山岳部新人高校生と同じ扱いをクライミングジム上がりの初心者クライマーにも適用すべき
なんじゃないだろうか?
■登山事故の凡例
https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/Portals/0/images/contents/syusai/2018/text/text1-2.pdf
より引用 赤字は当方。
高校生と同じ扱いを、
クライミングジム上がりの初心者クライマーにも適用すべき
のような気がするんですよね。基本、自信のほうが過剰のような気がします。
それは
年齢によらず、男性新人全員に適用できる法則
のような気がする。
ジム上がりクライマー=大人だから自己管理できる、という前提事態が間違っている、
のでは?
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(2)指導者が負う注意義務の内容
高校の山岳部の指導者が負う法的な注意義務の内容
は具体的な状況に応じて異なる。以下に裁判になった
ケースをあげる。
① 1952 年(昭和 27 年)北海道の芦別岳で高校の山
岳部の顧問教師が6人の生徒と登山中に,登山ルート
を間違えて傾斜が 50 度以上ある岩場に直面し,そこ
を登ろうとして2人の生徒が滑落して死亡した。裁判
所は引率していた教師に,危険を察知して引き返すべ
き注意義務があったと述べた(札幌地裁昭和 30 年7
月4日判決,判例時報 55 号3頁)。
生徒に岩登りの経験がなく,教師は「岩場を登るの
は無理ではないか」と考えたが,「大丈夫だ」という
生徒の意見を尊重してその判断にまかせたことが事
故につながった。教師が生徒の意見を尊重した点は,
2017 年の那須の雪崩事故の状況に似ている。那須の
事故では,尾根に出たところで引率教師が引き返そう
としたが,生徒が「登りたい」と言い,教師がそれを
容認したことが事故につながった。
生徒が登山の意欲に溢れている場合には,生徒の判
断は危険性を軽視しがちである。安全管理については,
判断を生徒に任せるのではなく指導者が判断をしなけ
ればならない。指導者は,常に自分が安全管理できる
範囲を自覚し,判断に迷う場合や判断に自信がなけれ
ば,行動を中止すべきである。
② 1983 年(昭和 58 年)高校の山岳部の沢登り中に,
部員の生徒(1年生)が徒渉に失敗して溺死した事故
がある。この登山は,教師が同行せず,生徒だけで企
画されていた。沢のレベルはやさしかったが,亡くなっ
た生徒が疲労し,沢で転倒して流されたことが事故に
つながった。裁判では,計画段階の安全管理に問題が
なく,顧問教師の注意義務違反はないとされた(京都
地裁昭和 61 年9月 26 日判決,大阪高裁昭和 63 年5
月 27 日判決,判例タイムズ 672 号 203 頁)。
この種の事故は,登山計画の段階の安全管理だけで
防ぐことは難しい。縦走登山中の登山道からの転落事
故なども,登山計画の段階の安全管理だけで防ぐことは
難しい。この種の事故を防ぐためには,指導者が登山
に同行し,登山中の生徒の疲労の程度や現場の状況に
基づいて事故の危険性を判断し,適切に対処する必要
がある。指導者は生徒の部活動に常に立ち会う義務は
ないが,事故を防ぐ観点からいえば,危険を伴う登山で
は指導者が同行して現場で安全管理をする必要がある。
指導者に生徒の登山に同行して安全管理できるだけの
自信がなければその登山を実施すべきではない。指導
者が同行せず,生徒だけで実施する登山は,危険性の
低い登山に限るべきである。
③ 1994 年(平成6年)7月の朝日連峰での山岳部
の登山中に生徒が熱中症で倒れ,死亡する事故が起き
た。引率教師は,登山中に動けなくなった生徒の冷却
措置をとり,テント内で休憩させたが,すぐに救急搬
送の手配をしなかった。裁判所は,引率教師が熱中症
の生徒を直ちに救急搬送しなかった点に注意義務違反
を認めた(浦和地裁平成 12 年3月 15 日判決,判例時
報 1732 号 100 頁,判例タイムズ 1098 号 134 頁)。
登山計画を立てる段階で熱中症の可能性を想定し,
安全管理計画を立てることは必要だが,それだけでは
登山中の熱中症を防ぐことはできない。引率指導者は
生徒一人ひとりの登山中の状況を観察して,適切に対
処することが必要である。
登山に同行する教師は,「定期的に水分補給や休憩
をしているので熱中症になることはない」,「この程度
の気温では通常は熱中症になることはない」などの思
い込みを捨てて,現実の生徒の状態を観察し,熱中症
の兆候がある場合には速やかに適切に対処すべきであ
る。まして山の中では,すぐに病院に収容できるわけ
ではないので,疑いを持った時点で対応を開始し,悪
化する前に救急搬送の手配等を行う必要がある。結果
的にはそこまでする必要がなかったというケースが多
いと思われるが,特に学校での活動では万一の事態に
備える考え方が必要である。
④ 1985 年(昭和 60 年)山岳部での活動ではなく,
高校の学校行事として行われた登山中の事故のケース
であるが,生徒が六甲山を登山中に登山道で生じた落
石を受けて死亡した事故がある。この登山は教師が同
行せず,生徒らだけで実行されていた。裁判では,教
師が負う注意義務の範囲が問題になったが,高校生は
一定の体力や判断力があり,教師は登山道で生じる落
石事故を予見できなかったとして,教師の注意義務違
反が否定された(神戸地裁平成4年3月 23 日判決,
判例時報 1444 号 114 頁,判例タイムズ 801 号 208 頁)。
高校の山岳部の活動でも,登山道で生じる落石事故
を計画段階で防止することは難しい。指導者が登山に
同行していても落石事故を防止することは難しく,指
導者に注意義務違反が認められないことが多いだろ
う。ヘルメットを着用しても,すべての落石に効果が
あるわけではない。落石事故を確実に防ぐ方法はない
が,落石に対する警戒を常に怠らないことが,事故の
リスクを低くすることにつながる。