https://allnevery.blogspot.com/p/subjective-hazards.html
50mロープ1本で、本来25mと35m(合計60m)のピッチを無理につないでしまったケースですね。これはアルパインクライミングにおいて非常に危険な**「主観的危険(判断ミスと装備不足)」**の典型例です。
この状況がどのような「客観的危険」との連鎖を招くのか、物理的・心理的な側面から解析します。
⚠️ 物理的限界:ロープが足りない
50mロープで60mを登ることは物理的に不可能です。この時、現場では以下のような極めて危険な行動が誘発されます。
同時登攀(コンて登り)の強制: リードが35m地点の終了点に届くために、ビレイヤーが本来の支点を解いて10m以上登り出す必要があります。
リスク: ビレイヤーが安定しない場所で動くことになり、もしリードが墜落すれば二人とも数十メートル墜落(墜落係数が極めて高い墜落)する可能性があります。
中途半端な場所での支点構築:
ロープが尽きた場所(35m付近)に強固な支点がない場合、脆い岩や細い草付きで無理やりビレイポイントを作ることになります。
リスク: 「客観的危険:支点崩壊」を主観的に作り出すことになります。
🛑 敗退(懸垂下降)時の致命的な問題
「敗退ロープ(捨て縄や予備ロープ)」を持っていない場合、このピッチをつないだ後の退却は絶望的になります。
懸垂下降の距離不足:
35mのピッチを降りるには、本来70m分(35m×2)のロープが必要です。50mロープ1本での懸垂下降は25mが限界です。
連鎖: 「空中でロープが足りなくなる」という最悪の事態を招きます。
支点の残置不可:
敗退ロープ(捨て縄)がないと、既存の支点にメインロープを直接通して回収することになります。
リスク: 岩の角でロープが擦れて切断される、あるいは回収時にロープがスタック(引っかかる)して、壁の途中で完全に孤立します。
🧠 心理的・時間的連鎖(負のスパイラル)
時間消費の増大(客観的危険:日没・冷気との連鎖):
ロープが足りないことで、ビレイヤーの移動や不適切な支点構築に時間を取られます。アルパインでは「遅れ」はそのまま「遭難予備軍」を意味します。
正常性バイアスの発動:
「あと少しだから大丈夫だろう」という慢心が、さらに危険な上部ピッチへの突入を後押しします。
コミュニケーションの断絶:
ピッチをつなぐことでビレイヤーとの距離が離れ、さらにロープの摩擦(ドラッグ)で声も感触も伝わらなくなります。
💡 解析の結論
この事例は、「装備の軽量化」と「リスクの過小評価」を履き違えた結果と言えます。
| 主観的要素 | 引き起こされる客観的リスク |
| 50mロープ1本のみ | 懸垂下降ができず、壁に閉じ込められる(孤立) |
| ピッチの統合(60m分) | 同時登攀による墜落時の全滅リスク |
| 敗退用ギアの欠如 | ロープスタックによる行動不能 |
改善策: トポに35mのピッチがあるなら、必ず60mダブルロープ(または50m×2本)を使用するか、25m地点で一度ピッチを切るべきです。「つなげる」のはロープの長さに十分な余裕がある時だけの高度な判断です。