2020/03/27

ピンクポイントでの登攀と疑似リードの必要について

■ 人のクライミングをよく見る=適正安全マージンが分かるようになる

師匠と喧嘩したのは、湯川で私が疑似リードに進みたいときに、疑似リードではなく、ピンクポイントをさせようとしたことが、最初でした。

私がピンクが嫌だったのは、カムを指す位置が、いつも相方の回収で登っていて、遠い。背が高い人は、一ピン目から私と違います。

私のリーチが、彼の50cm下で、手が届かない位置にカムが刺されたピンクポイントでのリードは、たぐり落ちの危険、が非常に高い。

なぜ、それが彼は理解できなかったのか?

それが理解できないと、自分のパートナーにピンクを強要することになります。

なぜ理解できないのか?というと、おそらく、セカンドをやらないからです。

師匠はおそらくセカンドをやったことがないと思うので、身長でカムの位置が違うと言っても、なかなかその具体的な様子が浮かばなかったに違いありません。

私は、わざわざ紙面でそれをきっちり書いているくらいです…(汗)

https://allnevery.blogspot.com/2019/08/blog-post_68.html

師匠、一度でいいから、私のいうことを聞いて、疑似リードをしてくれたらよかったのに。

そうすれば、私がカム位置が違うと言っている意味が分かったでしょう。

■ 湯川 カムセット難しい

一方、湯川はカムのセットが難しい岩場で知られています。だからこそ、カムのセットを覚える疑似リードにぴったりの岩場です。

■ カム位置=ギリギリ度の指標

セカンドで登らなくても、自分の限界に迫っていれば、カムの位置は、クライマー本人にとって、どれくらいギリギリに迫っているか?の指標である、ということが分かります。

誰でも、危険の量に応じて、カムのセット間隔が短くなります。

それは、端的に言えば、アルパインクライミング…つまり、落ちないクライミングで、プロテクションは、ほとんど出番なし…は、やっていても、フリークライミング=プロテクション必須…、はやっていなかったから、彼はそれが理解できなかった、ということなのです。

おおざっぱに言えば、アルパインクライミングは落ちないクライミング、フリークライミングは落ちながらも、何度もトライして、”岩に合わせて自分を変えて登る”クライミングです。

岩への寄り添い、がアルパインとフリーでは雲泥の差、です。

■ どこからフリークライミングの領域なのか?は人による

岩への寄り添い、というのは、岩のために肉体改造が必要になる、ということです。

どのグレードから、岩に向けて肉体改造が必要か?というのは、人によります。

一般的な体格の人にとって、フリークライミングの始まりは、5.11以上から、現代では5.12は中級者になってしまったので、現代クライマーには5.12から。

もちろん、これは標準体型&標準体力の人向けで、クライマー界の標準=若い男子、です。

若い男子の身長&体力に入っていない人たちにとっては、肉体改造が必要になるフリークライミング、としてのクライミングのスタートは、もっと下のグレードからです。

私などは、高齢&女性ですので、10台でフリークライミングとして、岩に向けて自分の肉体改造を始めないといけませんでした。

すでに始める前と今では別人です。

■ 疑似リードは必須です

人間は、クライマーを見ていると、脳がシンクロしてしまい、私はいつもビレイしている相手(=クライマー)の動きを読めるようになってしまい、彼が何が登れ、何が登れないか、よく分かります。

人間には、ミラーニューロンと言って、相手のムードや気分に、シンクロする機能があります。

共感脳のことです。

ですので、ビレイをしてあげる時間は、共感の時間、観察の時間、です。

クライマーをよく見ているビレイヤーが良いビレイヤー、とよく言われます。

ので、それが起こっていなかったということを考えると、要するに、師匠は私がTRで登っている間、そんなに良くは見ていなかったのかもしれません。

おそらく老眼で、あまり見ること自体ができなくなっているのだと思われますが…(本人の非ではない。)

トップロープでの疑似リードは、クライマーが、カムの位置、岩、ムーブと、どういう歌を奏でているか、ビレイしながら、観察する時間であり、そう思えば、安全マージンを理解するためには、かならず必要、です。

疑似リードして大丈夫そうなら、リードに進みましょう。

もちろん、オンサイト狙いは、また別の話です。習熟度は、もっと必要です。

■ 共感脳が勝負のクライミング

こうしてみると、共感脳、が、クライミングにおいては、味噌だということが分かります。

共感脳が強くない人は、

 ・相手に実力とかけ離れたグレードのリードを勧めてしまったり

など、事故や怪我につながることを、相手に良かれと、勘違いして行ってしまいます。

一般的な傾向ですが、男性ホルモンまっさかり、みたいな方は、一般に共感脳が強くない傾向があります。共感というのは、心理学の分野では、女性性や知性に属することだからです。

女性性というのは、花がきれいだ、とかそういうことを想うっていう話ではありません。男の人の場合、花がきれいだと思うのと同じレベルで、女性がきれいだ、可愛いな、と思ってしまいます。

そうではなくて、
 
 相手の心情に立つ、
 相手の立場からモノを見る、

というのがクライミングで必要とされる共感能力です。 

花が可愛いという人は、花を摘みます。花を愛する人は、花に水をやります。

フリークライミングは、ムーブを楽しむクライミングなので、登頂を目的とするアルパインとは目的が違います。アルパインは登頂のためなら手段を択ばないというダークサイドがあります。それを覆したのがフリークライミングです。

 フリーでは、5.9でも、5.13でも、やっていることは同じ

です。つまり、上下の関係はありません。

5.13を登れる能力を山に持ち込むのが、現代のスーパーアルパインです。

■ トップロープで様子を見る

相手をビレイしている途中、クライマーをよく見て、クライマーと同じ気持ちでビレイするということですが、一般に会で登ってきたオールドクライマーは、ビレイが大変いい加減です…。特にトップロープ。ひっぱってりゃいいくらいなノリです。

そうではなくて、登っているクライマーと同じように、岩との対話を感じてほしいものです。もしそのクライマーが、あまりに稚拙で下手であれば、相手が上手になって、戻ってくるまで、ジムで登らせたらいいだけなのです。

それをしたくないのは、ただ単に、自分に都合がよいビレイヤーが欲しい、というご都合主義でしょう。

■ クライミングは移ります

私はクライミング、後輩に、「楽々、登っているように見える」と言われ、びっくりしたことがあります…。本人は、楽々でなく、必死、の時だったからです。

相手が必死か、楽々か、を見分けるのは、やっぱり共感脳の働きのような気がします。

男性は多くの人が、これが発達していません。

ちなみに、バレエでは、先生のお手本通りに動きを作れる必要があり、私は、動きのコピーが得意なほうです。この能力のため、水泳はあっという間に習得しました。この能力は、年齢を遅くスタートすると衰えています。

クライミングの初期のころ、今では有段クライマーのハッシーと言う先輩と人工壁でビレイ習得しました。彼の登りを注視していたせいで、私のムーブは男登り、だったらしいです(笑)。そりゃ、ハッシーのフィジカルでやるムーブを私がやっても、フィジカル違い過ぎて、できるわけないわなー。

というので、後で、ムーブをだいぶ直されました(笑)。

色々、師匠とは喧嘩しましたが、危険を無理強いされようとしたときに喧嘩 = Good

だったと理解しています。雨、降らないと地、固まりません。


  迷ってもハードプッシュしてはいけません。それやってるとムーブは身につかないです。