九州では、ルートは40年前のカットアンカーがまだ主流で、ローカルクライマーは、どのルート、あるいはどのエリアが危険か?というのを知っていますが、外部から訪れるクライマーは、『百岩場』が頼りなので、ボルトがボロいことを知りません。
それでも、年季の入ったベテランクライマーは登ったりしているので、
あ、大丈夫なのかな?
とか思って、取り付いてしまうかもしれません…。しかし、登り方がちがうんです。
ので、ベテランがどうやって、40年もののボロいボルトを登るかを解説します。
1)まずはオブザベ
オンサイトで登れば、ボルトを使うことになりません。
ので、ボルトがボロくても大丈夫。
つまり、ボルトレスで登るくらい、グレードを下げます。
どのくらい下げるのか? 5.12を普段人工壁で落ちながら登っている人は、5.9くらいまでに下げます。
2)プリクリップ可とし、常にトップロープ状態にする
一般的な身長の人は、大体手が届くと思いますが、エイドルートは誰にとっても遠い事が多いので、プリクリは保身のために必要です。
プリクリしない人でも、人工壁では、”腰クリップがいい”と教わっていると思いますが、腰クリップなどという悠長なことは言えないボルト強度なので、できるだけ、ロープより下にいるようにします。
もちろん、この方法だとたぐり落ちたときのダメージがより大きいですので、絶対にたぐり落ちないか、たぐり落ちても停められるスキルを持ったビレイヤーと組みます。
3)たぐり落ちれるビレイスキルを得る
上記参照。たぐり落ちのリスクが高いクライミングスタイルを、ボルトがボロい岩場では採用せざるを得ません。
奥村さんが、たぐり落ちてもキャッチする、きちんとしたビレイを教えています。
4)墜落より、テンション
落下係数2の墜落はしません。そんなことをしたらボルトが破断してしまうかもしれません。
ので、テンションを多用します。少しでも、これは、落ちるかも?と思ったら、ドローをかけたあと、ビレイヤーに張ってもらって、テンション程度にしておきます。
5)終了点も見極める
横水平に2つ並んでいるルート=昭和なルート。あんまり、信頼しないほうがいいです。しかも、グルーで固めているとか、崩落しそうなやつとかあります。
師匠は、そんな終了点を見て、怖い、怖いと嘆き、終了点にテンションかけるまでに10分位かかりました。
そのような場合は、3点目の支点が取れないか考えます。だいたい木の根っことかあれば、バックアップが取れますが、バックアップになるモノが何もない時は、下の中間支点もバックアップとみなします。
終了点が崩壊しても、一個下の次の支点が保ってくれる可能性もあります。
6)トップロープだからといって安心しない
フォローは、トップロープですが、そもそも支点がボロいのですから、ランニングのドローからロープを抜かず、できるだけ頭上にドローや支点が多い状態で登ります。
7)下のビレイヤーはクライマーに指示する
ゼットや逆クリップは当然ですが、そこで落ちたらどうなるか?を下から指示します。一度私は、後ろにケーブルが出ているので落ちれば当たるのに、下から連絡がなかったことがありました。登っている人は眼の前しか見えないんですよ。
8)ダイナミックムーブ厳禁
デッドはしない。落ちれるボルトのルートでも、デッドで取ると、下手なビレイヤーでは墜落の際に、グランドになります。かと言って引っ張られたら、もっと困るし。
■ 一般的な人工壁の登り方
1)オブザベは、ほとんどしないで取り付く
2)えーどこーとか言いながら、下のビレイヤーに次のホールドを教えてもらう
3)足元より下にクリップがあるのに、張って-とか言う。今張ったら、引っ張り落とすことになります
4) すぐ落ちてパワーセーブする
5)すぐダイナミックムーブに頼る っていうか、それがクライミングだと思っている昨今
6)ビレイがシビアでないので、無理してでもリードする
7)長ぬんで伸ばすとか不要
上記のやり方をそのままボルトがボロいルートに適用してしまうと、死が近づきますが、問題は、その事自体をクライマーが分からないことです。
ですので、ボルトルートという補助輪付きのクライミングから入らず、アイスクライミングのような、最初から、自分でプロテクションを打つこと前提のクライミングから入るほうが、クライミングという行為そのものへの理解が深まります。
ある程度登れる人でも、一度アイスクライミングをやってみたらどうか?と思うほど、上級クライマーでも、ボルトを追いかけることだけに執着してしまって、それがクライミングの本質ではないということに気がついていないことも昨今多いです。
一つの岩場の中で、弱点を登るのがアルパイン、強点を登るのがフリークライミング、ですよ?ジャンボさんもそう言っていましたよね?
弱点と強点の間に、どこか自分にとって響くラインがあるはずです。そういうのを見つけると、とても楽しいですよ。自分を深く知ることにもなるし。