(赤字当方)
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ルート保全について
~お互いの安全のために~
ある岩場にて
昨秋、30年くらい前に開拓された岩場を尋ねました。そこで劣化した支点(ハンガー)を多く見受けられましたので、その後2回程度、支点の整備に行きました。私が開拓したルートもありましたが、整備した多数は他人が開拓したルートです。写真のように「ほとんど抜けかけたハンガー」が連続した箇所もありました。
これは非常に危険な状態で、あと数回の墜落かテンションでハンガーが脱落していたかもしれません。
支点の強度と管理
岩場では開拓者がルートを作りますが、その支点を終生にわたって強度保証することはありません。ただし再登者は支点強度を信じて登りますので、この辺の齟齬が事故発生の危険性をはらんでいます。
またクライミングジムでは支点は管理されていますが、自然の岩でそれはありません。
言い方を変えれば「有料施設では支点は随時点検されるが、無料の岩場では支点の管理者はいない」ということになります。
今回の問題は「ハンガーをとめるボルトがずいぶんと緩んでいたのに修正されていなかった」ことです。
クライミングコミュニティと安全の保全
クライマーは好むと好まざるにかかわらず、クライミングをしているということで「クライミングコミュニティ」の一員になります。 我々はその場にいないクライマーを意識することは困難ですが、私が今日登ったルートは将来、誰かが再登します。そのため我々は時間軸上でつながっているといえます。
そして管理者のいない岩場では、クライマーは無料で登れる恩恵があると共に、次のクライマーのために安全な状態を保全する必要があります。例えば、「開けたドアを次の人のために押さえてあげ、その人は次の人のために・・・」というような行為、つまり「岩場では安全のリレー」が大切です。
今まで、死亡事故が発生して利用禁止になったエリアはいくつかあります。事故は被災した本人に壊滅的な事態が生じますが、クライミングコミュニティにも大きな被害を与えます。
岩場で出来ること
ランナウトした核心部で、ハンガーが脱落しそうであっても、必死でクリップするかもしれません。ただしそこでテンションしても、体重がかかったボルトを締めることは困難です。そのため安全な支点に到達するまで危険な状態が続きます。
ボルトを修正できる可能性があるのはロワーダウンのときです。私は岩に行くときは「小型モンキーレンチ」を持参していきます。そして回転しているハンガーはそれで補修するようにしています。
ボルダリングではチョーク跡を掃除することがマナーとして定着しています。リードのハンガーや支点問題は見かけの問題ではなく、安全の問題である以上もっと深刻です。
「続登者の安全は、先行者によって保たれる」のです。そのため「安全のリレー」に努めていきましょう。
カットアンカーからグージョンに打ち直されている |
緩んでいるカットアンカー |