2023/05/26

【新人クライマーは分かっていないことが分かっていない】ロープに使われるクライマー わかっていない人は何が分かっていないか?いまだに分からないのではないか?

 これは佐藤祐介さんの投稿で二日で85ピッチの記録なんですが…、

ーーーーーーーーーーー佐藤さんの記録より転載ーーーーーーーー

5月20-21日の2日間。
瑞牆でマルチ11ルート85ピッチを継続しました。
メンバー:山本、佐藤
目標は2日間で80P。
2013年に継続したカンマンボロン、大面岩、正面壁、左岩壁に加え、小面岩、奥壁、小ヤスリをリストに入れて80P以上のピッチを揃えました。(実際は小ヤスリを断念)
両日とも、5.12台が出てくるルート(アレアレア、太陽の塔)を1本含める。
結果は1日目に 4ルート34P(17時間)。2日目に7ルート51P(24時間)の合計85Pを登攀することができました。2日目(と言うか3日目の未明)の登攀を終え居眠りしながら駐車場に歩きついた時には、酷い全身疲労でどこが痛いのか不明なほど体中が痛いが充実した2日間でした。次はもう少しハードにしたいと思います。
登ったルート詳細等は以下の通り。
5月20日(合計34P) 3:45 駐車場出発
カンマンボロン
ワイルド・アット・ホーム 5.11b 7P
大面岩
左岩稜 5.10c 9P (1P目パスしたので9P分)
正面壁
アレアレア 5.12a 10P
9:50 スタート
15:20終了後 取り付き
7P目(5.11c)、フォロー時。スタートのデットを4回失敗。
秋一番 5.10c 8P
7P(5.10a)をグローブでフォロー中、フォール。
20:30駐車場下山
5月21日(合計51P ) 3:50 駐車場出発
カンマンボロン
太陽の塔 5.12c 7P
大面岩
フリーウェイ 5.11c 9P 荷物背負ってフォロー
2P目(5.11c) のスタート、フォローでフォール。
小面岩
一刀 5.11b 8P
正面壁
ベルジュエール 5.11b 10P
奥壁
一粒の麦 5.10c 6P
joyful moment 5.9 5P
左岩壁
カナトコルート5.10a 6P
正面壁取付2:30
駐車場下山 22日 AM3:45
ーーーーーーーーーーー

一般のクライマーだと、これが、一日で20ピッチがやっとこさくらいです。

初心者だと、5ピッチでもお腹いっぱいです。韓国でマルチを登っていたときは一日2ルート、つまり10~12ピッチ分くらいを登りました。

まとめると…

世界の一流 40ピッチ
一人前クライマー 20ピッチ
エンジョイクライミング 12ピッチ
初心者   5ピッチでアップアップ
入門者   3ピッチを丁寧に練習

という感じなんですが、一般のフリークライミングしかやってこないクライマーって、

入門者向けの3ピッチでロープワークの基礎を覚える。
同じルートをスピードトライアル的な登り方をして、スピードを高めるための技術的反省点をだめだしする
次は、5ピッチの初心者向けルートでスピードトライアル的な登り方をしてスピードを高めるための技術的反省点をだめだしする
エンジョイクライミング期を過ごして、頑張らなくてもスピードが出るようにする
ちょっと頑張ったら、20ピッチはこなせる程度になる

という、本来、5段階くらいあるプロセスをすっ飛ばして

  一般クライマーの20ピッチレベルと俺は同じレベルだ!

と勘違いしてしまうらしいんですよね…。

自分は5ピッチでもまともに登れないのに、グレードだけを見て、「ベテランは、5.11がやっとだけど、俺は5.12が登れるから上だ。〇〇さんから学ぶことはない」と思ってしまうみたい。

それが慢心なんですよ。 5.12が登れて気持ちよくなっていることは別に慢心ではない。だれだってグレードが上がれば素直にうれしいものです。

いくら、5.12がレッドポイントできても、登りが遅かったり、登りのスピードがあっても、長ぬんで伸ばすところが学習できておらずに、ロープが上がらないなどのミスをしたり、あるいは懸垂下降後にロープ回収でノットをほどき忘れるとか、テープで固めた末端が岩と岩の間に挟まってロープが回収できなくなるとか、そういうことが起こった場合どうしたらいいか?という学習なしに、先々に進もうとする、それが慢心なんだと思います。

その点に気づかずに、登れて当然の課題を登って、「慢心があるかも?」ってポイント外し杉ですよ。

慢心は、

  グレード一点豪華主義の弊害を知らない

というよりも、

 聞かれなければ、自分の技術的未成熟な点は伏せておいて、リスクがある行為に相手を巻き込む、

というどちらかというと、

 ちゃっかり

した精神によるのではないか?と思います。

ちゃっかりしていないんだったら、マジで自分はスキルあると思っているって意味で、かなり誤解が深い痛い人って意味です。

アルパインでもフリーでも、自分はこのくらい行けると思っているルートが若い人は高すぎます。

それは、
 
 ・だれも教えないから、

ということもあると思いますし、
 
 ・周囲に上記の佐藤さんの記録のようなのを見せてくれる人がいない、

 ・支点ビレイを普通だと思っているようなおじいさんクライマーの基準を現代に当てはめてしまっているから、

と、複合的な原因となっているのかもしれません。

自分の実力を測る手段、モノサシとして、

 グレード以外のモノサシを持っていない

持っていたとしても、

 体力

だけ、ということが、

 分かっていないことの証拠、

であると思います。

ロッククライミングは、

第一に、確実なロープワークの習得で身を守る
第二に、グレードで、登攀力のゆとりを作る
第三に、体力アップで、意識もうろうとしても判断力を衰えさせない

です。1をすっ飛ばして、2,3に行くことが、岩場の事故を増やしています。

フリークライミングのゲレンデで、自分にゆとりのあるグレードを一日、4,5本程度、登るだけでは、体力っていうのは、まったくいらない世界ですよ?

なにしろ、それが私がフリーに進んだ理由なのですから…

アルパインをやっていたクライマーが引退したら、体力が不要、リスクがほとんどないゲレンデのフリークライミングをする、って話になっています。