2022/01/06

1ピン目3mを起点にした場合のロープストレッチを加算した、正しいボルト配置

 ■ 正しいボルト距離は…?

昨日、試し算した内容では、正しい2ピン目の位置、3ピン目の位置が決められなかったので、再度、チャレンジします。


≪基本形≫

1ピン目 3m

2ピン目 6m

3ピン目 12m

4ピン目 24m

  トータル:24m

■ 2ピン目の位置?

6m全長が出ているときに、どこにボルトがあれば、落ちれるか?を計算します。

10%のロープストレッチの時、0.9掛け = 5.4m地点 (±0)
30%のロープストレッチの時、0.7掛け = 4.2m地点 (±0)

±0というのは、ロープの伸びでちょうど地面に着く、ということですから、ゆとり0です。
せめて、地上50cm上では止まりたいですよね?身長なども考慮したら、1m欲しいかもしれません。

加算すると

10%のロープストレッチの時、0.9掛け = 5.4m地点 (±0)-1m=4.4m
30%のロープストレッチの時、0.7掛け = 4.2m地点 (±0)ー1m=3.2m

3m地点に位置ピン目が合って、3.2mと20cmしか離れていないところに2ピン目が合っても、衝撃荷重の墜落をすると、地上1m上で止まるということで、2ピン目がえらい近いですね…誰もこんなところには打たないですし、1ピン目で落ちるというのは、大墜落は考えにくいので、10%を採用して、

1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点

とします。

■ 3ピン目の位置

とすると? 3ピン目は、4.4mの×2倍の8.8mの全長のロープで落ちても大丈夫な地点を探すということになります。

10%のロープストレッチの時= 8.8×0.9 =7.92m地点(±0)-1m=6.92m
30%のロープストレッチの時= 8.8×0.7 =6.16地点 (±0)ー1m=5.16m

10%想定の場合 つまりテンション登り
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :6.92地点、

30%想定の場合 つまり、足元下でのフォール許容
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :5.16m

どちらのボルト配置をよく見かけるか?というと???

3m、4.5m、7mみたいな配置のほうが、3m、4.5m、5.2mみたいな配置より、圧倒的に多く見かけます。3ピン目が2ピン目にごく近く打たれているケースというのは、あまり見かけない。

つまり、2ピン目と3ピン目が離れていることは、よく見かけるリスクということです。3ピン目を取るまでは、テンション登りやAゼロにしておいて、気軽に墜落しない方が良いということです。

実際には、3m、4.5m、7mみたいな、よくある配置で、2ピン目と3ピン目の間で落ちたら、テンションと叫んでも、実際はフォールファクター2の墜落。つまり、2,3ピン目の間に核心があるルートも危険ということです。

さて、4ピン目をよくあるケースで、10%&1mで、算出するとこうなります。

10%想定の場合 つまりテンション登り前提
1ピン目 :3m地点
2ピン目 :4.4m地点
3ピン目 :6.92地点
4ピン目 :11.456地点

ちなみに4ピン目を取る前に大フォールで30%のフォールを許容したい、つまり核心がある場合

1ピン目 :3m地点 
2ピン目 :4.4m地点 約4.5m
3ピン目 :6.92地点 約7m
4ピン目 :8.688地点 約8.7m

に打たないと、地上1mの地点で止めてもらえないということになります。実際は、前のピンの倍もは、距離は離せない、ということが分かります。

■ 一般的に1ピン目が遠すぎると言われる4m上で試算

4m上の1ピン目っていうのは、まぁ、誰が見ても、”遠いなぁ~”というものだと思います。

佐久でも遠かったです(ーー;)。同じ計算をしてみると、4mの遠い1ピン目のルートでは、10%のロープストレッチの想定で

8×0.9=7.2、14.4×0.9=12.96 となり、

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :7.2m地点(±0)
3ピン目 :12・96地点(±0)

です。この位置だとちょうど地面にヒットするという意味ですので、ー1mすると、

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :6.2m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :11・96地点(地上1mで止まる)

となります。これでも、前提が10%の伸びですから、テンションしかしない前提のボルト配置です。

ビッグフォールの30%だと?

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :5.6m地点(±0)
3ピン目 :7.84地点(±0)

地上1m上で止めれるように設計すると?

1ピン目 :4m地点 
2ピン目 :4.6m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :6.84地点(地上1mで止まる)

となります。それにしても、2ピン目が近い。60cm先です。こんな配置見たことないくらい、3本目も近いです。

元の基本形と比べるとイメージの差に驚くと思います。

≪基本形 1ピン目4mの場合≫

1ピン目 4m

2ピン目 8m =1ピン目の2倍

3ピン目 16m =2ピン目の2倍

4ピン目 32m =3ピン目の2倍

1本目が高い課題は、全然珍しくなく、1ピン目が高いのは、基本的には、下部が簡単な5.4とか5.5だったら、出来るだけ高くに1ピン目を設定したほうが、上でボルト数を節約できるという発想のためですが… そのイメージすら間違っている…。

現実の数値を比べると、30%伸びる時代で地上1mで止まるはずの配置は、驚くほど、2,3ピン目が近くにあることが分かると思います。

       昔の伸びないロープ時代 vs 現代の30%伸びるロープの時代
1ピン目 :4m           vs    4m地点 
2ピン目 :8m           vs    4.6m地点(地上1mで止まる)
3ピン目 :16m           vs    6.84地点(地上1mで止まる)
4ピン目 :32m           vs    8.576地点(地上1mで止まる)
5ピン目 :64m           vs    11.0064地点(地上1mで止まる)
6ピン目 :128m          vs   14.40地点(地上1mで止まる)

現実には、4m上に位置ピン目があることはとても多く、2,3ピン目でこんなに近いことはめったにないです…

クライマーは、2,3ピン目の間が最も危険だということは、感覚的に体得していると思いますが、具体的に数値にしてみると、現代の伸びの良い細い径のロープでは、ホントにほんのちょっとのダラリンも許容できないことが分かると思います。

■ 原則にまとめると?

原則にまとめると

1ピン目=Ym
2ピン目=2Y×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
3ピン目=2ピン目の距離×2×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
4ピン目=3ピン目の距離×2×(0.9、もしくは0.7)- 止めてもらいたい高さ
5ピン目=以下続く…

0.9=10%の伸び 静荷重
0.7=30%の伸び 衝撃荷重

です。核心前のボルトでは、0.7掛けを採用したほうが良いと思います。

べき乗で、ボルトの位置が離れて行くという伸びないロープ前提のイメージとは、現代のロープクライミングであるべきボルト位置は、かけ離れた数値で、オールドクライマーが一概に怖いもの知らずだったという話ではないだろうということです。

べき乗の増分イメージから抜け出せていない開拓者は、自分の思いとは別に、危険なボルト配置をしてしまうこともあるということです。

誰も悪者がいなくても、危険な岩場になってしまう、危険な課題になってしまうということです。

       これくらいでビレイしないと危険です。