2020/03/25

フリークライミングの教育機関がないことについて

■ 放任主義

今JFAの井上さんと議論中。井上さんは、日本の”フリー”(本来、自由な)クライミングなので、そうした教育機関は要らないという発想。 

そうか、野放し、だったのは、”自由”を重んじたためだったのですね。

その、放任主義の結果が、現在、如実に表れている真っ最中、ということだったのでした。

子どもの教育と同じで、子ども=新人は、まっさらなので、きちんと、「こうやって遊ぶんだよ」と教えないと、分かるようにならない…。特に危険なことは、危険を避けて遊べるようになるまで、大人がついていないといけないと育児書に書いてありました。

吉川栄一さん…沢登りの方ですが、本に書いていましたが、「”山やとしてのあり方” から教えないと、人はちゃんとした”山や”にならない」という理論を展開されている方でした。

■ なぜ岩場に木っ端がつくことになったか? 説明責任をも放任したため

私も同意見で、その観点から見ると、おそらくフリークライミングは、放任主義のついでに説明責任も放棄してしまったようで、その結果

・岩場に木っ端くっつけてしまう
・本気チョークの特集に5ページで、30数年ぶりのデイドリ初登にたった1ページ

チョーク=エイドですので、エイドに力点を置き、初登よりエイドのほうがページ数上は価値ある扱い、みたいなこと…価値観…

が出てきてしまう結末になってしまい、

原因 )岩との対話を語らない
結果) 岩を顧みない

という、原因と結果の法則にしたがった現実(=ロクスノ紙面のレベル低下に端的にみられるクライマー全体のレベル低下)が出現した、ということになってしまっているようです。

岩との対話、置いてきぼり。登山の世界で、山との対話が置いてきぼり、なのと同じです。

■ 小うるさいお母さん状態

若い人は、技術は向上しているので、ちゃんと技術的には登っている人はいます。

しかし、残念ながら、そう言う人たちは、JFAをむしろ避けるように登っています(笑)。

どれを登れ、これを登れと指示されなくても、自分で登れる人たちなので、ジムにも行かないし、山岳会にも、もちろん行かない、自分とパートナーだけで登ります。そういう人たちにとって、

JFAのおおざっぱなイメージが、「アブナイ、アブナイと、やたら、小うるさいお母さん」というイメージになっている…。

それに対する、一般的なクライマーの反応は、

「そんなことは分かっているよ」
「危ないから面白いんだよ」

でしょう。

私も正直、そのイメージを植え付けられていました。

■ いわゆる”自己責任”の具体的因数分解

私自身はFreefan、登れない時期から読み込んで、特に終了点の写真などは見ていましたし、ちゃんと後輩には、ペツルのカタログとセットでFreeFunを渡していますが、その私ですら、

 M8 と M10  のサイズ感の違い

は全く分からず、ここ数か月で身に着けたようなものです。これは私だけでなく、登攀歴50年の師匠も同じでした。RCCやオールアンカーではなく、普通にハンガーがついていれば、おそらく強度は大丈夫だろう、と思ってしまいます。

事実は全くそうではありません。

しかも、そのことを山岳会に属していても、先輩たちは後輩に、論理的に伝える能力がありません。

論理的に、というのは、現代で世界的に必要とされるボルト強度は、25kNであり、M8ボルトが出している強度は、施工が良くて15kNしかなく、施工が悪いと5kNしか出ていないということです。

また、この数値から内容を理解するには、人体は12~13kNで壊れる、人体が許容できるインパクトフォースの最大が12kNだ、という知識が必要です。

 12kN
 25kN

ちなみに、カムで14kNくらいですが、これは、落ちたときにカムが壊れるより先に、人体が壊れるでしょうと言う意味だと思っています。

カットアンカーとグージョンの違いも知る必要があるかもしれません。カットアンカーの場合、新しければ、15kN出ていると想定すれば、落ちれるボルトであると言えるかもしれませんが、古ければ、ガルバニックコロージョンの危険があります。

1985~90年の開拓ブーム期に打たれたボルトは、現代では更新期を迎えていますが、そのことも、トポには書いてありません。

■ 自己責任という言葉の意味は、私は無知です、自分で調べてください、という意味です

というわけで、『自己責任』、という言葉は、

実は発している人の無責任さ

を表現した言葉です。自己責任を歌いつつ、その責任が取れるような、情報発信をしなければ、クライミングは

乗るか?そるか?

の活動になってしまいます。

ので、こういう実情を知って、よく分かっており、説明責任を果たしてくれる人たち(もしくは、岩場、あるいはトポ)と登るべきでしょう。

■ フリークライミングを教える人がいない国内

若い人には、大変気の毒な事象ですが、構造が分かった。

まぁ、私が分かったとして、何が変わるわけでもありませんが、

フリークライミング

としてクライミングを教える人がいないと、まぁどんどん、フリーをする人はいなくなり、ボルダラー人口でなんとか間を持たせる、って感じになるでしょう、って言うか、今そうなっています。

国内事情は今、非常に悪いので、海外が良いと思います。