2020/03/27

Free Funのオウンリスクの説明の曖昧さ

■ オウンリスクの説明の曖昧さ

たぶん、現代の知性に訴えるには、フリーファンの巻頭に掲載されている表現では、表現が曖昧過ぎるのだろう、とおもいます。

1)行動の結果が予測できない人

→ 事例をあげないと現代の人は、それがどういう意味なのかわからないのでは?

例:登ったら、降りなくてはなりません。ローワーダウンと結び替えは平地で練習してから行きましょう。など…・

2)アクシデントによって起こりうる事態を自分が受け入れるかどうか?の判断

→ この表現も曖昧過ぎて、具体例をあげないとよく分からないのだと思います… アクシデントによって起こりうる事態=死、骨折、など具体的に明示しないとおそらく、イメージできないのでは?具体的事例が必要のような気がします。それも写真付きで。

私の友人は、身重の奥さんを残して、33歳で他界しています。開放骨折で九死に一生。それ以外も、墜落で足首骨折した場合は、回復に1年くらいかかると思います。

3)岩場の安全は誰にも保障されていません

→ いつ開拓されたか?どのような人がどのようなボルトを打ったか?シークリフの場合は腐食が、もろい岩場かどうか?ボルト管理台帳はあるのか?災害履歴はあるのか?事故履歴はあるのか?
など、具体的に示さないと、おそらく何をチェックして、リスクを受け入れたら良いのか?分からないと思います。

龍洞の岩場には、エクセルでまとめた終了点の信頼性評価ファイルがあります。

4)道具に対する正しい使用法を学ぶ義務があります

→ 取扱説明書を熟読し、使用を開始する際は人工壁でテストの後、使用になれてから、外岩で使用しましょう、と具体的に書かないと、学ぶ義務だけでは、スルーでしょう…

5)ナチュラルプロテクションのセット不良などは重大な被害を与える

→ これも、オブラートに包みすぎなのでしょう。カムが三つ飛んで、グランドフォールして死亡事故、など具体的に伝えないと意味が分からないのだと思います。

6)ボルトなどについては誰も保証していません

→ 曖昧表現… なぜなら、それでもボルトはあるからです…。おそらく現代のUIAAが推奨するボルト強度は25kNで、1985~90年代に打たれたM8カットアンカーは、施工が良くて、15kN、悪いと、5kNもないかもしれません、と具体的に数字を挙げて、書かないと分からない。

終了点についても同様。

7)安全マージンを考えてとりつくべき

→ そのマージンが分からないのが新人で当然なので、ボルトが信用できないJFA管轄外の岩場=落ちないグレードを外では登る、ケミカルなどの岩場、墜落は比較的許容できるがランナウトではなく、トラバースでもない、直上の素直なルートで、核心前にクリップができる、などと具体例をあげないと安全マージンの取り方がわからないのが、新人でしょう。

薄い安全マージン自慢大会に陥っているのが、日本のクライミングの現状なので、このやんわりした書き方では、意図が伝わらない。

8)低グレードのルートは、よりレベルの高いものによって、ボルトなどが設置されている場合・・・

→ これも具体的に、各岩場でどれとどれがそうなのか、具体的に指摘を受けてから、それらのルートを登るべきだと書かないと分からないと思います。トポには、開拓者の〇〇さんが、5.9を登る人なのか、5.13を登る人なのかは書いてないので、それは要するに知りようがない、という意味ですので、こんな曖昧表現では安全マージンを設定しようにも、そのための情報がないという意味になります。

9)ナチュプロを使用する際には、その知識と技術も必要です

→これも具体性をもって伝えないといけない。疑似リード状態で、カムに乗ってカムをテストする。エイドでカムのプレースメントを覚える。カム落ち練習を行う。具体性が欠如しているので、たぶん、みんなどうして良いのか分からない。

10)自分の能力とリスクを天秤にかけ、より安全なスタイルを選択することが最重要です

→ いやー これは、まったく真逆が横行しています

11)落石、ロングフォールの岩場ではヘルメット

→OK

こんな風に具体的に書くべきです。

12)グレードは数字だけに惑わされてはいけません

→ 〇〇の岩場はヨセミテグレード、など岩場ごとの特徴を知る必要があることを具体的に例示しないと分からない。ランナウトを特に避ける必要があることも具体的に書かれていないと分からない

13)落下物や落石を予測して

→ それができていないクライマーが多い。具体的に図示しないとできるようにならない

14)スポーツルート用&当てはまらないルート

→ では、フリーとスポーツとトラッドなど岩場に細かく分類をつけるべきでしょう…海外のトポはそうなっています

15)ルート下部でのフォールは・・・

→ 1ピン目を掛けたら落ちてもいいのがフリーなので、これはローカルルールになっている…落ちる位置を見定めないといけないのは当然だが、それも具体的に言及がいるでしょう

16)ビレイは信頼できる相手

→ ビレイの信頼関係の作り方を述べないと。つまり、人工壁で、第三者にビレイのチェックをしてもらう

17)着地の失敗による骨折や捻挫

→ 全治何か月なのかまで書かないと、おそらくよく分からないままで、終わる

18)脊椎、腰部損傷

→ 同じ。ボルダーのフェスで男子、ばんばん、飛び降りていましたけど。下地、石ですよね‥ 下地の種類などを細かく教えないとダメです、たぶん。山のボルダー=土、クッション性あり、など。

19)スポッター

→ 体重差の具体的例を言わないと分からない。どっちが重いと危ないのか?何キロ程度の差、高さとの関係

20)別のスタイルの選択をすべきです

→選択の仕方を教えないと分かるようにならない

21)ジム内のグランドフォールは・・・参事に発展する可能性があります

→これも、参事の具体的事例がないと、曖昧なのだと思います

というわけで、おそらく、クライミングの能力とリスクを天秤にかけてクライミングしているクライマーは非常に少ないです。

まぁ、ここまで具体的懇切丁寧に説明しないといけないのなら、クライミングに来てもらわなくてもいい、と言いたくなるとは思いますが…。

■ ラオスの事例

私は今回はラオス行かなかったのですが、色々考えて、膝の脱臼が半年以内に、良くならなかったので、今現在考えられる、一番のリスクは、再度、脱臼すること…脱臼は癖になる、というのが最大のリスクです‥‥でしたが、ラオスでは、再脱臼した場合、医療機関にかかることができないだろう、かかれても質が…というので、辞めたのでした…。

■ プロセスを見せていない

何がリスクなのか?を考える、その思考プロセスを見せていないから、まぁ、当然ながら、リスク評価ができるようにならない、というだけなのではないでしょうか?

能力評価のほうはグレーディングという物差しがありますが、リスクについて考えるには、あまりにも現代の社会生活が安全を前提にしすぎており、道路で前を見なくても歩けちゃう(ケータイ見ながら歩いているでしょう)くらいの平和ボケですので、そのような社会という前提を考えると、自己責任といいう言葉の内容が、伝わっていないのは、まぁ歴史と現実が示しているように思います。