■ 低身長はリスクが大きい(不利)と世間では知られていない
日本のクライミングで言えば、私は低身長なので、常に、ごまめ、状態です。
日本の外岩のボルトは、
・日本人男性の平均身長を前提に打たれている、もしくは、
・エイドルートをフリー化したもの、
ですので、いずれにしても、ピン間隔が、中学生くらいから登る、ということを対象にしていないため、140cm、150cm代の身長の人は、その他の人より大きなリスクを背負うことになります。核心前にクリップできない。ということです。
しかし、プリクリップは問答無用に、弱虫の証とされるのが、日本の伝統。同じ基準を、核心前にクリップできない人に当てはめると、
クリップできる人がしなくていい勇気を出さないといけない
だけでなく
死のリスクを背負う
ことになります。
■ 事例
例えば、小川山の『トムと一緒』5.10Aは、私は同じところに立っても、クリップできないので、より小さなスタンスに立つとなると、もはや10Aとは言えなくなります。が、プリクリップというのは、日本の伝統では否定されています。
そうなるとどうなるか?というと、その辺の男子が取っていないリスクを取らないといけないです。あそこ、核心前にクリップせずに落ちたら、振られて激突ですよねぇ。あれは落ちれない箇所です。
遠いボルト間隔で、落ちて重大事故になった事例は、四阿屋インディアンフェイス10bで見ました。普通の身長の男性でした。
このようなことは、登山歴40年の方でも理解していないです。 背の低い人に向かってエイドで鍛えてやるとか言いますが、遠藤由香さんがショルダーされていましたよ。つまり、どんなに登れても、ショルダーされないと届かないものは届かないってことです。
■ 外岩5.8
私は最初から外岩の5.8はリードで来たので、昔の18歳大学山岳部新人と比べても、よく登れたほうであると、今では分かります。
山登りがガンガン出来る若い男性…山小屋にいるような人…外岩に連れて行っても、5.8がいきなり登れる人はあんまりいないです。
師匠の青木さんが若い人を預かって、まるでサブガイドみたいな立場になってしまい、それで、40代くらいの新人の面倒見たことがありますが、外岩での新人男性の挙動は、同じころの私の挙動より微妙に分かっていない人が多いです。年齢は関係なく、
予習する習慣がないもの
と思われます。外岩で登ろうとする新人に必要な知識がまとまった書籍がないので、色々な本を読み合わせるしかありません。
実は山岳総合センターでの講習でも、4人の班でしたが、村上先生が私をリーダーに選んでしまって困りました。他は男性だった。
■ インドア5.11
ところが、インドアでは全く話が別になります。インドアの5.8って、幼稚園生でも登れます。しかも、インドアクライミングには、予習必要ないです。
人工リード壁では、20、30代の男性は、5.11とラベルされたリード課題は、初めてジムに来た、その日に登るくらいなのです。
同じ難易度だと思って、「(いきなりアウトドアで登っていて)5.8が登れます」と発言する人をたぶん、”なんだ、5.8しか登れないのか”と考えてしまいます。
つまり、全然実力を勘違いして、自分が上だ、と思ってしまいますね。実際は、5.12を登る人でも、外岩では経験不足が著しく、10代をリードさせてもかなり危なっかしいです。
■ ジム5級&5.11 = 外岩5.8
つまり、ジムグレードと外岩グレードのコンバージョンで誤解が生じるわけですね。
ジムと外岩両方に通っている人は、大体、
ボルダリンググレードで5級=外岩の5.9
です。
5.9というのは、ムーブがいらなくて、身長さえあればガバに届き、特に大きな危険なく、登れるという意味です。
その場合でも、5.9は、5.12が登れる人にとっての5.9で、ジムがなかった昔の基準では、”会の中で最高に上手に登るやつ”が担当するグレードです。
ですから、ワングレード下げてリードしないといけません。
ジムでどれだけ登れても、外岩で登れる保証は全くありません。なにせ外はスラブが入門課題で、フェイスの5.8、5.9で初心者が安全に登れるような課題は、めったにありません。
■ 昔の新人は万年セカンド
昔の基準では、5.6あたりが平会員向けなのです。そこまでグレードが下がれば、ピンが遠かろうが、ボルトではなく腐ったハーケンだろうが、たぶん大体の人は登れます。
私も初めて登った岩は、アイゼンを履いて登った5.6で、2度目からはリードしています。ランナウトはしていますが、登山靴での延長なので、落ちるようなことは、起こる確率的に非常に低い、ということです。
登山靴ベースでの最高峰が5.9って意味です。
同じ昔の基準でも、5.8で、腐ったハーケンのルートをリードした時は死ぬかと思いました。
しかし、この想定を知らない、ジム上がりの人が聞けば、”インドアの5.8”しか頭に浮かばないので、登れる方に入らない。インドアの5.8って、幼児でも登れそうですから。ところが、アウトドアだと5.7でも、ごつい体格の新人男性、登れないですよ。
これが私が日本のクライミングで適切に実力判定されない理由です。
ま、今では往年クライマーと同じくらいは登れるので、お買い得品化してしまったかもしれません(笑)。
■ 外岩ボルダー1級が登れても5.9はリードできない
エイハブ船長は、1級の基準課題ですが、1級が登れても、リードの5.9は登れないですよ。
そこも若い男性は、ちょっと誤解しがちです。
ボルダーで培った突破力って、ものすごく動的なので、リードで行き詰った時に、その突破力が常に使えるのか?というと、私はまだ到達していない境地ですから、誰かに教えてもらいたいですが、使えるんですかね?
日本の課題は、5.12より下はランナウトしていることが多いので、課題に対する見極めが必要になりますから、1級が登れる人は、最初から、5.12以上に取り付いたほうが安全なのかもしれません。そのグレードであれば、人工壁みたいにボルト近いことが多いですし、最初から、高度な突破力前提だと動的ムーブを前提にしたボルト配置かもしれません。
つまり、ランナウトした外岩課題をバイパスできる、という意味です。高難度を登る人は命は賭けないで済みます。
■ 12フリーソロ
それを知ってか、佐藤さんなどは、命がけのアルパインの伝統を示すため、5.12でフリーソロして見せないといけないのかもしれません。
そうじゃないと、リードで5.12登る人ってゴロゴロいるので、真の実力の意味がみなに伝わらないのかもしれませんね。
■ 外岩から入るか?ジムから入るか?
私のように、外岩から入る人材で、下から順々にグレードを上げて登って行こうという人は、現代では、かなり少数派です。なかなか現実的には、実行が不可能だからです。
私のように海外に行かないと、自分が思ったような成長…グレードピラミッドを積み上げること…はしづらいという意味です。
また、雪の山から入って、積雪期メインで登っています、という人も珍しいです。
■ 実業界
さて、実業界でも、同じようなことが起こります。
私は関西ではトップから2番目の国立4大出ですから、そもそも偏差値が74くらいですが、開発部に限らず日本の会社組織は、男性の階級社会です。
その世界は社会が順調に、能力順に人を割り振ることが可能だった時代…昭和…は、自分の上に、自分よりも賢い人、あるいは仕事を分かっていて経験値が上の人が来たので、それなりに問題なく、機能していたのです。(ちなみに私の職歴では大体東大卒の人が上司に来たことが多いです)
ところが、失われた10年とかで、新人が入ってこない。そうなると、階級で上の男性より、就職氷河期の人は、買い手市場の人材なので、仕事ができます…仕方ないでしょ、学歴、歴然と違う。
一般論ですが、バブル期入社組は、売り手市場だったので、優秀な人がおらず、そのあと10年空いて、氷河期を潜り抜けた超優秀な人が入ってくるのです。
氷河期組は、社会の約束を反故にされて、今まで新人はぬるま湯で名刺の渡し方から指導されたのに、この世代は、入社した時から即戦力。一番下っ端なのに、実践で覚える系です。
私なんて、新卒で入った時から、バグ管理データベースをMSアクセスで作っていました。当時アクセスでデータベース組めたら、普通に左うちわで独立できたと思います… まぁそうやって、かなりお買い得商品だったわけなのです。それが、ものすごく上級の仕事をしているとも気が付いていないので。
初めての職場だと比較する対象がない、ってことに社会が付け込んでいる状態です。しかも、私は英語が話せたので、普通の英語話せる人は、IT分からない。
私の適正年収に数年後に戻してもらいましたが、当時で800万円でした。
それでも、適正年収が分からない場合、多くの氷河期世代の人が、日本の階級社会では、冷え飯を食っているわけです。親世代の何もしない働かないおじさんが年収700万円で、業務効率3倍の新人が年収200万円です。
しかし、旗目に見ると、下っ端です。クライミングと同じですね。
実力ではなく、社会の基準の方が、能力がなくても男性を楽に優位にするように働いているということです。
■ 海外のほうが平等が浸透している
しかし、海外に行くと、どうなるでしょう?
日本のような、そもそも、本当の実力とリンクしていない階級制度自体がない。
仕事は自分の好きなように成果を出せば、普通に自分の手柄になります。そうなると、ふつーに仕事出来る人、です。
それが理解できないのが、日本の階級社会の男性です。立ててもらわないと怒る=傲慢です。
不利な立場の人が出してきた成果がどのような意味なのか?全然わからないのです。
■ 翻って日本のクライミング
日本のクライミングで、男性の平均身長170cmにボルト配置が合わさっているので、例えば小川山のトムと一緒は、私は核心前にロープがかけられない… これ、小川山で一番易しい10Aと言われています。ところが、それは誰にとってか?というと、男性の平均身長がある人にとって、です。
私より背が低い男性がいれば、同じように核心前にクリップできないでしょう。(ま、152cmより低い人はいないでしょう、めったに。こないだ水上で会いましたが)
ラオスでは、問題なく6A(10A)は総なめしてしまいました。ラオスの6Aは日本の10Aと同じかというと、そこは疑問が残ると思いますが、別にボルトは遠くないので、不必要に命がけになることなく、普通にバンバンリードで登れました。
私が普段、怖がっている姿を見て知っている人が見たら、あれ?と思うでしょう。
というわけで、私は、ごまめから、一気にフツーのクライマーに格上げです(笑)。
■ ”非・自立の世界” 日本では、1本10Aを登るだけで一苦労
そもそも日本の岩場では、クライミングピラミッドを築けるほどの本数がない。
その上、低身長の人にはリスクが多い。
だから、結局、トップロープを誰かが張ってくれる世界、そこで自動化して、リードする、という
”非・自立の世界”
を前提にしているということです。
”非・自立の世界”
を前提にするということは、依存関係を維持するために、おべっか使ったり、相手のご機嫌取りをしたり、色々しなくてはいけないってことに、結局なります。
一方、ラオスでは、一日5,6本、安全に登れます。それだけ登れば、そのグレードはマスターした、と言えるでしょう。
■ ヘッドハンティング
しょーもないのも足せば、私は海外から3度ヘッドハンティングされています。
きちんとしたエンジニア職だったのは、32歳のテレコムニュージーの話だけですが、タイでホテルの支配人から、うちで働かないかと言われたこと1回、東京の外資でセクレタリーとしての仕事を打診されて一回です。間違いました、4回ですね、一回はドイツ会社にセールスで勤めたので。
私に海外からヘッドハンティングが来ても、夫は、「君、仕事出来ない人なのになぜ?」と思ってしまう…のは、
四大卒に限らず女子は全員=日本の職場では永遠に下働きを要求される地位にいる、
と頭から思っているから、という、上記のような理由です。
同じことで、台湾やラオスへ、別に一人で行っても私は登れて、他の人はパートナー出来ないのは、日本の価値観で相手を裁こうとしているからです。フランス人の男子だって5cでヒイヒイ言ってますよ?
■ この社会では才能を開花できないのは、私の個人的理由ではない
ラオスの登攀、日本の登攀の両方を経験して、私は、日本の土壌では花咲けない花、という気がします。私に限らず、女性で低身長だったら誰でもそうでしょうね。
それは、私のせいではなく、日本のクライミング土壌と日本のクライミング歴史的経緯が、男性の平均身長を前提にし、中学生並みの身長の私にはまったく合っていない。
実社会では、私ではなくても、四大卒女性を男性の階級社会に無理やり組み込んで、職歴が長い低学歴&低能力男性の下で、下働きさせようとすると、みなそうなるのでは?と思います。
低能力というは、知性が低い、という意味です。知性が低いというのは、相手の立場に立つ能力が低いという意味です。
つまり、自分の無能が証明されてしまう脅威に感じて、叩き潰そうとするでしょう…
チェーンソーは胸高で使用してはいけない、危険なのに、やれと言ってきて(弱い者いじめ)、嫌だと断ると、お前は頭が高いとせめて来るというのと同じことです。
仕事では、家で家事も何もしないで上げ膳据え膳の男性社員の3倍の効率で仕事しても、PMになったら、サブって意味です。実際は、ほとんどすべての業務を私がしており、リーダーは何もしないことになります。
こういうことになってしまうのは、女性の側のせいですかね?
違うでしょう。
そもそも、女性の方が、小学校の時代から、同じ偏差値だとしても、ずーっと、男性より厳しい環境でやってきていますよね?
それは、相も変わらず、成人していも、60代を見るようになっても、同じなだけです。
その地位に値する能力が備わっていない男性に、形だけの地位や名誉を与えるために優秀な女性をつけて、意思決定のポジションにつけていること自体が、
日本の破滅=現代の様相…失われた30年を作った原因
のような気がします。
コロナ禍でちゃんとした政策出した国の人、みんな女性首脳ですよねぇ…
日本政府がいかに頼りないか…無能の人の集まりか…
オジサン種族男性は、平時に威張っているだけで、ピンチの時はてんで頼りにならないってことです。