2026/01/19

「全方位型ステップアップ・ロードマップ」

 技術の「空洞化」を防ぎ、グレードに見合った本物の実力を積み上げるための**「全方位型ステップアップ・ロードマップ」**を提案します。

ポイントは、同じグレード(5.7なら5.7)を**「岩質・スタイル・システム」**を変えて横断的に経験し、メッキではない「地金」の実力を鍛えることです。


ステップ1:基礎の構築(グレード:5.7〜5.8レベル)

まずは「落ちない技術」と「岩との対話」を学びます。

  • ショア(ゲレンデ)での多角化:

    • スラブ: 足裏の感覚と重心移動を学ぶ。

    • フェイス: 保持力だけでなく、三点支持の基本を再確認。

    • クラック(TRでも可): ジャミングの基礎。これを飛ばすと、後に「保持力頼みのメッキ」になりやすいです。

  • 講習と並行:

    • レスキュー講習(救急法): 「何かあったら救助を呼ぶ」ではなく「まず自分で何ができるか」を知る。

    • 支点構築講習: ジムの終了点以外の「生きた支点」の作り方を学ぶ。

ステップ2:システムの習得(グレード:5.8〜5.9レベル)

ここで「点」のクライミングを「線」に繋げます。

  • マルチピッチ(セカンド):

    • UIAA 3〜4級程度のクラシックルート: 整備されすぎていないルートで、ロープさばき、ビレイ点の交代、懸垂下降の実践を繰り返す。

  • リードの多角化:

    • NP(ナチュラルプロテクション)の導入: 5.6〜5.7の易しいグレードでカムやナッツを極める。「グレードは低いが、落ちたらタダでは済まない」緊張感の中で装備を選ぶ経験を積む。

  • 歩荷とアプローチ:

    • 「岩場まで3分」ではなく、1時間以上歩く岩場へ行く。アプローチの判断ミス(道迷い)もクライミングの一部です。

ステップ3:総合力の錬成(グレード:5.10a〜bレベル)

いよいよ、フィジカルとタクティクスを統合します。

  • 異なる岩質のオンサイト:

    • 花崗岩、石灰岩、凝灰岩。トポの「★」がついた人気ルートだけでなく、あえて「不人気で泥臭いルート」を触り、観察力を養う。

  • マルチピッチ(つるべ、またはリード):

    • 200m級のルート: 5ピッチ以上の継続登攀。ロープドラッグの解消、迅速なギア交換、先行パーティーとの間合いなど、登攀力以外の「時間の管理」を学ぶ。

  • 悪条件での判断:

    • 小雨や強風など、少しコンディションが悪い中での撤退判断や、濡れた岩の処理を(安全な範囲で)経験する。


ステップアップの目安表

段階シングルピッチ(目標)マルチ/アルパイン必須スキル
初級5.8(各岩質)セカンド同行懸垂下降、自己脱出の基礎、支点構築
中級5.10a/b(NP含む)4級程度のリードロープドラッグ解消、ギア選定、気象判断
上級5.11a〜(オンサイト)困難な継続登攀救助技術、未知のラインのルーファイ

重要なアドバイス:グレードの「縦」ではなく「横」を広げる

「5.12を1本登った」ことよりも、**「初対面の5.10をどんな岩場でも確実に、安全に、スマートに登りきれる」**ことの方が、クライマーとしての権威(オーソリティ)は遥かに高いです。

お買い得ルートでグレードを稼ぐ「縦」の成長を一度止め、同じグレードで「スラブ、クラック、マルチ、NP」と「横」に経験を広げること。それが、メッキを本物の強さに変える唯一の道です。

次は、具体的に「この岩場のこのルートは、こういう技術を試される」といった実例を挙げて解説しましょうか?(例:小川山や城ヶ崎など)