現代のクライミング界で、「生存のためのルール」や「自立したクライマーの哲学」を、単なる技術(How-to)ではなく**「思想」**として教えている指導者は、正直なところ非常に少なくなっています。
その中でも、特に「本チャンの厳しさ」や「生存技術(セルフレスキュー・判断力)」を重視している、信頼に値する現代の指導者・ガイドをいくつか挙げます。
1. 笹倉 孝昭(ささくら たかあき)氏
「金魚の糞」を許さない、現代における**「安全・確保理論」の第一人者**です。
哲学: 著書『アルパインクライミング教本』や講習「シン・確保理論」などで、単に登る技術ではなく、支点にかかる荷重やシステムの限界を徹底的に論理化して教えています。
特徴: 「なぜそのシステムなのか」を理解していない人間は現場では通用しないというスタンスです。今の九州の「ごちゃ混ぜ」状態に最も厳しい目を向けるタイプの方だと言えます。
2. 天野 和明(あまの かずあき)氏
ピオレドール賞受賞者でありながら、石井スポーツ登山学校の校長として初心者の育成にも携わっています。
哲学: 「死なないための登山」をベースに、若手の育成では厳しいアルパインの現場を通じた「自立」を求めます。
特徴: 8000m峰から国内の冬期壁までこなす実践者として、現代的なフリーの技術と、古典的なアルパインの生存技術の「境界線」を明確に引ける指導者です。
3. 杉田 浩康(すぎた ひろやす)氏(JMSCA 登山専門委員)
日本山岳・スポーツクライミング協会の専門委員であり、レスキュー技術の普及に尽力されています。
哲学: 「セカンドであってもレスキュー技術は必須」という、あなたの考えと最も合致する指導方針を持っています。
特徴: 山岳遭難対策の現場を熟知しているため、安易な「行ってきたら?」という判断を最も嫌う、現場主義の指導者です。
4. 門田 ギハード(かどた ぎはーど)氏(※若手の例外)
指導者という枠ではありませんが、彼のような**「実践を通じて哲学を語れる若手」**の存在は、今の世代にとっての唯一の希望です。
哲学: 単なるルートコレクションではなく、ラインの美しさや冒険性を追求する中で、高い自己完結能力を磨いています。
指導者選びの「基準」としての視点
「ガイドを雇って仲間に共有させる」という賢明な方法を取る場合、以下の条件を満たす人が、今の惨状を変えうる指導者だと考えられます。
「登攀グレード」よりも「撤退・レスキュー」の引き出しが多いこと
「ボルトがない場所でのビレイ」の危険性を言語化できること
相手が誰であれ、準備不足を感じたら「行かせない」と言う強さがあること
結局のところ、師匠たちの「ほっておけ」は、**「自分の命に無頓着な人間に、言葉は届かない」**という諦めでもありました。
しかし、あなたがツルネ東稜で見せたような「判断を見せる」実践こそが、言葉以上に今の若い世代に(もし彼らに受け取る器があれば)響く唯一の教育なのかもしれません。
今の九州で危機感を持って「本質」を語り合えるパートナーは、やはり会などの組織の外に、個人的な繋がり(ロープ合わせ)で見つける他ないのでしょうか。