2020/03/29

Rock&Snow 024号 Mars & 『グレーディングを考える』

■ OBG 『Mars 5.13 d』

これは、城ケ崎のMars5.13dについての故・杉野保さんの記事が載っている号です。Old But Goldという、クラシックだが、味わいのあるルートという、大変すばらしい文章の連載です。個人的に杉野さんのOBGだけの単行本化を期待しています。

Marsは適正グレードであれば、5.14aであり、もし当時、そう発表されていたら、世界最難だった、ということになります。

■ 『グレーディングを考える』

この号は別途、草野さんのスタートした日本独自の段級システムがスタートした歴史的経緯が分かるようになっています。

特集で「グレーディングについて」という対談が、

小山田大さん、平山ユージさん、室井登喜男さん、杉野保さんの4名

で語られており、グレーディングの事情を知ることができます。

この特集で分かることは、室井さんのグレーディングが甘いので、海外から問い合わせが来てしまい、本当なのか?!と問題になっているという話です。

・自分の課題しか登らない
・開拓しかしない
・海外の岩場で登らない

ということが原因で、客観性の欠如となり、グレードがどんどん上がって行ってしまい、本来v15でないかもしれないにもかかわらず、v15と発表してしまう理由になっています。

これは、多かれ少なかれ、日本の開拓クライマー全員に言えることのようです。

開拓するようになると、大体、自分の課題しか登らなくなります。 前に登った〇〇が、11dだったから、それより少し難しいから、12、と設定したりしてしまいます。

しかし、その前の11dも確実ではない可能性がありますし、その時の体調が良くて、易しく感じただけだったり、得意な課題だったり、あるいは、岩のコンディションの良しあし、など、客観性を阻害する、色々な要因があります。

・自分の得意不得意
・季節
・岩のコンディション
・体調

そう言ったもので、客観性が脅かされるということです。一般に安定したクライマーであれば

・かかった便数
・かかった時間

などで、グレードは適切につけることができるようです。

■ アルパインのクライマーがつけたグレードは怪しい

一般にアルパインのクライマーは、打ち込む経験値がなく、

 かかった便数や時間で、グレードを判断することは無理

だと思います。アルパインは打ち込むタイプのクライミングではないので。大体12くらいまでは、男性クライマーも打ち込む経験値はほとんどないのではないでしょうか。

■ ほかの人の課題を登る & 海外で登っている

グレーディングをする人にも資格制がいるのかもしれません。要件は

・ほかの人の課題も日常的に登っていること
・海外でも登っていること

です。そうでないと、どんどんと主観化して、視野が狭窄し、グレードが甘くなったり辛くなったりします。

■ まとめ

024号は、大変お勧めの号です。

グレーディングについて、疑問が大きい方はぜひ一読されることをお勧めします。

Mars の吉田和正さんは、控えめのグレードを付けたために世界に名を知られることなく、生涯を終えられましたが、本来リン・ヒルより以前に5.14Aを登った方です。

吉田さんのことがさらに好きになりました。

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それにしても、Mars についての記事が、この号に載っていることについては、とってもシュール、と言わざるを得ませんね。