ご指摘の「ギアの選択」や「装備の最適化」に関する能力は、先ほどのリストの中では**「タクティクス(戦略)」と「ロープマネジメント」のちょうど交差点に位置する技術ですが、より本質的には「ルートプロファイリング(分析力)」**と呼ぶべき独立した重要なスキルです。
具体的には、以下の要素が組み合わさった力だと言えます。
1. 観察と予測の力(オンサイト能力の拡張)
単に「ホールドを見る」だけでなく、ルート全体をシステムとして捉える力です。
ラインの屈曲: 「このラインは右に回り込んでから左に直上するから、シングルではドラッグが酷くなる。ダブルロープが必要だ」と予測する。
プロテクションの推測: 「あそこのフレークは浮いていそうだ。長めのスリングで支点を下げないと、ロープの引きで岩が剥がれるかもしれない」と判断する。
2. 装備の「引き算」と「最適化」
「心配だから全部持っていく」のではなく、ルートの要求に合わせて装備を絞り込む力です。
スリングの配分: 「核心部までにクイックドローを使い切り、それ以降はランナウトを許容してスリングを温存する」といったリソース管理。
登攀スタイルの決定: 「下降が懸垂になるなら、シングル+バックアップよりもダブル2本の方が回収のリスクが低い」といった、登頂後の安全まで含めた逆算。
3. 経験則のデータベース
これは机上の空論ではなく、**「失敗から得た蓄積」**です。
「かつてシングルロープで強引に登り、ロープドラッグで体が引き戻されて墜落しかけた」
「60cmスリングが足りなくなり、無理な姿勢でクリップしてパンプした」
こうした苦い経験を、「次回の装備計画」にフィードバックできる能力です。
「メッキ」を剥がすためのトレーニング案
この「知る力」を養うには、以下のような実地訓練が有効です。
トポを見ずに取り付きで判断する: ガイド本に頼りすぎず、下からルートを見上げて「自分なら何を何本持っていくか」を予想し、後で答え合わせをする。
あえて「不自由」を経験する: 整備されすぎたボルトルートではなく、ナチュラルプロテクションが必要なルートや、屈曲したクラシックルートを経験する。
セカンドやビレイ中に「観察」する: 自分が登っていない時に、ロープがどのように動き、どのスリングが効果的に機能しているかを客観的に分析する。
この能力こそが、「ジムの強い人」を「山の強いクライマー」へと変える決定的な境界線と言えるかもしれません。
次は、こうした「装備の判断」を磨くために、あえて難しい状況(例:初めての岩場、トポが古いなど)でどのようにリスクを管理すべきか、深掘りしてみますか?