2023/05/06

日本クライミング 6つの論点

日本の岩場の6つの論点です。

1)自分を守る技術が先に必要

みんなよく勘違いしちゃうけど、難しいクライミングと初心者向けのルートでは、登るために必要な技術はめちゃくちゃ違うんだよ。でも、実は、危険はあんまり変わらないんだ。

だから、登る技術よりも、自分を守る技術を先に学ぶことが大切なんだよ。

でもね、今のクライマーたちは、それを理解して実践していないんだ。

でも、僕みたいな未熟者が言うことじゃないかもしれないけど、今日本の山で活動しているクライマーたちは、危険を予防する技術が昔に比べて下がってしまっているようなんだ。

20年以上前なら、山岳地帯で、残置を使って登ることは間違ってはいなかったかもしれない。けど、20年たてば、金属は朽ちるし、日本以外の外国は進化しているのに、日本だけが同じことを続けている。

相対的に見ると、日本のクライマーたちは後ろに下がってしまっているんだ。

年輩の人たちは、それが理解できていないみたいで、未だに40年前のボルトが安全だと思って、エイドクライミングを若い人に教えているんだ。

2)落ちない。行動プロテクションという考え方の習得。

クライマーが、外岩のクライミングで死なないためには、まず、落ちてはいけない場所では、絶対に落ちないことが大切なんだよ。

(もちろん、基本的にどんな場所でも、落ちてはいけないんだけど…。)

まずは、山でクライミングをするためには、落ちてはいけない場所を見極める力が、必要なんだよ。

それに、落ちては行けない場所に、ロープを使わずに行くことを友達に自慢してはだめだよ。

練習用の外岩に、みんなも行くことがあるよね。練習用の岩場では、最初のボルトでぶら下がっている人をよく見かけるけど、そんな人は、もう少し考える必要があるんだよ。

1ピン目から、ロープにぶら下がることは、インドアで行うスポーツクライミングでは、普通のことだけど、外の岩場では、ボルトは確実にぶら下がれる強度があるっていう保証はないんだ。

だから、1本のボルトだけにぶら下がるのは、危険なんだ。

ぶら下がっているみんなは、それが危険だとは分かっていないだけなんだよ。

行動的なプロテクション(外の岩場で身を守る行動法)をもっと考えないといけないんだ。

もちろん、クライミングの能力自体を上げる必要もある。落ちないこと以上に身を守る方法は存在しないからね。

”俺は落ちないから”といって、ビレイヤーは、誰でもいいと思っているクライマーがいるけど、注意しないといけない。なぜなら、そんなクライマーと組んだビレイヤーは、落ちた時にキャッチする練習がゼロなんだ。だから、そんなビレイ経験しかないビレイヤーが増えているんだよ。

5.13を登る人なら、間違っても5.9では落ちないんだよ。アルパインクライマーにとって、5.11だけで十分だったのは、もう15年前のことなんだ。

現代のアルパインクライマーには、40キログラムの荷物が持てて、5.12が普通に登れる能力が必要なんだよ。

3)間違ったビレイ

壁から離れたビレイが指導すらされているほど、日本では広がっている。

外の岩場でも、足場がひどくない限り、壁から離れることは避けるべきだよ。

信じられないけど、最近では、クライマーが見えないからといって、壁から離れることを指導している組織もあるみたいだよ。

壁から離れるように指導されている人とは、あまり関わらない方が賢明だよ。

4)勘違いした開拓

日本では、エイドクライミングを前提にしたルート開拓から進化が止まってしまっているんだ。

世界のクライミングは進化していて、『不思議の国のアリス』の赤の女王の廊下みたいに、ただ立ち止まっているだけだと、国内のクライミングは、すぐに古くなってしまうんだ。

それなのに、古いボルトを使って登るなんて、わざと危険を増やして、自分を窮地に追い込むことを楽しんでいるのかな?

残念だけど、そんなクライミングが、日本では主流なんだ。

それに、プロテクション(支点を作る方法)の技術は、日本では、全然、重要視されていないんだ。

昔は、日本の岩が脆いという理由で、たくさんのボルトを使っていた時代があった。

残念なことに、日本では、今でも、その勘違いしたボルトをたくさん使うやり方が主流なんだ。

それに、逆に クライミングは安全なスポーツだという、インドアでのスポーツクライミングの前提を外の岩場に持ち込む人もいる。たしかに人工壁では落ちてもいいことになっているんだけど、外の岩場では、それはおすすめできない。

そこが、きちんと区別できていないのが、日本のクライミングの現状なんだ。

5)正しいボルトの知識が広まっていないこと。

日本オリジナルのリングボルトやRCCボルトは、強くないので、ちゃんとした登山者は、使わないんだよ。

学生のみんなも、昔から使っているけど、それをやめるべきなんだ。

今は、少なくとも8ミリ以上のスタッドアンカー(グージョンっていうんだよ)を使うのがスタンダードなんだよ。

僕たちはヒマラヤ登山でも、10ミリのステンレス製のスタッドアンカーを使っているんだよ。

ボルトを打つことはおすすめしません。でも、打つなら信頼できるものを使うべきなんだよ。

6)古いクライミングスタイルの継続

現代のアルパインロックの記録は、オールフリーで登られているのにも関わらず、日本のクライマーたちは、古いスタイルを継続している。

これは、ボルトルートのエイドクライミングがアルパインロックだった日本だけの独自の問題なんだよ。

海外ではそんなクライミングは特殊な登り方なんだ。

結果、ガラパゴス化現象を日本の岩場は起こしている。

現代の若いクライマー世代も、未だにその誤解のさなかにいる、ということが、起きているんだよ。

そのため、残置で登るスタイルを改められないクライマーは、岩場の事故で死んだり、大怪我をしているんだ。

逆に現代の高度なフリークライミング能力を身につけた人にとっては、日本の岩場は、簡単すぎて魅力がないことになってしまっているんだ。

日本のアルパインロッククラミングは、結局のところ、エイドクライミング時代から、進化を止めてしまった。そこにすぐ落ちることが前提のスポーツクライミングが持ち込まれたことが、日本での岩場の事故急増の原因なんだ。