■ EnjoyClimbing の文化
九州=Enjoy Climbing文化貧困の地、
なんだが、これは土地に由来するカルチャーによる、呪縛、であると思う。
理由1:山梨で、トップクライマーなどと登って、一般的なクライミングカルチャーを身につけたはずのA木さんも、もともとが「○○で一番死に近い男」と言われて喜んでしまうタイプだったからかもしれないが、「敗退ロープなし」のリスク(というより愚かさ)の意味がよく理解できないようだった。
理由2:御坂時代に、九州で5年登っていた、と言っていた自衛隊の男性がフリークライミングのルートを全部Aゼロで登るので、は?と謎だったが、その人は、本州に行って、きちんとしたクライマー教育を受け直して、今ではまともなクライマーになったそうだ。
理由3:こっちでは、米澤さんと小山田さん、長崎のクライマー、樋口先生の一団以外、まともな感性のクライマーに会ったことがない。どの人も、まずは、見かけだけのイケイケ自慢、がベースにあるようで、閉口中。分かっていないことを分かっていないように思われるが、指摘すると怒り出す。例:終了点ロープ直がけがローカルルール、子供にヘルメット被せない、5.9でイケイケモード、間違ったビレイ、支点ビレイ
理由4:指導者の頭の中も、古いようだ。例:M8カットアンカー、水平2点打ち終了点、支点ビレイ、残置で本ちゃん。オリンピックのビレイで外岩。
というような理由で、そもそも、技術的な理解が不足しているというよりも、
リスクテイキングの仕方、
が間違っていると思う。
■ トレードとの比較
例えば、信用取引は、レバレッジを掛けることができる。
こうだ。25倍のレバレッジなら、100万円の投資を4.5万円で行うことができる。
1ドル100円が、101円に動いたら、100万円は、101万円になり、1万円の収入を得ることができるが、原資は4.5万円だから、4.5万で1万円の収入を得たことになるという取引だ。もちろん、逆も起こる。
つまり、100円が99円に下がったら1万円の損失、98円に下がったら2万円の損失。95.5円以上に下がれば、4.5万円がゼロになる。94円だと、追証が発生して、1.5万を入金しないといけない。
かりに、150円になれば、4.5万円で50万円の利益がえれるが、50円に下がれば、45.5万円の損失だ。
このようなケースで、怖いのは、レバレッジだろうか?いや、
レバレッジ=怖い、
という考えは、間違っている。
レバレッジが怖いのではなく、方向性に確実性がないまま、賭け事に出る姿勢が怖いのである。
この場合は、円が上にブレるか、下にブレるか、50:50の場合は、掛けごとである。
しかし、90%で必ず上がると分かっていたら、それは賭け事だろうか?今日、降水確率が90%ですよ、と言われた日に、傘を持っていかない人がいたら、それは分かっていただろ!と言わないだろうか?
同じことが、クライミングに言える。ルートの長さが25mのときに、50mロープではすっぽ抜けが起こることは、予め分かっている危険だ。
50mロープ一本で登っているときに、ピッチを2つ繋いでしまえば、ロープが足りなくなるということも分かっている危険だろう。
いくら、5.13がジムで登れても、クラックの経験値がゼロだったら、ヨセミテで、いきなりリードで取り付くのは、まぁ、誰にでも結末が見えている愚かな選択肢、だろう。
しかし、90%で晴天というときに雨が降ったら?それは、仕方なかったね、と誰でも言うだろう。ジャンボさんの事例はそのようなものだと思われる。
愚かである、幼稚である、というのは、雨が降ると9割わかっているときに傘を持たないで出かけるようなクライミングのことであり、それは、リスクテイキングとは言わない。
クライマー本人に起因するリスクがある。それは、
そうしたリスクについて 考えることを面倒くさがる習慣
である。思考停止は、クライミングにおいては、それだけで、リスクオンで、いつ何時、大暴落…逆方向への動き…を起こしてもおかしくない、ということだ。
■ 事例
以前、アイスクライミングに行ったときに、登っているクライマーの落氷が当たる場所にたち、新人のわたしと相方に、アックスを使った支点づくりを指導しようとしたクライマーがいた。自分は先輩だと自認し、先輩風を吹かせてくれた次第だが、そこに立っていたために、ラクが当たって、ヘルメットが割れた。これは、アクシデントだろうか?
いやちがう。そもそも、ラクがあるところに立ってはいけないという、基本を学びそこねたそのクライマー自身がリスクなのである。
いくら、教えてあげたかったから、という心理的な理由があったとしても、アイスクライミングの基本を学びそこねている、という事実が覆ることは無い。
ラクがあって当然のアイスの登攀中のフォールラインに立たない、
なんて、クライミングに行った初日で教わる。むしろ、教わらなくても、勝手に分かるようになるようなことである。
しかし、最近の若い人は、なにもかもを言語化しないと、分かるようにならない。
日本でもハイコンテキスト文化が終わりつつあり、ローコンテキスト文化への移行中であるため、察するという能力が低下してためだ。
これは、問い、を立てることで、思考にエンジンがかかり、思考停止を辞め、みな考え方をマスターすることができると思う。
■ 人的危険リスト
さて、このような理由なので、ローコンテキスト文化による、ハイコンテキスト化が、今、求められていることだ。
以下は、クライマー自身に起因している危険である。
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・登ろうとする山の事前の研究や情報の不足 → 慢心
・トレーニング不足 → 怠惰
・不良な健康状態での入山 (高齢になっても山を保守的にしない等)
・装備不足や装備を持っていても、それを使うための技術の未熟さ → 怠惰
・ずさんな食糧計画
・体力や技術がともなわない登山ルートの選択(例:白亜スラブ)
・生活技術や幕営技術の未熟さ
・ナヴィゲーション技術の未熟さ
・健康管理に関する知識の欠如
・天候判断の知識不足
・リーダーシップやフォロアーシップの欠如
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ハイキング(一般登山)でも、無謀といえることはよく起こる。たとえば、心臓病に持病がある人が、数日の日程で、薬も持たずに、ヘリも飛べない、隔離された山、例:北海道や南アルプス深南部など…に入るなど。
他にもあるかもしれないが、とりあえず、これらを当てはまるかどうか?が、事故時に検証されるべきだと思う。
■ ジャンボさんと佐藤ユースケさんのケース
昨日、ジャンボさんの遭難報告書を読んだ。
https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/Portals/0/images/contents/syusai/2020/tozankensyu.vol35/tozan35_3-1yokoyama.pdf
同時懸垂下降でのすっぽ抜けの事例だった。
これは、ジャンボさんの人的リスクだろうか? ちがうだろう。
すっぽ抜けと言えば、馬目さんも懸垂でのすっぽ抜けをしているし、花谷康弘さんも同じだ。
スピードアップのためにストッパーノットを省略する、というのが、一流クライマーの流儀になっていて、そのためすっぽ抜けリスクは引き受けた上での登攀ということになっていると思われる。それだけ、現代のクライミングが
タイムトライアル的
ということだ。
一方、一般クライマーつまり、EnjoyClimbingのクライマーには、そんなタイムトライアルは必要ない。
時短は、追いかけるものではなく、クライミングを続けていれば、時間の方が勝手に短くなり、勝手にかからなくなって行くものだ。読図が上手になれば赤布が追いかけてくるようになるのと同じである。
■ 方向性の間違ったトレーニング(マルチに行きたいのにショートでグレードだけを追いかける)
ところが、マルチに行きたいクライマーが、マルチの手順を踏まずに、日頃ゲレンデクライミングを繰り返していると、その手順は経験値として積み上がっていかない。
例えば、ロープをまとめる速さが生まれてこない。ロープはロープバッグに詰め込むだけだからだ。(ロープバッグに入れておくにも、上下を不必要に返さない、返す場合もそっと返す、などと工夫が必要)
結局、ショートのトレーニングを何回重ねても、マルチに行くための、経験の土台が築かれない。ので、ショートしかしないのに、なんでマルチに行きたがるんだろう?とわたしなどは思う。
マルチに行きたい人はショートでも、リード・フォローで登って、セカンドの確保は上の終了点でやり、2人で、懸垂で降りてくれば、1ピッチのマルチに行ったのと同じことになる。
これをやらない人が、マルチに行きたがる=ただのミーハー・同調圧力、ってことで、行けるための根拠を積み上げていない。
そんなミーハーにつきあわされて、なんで自分の積み上げた技術を出さないと行けないのだろう?というのがわたしには謎だった。それは、搾取であって、ぜんぜん山の友情とはちがう気がする。
■ ローワーダウンでのすっぽ抜けと同時懸垂下降でのすっぽ抜けは同じ
さて、上記のジャンボさんのミスで、ジャンボさんは、原因は特定できていない。すっぽ抜けが起こった状況は、一般クライマーでもローワーダウンをするから、その状況と同じだ。
ローワーダウンで、普段、20m以下の短いルートしか登っていない人は何年登っていても、末端のすっぽ抜けには無自覚なまま、クライミング歴を積み上げていくだろう。
アイスでは、易しいルートが登れたら、次は、難易度をあげるのではなく、壁を大きくしていく、だから、ロープ長については、すぐに気がつく。55mの滝を登るには、60なら2本を連結しなくてはならず、ノットの通過がある。あるいは120mロープが必要になる。
昨今は、クライマーは
グレードだけを追い求めている
だから、ロープ長が足りなくてすっぽ抜けを起こしそうになったヒヤリハット事件というのは、初心者をとっくの昔に超えた10年選手になっても経験していなかったりする。
ローワーダウンで、ロープの残りが数メートルになったら、普通わかっている人は、何も言われなくても、ストッパーノットを結ぶものだ。
そして、そういう人が価値あるクライマーであって、高いグレードが登れるだけって人は、そのへんにゴロゴロしている。
無自覚なままの事故と、ジャンボさんのミスのような者は全く本質がちがう。味噌糞一緒くたにしないことが大事だ。
どんなに気をつけていたとしても、起こるときには事故は起こる。
それと事故をわざと誘発しているようなメンタリティがクライミングカルチャーとなってしまっているのとは全くちがう。
九州では、推測に過ぎないが、単に、手抜き・怠惰を、かっこよさに転嫁しているだけなのではないだろうか?
それのどこがかっこいいのだろうか?