労働者。彼らは特段弱い。

困難度は登る人による、というのが、この段階で、まだロープワークデビューです、みたいな段階の人は、山を見る、経験値が溜まっていないと思う。

≪法則≫
 アルパイン入門者は自分の力量を客観的に評価できない。またそのことを知らない。

赤布は探して歩くものではなく、読図していたら赤布が追いかけてくる、ようになるものですぞ? 同じことで、ルートファインディングは、ボルトや残置を探すものではなく、自分でルーファイしていたら、同じところに残置やボルトが追いかけてくるようになるものです。

また、一般登山の慣行として、リーダーに任せきり、というリスクがある。

どこに根子岳が安全だという根拠があるのだろうか?

群発性地震の後、穂高屏風岩に取り付いた上級クライマーというのは、あまり聞かないどころか、取り付いた人で生死にかかわる重症者を知っているんだが…。

■ 妙義・星穴

登山学校の先生だった青ちゃんはガイドの依頼が時々来る。

それで断っていたのが、妙義、星穴。脆いことで有名な山だ。ガイド料は一日5万が相場(つまり、ガイド規定の3万円より高い)。

青ちゃんは、つららのようなアイスで、私がこれはちょっとどうか?と思うようなものでも、登ってしまうし、私が、そういうものを登れると嬉しそうにしていたので、脆いことで有名な妙義星穴は、ラッキーと飛びつくかと思ったら、飛びつかなかった。脆い=ロープがあっても意味なし、という意味であるそうだ。

ちなみに青ちゃんは初級の講師ではなく、中級の講師しかしたことがなかったそうで、それで私にいきなり相沢大滝55mのリードを勧めたのだそうである(笑)。まだ、醤油樽も終わっていないのに…。醤油樽のリードは、結局のところ、しなかった。理由は終了点が悪いから、ダメ、という師匠のお達しだった。支点は重要ということだ。

≪法則≫
終了点は重要。

妙義星穴も、毎年死んでる人がいるが、根子岳に相当しそうな気がする山である。

■ ナメネコフォール

最近、荒船のナメネコが、海外マガジンに出ていたが、ここはギリギリボーイズの伊藤さんと出かけた思い出のアイスだ。相沢大滝でもそうだったが、伊藤さんは、青ちゃんと同じラインしか登らない。わざと脆い場所…例えば、シャンデリアとかだが…は行かない。

別の人で、”〇〇で一番死に近い男”と言われて悦に入っていた先輩がいたが、彼のリードラインを見たら、最初は強点、もっとも難しいところを行こうとしたが、結局一番易しいラインになって、結果、ロープが屈曲してしまっていた…

これは、とても参考になった。というのは、女性がいると、男性は見栄を張って、わざと危険を冒しがちだと言われているからだ…。もしかすると私の存在がそのようなラインを選ばせたのかもしれず、あるいは、命知らずであることは、モテポイントである、という誤解が根強いのかもしれなかった。

どちらにせよ、ギリギリボーイズの方の、実は、堅実な登攀とのコントラストが鮮やかな経験だった。

≪法則≫
 一般クライマー=かっこつける
 プロクライマー=かっこつけない

以上が、私の、一流クライマーとの遭遇経験である。

総じて、一流はリスクを巧妙に避け、愚かな死に方はしないものである。

■ モチベーションの高いクライマー

さて、この回答の主は、不確定要素に対してリスクを取らない傾向がある、そうである。それで、チキン扱いをされて悔しい思いをしているのかもしれない。

しかし、自分の命は自分の命であるし、挑発や見下しのような、幼稚な感情で、なにぉ~と奮起し、怪我をしても、その代償…数週間、数か月あるいは、数年に及ぶかもしれない療養期間…を耐えるのは、まぎれもない自分である。

そんな幼稚な精神構造の人たちの指摘は無視して、自分の道を行くのが、正しい姿勢と思う。

これは、言うより行うが難し、であり、青ちゃんもインスボンで、韓国のクライマーに、からかわれて、普段の登り方を変えたせいで、墜落し、骨折していた。なんでそうなっちゃったのか?プライドを挑発されたのだろう…でも、インスボン30回行っているんだから、そんな挑発はスルーしたらよかったのに…。ちなみに私はいない時なので、女性の前で引けなくなった、とかのせいではない。

支点は、怪しいと思ったら、打ち足したり、バックアップを取ったりするもので、えいや!と覚悟を決めて使うものではない。 

懸垂下降のオーダーを知らない人が昨今は多い。重い人はバックアップをつけている状態で降り、軽い人がそのバックアップを回収して降りる。そうすれば、安全が確保されている。
かならず、バックアップを取るつもりでギアは持って行かないといけない。

■ モチベーションの高いクライマーにシラケた顔をされたら?

仮に、いわゆるイケイケクライマー、別名”モチベーションの高いクライマー”に、面白くない顔をされたとしよう…それでなんぼのものであろうか? その場では、多少、チキン扱いされて嫌かもしれないが、そのほうが命を守る。

そもそも、モチベーションの高いクライマーとは、どのようなクライマーの事なのだろうか?

私の脳裏に浮かぶ人が一人いる。女性だ。結局、宝剣で300mの滑落をしてしまったんだが… パートナーが欲しいということだったのだが、師匠の清高さんに制止された。

というのが、彼女の不満が、石尊稜を天候敗退したことにあったからだ…。先輩の判断に不服ということだが…。

誰でも知っていることだが、八ヶ岳は天候核心で、主たる脅威と言えば、寒さであり、寒さは、日本国内の一級品である。-25度は日常だ。

不満の中身も、会から山行許可が下りず、これでは、いつまでたっても山に登れるようにならない、というのがあった…実際、共感するというか、会のほうが説明能力がないことが多いので、会に入っていると山に行けなくなるのは、その通りなのだが…。

その反省の中身が問題で、会から許可が出ない原因は、先輩の判断が保守的過ぎるのではなく、リスクを凌駕できる体力や登攀力が本人にまだないことにあるはずなのだ。

というのは、私自身の会(御坂山岳会)は、私が毎週ビレイの習得のために人工壁に通い、クライミングジムに通ったり、フリーで基礎力を磨いていたり、朝から歩荷訓練を毎朝していれば、なんとかしてでも、少し背伸びのルートにでも連れて行ってくれたからだ。会が連れて行ってくれないのは、どこかに実力の不足を疑ったほうがいい。(実際は、会の先輩は、後輩を連れていくには、力不足を実感したようだ。昔、簡単に登れたところも年を取れば登れなくなる)

山のリスクは個々人で違う。〇〇さんに行けたから、君も行ける、は、あてにならない。

私は体格が小さいので、大きい男性に取れるリスクは取れない。例えば、エイドなど、その最たるもので、エイドが得意なのは、背が高いクライマーである。

その中で、フリークライミングが上手であれば、さらに先へ進み、そうでなければ、エイドルート止まりのクライマーになる、という風に過去は、選抜が起こっていた模様だが…幸いなことに昨今は、エイドクライミングでルートを落としていなくても、普通にフリーに進むことができる。まぁ、当時の余韻で、ピン間隔が遠いので、背の低いクライマーは、高いクライマーにはない、不条理なリスクにさらされるわけだが…。それが国内ではだれにも理解されないので、不条理なことがないラオスに行った。

モチベーションは、もちろん誰にでも必要で、私も、夫と二人で、八ヶ岳権現に厳冬期に通っていたころは、イケイケ過ぎて分かっていないクライマー扱いされていた… 分かっていないのは、あちらの方だったわけなのだが…。その人たちは一般登山のレベルで言えば、上級の山に私たちが行っているのが気に食わなかったのだが、”気に食わない”は、根拠として論理的でないので無視した。

大事なことは、敗退が確保されていて、誤りに気がついたら、すぐに敗退できる体制にあることだ。

権現は、そのような山だったが、根子岳は、脆さに気がついた=落ちたとき、みたいなことにならないのだろうか?

■ Kさんの言葉

さて、本格登山を志向する方には、このKさんの言葉を送ろう…。

私の友人が穂高屏風岩で、生死が関わる遭難を起こした時のメールのやり取りである。(太字、当方)

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GW直前の集会で、4人で即席パーティが組まれたようです。お互いに相手のこと良くを知らないのは、トラブルが起きやすいです。

Y〇〇のK辺さんは、同志会のW田ともう一人で、プロガイドグループ・ドムを作っていました。w田さんともう一人の人は1985年にアコンカグア南壁で行方不明になりました。w田さんの奥さんのk代子さんは、1990年に追悼集を出版した後に、グランドジョラス南面に慰霊碑を作りにいき、岩雪崩で亡くなっています。ドムのお客さんに難波康子さんがいます。
新人と初めてパーティを組み、K辺さんは1987年3月に不帰Ⅰ峰尾根で亡くなっています。

新人がルートを外し、怪しげな灌木でビレー。これでは降りられない。K辺さんが登り、墜落。灌木が折れ、二人共尾根の右側唐松沢に転落。K辺さんは意識はあったが動けない。脚を骨折した新人が、何とか下山して救助要請。経験の少ない新人に、確保条件に不安があるルートを、リードさせたのが間違いでした。(確保条件に不安がある=根子岳)

私が新人と組んで唐沢岳幕岩のS字に行ったときの話です。新人がルートを外し、ハーケンを打ちながら人工で登り、ハーケンを1本打ち、腰からみでビレー。私がハーケンに乗ったら抜けて、木の枝に落ちて止まりました。新人は引き込まれそうになったそうで。引き込まれたら、セルフビレーのハーケンは抜けなかっただろうか(*_*; (ハーケンは2本打つべきですね…)

火事場のバカ力というのは、見込みが甘かったということでしょう。それが多いのは、反省、分析ができていないということ、です。

事前に訓練したことが役に立つ= そうならないことが大事、です。

・宙吊り=最悪
・スニーカーで高難度ルートに取り付く神経がおかしい
・ボルトキットとハンマーも置いてきた=おかしい
・ボルトを打ち足し、ビレーポイント補強をすべき
・小窓尾根で取り付きを見過ごし、落石でガス缶に穴が開き敗退=アホ過ぎ

事故者は復帰するまで相当の日数がかり、結局引退しました。大きな後遺症もなく(足の指を少々切断)生活できたので良かったです。

事故者は、当会では、それほど経験がない者が多いです。

ーーーーーーーーーーーー以上引用終わりーーーーーーーーーーーーーーーーー

いかがでしょうか?

私の中では、

”モチベーションの高いクライマー”

=”予想できる危険について備えがないクライマー”
 &ルート外しをするクライマー
 &”自分の能力について過信もしくは自分の実力を客観的に位置づけられないクライマー”
 &”経験値がないクライマー”
 &”ヒヤリハットから推測による危険回避ができないクライマー”
 &”未来予知力が乏しいクライマー”
 &”女性の前ではかっこつけてしまうクライマー”
 &”ロープワークが雑で時間がかかってしまうクライマー”
 &”まだ分かっていないことを分かっていないクライマー”
 &”有名になりたいクライマー”
 &”インドアグレードをそのまま外岩に持ち込むクライマー”
 &”師匠がいないクライマー”

です。山の世界は温かく、登りたい気持ちは共通なので、互いにお互いの安全を見守り合う関係にあります。

それで誰からも、声がかからない…というのは、自分の実力がそこまでに達していないのではないか?ということに思い至る能力…というのが現時点では核心、ということなのではないか?と思います。

■ 成長戦略の立案には、古い雑誌『岳人』を片っ端から読む

そうは言っても、アルパインで成長していくのは、なかなか困難が伴います。

お勧めは、古い岳人のバックナンバーを取り寄せて読み込むことです。現代のロクスノには、役立つ情報は載っていません。

私が参考にした号のバックナンバー情報は、少ないですが、こちらです。


図書館へ行けば、揃っているので、どんな号でもいいので、適当に古いのを取り寄せてみましょう。

■ フリーが上達すると、そんなしょぼいところは、登る気が無くなる

ぶっちゃけトークですが、少しでも、脆いリスクがあるところは、フリーが上手になれば、お得感が全然ないので、登る気がしなくなります…。

つまり、根子岳のようなのは、思春期の恋、中二病のようなもの、です。

なにしろ、例えば、前穂北尾根に行くまでに6時間の歩荷…アルバイト…がありますからね。その上、登るルートが、登攀は易しく(つまり、しびれない…)、その上、脆い(命の危険がある…)となれば、なんでわざわざ6時間歩いて、そんな簡単(つまり、しょぼい)ルートを登るの?って気になったりします。

ジャンダルムとか、一般登山者の憧れ、は、行っても仕方ないところ、だだの自己顕示欲の発露、という風に感じられるようになります。

それまでに、2,3年しか私の場合ですら、かからなかった感じです。40代の女性が、2,3年で退屈する、という話なので、若い男性だったら、もっと早いと思います。

普通に支点のしっかりしたマルチに行く方が、充実する、と感じるようになります。それから、登っても男子の場合は全く遅くないと思います。

人工壁で5.11、ボルジムで最低5級がスイスイ登れるレベルで、マルチのロープワークが言われなくても分かっており、登れなくなっても、ライジングされることなく、自分で解決でき、ギアは借り物が一切なく、救急救命のイロハは分かっている程度…が、次なる目標です。

雪をやる人は、労山の雪崩講習は受けておくべきです。

そうすれば、命の危険があるような脆いルート、低グレードの場所で命がけにならずとも、順当にステップアップできると思います。

一般にアルパインの憧れは、フリークライミングのレベル感のクライミングをするようになると雲散霧消します…

フリーのマルチで記録を立てる方が価値があるからですね・・・ 男子はそこまで女性の私と違って、一息なので、低グレードで命を落として、もっと楽しいご褒美を味わい損ねることがないほうが、トータルでお得度が高いのでは? 

お得なだけでなく、賢い選択なのではないかと思います。




 

”現代版ウォールデン” をやってきました…その日薪ぐらし

■ 現代のソーロー

ひょんなことから、”森の生活”を得た。

H.D.ソーローのウォールデン(邦題『森の生活』)は、言うまでもなく、山やのバイブル、だ。

ソーローが2年であきらめた森の生活を、20年続けた人がいる…それが、ダルマさんこと、だるま放牧豚の中村さんだ。森の生活歴20年。

その生活ぶりは?ご本人いわく、”その日薪暮らし”

アーティストのパートナーのりちゃんと森の中で、白黒二匹の犬、一匹の猫、の5人暮らし、で暮らされている。

■ 森の中のログハウス

「そうか、人間の役目は、森の再生なんだな…」

これが今回の滞在で得た山からの答えだった。山はいつだって、私の疑問に答えてくれる。

ミミズは、植物遺体を食べて土にする。蜂たちは、花々の受粉を助ける。木々は、二酸化炭素を吸収して、酸素を作る。

すべての動物が、生態系サービスに関して、何らかの役目を担っている…。その中で人間だけが、生産者ではなく、破壊者しかしていない。なんらの役目も負わず、貢献もしていない。

そして、人間がこの一世紀に犯した最大の過ちは、生態系サービスの頂点に人間存在を置いたことだ。次の図式に表される。


この図の右の生活を体験できる場、が、ダルマさんとのりちゃんの家だった。

人間界だけが、生態系サービスに何も貢献しておらず、生態系から受け取る一方で、受け取り超過になった結果が、地球資源の枯渇と温暖化だ。

世は世紀末の様相を呈し、食糧危機がリアルに感じられることから、自給自足を目指す人が増えたが、1世紀前に捨てた技術を再度身に着けられる人は少ない。

ほとんどの人は、現代文明の代償として、なす術もなく流されるままになっている…。

ダルマさんが言った、「…普通のマンションに住んでるの…」という言葉は、”まだ流されるままになっているの?まだ脱却できないの…”という哀れみのこもった言葉だ。残念ながら、ワタクシには、現代文明の足枷を突破できる強さがまだ備わっていない…ということ。

そういう人でも、ここでは、他人のふんどしで、森の生活、が実践できる。

■ 登るのはついで、だったんだよなぁ…

そう、言うは易し、行うは難し…が、ウォールデン、の生活だ。

私自身、山を始めた理由は、文明の悪から脱却し、自然界との付き合い方を学ぶためで、別に5.12を登れるようになろう!とか、思っていたわけでもなく、ギリギリボーイズの皆さんのようになって名を成したい!とか、思ったことは一度もない。(当然ですよねぇ…)

美しい山をテントの中から見れたらいいな♪って、思っただけだし、それは実現した。

厳冬期のテント泊で荘厳なる頂きを眺める経験はできた。

思えば、私はこれまで夢を実現してきたし、これからもしていくべきなのだ。

なのに、なぜ、今、自分の命を粗末にするようなクライミング仲間を制止するご意見番みたいなブログを書いているのだろう…(トホホ…)

そもそも、フリークライミングに進んだのは、それが山の基礎力であるからに過ぎない。しばらくは基礎を固めなさいということ。

基礎力をおろそかにして、高度な山に進んだために死んでいく奴を制止するのは、私の役目ではなく、死んだとしても、本人の業がなせる業に過ぎない。手放せ、手放せ、と神が言うのに、なかなか、手放すことができなかった…。

それは、弟のことがあったからだ。24歳で突然死した。アレルギーがあって口をぽかんと開けているだけで、低知能扱いされ、大した学校に行けなかった弟だ。みなが彼にも分かるように解説してやらない。クライミングのリスクも、誰にでも分かるようには説明されていない…そう感じていた。弟にも分かるように説明してやらねば…。その思いが私の業だ。亡くなった弟に亡くなる前の8年も会っていなかった罪悪感とか、そういうものがそうさせているのだろうか…。

ダルマさんの家に行く一日前、実は、まさに、その、せめぎあいの渦中にいた…。奥村講習だ。”救いの手”ということだ。なにしろ、3級しか登れないのに、ノーマットで登りたい、2段を登りたい、とかいう、頓珍漢なボルダラーに会った折に、突然、降ってわいたように現代のトップクライマーである奥村講習が出てきた。まさに天の声。急場で差し出された救い。お釈迦様が垂らした蜘蛛の糸。樋口先生、ありがとう!だ…。

■ 森づくり

さて、今回の滞在で、私が最初に任された仕事は、家の周辺での薪の集材だった。平たく言えば、”薪、拾って来て”。子供にもできる(笑)。

だが、小川山と同じことで、周辺の拾いやすい薪は、拾いつくされていた。

薪を拾うにも、人間の通り道に、一杯、支障木が出ていたので、登山道を作っているときの要領で(そう、地域山岳会でもまともなところなら、地元の山を歩くときは整備しながら。つまり、なたで枝はらいをしながら、歩かねばならない…。そして、私が所属していた御坂山岳会は、富士山の遭対協をしている由緒正しい山岳会なのだった。当然、山のイロハは新人にも伝えられる)

私が暮らしたログハウス2棟は、尾根の上に建っており、左右は傾斜の強い谷になっているので、一般登山レベルの人には、ちょっと傾斜をこなせないレベル。なので、お二人も谷へは降りていないそうだった。山やじゃないから、当然か。

尾根沿いは、当然ですが、自然林。といっても、パイオニアツリーのタラノキとか、ヤマウルシのようなもの…、枝が張り出して、通路は自然に還りそうになっていたので、なたで落として、以後、通りやすくした。つまり、整備ということだが…なんだか、整備したいのに自分の森がなくて、欲求不満だったみたいで、不満解消されて、楽しかった(笑)。途中、昔の山岳会の仲間を思い出したりして、くれさん元気かなぁ…などと感慨深い。

道をふさぐ巨大な倒木の松があった。風倒のようだった。形が良く虫に食われていない松ぼっくりを大量にゲットしたが、倒木処理だけに1時間くらいかかった(笑)。手ノコしかなかったので、まじめに手で伐ったからだ。次回はチェーンソーを持って行けば、もう少し薪が取れるが、松は脂がでるので、外の湯船の湯沸かし専用だそうだ。

私は沢もやっていたので、不整地は慣れており、谷の方にも降りてみたら、植林地は古い踏み跡があったが、下草で道が閉じてしまっていた。下に降りてから、踏み跡を伝って上がるのは簡単だけど、降りる方は、降り口が見つからないので、安全に降りようと思ったら、尾根から、遠回りしないといけない。当然だが、山では下りるのは難しく、登るほうが簡単だ。

これはよそのですが、小屋番でも
薪を上げるのは大変っていう事例

まぁ、それでも家の周辺のことで、大して距離があるわけでもない。車の生活で運動不足になりがちなので、運動がてら…が、良いかと。谷のほうは他人の植林地のため伐倒はできず、落ちている薪を拾おうと思ったら、いったん、下の広場までおろして、チェーンソーを持って降りて、運べるサイズにし、持って上がりたかったら、背負うための背負子が要りそうだ。
背負子はこういうもの

余談だが、大体、山小屋では、20代の男子が担当。強い子は、50~60kgは担げる。

女性でも本格的な山をやる人は、25kgまでは担げて歩けるはず。一般登山者は、登山装備が軽くなっていることがあり、60代のおばちゃんになると、12kgも担げない。30~50代の壮年期の男性なら、30kgは特に問題なく担げる重さです。

南アルプスの両股小屋では、60代の星さんという女性の小屋番さんが、歩荷で荷揚げしていた。”年を取って、20kgが堪えるようになってきた…”と言っていたよなぁ…。大体60代の男性と40代の女性が同じ強さなので、星さんが60代で20kg担げるというのはスーパーおばあちゃんだということだ。

■ 針広混交琳というけれど…

さて、放牧のほうはさして手がかかるわけではないので、私の持ち場、は、皆伐跡地での薪の集材だった。


これは、チェーンソーに使い慣れたい私には、とても良い持ち場だった。

持ち場には夜明け直後に到着する。山の朝はとても気持ちが良い。宇宙の英気がみなぎる時間と言われるブラフマムフルタの時間帯には、すでに起きて朝食を済ませ、夜明けとともに仕事を開始する。今の時期は日の出が遅く、7時半から8時頃。

以前、山仲間と山は何時が一番きれいか?で議論したが、8時頃の山が一番美しいという意見が強かった。たしかに午後になると、空気が疲れた感じというか、よどんだ感じがしてくるものだ。

私の持ち場は、緩やかな谷地形の皆伐跡地だったが… 分かったことがある。

広葉樹は、かかり木の元凶、ということだ。

なにしろ、横に枝を伸ばしているのだから、当然、倒した木が引っかかってしまう率が、すっくと立っている針葉樹より強いのである。

そりゃそうだなー

これを見たら、かかり木は必然だな~と思ったが、これを取るのは、フェリングレバーでは、ちと厳しそうだし、ロープで引いても同じで、登ってかかっている木を玉切りする以外に有効な手立てはなさそうに思う。

もちろん、フリークライミングの手法ではランニング支点がないので、登れない。

ので、なんらかのエイド技術が必要だが…。長いはしごを装着し、固定したら、登るのは簡単そうだし、上の枝に確保を取り、ぶら下がって、ホーリングでチェーンソーを上げ、2,3玉切りの要領で枝を落とせば、かかっている木の伐り方自体は大変そうではない。このままだと、上の木の搬出に支障が出そうだ。
 
一般に、都会の自然保護主義者は、針葉樹と広葉樹が共存している針広混交林とか言うが、現実的に、材を搬出しようとしたら、まぁ、それは手がかかる、という意味だと分かった。

今回は、私は伐倒はせず、すでに落ちている材の解体でチェーンソーを使っただけで、伐ったのも、せいぜい15cmの丸太サイズである。それでも、丸太を下におろすには、尺取り虫の要領で、丸太を持ち上げては倒す、持ち上げては倒す、と繰り返す必要があり、下に人がいると、倒した木がどこへ向かうのか、定まらないので、危ない。一人でやるのに適した作業で一人でやるのに適した場所だった。

山でもいつも単独登山で、一人が好きなので、マイペースで作業ができ、山の中でいい空気を吸って過ごすことができて、気分が良かった。マイ山バイト、農業バイトの中でも、1、2を競う、快適な仕事だった。これなら、毎日でもいいなってくらい。この現場が終わったら悲しいなぁ…。

玉切りするにしても、複雑に折り重なったふくらはぎサイズの丸太は、跳ねたりしたら、それなりに危険なので、ゴーグルで目の保護くらいは必要だし、つま先に丸太が落ちて来ても嫌かもしれない。あれこれ、一応、リスクを考えて、どこを切ると効率よく、ばらせるか?を考えるので、考えては伐り、考えては伐り、の連続だ。ただ、やっていると、飽きても来て、作業が雑にもなってくる…人間、めんどくさいと、手っ取り早くやろうとする…ので、振動障害の予防からも、朝やって、昼からは、別のことをするのがいいだろうとは思う。

そういえば、振動障害的には、一日の振動被ばく時間をトータルで2時間以下、にするように指導されている。

11時前には帰宅し、お昼ご飯を待っている間は、チェーンソーを研いで過ごした。
このゲージがすぐれものだった

私は大規模な伐倒はできないが、コツコツ小さく重ねるレベル感で、支障木とか、小さい直径の伐倒ならできると思うので、次回は、伐倒用のギアを持って出かけたい。

これは、私の延岡研修での伐倒動画。なかなか、この時は、緊張していたが、今回の仕事では、チェーンソーはあっという間に使い慣れた。サイズが小さいのが良かったのかもしれない。たぶん、大型のチェーンソーだと今でも怖いかもしれない。


くさびを使うのが現代では、標準で、伐倒方向を確実化し、飛び跳ねが最小化できる。木って倒すとき、倒す方向の反対に飛び跳ねることがあり、それが木こりにとっては危険なんですよね…。

■ なんでもあった…

さて、薪、重要! 薪、入手困難!と分かったところで、現代版ウォールデンな暮らしとは、どのようなものであろうか?

実は山小屋暮らしを経験した人には、楽勝感があった…。

実は、冷蔵庫も、洗濯機も、パソコンも、Wifiも揃っており、現代生活に必要なものは、すべてそろっていた。(ちなみに山小屋では、冷蔵庫ではなく冷凍庫)

ので、森の中に家があって環境が抜群にいい!という以外は、普通に、ここから出勤…つまり、会社勤めなども、やろうと思えばできてしまう。(そういう人がいたら楽しいだろうなぁ…)

長野の師匠の家は、いわゆる”別荘”で、カラマツの植林の中に立っている家だったが、あれが、手作りに変わっただけで、完成度の差以外は、特に変わりがない…。

人に立ててもらった家でも、ログハウスはログハウス。

でも、自分で建てれば、愛着もひとしお

長野の青ちゃんは、確保実験棟とか立てているお金で、伐倒を覚えれば、薪問題が解決し、薪の代わりにウエアを巻き上げられる(笑)ということもないのではないだろうか…。

まぁ、いくらプロが作ったログハウスでも、-20度を下回る佐久では、暖房薪だけで生活するのは、アイスクライマーくらいだよなぁ。そりゃ、寒いわ!

一方、こちらは九州の家。温暖で、薪さえあれば、寒さはいうほど堪えない。

快適な森の中の暮らしの様子

中はインテリアが、アーティストの女性が暮らしているだけに、アート作品や花が飾ってあったりして、ステキだった。ロフトもあって、ロフトで寝るようになっている。

予想せず、自分が願っていた薪生活にありつくことになった。で、

あって驚いたのが、プロパンガス。なくて驚いたのが、こたつ…。

山小屋では、こたつは必需品って感じで、小屋番していたら、特にそうだからだ。

ちょっとお勧めしたいと思ったのが、オンドル。温かい空気が、煙突から空に抜けて行ってしまうので、輻射熱以外にもオンドルで床から温められたら、嬉しいのではないだろうか?

オンドルだとそう本数が要らないそうなのだ。この家の薪ストーブは、刈っても刈っても、薪が消費されてしまい、薪の消費に供給が追い付かないみたいな感じだった(笑)。

そういう訳で、”その日薪暮らし”。

■ ご褒美は野天風呂

特筆すべき、ご褒美は野天風呂。

これは、ホーローの浴槽があるからこそ、可能になる。直火炊きの野天風呂だ。新鮮な水をゲストには入れてもらえる。炊きだしてから4時間くらいかかる。持ってくるとき、ものすごく重たかったそうだ。

これはかなりおつです。隣にテーブルを作ってお酒を飲みながらやるといいかも…


■ 森で暮らす基礎スキルとは?

さて、このウォールデン暮らしを実現する、基礎力は、トイレ対応寒さ対応だ。

具体的には、自分を凍える寒さから守れて、野ぐそが上手に出来なくてはならない。

これは、そのまま、一般登山の山やが、山をスタートしてすぐに習得することだ。

私が、今回快適に暮らせたのは、この二つの基礎力が十分身についていたから、という理由による。

■ 野トイレ

本来、自然界には、トイレはない。

この家には手作りの外トイレがあり水洗だそうだが、使う理由が見つからなかった。外の方が快適だからだ。

昨今は、登山ブームで登山口にトイレが整備されてしまい、野ぐそスキルが落ちている登山者が多く、人気がない山に行くようになるまで、スキルが身につかないという事情があるが、一般には、”お花摘み”とか、”キジ打ち”とかいう言葉で、登山者に親しまれている。

実は、野ぐそは偉大なスキルで、野ぐそだけの本も出ているくらいだ。登山者は、芯抜きのトイレットペーパーを持ち歩いている。

クライマーも本来はそうだが、例に漏れず、最近のフリークライミングでは活動自体が軟弱化し、レジャー化してしまったので、トイレスキルがない人が多いが、例えば、ヨセミテでビッグウォールをやろうと思ったら、空中野ぐそができないと登れない。

適所を見つけるのと処理がスキルの内容で、基本は、穴を掘って埋める。通行するところにはしない。小用は、雨の当たらないところにしてはいけない。どちらも分解を促進させるのが大事だ。

■ 寒さマネジメント

次は、寒さのマネジメントスキル。

これはスリーレイヤーが基本だ。アンダー、インサレーション、アウターを重ねる。

アンダーが最も大事。アンダーはウールもしくは化繊、インサレーションはダウン、アウターはゴアテックスが、定番だ。

寒さ対策ができるかどうか?は、-10度以下になる山では、生死にかかわる。なので、衣類は、ファッションではなく、装備、である。

この認識の差が都会人には、まず敷居が高い。どうしても、憧れレベルで、なんとなく森っぽいが、機能的に森での用途に満たされないものを買って来てしまう。例えば、コットン製のアウターとか。コットンは気化熱で体温を奪うので、雨が降ったら、体温を奪われ、脱いだ方が温かい。化繊かウールでないと、気化熱での低体温化は防げない。

ソックスと手袋、ネックゲイターや頭の防寒も、重要な装備だ。都会生活者は、小物を使わない生活ですっかり忘れてしまっている。なので、あえて言ってやらないと、途端に寒さを感じることになるだろう。手首、足首、首、なんでも首とつくところが寒い。頭も皮膚が薄いから当然寒い。

私が暮らした小さいほうの小屋
私が今回滞在したのは、厳冬期1月だったが、日中気温は8~10度にも上がり、朝夕でもマイナスになることはなかったので、3レイヤーの基本を守っていれば、大げさな衣類は要らない。

暑くなったら脱ぎ、寒ければ着る。

停滞時は、冷える前にすぐに防寒着を着る

これも基本だが、出来ていない人が登山者でも多い。山小屋に入ったら、アウターを脱いで、ダウンを着るんですぞ?

運動量がある、出かけるときにダウン着たままだと、すぐに脱ぐことになる。

農業もアウトドアの活動ではあるので、基本は同じなのに、農家の人でも、いい加減な服で、だましだましで、寒い寒いと文句を言う人が多い。大体、よく見たら、アンダーとかを着ていないとか、何だ、ちゃんと防御していないじゃないか、ということが多い。冬はズボン下は必須ですぞ?冷えは下から来る。靴も防寒靴、っていうのがありますが、ゴム長は断熱しないので、とても寒い。

■ すすけてしまうが不潔ではない

牡蠣焼いて食べれる
室内で薪を炊いていると、どうしても、色々なものがすすけて来てしまう。

それで、すべてのものが薄いグレーの被膜を一枚被せたみたいな色合いになって来てしまい、それを不潔だと勘違いすることもできる…

映っているケトルを見てもらえば分かると思うが、不完全燃焼する薪だと、ガス火と違って煤の焦げ付きがひどい。

衣類を薪ストーブの上で干していると、もれなく、衣類もグレーっぽくなるんだが…別に不潔ではない。

まあ、見るもの、というのは、なんでも比較の問題で、糸島ではオンボロ車に見える私のマイカーが、ダートに汚れた農業用の車に囲まれていると、高級車に見えたくらいだからなぁ…。まぁ、すすけては来るが、女性が暮らしているので、不潔ではない。

私は、立派な家でも、不潔な家だったら、速攻で帰ることにしている。前回、大阪にウーファーに行ったときは、人間も家も不潔で、一晩持たず、すぐに帰った。今回は、清潔度ではきれいで、快適。

■ 丸太小屋づくりも学べるかも?

伐倒ができるようになれば、丸太が手に入る。これは当然といえば、当然だ。

丸太が手に入れば、ログハウスができる?かというと、答えは微妙だ。

Yesでもあり、Noでもある。

まず、丸太の量の確保が問題だ。

それから、運搬

そして、積み上げには、動力がいる。

動力に、ユンボが使えないと、人力で丸太を持ち上げることになる。

この辺りは、『大草原の小さな家』を見ていれば、その実際の大変さがうかがえる。テレビドラマとはいえ、かなり事実に基づいていると思われる。(https://amzn.to/3AfnU1d エピソード1の20分のあたり)

実は、私はユンボ、使える。なんという導きだろうか…。

もしかしたら、ログハウスも作れるのかなぁ…。夢は膨らむが、出来ているログハウスに暮らせるのと作れるのは別の話だからなぁ。(ちなみに、ここのログハウスは、20年ものだけに、コーキング材がすでに痩せて抜けていて、寝ていると外の光で布団の上がストライプになる)

伐倒は、岩場の整備でも使うことがあるし、もちろん、玉切りは、女性でも取り組みやすいので、チェーンソーワークは絶対に必要だと思っていた。

が、ユンボは使うことを想定できなかった…まさか集材や作業道は、女性の私は見ているだけだろうと思ったのだった…ので、基本操作を終わったところで辞めてしまい、道作りまでは教わっていないので、2月に美里町まで教わりに行く申し込みをすることにした。

というのは、ダルマさん、別の場所に大きめのログハウスを作るアイディアを温めているようだからだ…。それには、ユンボは搬出でも、必須の技術になる。

今のログハウスのサイズは、六畳の小屋、四畳半の小屋の二つで、暖炉がある小屋が欲しいだそうだ。(本当に暖炉が出来たら、すごい)

■ まとめ

というような、今回のウーフ経験だった。

ラオスのグリーンクライマーズホームでは、岩場のすぐ後ろで、牛が草をはんでおり、さらにヤギが放し飼いされ、スマホをのぞき込んでいると、ヤギが遊びに来ていた。

寝床はカヤ付きの簡易ベッドで、ずらーっと並んでいる様子は野戦病院みたいだったが、別に生活は快適だった。シャワーはちょろちょろしか出なかったが、ヨーロッパ人は水がないのが普通なので、それに文句を言う人はいない。

それを思うと、水使い放題のログハウス生活は天国だった。

動物も犬と猫がいて、人間と動物が寄り添って暮す暮らしが実現されていた…。こういう場を日本のクライマーにも提供したら、人生が変わる人が大勢出るのではないだろうか?

クライマーは、有り余った生命力を向ける矛先を現代社会以外に求めたい人たちが多いのである…が、残念ながら、グレードを上げる以外に矛先を向ける先を見出せない人が多い。

いっくらクライミンググレードを上げたところで、世界の頂点に立つクライマーは、それこそ幼児期から、親の一流クライマーに英才教育を受けているわけで、そんな奴らが、わらわらと湧いてくる現代に、趣味のクライマーが、グレード自慢していても、目くそ鼻くそレベルの話にしか、どうあがいてもならないのであるし…

ちっぽけな自己顕示欲程度しか満たせない、そんな不毛な足の引っ張り合いをするくらいなら、地球を愛するメンバーに参加してもらいたいものである。

そもそも、ロッククライミングは、ゴルフ場開発なんかより、うんとエコフレンドリーだ。

延岡の行縢辺りに、建てれないのかなぁ… エコなクライマーズハウス。行縢は、色々なクライマーが入って、あまりローカルが牛耳っていそうでないのだが…。

2022/01/11

九州のアルパインルート 阿蘇根子岳について vs行縢椿

 行かないことをお勧めする第一のルートが根子岳す。



本州でも、きちんと情報を持っている(つまり伝統と繋がっている)クライマーは、穂高屏風岩には行きません。群発性地震で、脆くなって以降、行かないというのが定番になっています。実は最近、山梨で一緒に登っていたこともあるクライマーが、同所で遭難して一人死亡、友人のほうは大怪我でした。同様の場所が根子岳。

以降、2名のクライマーの言葉を引用しておきます。

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最近、インドアでガンガン登れるので勘違いして外岩にでも登れるだろうという若い人が増えたようなので注意が必要ですね。

ボルダーで段が登れると自慢していた人が、県体壁のリードで5.10台でテンションを掛けるのは珍しくありません。マルチ特に本チャンになったらなおさらですね。(※ 私個人の経験からも、”5.9の外岩がリードできないのに、エイハブ船長1級は登れる”のが若い男子でした…。ボルダーのグレードをそのままリードのグレードに置き換えるのは危険です)

阿蘇の鷲ヶ峰にはうちのメンバーには行くなと言っていますが、各地の若い人が登っているのが気になります。ここは、クライミング自体は易しいですが、

自分の立っている岩自体がいつ崩壊してもおかしくない状況です。

そんなことも気にしないで登っているので昨年の根子岳での死亡事故も

「やっぱりな」と思います。

安全なクライミングを広めていきましょう。

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阿蘇の鷲ヶ峰、虎がは昔からもろくて有名でしたが、根子岳は熊本地震前は安定していて私たちも時々行っていました。熊本地震後はアプローチのヤマタガウドルートは登山禁止になっているはず(解除されたという情報は持ちません)ですし、縦走路も天狗の南面が崩壊してしまったのでその後行く事はなくなりました。縦走路は本チャン入門としては最適でした。安全面でキチンと判断+指導できるリーダーがいれば入門者の訓練とかアイゼントレーニングとかには良いところだったのではないかな?と個人的には思っています。九州には他にはそんなところはありませんし・・・


日向神の愛のエリアとか比叡山とか龍頭泉もそうですが、1本目が遠すぎるような気がします。日向神については開拓者の一人と話をしたことがありますが、ご本人も「今考えると遠すぎる気がする。今となってはルートのグレードとかの問題もあるしボルトを打ち足すこともできないしね」と言う事を言われていました。

比叡山は極端です。あれは肝試しと同じだと思います。登山初心者がジャンダルム縦走をしてドヤ顔するのとあまり変わりないんじゃないの?なんて個人的には思います。鉾岳なんて30mピン1本が当たり前みたいな打ち方です。開拓者を尊重しなければいけないことはわかりますが、それも度が過ぎると...。

山をやってきてクライミングに進んだ人と始めからクライミングしかしていない人では温度差はありますよね。アブナイ人はどっちも危ないですが、アブナイ内容はちょっと違います。

野口あきよさんがいつも言ってるように「世間の人にクライミングと言うと、アッあの危ないやつね。と言う返事が返ってくる。クライミングは安全に楽しめるスポーツだと言う事を私は世間に広めたい」・・・本当に安全に楽しめるスポーツにしなけりゃですね。

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■ 登山史、山の本を読みましょう!

山の本を読むと、阿蘇の山では死者の列が出来ています。

『九州の岳人たち』など、図書館でもいくつか出ていますので、よく読まれてみてください。(私は九州に来て一冊目に読みました)

合わせて、日本国全体のクライミングの歴史が分かる、現代登山史を読むこともお勧めします。

RCC Ⅲ級、Ⅳ級の程度の低い脆いルートで墜死し、行縢の椿のようなルートへ行くことを逃す機会損失の無意味さをかみしめてもらいたい気がします。

そもそも、現代クライマーが命をかけるべきところはそこではないよ、って意味です。

その意味が分かるには、クライミングの歴史を一通り知るしか仕方ありません。

■ 行縢 椿

2022年1月8日にフリー化されたマルチです。

ロープスケールおよそ180m、6Pのマルチピッチ

https://www.climbing-net.com/news/tsubaki_220110/

http://blog.livedoor.jp/jamminggentleman/archives/26310298.html?fbclid=IwAR3eVo37247UzgxQEmOHwNX6bqEb6BaEyDkGgWNlM4FHCThgoGQPcB_10zw

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昨年テルくんが登った行縢山の椿5.14bを全ピッチリードでRPしたそうです。

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現代アルパインクライミングのトップクライマーらは、古いOldButGoldな壁のフリー化に向かっているようですが、基盤となっているのは、5.12がスイスイ登れるレベルと確実なプロテクションであって、まだ9も登れないうちから、肝試しコースではないかもしれないです。

ちなみにOLDButGOLDは、杉野保さんの著書のことです。https://amzn.to/336d2GP

肝試し(脆さの追求)を積み上げてしまうと、論理的に考えて、人間の力は自然界の力より劣るので、どうしても、確率の問題で、大自然に命をさらわれていくことになります…つまり、脆い山をわざと登るのは、ロシアンルーレット、です。

足元の大地が大丈夫、というその根拠は何ですか? 根拠がしっかりしていることが一番大事です。

■ 山にイチかバチかはない

山にイチかバチかはない…と私は最初に教わりました。

たとえ、脆いアイスを登って、「アイガー北壁」みたいなロープになったこんなルートでも、落ちないという確実性があるから登ったのであって、イチかバチかをしたわけではありませんでした。

こちらは私の、新人時代の一本です。非常にもろい溶けたアイスを登った記録。

中津川滑沢 http://iceclmb.blogspot.com/2014/02/blog-post.html

    アイガー北壁ロープ、と冗談で言っています。雪稜用を岩用と併用するのはNGです。




2022/01/10

奥村講習メモ 

明日からWwoofに出かけて忙しくメモをまとめる暇がないので、取り急ぎ

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20kN×0.98=約2トン

UIAA規格 クライミング専門

工業用=スタティック、クライミング用=ダイナミック

グリグリはスタティックは用途外使用、知識と見聞の中でやっている

メルカリ購入はありえない 代理店の機能

濡れたロープNG

ハーネス、墜落用、滑落用

カラビナちょんがけNG エイトノット×ビナのアンザイレン=ジェットコースターのシートベルト

アパーチャータイプは HMSを使う

クリックアップ、ビナとセットで機能する

オーバルは強度が出にくい

アメリカでは初心者にはグリグリをまずマスターさせる

グリグリがNGのケース =トラッド、確実でない支点、離れている、体重差

人工壁でもドローを1本

中間支点オフセットD

パスの先オフセットD

カラビナが引かれる向き なぜナローエンドを持って回転させるのか?

ダイナミックロープの種類 

セカンドの確保vsTR (ダブルでトップロープしても良いか)

ロープの注意点、こすらない、ギロチン、紫外線劣化、摩耗、角での摩擦

最近の整備され過ぎた岩場では見極め力が減ってしまう

クラックなのにボルト=SDGs?

高エネルギー症 6kN= 骨折  12kN=死亡 生理限界 捻挫、子供

安全マージン =1.6 12kN×1.6=20Kn

登る技術=パフォーミング技術

クライミング技術=ビレイ技術+リード技術

ビレイヤーの役割 空中で止める グランドさせない、生理障害、危険に対してアドバイスする

墜落をデザインするデザイナーだ

60kgの人が2mからコンクリート床に落ちたら死亡

60kgの人が10m登って3m落ちた =3.5Kn 落下率0.3

セルフに落ちる 60kg 60cm 1.2m落下=11.2kN

ロープの屈曲で登れなくなる

墜落距離を短くする=プロテクションをこまめに取る

プーリー効果

8かんで対物ビレイ

マルチはアパーチャー 

カウンターウェイト方式、ブレーキ方式

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2022/01/09

奥村講習2022 たぐり落ちのキャッチ

 ■ 動画


これくらいできる人のビレイでないと、ギリギリに挑戦する気になれないなー
なんせ外では、後ろに走るとかできる下地ないのに、なんで、リーチが短い私に、ギリギリクライミングを要求するのか?意味不明です…

■ 四阿屋インディアンフェイスの3ピン目での墜落をどう止めるか?もしくは、関西の”斜陽”をどう止めるか?

人工壁のリードでは、たぐり落ちは、”やってはいけない事例”として、かなり有名です。ので、わざとやる人はいないと思います。

その一方、アウトドア、外岩のリードで、たぐり落ちと同じような状態になるのが、

 ランナウト

です。私は、昔のクライマーは、10%の伸び率を考慮してボルトを打っていなかったため、明らかなランナウトでも、見逃してしまったのではないだろうか?と推理していました。

どうも、違うようです…(汗)。昔からダイナミックロープの伸びは10%だったそうです。

岩場にある課題のランナウトが、どのような理由で起きているものであれ、状況は一朝一夕には変わりそうにありませんから、

 備えなくてはなりません。

その備え方はどうしたらいいのか?

ということの答えが、たぐり落ちキャッチ練習、です。

■ 基本的に手繰り落ちてはいけないが、練習するなら、人工壁で。

この練習を外岩でするのは、かなり無理があります…が、実は私も外で一回、たぐり落ちして、墜落をキャッチしてもらった経験があります。小川山屋根岩1峰に、5.13を登る強いクライマーとお出かけした時に、私が登れる10bは近所に一本しかなく、クリップが遠く、かけようと手を伸ばした後で、バランスを崩し、落下。ビレイヤーは地面にお尻をついて止めてくれました。いや、あれはまずかったです…。

その日は、”今日一番危険なクライマーアワード”を受賞し、その日以降、万全のクリッピング体制以外は、クライムダウンです(笑)。

これ以外でたぐり落ちしたのは、まだ筋力が十分ついていないころ、無理強いされたリードで、腕力も握力も使い果たし、終了点が開けれなかった、というものです。

これはインドアの壁だったのですが、インドアの壁って高さが低いので、たぐり落ちたら、床まで50cmでした…。その場の全員が凍り付きました。

”だから、嫌や~、ゆうたやん…” 

と思いましたが、これは先輩格だと勝手に本人が思っている会の女性が私に無理強いしてきたリードでした…その人は、自分がビレイ経験を積みたかったのです…。私も軽いクライマーですが、私より軽いクライマーの彼女は、ビレイしても、誰も落ちない… 大体、分かっている人は、軽い女性相手のクライミングで、落ちるような登りはしないものです…。

というので、バンバン落ちあっているというのは、人工壁で初心者時代のラッキーな経験かもしれません。

私も74kgあった師匠の青木さんと組んでいた時は、青木さんの墜落をキャッチしたことは一回もありません。なんせ74kgvs48kgなので、私の方が吹き飛びますから、お互いにそれは納得ずくで、”テンショーン、あいよー”の関係性でした。

私の最初のパートナーの岩田さんは、68kgでしたが、けっこう落ちました…ので、岩田さんの落を掴んだふい落ちとか、ハング1ピン目の落下とかは止めています…。

■ ビレイヤーが脳しんとう

あんまり、落ちられるとビレイヤーが危険なのは、68kgの人も同じだったので、一度は、キャッチしたものの、2度目は私は自分が脳しんとうで壊れると思ったので、「誰か代わってもらえませんか?」と周囲の男性に頼んでビレイ変わってもらった…という思い出があります。

パチンコ状態=落ちてきたクライマーにビレイヤーが弾き飛ばされる…になると、ビレイヤーは、かなりぐったりします…。

この件ののち、下にセルフビレイが取れるか、常に木の根などを探すようにしています。あるいは、その課題は断るか、ですね。なにも1ピン目核心の課題を選ばなくても、課題はいっぱいあるわけなので。

■ たぐり落ちキャッチ、もしくは、ランナウトキャッチのやりかた

・うしろにさがる
・うしろに走る
・ロープを大きく後ろに引く

です。

このほか、岩の下にジャンプする、というのも知っています。例えば、川上小唄で落ちるなど…。

しかしながら言いますと…四阿屋のインディアンフェイスでは、基本的に後ろに走れるような下地ではないと思います。

この動画は、非常にうまい、ビレイ慣れしたビレイヤーですが、この動作をするゆとりが、四阿屋であるか?というと??

それは悩ましいだろうと思います。人工壁だから、このようなキャッチができる。動いている量も、そこまで大きくありません。

■ 斜陽

関西に斜陽という有名な課題がある。6件も重大事故が起きている、ランナウトした課題で、初登者はボルト位置のうち替えを拒んでいるそうだった…(今もそうなのかは、知らないが)

http://kkinet.sakura.ne.jp/oshirase/2016/160308_iwabamondai-osirase.pdf?fbclid=IwAR0ltdwHsnwz1QR_omhr00VNgBJoK9UbIJtLdzyC16wMEZAbL27X8Jv_zzQ

初登者いわく、「後ろに走ってビレイしろ」なのだそうである。きっと斜陽は下地が良くて、後ろに走れるほど、平なのだろう…

この斜陽は、関西ではかなり有名で問題視されているらしいが、四阿屋のインディアンフェイスは一体どうなのだろうか?トポになにがしかが記述されているのは、見たことがないが…。


九州にはもう4年もいるが、どの課題がアブナイというのは、聞こえてきたことがない。

■ 事故防止

当時も考えたが、やはり事故防止は

1)自ら、ランナウトしている課題かどうか?を見極める目を身に着ける

が、第一義的に大事であろう…。

落ちないで登れるなら、ランナウトだろうが、一向にかまわないわけで、ランナウトしている課題にはすべて取りつかない、ということは、必ずしも必要はない…(比叡とかリードしてしまった手前、こういわないとつじつまが合わないというのがあるが(笑)。ランナウトすると燃える、というのは、クライマーならというか、人間なら誰でもある)

ただし、適切にビレイしても、落ちたらグランドフォールすると分かっている課題に、落ちそうなグレードしか登れない場合に、取り付いて、本当に落ちたら、ただのバカである。

予測との一致、が重要だ。

しかし、最初から、ランナウトしている、ということをオブザベで出来ていない、というのが、基本的には、現代の外岩クライマーの問題であると思える。

2)ビレイヤーとして備える

ランナウトした課題にパートナーが、ホイホイと取り付いてしまう場合、
 
 ・制止する
 ・落ちても止めてあげる

の二つの選択肢があるが…。オブザベしない人は、大体イケイケの人が多い。いかんせん、言うことを聞かない。

なにしろ、最近のクライマーは、一度も外でリードしたことがなくても、インドアで5.11が登れているから、自分も当然、外岩で5.11が登れるはずだと思っているのだから…。グレーディングシステムによってミスリードされている。

ので、制止する、という選択肢は、大体、消える(笑)。

となると、落ちても止めてあげる、という選択肢になる。

その選択肢が取れるためには、人工壁でのたぐり落ちキャッチというビレイ達人技、が必要になる。

これがどれくらいの達人度合いなのか?ということは、この動画を見れば分かるはずだが…、イケイケクライマーの方はこれと同じ達人度を、相方のビレイヤーに要求しているとは、よもや思ってもいるまい…

あー、私はいいビレイヤーだったな~、ホント。ちゃんと止めてやるし、自分はバンバン落ちる登りをしたりしないし…

3)トポに明記&適正グレード

現代クライマーが、ランナウトした課題には取りつかないという知恵を発揮できないのは、オブザベ能力に欠如する、という問題もあり、それは、情報過多で自分で考える力が不足している、という根本原因もあるには、あるが…

クライマー側にも情状酌量の余地があるのは、このインディアンフェースは、5.10bではなく、5.10d、であるということ。ぜんぜんグレードが適正でない。

また、トポのどこにも、そんな危険は指摘されていない、ということ。

つまり、ひっかけ問題化、しているということだ。

意図的に、わざと、間違いを誘発しやすい状況になっている、ということ。間違いを犯したくないと思っている人にとっても、用心している人にとっても、ひっかかりやすいということだ…。

これは、比叡の白亜スラブのボルトがカットアンカーっていうのと同じだ。ボルトを見たらペツルと思っているクライマーは、普通にいる。

カットアンカーとグージョンの違いを教えてくれる登山学校なんて、いままで見たことない。師匠らから、リスクを指摘されたこともない(というか、師匠と仰いだ人がカットアンカーを打っていたんだが…汗)

ので、クライミング界全体がひっかけ問題ちっく、である。

その理由は、前述の記事にあるように、悪者を指摘しないように配慮されており、間違ったものや危険なものを指摘しないように配慮している、ということがあると思う。

したがって、ここでの作戦は、王道以外登らない、みたいなことになる。小川山だったら、例えば、クラックなら、小川山レイバック、カサブランカ、ジャク豆、みたいな順番があり、その順番を業界のあれやこれやが分かるようになるまでは、まじめに守る、ということが身を守る気がする。

4)トップロープ + RP で登る

これは、欧米の市民クライマーの皆さんでは、ごく普通に受け入れられている登り方で、欧米人は、市民クライマーであれば、日本人みたいに、オンサイトにこだわる人は少なかった。

私自身も、山梨時代は初心者だったこともあり、ほとんどの課題が、TR+RPだ。

いきなりリードで取りついた課題は、めったにない。例えば小川山レイバックは、TRで登ってから、3年後にマスターでリードしている。

これは悪い作戦ではない。なにしろ、ラッペルの課題は、実は開拓者でも、試登という名のTRをしてから、RPして、初登へ至っている。ので、なにがなんでもオンサイトに拘る登りをしなくてもいいのではないか?とラッペルの課題については思う。

また、登れるようになったルートを後輩にリードしてやり、トップロープをかけてやることは、そもそも、そんなに恩を売るような偉大な行為ではない…どっちにしろ、リードするのだし、そのあと抜かないでいるだけで、当人に特別、余計な労力がかかったわけでもないからだ。

大体が先輩のアップの課題が、後輩のアップアップの課題でTRで登っていれば、万事都合よく運ぶ。

グランドアップで開拓された課題については、グランドアップだけにランナウトしているということも含めて、つまり、恐怖グレードも含めて、力量であるはずなので、オンサイトに拘ることには意味があるような気がするが…。

例えば、私は、がまスラブ5.9は、オンサイトしかしていない…そのために、ジャーマンスープレックス10cをRPで登っているので、がまスラブは当然オンサイト出来る力量がある、ということだったからだ。

■ ルート指南

こういうルート指南、というのが、基本的には、トポの役目のハズなんだが…、基本的に、日本のトポは、課題名とグレードくらいしか書いていない。つまり、貧弱だ。

課題の長さ=ロープ長を決定するのに必要、
ボルトの数と課題の長さ=ランナウトを吟味するのに必要
開拓者名=ボルトの信頼性を審査するのに必要
開拓年=ボルトの信頼性を審査するのに必要
Rつき
Xつき
TR限定

などの表記が、全然、基本的になされていない…。その代わりに要らないムーブ情報が出ていたりして、えーこれだとフラッシュなのじゃ?と思える時もある。

ので、トポがトポの役割を正しく果たしていないので、トポを見て、何から登ろうかな~とならない…。せいぜい星の数を数えるくらいだ。

これが、海外のトポを知ると、いかに異常事態か?ということが分かる。海外のトポだと、最初の数ページに、岩場の成り立ちが書いてあり、いつ開拓されたか?ボルトはどのようなものが使われているか、書かれているし、事故時の連絡先病院まで載っている。支点の強度評価が載っているものもあり、当然ロープ長を決定するために、課題の長さも載っている。

ので、一つの岩場をどう戦略的に攻めようか?というのは、クライマー個人が自分の責任で考えられるように十分な情報が与えられている。

もちろん、海外の充実したトポを相手にしても、最終的には偵察して、登る課題を目視で決めるわけだが…。目で見ないで決める、ことはないにしても、それでも日本のトポはひっかけ問題になっているだろう。

充実した海外トポブックを見ると、日本のトポでは、なんとなく、不平等条約を結ばされているような気分になってくる…が、実際そのとおりなのだろう…。

昔のクライマーは、その不平等なところは、先輩後輩の中で、口承されたり、易しいところから順繰りに登ったり、岩だけでなく山のトータルな危険認知力があったり、そもそも山岳部に入るような若者=大学生で、頭が良い人限定だったり、したわけだ…

現代では、それこそ、口承される機会はないわ、クライマーの資質は千差万別だわ、ということになっている…

■ フリークライミングのビレイでも、後ろに走る練習はあり

奥村講習は、とても優秀な講習で、講習生のリクエストにも答えてくれる。

そのため、このようなたぐり落ちビレイのデモンストレーションも行われた…

が、講習生が実践することはない。

つまり、講習生のレベルで練習させると、墜落役の人が危険ってことだ(笑)。

これらを総合するとやはり、インドアクライミングジムで、クライミングのパフォーマンス能力だけを特出して向上させるという作戦は、事故につながりやすいということではないだろうか…。

なんせ、インドアで登っていて、一番ビレイの練習をするのには最適な状況にいても、インドアのビレイをそのまま外岩に持ち込めるわけではない…が、そのことが理解できるようになる時間を取らずに、パフォーマンスが伸びると…リスクの認知はおろそかになる。

もう、これは構造的問題で、昨今クライミングをスタートして、この構造的問題を逃れたクライマーというのは、かなり珍しい存在だろうと思う…。まぁ、私自身も、その珍しい人種なのだが…。

それは、講習会に出るという機会を掴む気持ちや、上級のクライマーから盗もうとする、あるいは、自分でペツルのサイトを調べるなど、総合的なものだと思う。大体の人は、技術講習をいやがり、パフォーマンスだけを高めることに興味がある。

強いから組みたいという人とではなく、そのように珍しい人種で、リスク認知とビレイスキルというクライミング技術が揃っているから登りたいという人と登りたいものだ。


≪関連記事≫
自分もアブナイ、相手もアブナイ






奥村講習2022

 ■ 2度目の奥村講習

に出かけてきた。今回は、座学がパワーアップしていた。また、奥村さんの教え方の特徴は、

してはいけないこと

を例示しないことだ。

私の考えでは、奥村さんの”やさしさ”が、そこに現れている。なぜなら、してはいけないこと、を言ってしまうと、どうしても、悪い人が一杯出てきてしまうため。否定されたり、責められたりしているように感じる人が出てきてしまう…。

なので、結果としては、してほしいこと、を聞いてもらえなくなる。

一番、分かりやすい事例が、壁から離れたビレイだ。

例えば、これ。


このビレイは、非常に危ない。し、クライミングシステムが、どのようにクライマーの安全を担保しているか全く理解していないことをデモンストレーションしている。

しかし、これを指摘しても、ビレイヤーはビレイを改めない。理由は、ビレイヤーには、クライマーの墜落の衝撃は、まったく伝わってこず、ビレイヤーは前に引かれて壁に激突する、ということはないから。

では何が衝撃を吸収しているか?といえば、1ピン目の支点と、クライマー。クライマーは、このビレイでは、ロープをクリップしたいと思っても、ものすごい力で引かないと、ロープを貰えない。また、落ちたら、バッツンビレイなので、壁にたたきつけられる。

これは、大きいビレイヤーと小さいクライマーとの関係でよく見られ、大きいクライマーが小さいクライマーに負担を強いている事例だ。

極端に重さがあるうえ、1ピン目でロープの屈曲が90度近くもあるので、ダイナミックロープとしての性能をほとんど発揮していないようなロープ使用になっている。

これが、下が軽く上が重たければ、前に引かれるというのは、必然になり、ビレイを見直すきっかけになる。

ところが、これくらい体重差があると、まったくビレイヤーは問題を認知せずにスルーできてしまうわけだ。

親が子供を危険にさらしているが、子供の方は、当然だが、それが危険だと分からないので、甘受して登る、ということになり、子供が超・きのどく、という事例。

このビレイヤーは、制動している手も、確保器より上にあり、確保器の操作自体も間違っている。




…ということを、奥村さんは、指摘しない

ということが、一番、勉強になった。

これは方法論的に全くの正反対なのである。 しかし、弁明をさせてもらうなら、初心者時代に私は師匠や先輩のきちんとした指導は受けていない。ので、どうしたらよいか?わからなかったので、自分で勝手に、ペツルのサイトやビレイデバイスのカタログを読みまくっていたのである。どうしたらいいか?を解決する先として、選んだのはペツル社や、その他の権威ということだ。

ここで多くの人は間違うのだろう…大体みな、

周りの人がどうしているか?を参考にする=日本人にありがち…ということだ。

そうすると、周りの人はだいたい9割の人が間違った技術を行っているので、正しくないビレイや間違った技術ばかりを目にすることになり、間違った技術が継承される。

支点ビレイもそうだろうし、ATCを使ったグリップビレイもそうだろうし、終了点直がけトップロープもそうであろう…

■ ペツルのカタログ

私が人工壁にデビューしたころは、次の人に教えるのは、ペツルのカタログを一冊渡せば、大体必要なことはすべて書いてあった…

が、昨今メーカーは、紙のカタログを出さなくなった。

ので、ペツルのサイトを読んでおくように、と後輩に言い渡しても、大体の人は読まない。

紙のカタログを渡しても読まないかもしれないが、ネット社会になって、さらに知識を求める人と求めない人の差は大きく開いたと思う。



2022/01/07

【リスク管理】小さいビレイヤーが危険にさらされ、ヘルメットが必要なケース

 ■ 誰が危険か?

この写真を見てください。 ここでリスクにさらされているのは誰でしょうか?


答え)下のビレイヤー

このビレイヤーは、自分の命を危険にさらしても、上のクライマーを守ろうとしています。

体重とロープの柔軟性にも寄りますが、この状態で上のクライマーが大きな墜落をすると、下のクライマーは必ず浮き上がります。

その際に下部のハングの岩に頭をぶつけてしまうリスクがあります。

この場合、下のビレイヤーは上のクライマーより、極端に軽くない人が良いです。通常、軽いクライマーは衝撃を浮くことで吸収できるので、ベストマッチと言えますが、このように浮くことでビレイヤー事態にリスクがある場合は、

・下にセルフビレイを取る

・ヘルメットをかぶる

という2重の安全が必要です。

いつも、私はこのような状態でビレイしているのですが…誰も私が背負っているリスクを分かってくれないので、非常に寂しい思いをしています(笑)。

クライマーは、だいたいの人が、墜落を当然の権利だと思っている節がありますが、この状況でバンバン落ちるクライマーは、ビレイしてくれる相手のリスクを正確に評価できていないので、お互いに、ビレイヤーの方が、大きなリスクにさらされていることを共通理解にしておく必要があります。

なぜなら、一般的なビレイヤーとクライマーの関係は、ギブアンドテイクの関係なのですが、これだと、体格によっては、ビレイヤーのギブが大きすぎるからです。

小さいビレイヤーにとっては、このビレイは、ほとんど自己犠牲的ビレイです。ギブアンドテイクの量を誤って計ってしまいます。

このような場合は、比較的重たいクライマーを起用するべきです。そうすれば、ビレイヤーが怪我をするリスクは軽減されます。

このような、

・落ちる位置が地面に近くて、

・下にハングが出ている場合

は、正しくビレイしても、危険があり、その危険はビレイヤーの方が大きいです。

・グリグリを使用する

というのも、安全対策になりえます。ガツンと止めてほしいケースだからです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

このルートは、ものすごく気を使います。 出だしから厳しいムーブが続き、なおかつ出だし部分より3D形状なので、ロープがクライマーの動きを妨げないように位置取りを考えないといけないこと、そして1ピン目から普通にフォールする可能性があるのでこまめにビレイヤーは動く必要があります。やっと2本目、かけ終わった時点で1本目の真下に移動してビレイということになります。 ちなみにビレイはグリグリを使ってます。

ーーーーーーーーーーーーーーービレイしていた人からのコメント

■ ビレイできます、というのはどういうことか?

こういうのが、ビレイできます、という中身で、ただロープの端っこをもっているだけってのは、ビレイできるに入らないんですよ。

ちなみに次の写真は、ダメ事例です。

グリーンのジャケットの先輩が登っている様子ですが、ビレイが非常に危険だったので、指摘しましたが、ビレイヤーは涼しい顔をして治そうとしませんでした… 私以外にも二人も別の人が同じ危険を指摘したにも関わらず、です。

直さなかった人は33歳の背の高い男性でしたが、会の新人ということで大事にされていました…平均的な人ときちんと考えている人ではこれだけビレイのスキルに差があるということです。ちなみに私は最初からビレイは良かったです。ですので、最初が肝心と思います。最初に離れているビレイを当然と目視してしまうと、人は

  言われた通り

ではなく

  周りと同じように

やってしまう生き物なのです。周囲に、下手くそビレイヤーばかりでは、本人も下手くそになります。


お上りさん時代の記録 https://iceclmb.blogspot.com/2014/12/blog-post.html

ラオス方式を検討

■ クライマーには難しすぎる

前の記事の

ピンAの打つべき高さ=(前のピンまでの高さ×2)×(0.9、もしくは0.7)- (止めてもらいたい高さ)

という公式は、とても瞬時に暗算可能ではないので、ラオスで一般的だと登りながら感じられた原則を考えてみます。

・1ピン目の高さに関わらず、2ピン目は、1ピン目+1m
・3ピン目以降は、ずっと2m置き

です。

3mで考えてみると…

≪1ピン目3mのケース≫
1ピン目:3m地点
2ピン目:4m地点
3ピン目:6m地点
4ピン目:8m地点
5ピン目:10m地点
6ピン目:12m地点

≪前項の4mの1ピン目でケース 日本で1ピン目が遠い課題として一般的≫
 現代の30%伸びるロープの時代
1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :4.6m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :6.84地点(地上1mで止まる)
4ピン目 :8.576地点(地上1mで止まる)
5ピン目 :11.0064地点(地上1mで止まる)
6ピン目 :14.40地点(地上1mで止まる)

となり、大して差がない…。 1m上に最初のピンを上げても、稼げたのは2.4mだけ。

ボルトを取らないのは、ミニマムボルトの原則と思いますが、ミニマムボルトで登るためには、大墜落を出来るだけしないというクライミングスタイルが必要ということですね…

30%も伸びるような墜落をしないということですが。

大墜落というか、普通に落ちて安全なのは、オーバーハングの岩場です。

オーバーハング=宙に落ちる、

だからです。 基本、日本にはそんなに存在していないです。




2022/01/06

1ピン目3mを起点にした場合のロープストレッチを加算した、正しいボルト配置

 ■ 正しいボルト距離は…?

昨日、試し算した内容では、正しい2ピン目の位置、3ピン目の位置が決められなかったので、再度、チャレンジします。


≪基本形≫

1ピン目 3m

2ピン目 6m

3ピン目 12m

4ピン目 24m

  トータル:24m

■ 2ピン目の位置?

6m全長が出ているときに、どこにボルトがあれば、落ちれるか?を計算します。

10%のロープストレッチの時、0.9掛け = 5.4m地点 (±0)
30%のロープストレッチの時、0.7掛け = 4.2m地点 (±0)

±0というのは、ロープの伸びでちょうど地面に着く、ということですから、ゆとり0です。
せめて、地上50cm上では止まりたいですよね?身長なども考慮したら、1m欲しいかもしれません。

加算すると

10%のロープストレッチの時、0.9掛け = 5.4m地点 (±0)-1m=4.4m
30%のロープストレッチの時、0.7掛け = 4.2m地点 (±0)ー1m=3.2m

3m地点に位置ピン目が合って、3.2mと20cmしか離れていないところに2ピン目が合っても、衝撃荷重の墜落をすると、地上1m上で止まるということで、2ピン目がえらい近いですね…誰もこんなところには打たないですし、1ピン目で落ちるというのは、大墜落は考えにくいので、10%を採用して、

1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点

とします。

■ 3ピン目の位置

とすると? 3ピン目は、4.4mの×2倍の8.8mの全長のロープで落ちても大丈夫な地点を探すということになります。

10%のロープストレッチの時= 8.8×0.9 =7.92m地点(±0)-1m=6.92m
30%のロープストレッチの時= 8.8×0.7 =6.16地点 (±0)ー1m=5.16m

10%想定の場合 つまりテンション登り
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :6.92地点、

30%想定の場合 つまり、足元下でのフォール許容
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :5.16m

どちらのボルト配置をよく見かけるか?というと???

3m、4.5m、7mみたいな配置のほうが、3m、4.5m、5.2mみたいな配置より、圧倒的に多く見かけます。3ピン目が2ピン目にごく近く打たれているケースというのは、あまり見かけない。

つまり、2ピン目と3ピン目が離れていることは、よく見かけるリスクということです。3ピン目を取るまでは、テンション登りやAゼロにしておいて、気軽に墜落しない方が良いということです。

実際には、3m、4.5m、7mみたいな、よくある配置で、2ピン目と3ピン目の間で落ちたら、テンションと叫んでも、実際はフォールファクター2の墜落。つまり、2,3ピン目の間に核心があるルートも危険ということです。

さて、4ピン目をよくあるケースで、10%&1mで、算出するとこうなります。

10%想定の場合 つまりテンション登り前提
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :6.92地点
4ピン目 :11.456地点

ちなみに4ピン目を取る前に大フォールで30%のフォールを許容したい、つまり核心がある場合

1ピン目 :3m地点 
2ピン目 :4.4m地点 約4.5m
3ピン目 :6.92地点 約7m
4ピン目 :8.688地点 約8.7m

に打たないと、地上1mの地点で止めてもらえないということになります。実際は、前のピンの倍もは、距離は離せない、ということが分かります。

■ 一般的に1ピン目が遠すぎると言われる4m上で試算

4m上の1ピン目っていうのは、まぁ、誰が見ても、”遠いなぁ~”というものだと思います。

佐久でも遠かったです(ーー;)。同じ計算をしてみると、4mの遠い1ピン目のルートでは、10%のロープストレッチの想定で

8×0.9=7.2、14.4×0.9=12.96 となり、

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :7.2m地点(±0)
3ピン目 :12・96地点(±0)

です。この位置だとちょうど地面にヒットするという意味ですので、ー1mすると、

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :6.2m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :11・96地点(地上1mで止まる)

となります。これでも、前提が10%の伸びですから、テンションしかしない前提のボルト配置です。

ビッグフォールの30%だと?

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :5.6m地点(±0)
3ピン目 :7.84地点(±0)

地上1m上で止めれるように設計すると?

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :4.6m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :6.84地点(地上1mで止まる)

となります。それにしても、2ピン目が近い。60cm先です。こんな配置見たことないくらい、3本目も近いです。

元の基本形と比べるとイメージの差に驚くと思います。

≪基本形 1ピン目4mの場合≫

1ピン目 4m

2ピン目 8m =1ピン目の2倍

3ピン目 16m =2ピン目の2倍

4ピン目 32m =3ピン目の2倍

1本目が高い課題は、全然珍しくなく、1ピン目が高いのは、基本的には、下部が簡単な5.4とか5.5だったら、出来るだけ高くに1ピン目を設定したほうが、上でボルト数を節約できるという発想のためですが… そのイメージすら間違っている…。

現実の数値を比べると、30%伸びる時代で地上1mで止まるはずの配置は、驚くほど、2,3ピン目が近くにあることが分かると思います。

       昔の伸びないロープ時代 vs 現代の30%伸びるロープの時代
1ピン目 :4m           vs    4m地点 
2ピン目 :8m           vs    4.6m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :16m           vs    6.84地点(地上1mで止まる)
4ピン目 :32m           vs    8.576地点(地上1mで止まる)
5ピン目 :64m           vs    11.0064地点(地上1mで止まる)
6ピン目 :128m          vs   14.40地点(地上1mで止まる)

現実には、4m上に位置ピン目があることはとても多く、2,3ピン目でこんなに近いことはめったにないです…

クライマーは、2,3ピン目の間が最も危険だということは、感覚的に体得していると思いますが、具体的に数値にしてみると、現代の伸びの良い細い径のロープでは、ホントにほんのちょっとのダラリンも許容できないことが分かると思います。

■ 原則にまとめると?

原則にまとめると

1ピン目=Ym
2ピン目=2Y×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
3ピン目=2ピン目の距離×2×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
4ピン目=3ピン目の距離×2×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
5ピン目=以下続く…

0.9=10%の伸び 静荷重
0.7=30%の伸び 衝撃荷重

です。核心前のボルトでは、0.7掛けを採用したほうが良いと思います。

べき乗で、ボルトの位置が離れて行くという伸びないロープ前提のイメージとは、現代のロープクライミングであるべきボルト位置は、かけ離れた数値で、オールドクライマーが一概に怖いもの知らずだったという話ではないだろうということです。

べき乗の増分イメージから抜け出せていない開拓者は、自分の思いとは別に、危険なボルト配置をしてしまうこともあるということです。

誰も悪者がいなくても、危険な岩場になってしまう、危険な課題になってしまうということです。

       これくらいでビレイしないと危険です。

2022/01/04

ロープの伸びが考慮されていないボルト配置

 ■ 完全にロープストレッチを除外して考えたケース

1~3本目のボルト位置について考察します。

まずは、ロープの伸びがないケース。 

1ピン目、3m上で考慮します。

3m=通常、許容され、落ちても、致命的な怪我にはならないだろうと想定される。ボルダーの高さ。

原理をもとめるものなので、岩場の形状は考慮せず、単純に上に登っていくものとします。

1ピン目が3mにあるということは、2ピン目は最低3m以内で、打たないといけないという意味です。2ピン目が6m地点にあるとすると、ロープ全長6mですから、次のピンは6m離して良いということになります。同様に、4ピン目は、12mのロープ全長ですから、12m離して良いということになります。(24mで4本)

≪基本形≫

1ピン目 3m

2ピン目 6m

3ピン目 12m

4ピン目 24m

トータル:24m

さて、これが安全なのか?どうか?試し算をしてみたいと思います。

■ ロープの伸びを考慮すると

これはロープの伸びが考慮されていないので、現実には、この距離だけ、離して中間支点を入れると、確実にグランドフォールになります。

一般に、ダイナミックロープは、衝撃荷重で30%、静荷重で10%のロープの伸びがあります。

10%伸びる=テンション、30%伸びる=足元以下に支点があるときのフォール、です。

■ 10%

上記の支点間隔に10%の伸びを加算してみます。

1ピン目:3m

2ピン目:6m 2ピン目直前で落ちると、6mの全長のロープストレッチの分、グランドフォールになる つまり、このピン配置は危険

3ピン目:12m 3ピン目直前で落ちると、12mの全長なのでロープストレッチの分、グランドフォールになる つまり、このピン配置は危険

ということになります。では、次のピンを打つときに、手前の支点までに、10%の伸びを配慮したらどうでしょう?

1ピン目:3m地点

2ピン目:5.7m地点 (3m×0.9 +3m)

3ピン目:10.83地点 (5.7m+(5.7×0.9)

この配置で行くと、1ピン目を取って、2ピン目を取る前の5m地点でフォールすると、5m×1.1=5.5mのロープストレッチとなり、地上3mの支点では、50cmしか地面から離れていないことになってしまいます。つまり、2ピン目直下は落ちられないということです。たぐり落ちと同じような状況ですね。

2ピン目を取って、1m程度登った6.7m地点でのフォールでは、6.7×1.1でロープストレッチ7.37mは、支点は、地上5.7mですから4m地点で止まることになります。トータル墜落距離は、約3.3mです。けっこう落とされますね?

3ピン目を取る前の、たとえば、10mの地点で落ちれば、確実にグランドフォールします。ロープ全長10mに10%のロープストレッチを入れると11mで、5.7m地点の支点2で折り返すと、5.7m-11m=5.3となり、確実にグランドフォールです。

つまり、この設定での3ピン目の位置では、2-3ピン目の間では落ちれないです。安全にしたかったら、もっと手前で3ピン目を打たねばなりません。ではどこに打てば安全になるのでしょう? 2ピン目に、3mを加算した8.7mで試算してみます。

1ピン目:3m

2ピン目:5.7m 

3ピン目:8.7m(5.7m+3m)

この3ピン目が安全なのか確かめるために、3ピン目の1m下、7.7m地点でクライマーがフォールしたとします。7.7m+ロープストレッチ0.77m=8.47mがロープ全長ですから、2ピン目の位置が5.7mとすると、8.47-5.7m=2.77、つまり地上約3mの位置で止まることになります。7.7mから3mまで落ちるのですから、約4.7mの墜落とけっこうな距離です。

これは、ロープ伸び率10%、つまり、ロープ全長は1.1倍の計算でこれです。

実際は、5mのフォールはロングフォールで、30%のロープ伸び率です。1.3倍のロープ全長で計算しなおしてみますと…

7.7m+ロープストレッチ2.31=10.1mがロープ全長、2ピン目の位置から引くと、10.1の全長で、5.7m地点から落ちると、地上1.3mで止まることになります。7.7mから1.3mまでおちるというのは大フォールですね。

ということで、3ピン目が2ピン目と離れていない、というのは、非常に重要なことなのです。

■ 考察

昔の人は、ロープの性能が低い時代に登っていました…つまりロープの伸びということを、ビレイする際に考慮せずに済んだ、という気配が濃厚です。

その分、人体が衝撃吸収体になってしまい、墜落でクライマーが衝撃を受けてしまい、人体が壊れる事故は多かったのではないかと思います。

しかし、現代のロープは衝撃吸収能が良く、ロープは大体、大フォールで30%伸びるように設計されています。

大体ロープには、どの体重で、というのも書いてあると思いますが、軽い人は伸びの良いロープ、重たい人は伸びないロープ、です。

■ 四阿屋の事故

四阿屋へ初めて行ったおり、3ピン目を取り損ねてグランドフォールした人を見ましたが、ビレイヤーの立ち位置は、1ピン目の真下で、2mもは離れておらず、きちんとしていました。それでも、グランドフォール…つまり、ボルト配置の設計が悪いということです。

こうした配置の悪さが、なぜ起こってしまったのか?というと、昔は、ロープが伸びなかったから、ということが言えるのでは?と思います。

このボルト配置の問題は、当時の装備では仕方なかった、という問題なので、普遍的で一朝一夕には替えようがないです。

また、一般に自分でプロテクションを打ちながらリードする習慣がないボルトクライマーにとっては、理解が難しいはずです。

逆にオールドクライマーにとっても、ロープの伸びでクライマーを守る時代になっているということは気がつきにくいです。ロープはそう頻繁に買い替えるものでない上、一度分かっていると納得してしまうと、再考しない傾向があります。

いくら支点が強固になっても、ロープストレッチによって、3ピン目以下のボルト配置が、クリティカルになっている、ということは、なかなか理解しがたいのではないかと思います。

■ ラオス

ラオスでは、この問題をどういう風に解決していたか?というと、大体3m離れる前、2m置きにピンが打ってありました。3m離れるということも少なかったので、1ルート20本もヌンチャクをぶら下げていくことがありました。

1ピン目:2m

2ピン目:3m 2ピン目が近いことがポイント!1mくらいしか離れていない

3ピン目:5m 2ピン目から2mしか離れていない。3m地点からロープストレッチを加算した2.6m落ちると、地面まで40cmしかないので、この近さでもギリギリ。

4ピン目:7m 3ピン目から2mしか離れていない。例えば、地上6m地点から、ロープストレッチを加算した7.8mの距離を落ちると、地面から2.2mしか離れていないので、すごく安全という訳でもない。

ということになり、”2m間隔で打ってあるよ”ということが、すぐさまチキン(=臆病)ということで馬鹿にできる状況ではないのが分かると思います。

ラオスに行って楽しかったからってキチンクライマーということには、ならないです。それなりに危険です。やはり、3ピン目を取るまでは落ちるべきでない、というのはその通りです。

■ 逆にインスボンのような大ランナウトの岩場では

師匠が、韓国人のクライマーの馬鹿にされ、登り方を変えたために、自分のカムを取ってすぐに墜落し、10mも落とされたと苦情を言っていたのですが…。

支点を取ってすぐでも、現代のロープはとても良く伸びるので、落ちたら、けっこう距離を落とされます…。

テンションと言われて、テンションを掛けるのでも、ロープストレッチ分を手繰るのに、ロープが長く出ていれば出ているほど、ビレイヤーは手繰る回数が増えます。

ランナウトを楽しむ岩場では、ロングフォールはありえないと心し、支点を取ってすぐでも、ヤバいと思ったら、支点下の、反対側のロープを掴むなどして、フォールを自分で阻止するか、落ちる前にカムエイドしてしまうほうが良いのではないかと思います。

もちろん、それがオールフリーを賭けた記録的クライミングなら、カムを握ってしまった時点で、あーあ、Aゼロしちゃったよーとなるわけですが…そういう記録的登攀を登っているのではないかぎり、落ちることのデメリットのほうが、必ず大きいと思われます。師匠の場合は、かかとの骨折でした。かかと程度でも、日常の不便は計り知れません…特に足はクライミング自体ができなくなります。

大ランナウトの岩場は、もしかすると、2グレード下というよりも、何度もセカンドで登り、自動化してから、リードするのが良いかもしれません。

自分の墜落が予想できない、とか、ちょっとでも負担があるとすぐにあきらめて落ちる方針で日ごろ登っている、とかそういう場合は、ほんの些細な墜落をしているつもりで、予想以上の距離の大フォールになる可能性があります。

とくに、スラブは、寝ているので、どこで落ちても大根おろしですし、フェイス、クラックのような垂壁でも、3ピン目を取るまでは、墜落は禁忌、です。

昔の課題は、現代のロープのロープストレッチ(伸び)を考慮していないため、です。

  これは私がリードした、アイスクライミングでの支点の配置です。2ピン目と3ピン目が近いのが分かるでしょうか…。

今打たないとどうなるか?安全か?危ないか?は、自分で打ちながら、リードしていないと分かるようにならないような気がします。

セカンド(ビレイヤー)でも、きちんとしたリードクライマーのリードの様子を見ていれば、身につくのかもしれませんが…。考えていないビレイヤーだと、「もうそろそろ取らないと危険だよ」と下から声をかけることがビレイヤーの義務と気がつかないかもしれません。

■ 2006年の最新アルパインクライミングに…

『最新!アルパインクライミング』にこのような記述があります。

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いわゆる「ロープを流して止める」制動確保は30年ほど前までは、ビレイの鉄則だった。

それは、ビレイ方法も「肩がらみ」だったからという前提がある。

中略

70年代前半~中盤で、おりしもビレイは「グリップビレイ」そして「エイト環」と大きく変わりつつあり、さらに現在のビレイデバイスが登場するにいたって、確保方法はロープを瞬間にロックする「静的確保」(スタティック)へと決定づけられたのである。

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『最新!アルパインクライミング』が出版されたのは、2006年と、16年も前です…

2006年の30年前は、2022年の46年前。グリップビレイは、1970年代の技とすれば、もはや50年前の技術です。

スタティックに取るようになってから、すでに50年もたっています…(溜息)

2022/01/03

事故をわざわざインバイトするような姿勢vs実力の見せつけ

 ■ 事故を招くような姿勢と実力の見せつけは違う

実際、正直に言えば、私も台湾の龍洞で5.2の看板ルートをカムで登った時は、けっこうランナウトさせましたし、小川山の有名なクラックでカサブランカというのがありますが、上手なクライマーはカム4つくらいだったりして、同じ課題を登るのでも、”そこらの初心者と違うのよ”とアピールするクライマーは当然います。

カサブランカを例にとると、ここは、クライミングガイドの人が初心者にリードさせるのに使うルートでもあり、その際は、自分はフィックスロープにぶら下がって、リードクライマーが設置したカムがきちんと決まっているか?をガイドがチェックしながらリードさせる、というルートです。カサブランカは、少しフレアしていてカムが決まりにくいからです。

同じリード&ノーテンションで登るにも、

・初心者は、ガイドがプロテクションをチェックしてから…という念の入り用

・ベテランは、カム4つ

そんな質の差があります。ベテランは、4つでも、危なくない配置で登れる訳です。実際一本目をできるだけ高くに取れば、4本のランニングでもかなりの高度が稼げます。1本目が6mの高さにあれば、2本目は4m離してもよく、3本目は6m離しても良く、4本目は14mくらいは離してもグランドフォールはしなくなります。(ロープの伸びを大墜落30%、テンション10%として、30%で考えると)

たぶん、一般には、3m、2m、4m、7mみたいなのが普通だとは思いますが…。ただ、実際に、プロテクション間隔を非常に大きく取っても安全が確保される場合もある、というのは本当です。

全体のプロテクションの間隔に一番大きな影響を与えるのが1本目の高さで、もし下部が易しくて落ちないのであれば、できるだけ高い位置に一本目を取れば、間隔を大きくすることは可能です。

少し脱線しましたが、

ベテランがカムを節約で登る場合の実力誇示型のランナウトは、基本的に、安全マージンが大きいことのアピールです。10Aならカム4つでいいくらい、自分には安全マージンがある、というアピール。

つまり、楽勝さ、のアピール。

一方、事故を起こすタイプのアピールは、命知らず自慢…どれだけギリギリか?つまり、ゆとりがないか?ということなのです…

ゆとりがないことを自慢してどうするんです?

易しいところではセルフを取らなくていい、とかそういうアピールですが…。易しいところですらセルフが取れないゆとりの無さ、ということになってしまいます。

■ お前、階段、何段飛べる?

小さい男の子たちは、仲間内の序列を作るのに、自分が恐怖を抱く対象にどれだけ近づけるか?ということで順位を付けたがります。

小学校で、階段があるとしましょう…

お前何段飛べる?と、どの段から飛べるか競争が始まってしまうのが男の子の性質です。

ある子は5段、ある子は6段飛べました…

誰にも飛べなさそうに見える10段… それを誰が飛ぶのか? 皆がかたずをのんで見守る中、俺が行く!と飛んで見せる…

…と、たとえ、そのトライで失敗し、怪我をしたとしても、その場にいる男の子全員から敬意を集めることができる。

…というのは、男の子の世界では当然のこととして、知らない人がいないようなことでしょう… 仲間のほかの誰もが、勇気がなくて踏み出せなかった一歩を踏み出した一人として、問答無用の尊敬を集める。

しかし、女の子の世界では、最初から怪我をすると分かっていて、なんで飛ぶのか?意味が分かりません。

周囲の男の子たちが、たとえ、怪我をしたとしても、飛んで見せた男の子を尊敬する理由もわかりません…女の子には、ただ仲間からの注目を集めたいがためにやっているようにしか見えないからです。

失敗は失敗にしか見えず、勝ち目のない勝負に出るのはただの馬鹿にしか見えないのが、現実に生きる女の子の世界観です。

クライミングで生き残るのは… たぶん、後者です。アレックス君のフリーソロがどれほど分厚い安全マージンのアピールなのか?ということを理解したほうがいいですね。

イチかバチかではなく、徹底した自動化の勝利、ということは、普通にクライミングをやっているクライマーなら、100発100中の自動化が起こるまで、登りこんだという自動化のすごさにびっくりしてしまうと思います。





2022/01/02

現代の日本のフリークライミングの岩場で、事故を起こさず登るには?

■ 外岩デビューする人工壁上がりの人へ贈る言葉

私は山梨で、初心者時代を過ごし、山梨時代に、このように教わりました。

 1)外岩では、3ピン目を取るまでは、決して落ちてはいけない

 2)マルチでは、2グレード下しか取り付いてはいけない

 3)本ちゃんの残置支点を信用してはいけない

この3つを守るだけで、九州での事故は、ずいぶんと防げるのではないかと思います。

■ 解説 3ピン目

日本の岩場では、ピン間隔が、”開拓者のリーチ”や”岩の形状”、”習慣”というような事情によって長短があります。背の高い人にとって安全でも、低い人にとってはヌンチャクがかけれないことがある、ということです。

昔はリングボルトを一個打つのに1時間とか30分とかかかったそうで、そんなに時間がかかるのであれば、落ちそうにないところでは打たないで、本当にヤバくて落ちそうなところでだけ打つ、という方針になってしまいます。

うち替え、となると前に打ったところに打つ、というのが最も安易な作戦ですので、ボルト間隔というのは、一回決まったら、変わらない傾向があり、そうなると最初のリングボルトの時の配置を、延々と受け継いでしまう可能性がある、ということです。

一方、人工壁のフォールファクターは、つねに1になるように設計段階で、設計されています。つまり、人工壁では1m置きにピンがあるくらい、非常にピン間隔が近いです。そのため、多少下手なビレイヤーにビレイされていても、あるいは、観客を楽しませるために、ロングフォールで落としても、特にクライマーには問題がないようになっています。

また、人工壁ではギリギリに迫り、落ちるまで登るのが上達のための秘訣であり、指力や握力、腕力をセーブするために、気軽に墜落する、というのが、ごく普通の行動様式です。最後に、人工壁の支点は強度がメンテナンスにより保証されています。

ですので、人工壁で登っていたクライマーが、人工壁での行動様式で、外岩に行くと、大事故につながってしまいます。人工壁並みの支点強度もなく、ピン間隔も遠く、フォールに対する安全も保障されていないからです。

ビレイヤーもクライマーも、行動様式を変えねばなりません。

一般にフリークライミングでは、1ピン目を取ったら、どこで落ちても、キャッチしてもらえると期待できるのが、基本的なセオリーではありますが、現実の岩場では、そのようなつくりには、なっていないことのほうが主流です。

1ピン目までの距離より、2ピン目までの距離が長い課題も、ままあります。2ピン目までより、3ピン目までが遠いことは稀だと思いますが、ありますし、その上、支点脱落という可能性はありえます。

ので、クライマーもビレイヤーも、3ピン目を取るまでは最大限に警戒して、落ちない登りをするべきです。特に屈曲しているルートや、出だしでかぶっているルートでは、落ちる距離の見極めが難しく、3ピン目までは落ちてはいけない、というよりも、初心者時代は、そうした屈曲したルートでのリードは、最初から避けたほうが良いです。

初心者のリードに向いた課題は、

・ほとんどまっすぐで、

・下部が易しく、

・3ピン目以上で高度を上げてから核心がある、というようなルートで、

・支点強度がしっかりしているもの

・ビレイヤーとのコミュニケーションがとりやすいもの

・ビレイ位置が安定しているもの

です。

私は易しくても、大きく屈曲して、ビレイヤーとコミュニケーションが取れないようなのは、避けています。ビレイヤーの立場になると、ロープをどれだけ出してあげたらいいのか?見えなければ、判断のしようがないからです。

■ 解説 マルチでの行動様式

マルチピッチでは、さらに中間支点のメインテナンスがショートよりも困難です。

マルチでは、2グレード下の課題(ルート)にしか取り付いてはいけない、というのが、山梨で教わったことです。これは、最初からこう言われていました。

というのは、ロープワークの雑さなどで、時間がとられてしまうと、結局のところ、登攀にかかる時間が取れなくなるなど、別の要因が遭難のリスクにあるからです。

マルチピッチでは、シングルで登るショートと比べ、ダブルで行くべきか、シングルでいくなら、何メートルのロープを使うか?なども考慮しないといけません。

ルートの屈曲があれば、敗退に関する事前知識も必要になります。すぐやーめた、と出来るショートと比べ、クライミングムーブだけでは解決できない要素が増えます。

ので、クライミングがアップアップでは、それらの要素に対応ができないため、2グレード下にしか取り付かない、というのが、山梨で推奨されている安全マージンの厚み、でした。

私自身、小川山のマルチピッチは、”春の戻り雪5.7 3P” をつるべやトップで登っていますが、実際のショートで登れるグレードは、5.9がオンサイトレベルです。(11AはRPレベルです)

■ 解説 残置を信用してはいけない

これは、九州では、本チャンマルチとゲレンデマルチの区別が非常にあいまいです。

山梨だと、ご近所の山、太刀岡山左岩稜は、ゲレンデ、と理解されています。本チャンとは考えられておらず、本チャンといえば、前穂北尾根とか、です。

ちなみに私は、明神主稜、阿弥陀北稜、鹿島槍鎌尾根、立山真砂尾根にも行っています。行くだけに一日かかりそうなロケーション=本チャン。

九州では、山が道路から近すぎて、どこからが本チャンで、どこからがゲレンデマルチなのか?よく分からないのですが、どちらに区別するか?は別にしても、

山にある残置支点を信用してはならない

と考える方が安全です。

私は残置を信頼してはいけないと教わりました。ハーケンやリングボルトを信頼する人はいないと思いますが、カットアンカーでも、それが20年もたっていれば、同じレベルです。いくらペツルのハンガーが付いていても、ボルトがカットアンカーだと材質違いで、コロージョンの可能性もあります。

残置に足を掛けて、墜落しても、ヘリレスキューになっても、山梨では、「だから言ったでしょ」と言われることになります。誰も同情はしてくれません。残置を信用するほうが悪い、ということになっているからです。特に、山にある残置はそうです。

日向神は、山なのか?ゲレンデなのか?と言えば、私にはゲレンデと思えますが、マルチを開拓してくれた開拓者にとっては、遠くて”山”なのかもしれません。

比叡になると、もっとややこしく、福岡のクライマーにとっては、せーの!で行く山の方に入ると思いますが、実際は、徒歩30分とかで歩きの要素はほとんどないので、ゲレンデのように感じられてしまうかもしれません。

八面も山登りはほとんどしないで、むしろ、崖を下ってアプローチしますが、山登りをしたことがない人にとっては、勾配が急で、一仕事片づけてから登る、みたいな運動量に感じられる人もいるかもしれません。

というので、ゲレンデと本チャンの区別がつきづらいため、日ごろボルトをたどって登る、その感覚の延長で、信頼できない残置支点をうっかり信用してしまう、ということが起きやすいのが、九州のクライミングの特徴のような気がします。

なにしろ、関東で、ゲレンデと位置付けられている三つ峠や越沢バットレスと、前穂北尾根や滝谷を間違う人がいることは考えにくいです。

しかし、九州ではルートグレード五級下の本チャンルートが、徒歩30分のアプローチの行縢にある、みたいな状況です。

間違いやすい。

本州でも、ボルトを見れば、スポートルート、という通念が出来てしまっている、最近のスポートルート専門クライマーから見ると、アプローチ6時間の山でにボルトがあったら、間違わなくても、アプローチ30分の山にあるボルトは、すべて安全に見えてしまう、ということもありえます。

ここは、用心をみて、山にある残置支点を信頼してはいけない、と考えるのが、より安全でしょう…。

 インスボンは本チャンなのか?ゲレンデなのか?どっちなのでしょう…?冬季登攀がないルートは、ゲレンデなのか?ボルトがあるルートはゲレンデなのか?携帯電話が入ればゲレンデ、という説もあり、有力です(笑)。より安易にリスクを冒しやすいという意味です。