2023/02/18

クライミングでよく起こる心理ゲーム

■ クライミング活動でよく起こる心理ゲーム

1)さあ、とっちめてやるぞ、この野郎(Now I’ve Got You, You Son of a Bitch)

古いアルパインクライマーや山岳会のペテランが、新人の些細なミスを見つけて、自分をちゃんとしているクライマーだと確認しようとする行為。

この行為のために、新人はランナウトした岩場で落ちて重大事故がいくつも起きても、問題の根源になっているランナウトそのものは改善されない。

仕掛人である山岳会ペテラン(いわゆる往年のクライマー)は、

「親や社会から受けた不当な扱いを発散してやる(俺だって、佐藤ユースケ)」    

「新人の落ち度を見つけて嬉しい(例:ランナウトしたところでは、後ろに走ってビレイすることくらい知らないの?)」

 などの隠された意図を持ち、新人側は「適切なクライミング指導を受けていない、もしくは、うけていたとしても、知らない技術があるかもしれない」という弱みを持つため、心理ゲームが進行してゆく。

このゲームは、長期にわたる親や社会からの不当な扱いによって鬱積した怒りを仕掛人であるペテランが、発散するために行っているため、仕掛人の目的は「自分はOK、他人はnot OK」の人生態度を確認すること。

このゲームを行わないようにする対応方法として、山岳会の新人は、ミスへの謝罪は行っても謝罪以上のラケット感情(たとえば、後悔の念や怒り)を持たないようにし、大人の自我状態から粛々と対応することが望まれます。

このゲームを行ってしまう山岳会のペテランたちは、他の人にも同じような行動をとるため、疎んじられており、ストローク飢餓に陥っています。

そのことを念頭に置いて、「昔はすごかったんですね」などの肯定的ストロークを投げかけることでゲームの回避を期待することができます。
 

2)あなたのせいでこうなった(See What You Made Me Do)

 他罰主義的で責任回避をするために行われる心理ゲーム。別名:自己責任。

たとえば、集合時間を勘違いしたことを、相方のせいにして腹を立て「起こしくれなかったじゃん!」と叱りつけます。

ビレイでも同様です。ピンを取っているのに落とされた場合、適性ビレイをビレイヤーはしていません。これをクライマー側の責任にするのは間違いです。これでは永遠にビレイヤーは免責されるだけだから、です。

不適切なボルトを受け入れて登る、という点についても同じです。不適切なボルトのルートにはクライマーは登るべきではなく、登ったとしても落ちるべきではありません。

この種の出来事が繰り返され、自己責任を免罪符に、必要以上の責任を、クライマーに押し付けるクライマー…往々にして開拓者や往年のベテランクライマーは、敬遠され、一人になることが多くなり、誰からも邪魔されない立場を確立することになります。

ゲームを回避する方法として、適度な距離をとるなど様々な方法が考えられます。

3)シュレミール(Schlemiel)

登攀の明確なルール…緊急連絡先の共有や登山計画書の提出、下山報告、ロープワークの習得、道具を自分で用意すること、などのルールを頻繁に守らない。しかし、丁寧に詫びる。ので、相棒のほうもついつい「いいですよ」と許さざるを得なくなります。

仕掛人のクライマーは、無意識的に意地悪くミスを繰り返しながら相手の忍耐力を試し、その過程をひそかに楽しんでいます。

そして、この心理ゲームによって「他人はnot OK」という人生態度を強化していきます。

相方となる側は、「助けてあげたい」という弱みを持っているため、心理ゲームに乗らざるを得ないのです。

「他人を操る快感」がこの心理ゲームで働いていることに気づき、対処することで心理ゲームを終わらせることが出来るでしょう。
 

4)苦労性(Harried)
 

ワークライフバランスを崩して体を壊してしまうクライマーが演じるゲーム。

クライミングによって寂しさを感じなくて済んだこと、自分のピンチを救ってもらった経験がある人がクライマーになった場合、その動機付けから自分の体や健康を顧みず、のめり込むように熱中するような人がいます。

駆り立てられるように登るあまり、疲労困憊し、体を壊して、結局クライミングを続けられないようになってしまう転換と結末…時には山やクライミングでの死…を迎えます。

そして「自分はnot OK」の人生態度を確認していることになります。

■ 本物の感情(authentic feelings)とは? 

今ここでの問題を適切に解決するために有用に働く感情。

1)本物の怒り(mad)を感じているとき

 目前にある問題に憤り、今ここでの問題を解決しようとするスタートにいる

2)本物の悲しみ(sad)を感じているとき

 過去のつらい出来事を消化し乗り越え、心理的恒常性を回復する努力をしている

3)本物の怯え(scared)を感じているとき

 即座に危険を回避し、未来に起こる問題を解決することを試みている

4)本物の喜び(glad)を感じているとき

 いまここにある幸福を謳歌し、実のある人生を過ごすことに導く

まとめると、行動の起点になる、ということです。

 怒り=問題解決、悲しみ=努力、脅え=危険回避

喜びだけは、人生の源泉、ですね。 

怒りは、鬱の基本感情なので、私がうつ病になったのは、怒りが適切に処理できなかったこともあるかもしれませんね。

 ■ まとめ

  • カットアンカーや遠いボルトの不適切な支点配置への怒り =オーセンティック。
  • パートナーに殺される~という脅え = すぐ行動したのでオーセンティック。
  • クライミングを失った悲しみ = 今テニスで解消中なのでオーセンティック。

喜び…現在、創造中。

クライミングによる喜びではなくても、とりあえず、私はハッピーにはなれるようです。

しかし、登山では避けられたオールドスクールを避けられなかったのはなぜだろうなぁ。