2021/12/22

A kind of mountain I love

「日本の山は美しいなぁ…」

夫の仕事の都合で、行くことになった甲府。駅前にある舞鶴城跡からは、南アルプスの
雪を抱いた白い稜線が、いつもくっきり見えます。

夫婦共働きから、一転。バリバリ働く女性から、専業主婦となった私。流産後でもあり、心身共に深い傷を負い、次なる生き方を模索している…そんな私を癒し、導いてくれたのが、日本の山の大自然です。

初めて見るカラマツの植林は、秋になれば黄金色に輝き、厳冬期ともなれば凍り付いた白い雪や霜が、繊細なレースのように美しいのです。春は、みずみずしい黄緑色の小さな星型の新芽が一斉に出てきて、とても愛らしい…。

カラマツの森はとても明るい。カラマツは、落葉する唯一の針葉樹です。日本原産の唯一の針葉樹なのに、針葉樹と言えば、九州の放置されたスギやヒノキ林しか見たことがなかった私には、とても新鮮でした。



  ダケカンバの森…ずいぶんここでは遊びました 

「山が呼んでる…」

明るくさわやかな森は、明るい青年の笑顔のような森です。

暗く鬱蒼として人を寄せ付けないスギやヒノキの森とは違い、迷子になって帰れないかも…そんな気持ちはつゆにも起こさせない、いつでもおいで、と明るく笑っている森です。

広葉樹ならダケカンバ。落葉して枝だけになったダケカンバの木は、樹幹辺りがうっす
らと赤みを帯びて、何層にも重なったダケカンバの森は、それはそれは美しいのです。

初めて見る植生に心が惹かれ、”山を見るために”、始めたのが登山でした。

登山と言っても、白い雪の山がスタート。美しいからです。

ロープを使ってテクニカルなルートを登る、クライミング要素の強いアルパインクライミングというスタイルの登山へ進みました。美しい景色をテントの中から、のんびりと見たいと思ったから。

明るく晴れた雪の山が好き。

  厳冬期の北八ヶ岳 私の原点の山です


11月の北ア山頂ではテント泊を

私のやっていた山登りでは、四季ごとに違うアクティビティをします。

アルパインは、四季折々の季節に合わせ、自然界の営みから有利な点を人間が利用する、というスタイルなのです。

それまで四季のない都会暮らしをしていた私たち夫婦に、四季とともに生きる生活がやってきました。

ハイシーズンは、11月からです。山から観光客が去って静かになってからが本番です。

11月最終週の燕山荘前はテント泊練習場です

まずは、北アで初雪を踏む。そして、今期はどこを登ろうかしら…とワクワクしながら、アイスアックスを取り出してきては、刃を研ぎ、12月第二週にもなると、そそくさと凍った氷瀑を偵察に行きます。大体、第二週で登れるか、登れないか、今年の氷の発達具合が分かる。十分寒いかどうか?が、人生の重大事になります。地球温暖化はジブンゴトです(笑)。

年末はクリスマス寒波が来る前に、雪崩が起きるような傾斜のルートは済ませてしまいます。というのは、雪崩には時機というものがあるからです。

ルートも雪で埋もれてしまうと、クライミングではなくラッセルの山になってしまいます。

お正月は冬山合宿です。寒さを味わう。お正月前の富士山五合目は、雪に慣れておこうという人で一杯です。
  雪の稜線歩きは素晴らしい経験です

雪の稜線を歩く

そして、厳冬期は、私の大好きなアイスクライミングのハイシーズン。毎週アイスクライミングに出かけます。その途中、凍った谷底を見るわけですが、その美しいこと!冬には冬の愉しみがあります。

  こんなのを見るために行っているだけで、選手になるために登っている訳じゃないです

春の愉しみは4月のスプリングエフェメラル。森の妖精と言われる、先行して花咲く山野草です。

カタクリやニリンソウ、フクジュソウ、セツブンソウなど…トレジャーハントのように花を探して歩きます。これは九州でもできますね。


GWは、雪を利用し、長い縦走を。豪雪の山に出かけて、春の温かい日差しの中で、雪の山を楽しみます。どこにでも雪という水があるから、水を担がなくて良く遠くに行ける。これも自然の恵みです。

雪の山に登山道はありません。読図のスキルがないと、道はないので歩けません。

夏は沢登り。川を遡行します。急な増水に備えて、ロープで逃げ道を作ってから、タープの下で就寝。寝るのは土の上。増水時、閉じ込められないためです。水辺であれば、山火事のリスクはないので、焚火を燃やして暖を取り、焚火で料理することもあります。


 タープ泊が沢では通常です。焚火もできないと、夏でも寒いです。

一番暑い季節には、水と戯れる沢を…。
  沢は沢の技術をちゃんと分かっている人と行かないとゴルジュで流さないとかだと、おぼれ死にさせられてしまいます…

そして、また秋になり、山の樹木から葉が落ちると…山の中の見通しが良くなる。黄金色の秋の森は、お月様がキレイです。明るい月夜にナイトハイク。そして、また冬の白銀の季節が来て…。

あとはエンドレスリピートです。

「なんて愚かだったんだろう…」

何シーズンか、こうした四季のある生活を繰り返していると、山の声が聞こえてくる…。

例えば、太陽光発電のこと…。

都会のOLだったころは、当然のように推進派でした。代替エネルギーだったら、どんなものでも善だと思っていたのです。ところが、皆伐し、山を切り開いて太陽光パネルが設置されている様子を見かけるようになると、本末転倒していると分かるようになりました。

都会に暮らしているころは、まさか森を切り開いて太陽光パネルを置くというような、愚かなことが起こるとは思ってもみなかったのです。当然、そういうことは避けられて、空いた土地に設置されるものだ、政府に任せておけばそうなるんだ、と、なんとなく思っていたのですね。

それだけ、世間知らずだったということですね。空いた土地って、どこ?ここは日本なのだから、空いた土地は、99%山林です。頼まなくても、岩の上にさえ木が生えるのが日本の植生なのです。

例えば、燃料のこと...。

山小屋勤務も経験しました。昨今の山小屋は、薪を下界から買わないといけない。というのも、周辺の森が天然記念物指定されていて、薪用に不要な木を伐るどころか、拾うことすら、許されていないためです。そうなると石油を担ぎ上げるも、薪を担ぎ上げるも、同じことになってしまいます。

そのような状況なので、石油をヘリで上げるのではなく、薪を歩荷で上げる山小屋は、環境問題に体当たりで頑張っている山小屋です。昔の木こり小屋があって、炭焼きの跡があるような山でも、国立公園等に指定されてしまえば、山小屋が生活のために、薪を自由に伐って良いというところは、めったになくなりました。

私も良く、登山道の入り口に薪を積んであるのを見かけて、2、3本ザックに結わえて担いで上がったものでした。

同じ山小屋経営をしていても、やっていることの本質は全く違うということですね。

「山の文化の喪失が悲しい…」

山の師匠は、山の文化や民俗も大事にするという方針の人でした。

鹿島槍に登るなら、カクネ里のことを知りなさい。『黒部の山賊』を読んでから、黒部ダムをめぐる立山三山を登りなさい。そうすれば、感動もひとしおだよ…。

私のバイブルは『北八つ彷徨』でしたし、ヒーローは『八ヶ岳研究』を書いた独評登高会の山口輝久さんでした、長いこと。

ヒロケンは知っていますが、崇めたことはありません。私はブイブイ言わせる山をやったことはありません。当然です。

20代で水泳を始めた人が、今からオリンピック選手目指しますか?目指しませんね? 

そんな当然のことが、山やクライミングになると分からなくなる。大人になって山を始めた人は、すべからく、全員が、”一般市民クライマー”です。

プロと言えるクライマーは、5000~6000mの標高へマルチを持っていく時代です。それ以外だったら、高難度マルチです。高難度というのは5.12は含まれませんよ、いまや12は中級者です。若い人などアップが12だそうです。つまり、それ以外の人は、ぜんぶ一般市民クライマーですよ。

目くそが鼻くそを笑ってどうするんでしょう? そんなことにエネルギーを費やさず、とっとと身に着けるべきスキルは身に着けてしまい、日本の大自然を楽しみましょう。


「鹿の被害、深刻です」

あるとき、いつものようにルンルン気分で、尾根をひとつ降りていたら、銃を構えた猟師さんに、ばったり。猟師さん、がっかり。こちらは、びっくり。

作物の取れない冬の時期は狩猟期です。この辺の農家はみんな、猟銃免許を持っているの
が普通だそうです。鹿と猿が主な狩猟の対象。田畑を荒らす有害鳥獣の駆除ですが、直接の駆除というより、全体的な狩猟圧を高める活動です。もちろん、お肉にして食べることもあります。上手な猟師さんが処理した鹿の肉は絶品です。

鹿に食い荒らされた森…残っているのは、毒草のコバイケイソウばかり。美しい山野草は、
おいしいためにすっかり食べられてしまいます。

三つ峠という山では、ここと北海道の礼文島でしか見られない、アツモリソウの保護のた
め、鹿柵を設置するボランティア活動をしていましたが、設置したとたんに植生が回復。

三つ峠は、伝統的なロッククライミングの入門の山でもあります。岩の山は花の山なのです。

「天に唾しない生活をしたい」

地下鉄と会社の始業終業のリズムから一転、山のリズムで暮しはじめ、山で過ごす日々が増え…そうして、私は、消費を中心とした生活から、”自然に寄り添った暮らし”の世界に入って行ったのでした。

山小屋では雨が降ったらラッキー!です。雨水が溜まって、お風呂に入れる。ウキウキ、さっそく薪を割って、五右衛門風呂を沸かしましょう。

冬季の避難小屋に行けば、ダルマストーブが置いてあります。外はマイナス17度。火をつける技術があるか?どうかは、今夜の快適さの大きな分かれ目。ここは頑張りどき!です。

雨が降ったら、今夜は洞窟でテントを張りましょう。洞窟は雨風を避けてくれ、快適です。

そうやって、”山のスキル”を培うことは、そのまま、”生きのびる力”です。文字通りです。

ムーブはそのような中の、ほんの一部分にしかすぎません。

自分に必要なところへ行く

そして、上手に登れるようになった結果、自分に適した課題をもとめ、韓国のアイスクライミングへ。

6か月先まで予約が取れない、ラオスの石灰岩クライミングへ。

ラオスで出会ったカナダ人クライミングパートナーと台湾のシークリフへ。

アイスクライミングでは、当時、私は持久力の世界におり、長いルートを登ることが課題でした。

日本国内には、外岩で5.9がたくさんある岩場はなく、ラオスの岩場がそれに最適です。みなさんも、ぜひ。滞在費用も安くお勧めです。

しかも、日本のように怖くないので、行ったら、あっという間に上達しました。ビレイヤーは見繕えるので、単独で行っても大丈夫です。

帰ってきて登った城ケ崎で、みんなびっくり。それだけでなく、石灰岩を登ったのに、アイスの6級が上達してしまいました。

台湾は、湯川の代わりです。初級クラックの経験値を貯める、登り貯めをするためにいきました。ちょうど、相方のデイビッドと私は二人とも、初級クラックをしたかったので、意気投合。

初級のクラックを登りだめしたい、そのために最適な岩場はどこか?となると、九州からなら、台湾がおススメです。プロテクションはセットし放題です。湯川はプロテクションディフィクルトで、初心者向きでないです。

実は、BMCトラッドフェスは、お誘いいただきましたが、ピンとこなかったので行きませんでした。

今だと、インディアンクリークは行ってもいいかもしれない岩場ですが、ヨセミテは行く気になれないです。普通にハイキングでは、むかーしに夫と一緒に行ったので、場所の目新しさはないです。(私はカリフォルニアには、2年の生活経験があります)

海外も、けっこう疲れるものです。交通費分の元が取れるか?という、そこが大事です。先進国は、滞在費が高すぎるので、友達がいるところ以外は、あまり行きたい気持ちになれないです。

自分の課題を克服する旅路の中で、それぞれの土地で、それぞれのクライマー達が、その土地なりの”自然と共生した暮らし”を広げ、文明との折り合いをつけている姿を目にすることができました。

韓国ではクライミング基地だった山小屋は、環境省の方針で廃止となり、クライマーは下界から、1時間半ほど歩いてあがります。なんのことはない、本来の姿に戻っただけなのです。岩場まで5分で寝食を山小屋が丸ごとお抱え、っていうほうが、特例だったのです。

ラオスでは、牛とヤギが草を食む中、電波もWifiもない場所でのクライミングです。これで文句をいうクライマーは一人もいません。みなが幸せそうでした。お食事はそんなにおいしくないですが、そんなことはそう問題にならない感じです。当然ですが、シャワーはちょろちょろです。でも、そんなことで文句を言う、なよっちいやつはいないのが、クライミング界のいいところですしね。

台湾では、クライマー達は海岸のゴミをクライミング帰りに拾って帰っています。米国のクライミングガイドの資格を持った人が、岩場と支点の強度をエクセルで管理していました。飲んだビールとコーヒーはボルト基金になるそうでした。

都会の便利を捨てて、自然界本来の姿に戻る… つまり、自然界を人間の都合に合わせるのではなく、人間の側が自然界に応じる、のです。

 応じれる力の大小が山やの実力

というわけなんでした。自然界に応じれる力が大きい人ほど、優れた山や、優れたクライマーというわけです。

なるほどなぁ、そういう話だったんだ…。と目からウロコです。人類共通の過ちがここに見出されます。野生動物はホントにエライ!と思います。

「人間、水と火があれば、大体のことはオッケーなんだなぁ」

地下鉄も、インテリジェントオフィスビルも、タワーマンションも、ハイテクスポーツカーも、ハイテクトイレも、デザイナーズブランドのスーツも、実は人間の幸福には、そんなに必要なものじゃなかったんですね。

本当の自信というのは、そういうものに守られないでも、自分の幸福は大丈夫なんだ、と本人が分かっていく…そういうプロセスから、湧いてくるものらしいです。

本当に必要なものは、ほんの些細なことだった。

清浄な水、清浄な空気、温かい住居、雨をしのげる屋根、安全に使える火、そして、楽しい仲間。

今の目標は、人間の生活が自然を破壊するのではなく、自然界の営みの一部となる暮らし。

クライミングは、例えばゴルフ場開発と比べて、自然界の破壊度合いは、最小です。ボルトを打てば、半永久的に岩という自然の造形を傷つけてしまいますが、カムなら、そんなことはありません。

生涯取り組み続けることもでき、ちゃんとクライミングのノウハウを理解してしまえば、それ自体が国際言語。英会話力なくても、バディは組めます。

自分の出した生ごみを大地に帰すことができる生活ができて幸せ。

自分の作ったお米で一膳食べれる生活が幸せ。

自分の作った藁でしめ縄が作れる生活が幸せです。



2021/12/20

その考えで幸せになれますか?

■縁と因

今日の仏教説話から。 因と縁でいえば、同じクライミングしたい!という気持ち(=因)を持った人がいたとしても、

山梨では良縁であると思う。一流のクライマーたち…室井登喜男さん、佐藤祐介さん、などがが普通にその辺に市民として存在しているので、そういう人たちが、グレードを鼻にかけていない様子を見れば、10aが登れただけでかっこつけてしまう…というような陳腐なことは起きない。

他にも、天野和明さん、伊藤仰二さん、沢なら後藤真一さん、成瀬陽一さん、ちょっと足を延ばせば、平山ユージさんにも会いに行ける。

クライミング講習会は、菊池敏之さんとか、もう亡くなってしまったが杉野保さんのが行列であり、故・吉田和正さんもしていた。中根穂高さんも講習会をしている。

ピラニアにも別にビレイ講習会とかはなかった。だから環境として優れているのは、トップクライマーがいるということだけで、教えてもらえるか?というとそんなことはない。

■ 教育機関はわざわざ出かけていくものですよ

車で3時間の場所の大町に長野県山岳総合センターがあり、一年間のリーダー講習を受けることができる。

私の班の講師は、村上周平さんで、八ヶ岳の遭対協の副隊長なので、リアルタイムで遭難情報が回ってくる。もう一人の講師だった高橋さんは、小川山の”春の戻り雪”の開拓者だった。小川山で登っていたら、どちらの方にも時々会うので、”どこそこで登っています”と一声かけておけば、保険付き、という感じだ。

山梨でも一つの会だけで、ちゃんとしたクライマーになるための初期教育が満足にできることはなく、基本的に、会ごとに分業で、オール山梨、でないと、山や教育を完了できないし、本人の勉強熱心さが、会から教わることを上回る

必要なのは、

 ・スポーツクライミングを教えてくれる会

 ・合宿を教えてくれる会

 ・本チャンを教えてくれる師匠

 ・沢を教えてくれる会

 ・危急時の講習会 (普段一緒に行く仲間と共有しないと意味がない)

 ・フリーを一緒に行ってくれる相方

 ・クラックを一緒に行ってくれる相方

で、

 ・アイスを一緒に行ってくれる相方

は、オプション。アイスクライミングは、特殊なクライミングです。が、アイスの進化系の

 ・ドライツーリングの仲間

は、海外クライミングの常連であり、海外クライミングが初心者に有効なクライミングであるという情報はドラツー仲間から得ました。ドラツーからの情報がなければ、永遠に、ヨセミテに行って上がり、ということになっていたかもしれません。

ここには、ハイキングに行く仲間は含まれていませんが、ハイキングは個人で普通に済ませてしまえるからです。冬の小屋泊まりハイキング的雪山くらいまでは、個人で済ませてから、でないと、足も出来ていないし、お天気を見るというような基本さえも身についていないので、山岳会に行っても、お荷物になるだけです。

ハイキングの山…つまり、ロープが出ない山をやる人の最高峰は北鎌尾根です。東京方面でも、北鎌尾根を登って上がり…という登山者は多いそうです。北鎌尾根で落ちるような人はアルパインに適性はないかもしれませんが…北鎌尾根は、登る人のクライミング力、つまりムーブをこなす力によってはロープを出さないと危険レベルの山です。ので、太っている人などは、とても不利です。登山では体が大きいこと、つまり体重が重いことは、歩荷ができるということで大きな不利ではないですが、クライミング要素が出る山では、体重が重い事は、かなりの不利です。体格であきらめてしまってここで辞める人もいます。

古い方法論では、尾根→沢→雪→岩→氷と進むので、次は沢になりますが、沢登りは、とても危険が多い登山形態なので、仲間が必要です。

しかし、これはメンバーの頭数が難しい。沢は、谷なので携帯電波が入らないことが多く、事故になった場合、外部との連絡を取るのが難しいことが多いです。

九州でも、山岳雑誌『のぼろ』の編集長が、洗谷で墜死しています。福岡の近郊の沢です。もともと、登山道だったくらいの沢なので、大したレベルがあるとは聞く限りでは思えないですが、死者がでるということですから、登山者のレベルが下がったのか、沢のレベルが九州では高いのか分かりませんが、単独は、辞めたほうが無難です。

大体、4-5人が一番いいです。2名だと負傷者についておく人、と連絡に走る人、と分けられません。斜バリなど、レスキューをしっかり学ぶのが沢です。尾根のリスクは風ですが、谷のリスクは、もっと深刻で複雑です。

沢登り時代に学ぶのは、登攀のオーダー(順番)とか、沢で一泊するときは、増水時に逃げるためにロープを張っておくとか、焚火とか、あるいは、ゴボウとか、後続の簡単な確保、あるいは弱い人をどう守るか?です。

一般のフリークライマーはこの辺は知らないので、お助け紐、とか出し方、知りません。ハーケンの打ち方も沢で学びます。

雪は九州は関係ないので割愛します。ピッケルとか滑落停止とか、雪訓の山です。

岩は、2段階構成です。アルパインの人は岩トレが必要で、普段クライミングをしない人でも、山岳会にいれば、一年に一回くらいは、岩トレしているハズです。岩トレで、登攀が上手になることは基本ないですが、知ってると知らないでは雲泥の差です。

特に大事なのは、懸垂下降で、フリークライマーのようにちゃんとした確保器などの道具を持っていないでも、カラビナ一枚とか、肩がらみ、などでも、なんとか降りれたり、3分の1システムを学んだり、あるいは、介助懸垂を学んだりします。

その段階が終わったら、エイドは大体のことが出来ているハズなので、普通にフリークライミングにステップアップしたい人はそこへ、そうではない人はハイキングの山を極めます。極め方は個人によって、いろいろで、私はシブ好みなので、南アルプス深南部へ行きました。鎌ナギとかです。

フリークライミングになると、複雑性が増します。ビレイの習得がまずは課題になるので、スポーツクライミングの会に属して、週2回半年は最低人工壁に通い、ビレイを習得します。この段階で間違った会に入ると、壁から離れたビレイなどをそれで良いのだと勘違いしてしまいます。体重差など、学ぶことが多く、事故が一番多いのがこの時代です。ハイリスクグループということです。

スポーツクライミングのクライミンググレードで、アルパインのルートが登れると勘違いしてしまうことも良く起きます。岩トレの段階で岩場のグレーディングについて理解を深める機会がないとか、自分で山行計画を立てる習慣がなく連れていかれて終わり、だとそうなります。

ビレイが習得出来たら、外の岩場でも支点がしっかりしていて、ほぼ落ちないようなのに通います。ロープ慣れがないと、何ピッチも登る場合は、ロープに使われてしまって時間がかかるので、主に登攀力よりも外岩ではロープの処理の練習会です。

登攀力を上げるのは、ボルジムで個人練習で、せっかく二人そろったのにリードフォローをしないのは、もったいないからです。機械喪失です。段々早くなり、最初は一日かけて5ピッチしか稼げなかったのに、段々と12ピッチくらいは時間内に終われるスムーズさを身に着けられるようになります。超ベテランは20ピッチくらいだそうです。マッターホルン北壁とか50ピッチもあるそうで、そんな山でロープワークに時間がかかっていたら凍死してしまいますね。ヘルンリ稜は下山路だそうです。

余談ですが、ガイド登山でヘルンリ稜に行くという話は誰もしてません。ガイド登山というのは、登山者ではなく、登山客がすることなので、最初から思考の中にないわけです。

さて、そういうロープでピッチ数を稼ぐ特訓を経ていないトップとマルチに行くと、ボルトルートでも痛い目に遭います。登攀力ではなく、ピッチを稼ぐことができない…という下手さが核心で、時間がかかって、下手したら夜になってしまいます。懸垂でロープが足りないとか、ブッシュに向かって懸垂してしまうとかも、不慣れなクライマーという意味です。

次はクラックの相方を見つけて、クラック修行です。なんせ現代の支点はハーケンは稀で、カム時代です。カム以外にナッツなどのパッシブのスキルも必要なので、そういうのを知っている人を見つけたら、大ラッキーです。

この段階でも、登攀力を上げるというのは、ボルジムで個人練習でいいです。一緒にいる時間があるときは、外でしか登れないクラックとか、マルチとか、インドアではできないことをします。とくにクラックはジムではぜんぜん練習できないです。

この段階の人がリードを強要されることはほとんどないハズです。いたら、その先輩はおかしい。外岩に行っている目的を共有していないかもしれません。もちろん、登っても落ちない登攀スキルがあれば、リードの方が楽しいので、リードを勧められます。私も、三つ峠は行って2回目からリードしています。この時は、2度目でリードって大丈夫なのかな?と思ったので、信頼できる先輩に「ほかの人を見ていると二度目でリードしている人はいないですが、私はやっていいのでしょうか?」と聞きました。よほど登攀が確実でないと新人さんの段階ではリードを勧めてくる人はいないと思います。

”アレヤコレヤ…”と表現される色々な知識が溜まるのに、しばらくかかります。

毎日クライミングに行けば違うと思いますが、普通の人は土日毎週行く程度が限界だとすると、3-5年程度はかかると思います。昔の大学山岳部は年間130日、やっていたそうで、そういう場合は、1年でいいようです。ロープはなぜダイナミックなのか?とか、墜落係数とか、ビレイヤーのセルフとか、登山の歴史とか、フリークライミングの歴史とか、色々机上でも学ぶことはあります。結び替えができないとか、この時点でないハズです。

その後になって、やっとフリークライミングです。この段階で、ロープクライミングか、ボルダリングか、指向が分かれると思いますが… 

フリークライミングで限界グレードを上げていくクライミングは、ロープに確保されるので、ビレイヤーとの信頼関係を築きながら登っていくクライミングです。

ボルダリングは、石ころを登るので、ビレイヤーは要りませんが、大体の人はグループで仲間と登っています。マットがたくさん必要です。

ロープのクライミングは、持久力。ボルダリングは突破力。ロープのクライミングで長いところを登っても、ロープの長さいっぱいが限界です。5.12でも、全部が5.12というわけでなく、スタートは10ぐらいで、まんなかあたりは11くらい、核心部が12で、トータルは12とか、ムーブで要求される能力自体は11くらいだけど、長いから12とか、そういうグレーディングなので、ある一部の核心ムーブができない!となれば、ボルダーでやりたくなるかもしれません。

ボルダーで突破力をつけてから、その課題に戻れば、その核心部は越えられるはずだろうからです。

私も、たいていは特定のムーブが苦手…私の場合は、アンダーとか、マントルとか苦手です。ので、そういうのを練習しに行く先がボルジムでしたが、外のボルダーはそのような人には便利というか、外でやれば、ホールドを見る目も養えます。

ムーブの洗練を求める人は、ボルダラーになってしまうと言われています。

またロープのクライミングでも、傾斜がない、つまり、スラブやフェイスと、オーバーハングの石灰岩だと必要な能力が違うので、集まっている人たちも違います。

上半身のパワーがより必要なオーバーハングなどでは、当然ながら、男性や若い人が多い傾向があります。

どちらにしても、体重が軽いほうがクライミングでは有利で、極端に太っている人を見ることはまずありませんが、それだけに、太っていて登れると尊敬されます。スラブは体重が重いほうが安定するそうです。

どちらかというとリードは知性が、ボルダーは身体能力が必要になりそうです。

書き損ねたのは合宿ですが、合宿の経験がないと、集団生活でのテント泊やパーティ行動での歩調の合わせ方とかわからないかもしれません。自分と同じを相手に期待してしまうということです。

女性と山に行ったことがない男性登山者は、朝一からハイペースすぎ、休憩が長すぎる、というのが、大体の女性登山者の悩みです。女性はぜんぜんペース早くないですが、休憩がほとんどいらないです。休憩が要らないペースで登っているというほうが正しいかも…?

一方、男性は瞬間的に力を出し切ることが喜びなようで、ボルダリングなどはその最たるものです…でも出し切ってしまうので、出し切った後は、しばらく使い物にならないです。

このように男性と女性では、指向性がまったく反対ベクトルという傾向がありますが、それはおおよそで、個人により、女性でも瞬発力タイプ、男性でも持久力タイプの人はいます。

ボルジムでの延々と長物をやって楽しそうな男性とか、女性でもダッシュで登ってダッシュで降りてしばらく伸びている人、とか…。

クラックでも、フィンガーが得意なのは女性ですし、ワイドは体幹です。ワイドはアルパイン人がいうワイドとオフィズスのワイドでは意味が違います。アルパインのワイドは、ステミング登るだけで、核心はプロテクションです。登攀は易しいですが危険です。オフィズスは、色々と細かいテクがいっぱいあって難しいです。こちらは大型カムは、販売されています。ビックブローというプロテクションもあります。

全体で見れば、その人の個性に合った快適なスタイルを見出せばよく、私は、外ボルダーにはそんなに喜びがなかったというか、これなら、歩いているだけだとしても山の方がいいな、と思いました。

一番好きなのは、やはりアイスです。アイスはダンスと同じでリズムがあるからです。

あとは、ドライツーリングがありますが、冬季のオーバーハングクライミング、だと思えばよく、アイスは難しくするのは限界がありますが、ドラツーであれば、人工壁もあるので、どれだけでも難しさを追求できます。

その意味で、真のフリークライミングレベルの困難度が求められるのは、ドラツーに行ってからで、外アイスは、あるレベルを超えると、危険度の争いになってしまうので、楽しみがない、と感じる人もいると思います。

私もそうで、5級はリードでき6級もトップロープなら登れると分かってしまうと、脆さという方向性に伸びようとするのは、生命保存の法則に反するので、テクニックを磨くには、ドラツーに進むのが得策、となりました。

アイスは九州では関係ないと思いますが、ドラツーは外アイス環境は不要なので、九州でもアックスを使った高難度フリークライミングとしてドラツーが広まれば、海外へ登攀へ行く扉も開くのではないかと思います。

なにしろ、海外のクライミング人口は当然ながら、日本より多く、ということは、初心者向けルートや教育体制も日本より整っているということだからです。

■ 良縁

良縁を活かしたことが、私のクライミングでの成功の秘訣です。

私の登攀力を見れば分かるように、楽しくクライミングするのに、登攀力は後付けでいいです。

クライマーならほっておいても勝手にグレードは上がっていくものです。

本来なら、10代が登れる人は誰でも、私のように韓国にマルチに行ったり、台湾にクラックに行ったり、ラオスに一人で行ってパートナーを見繕って登ったりできるのが普通なのです。

誰でもやれてしかるべきことがそうなっていないのは、縁、が揃っていないからです。因は、本人が勉強するかどうか?なので仕方がありませんが、縁は本人の事情には寄りません。

日本全国に良縁が張り巡らされ、趣味程度のクライミングで死んでしまう人が減るように願っています。

            カムが使えれば、台湾では色々と登れます
      ラオスで一番多いのは、5Cとかの課題です

  エゴが大きくなる=間違ったクライミングをしている、という意味です。


2021/12/19

九州クライミングの総括…部分点を考える

 今日の仏教説話は、自因自果、だった。


例えば、”自己責任”。 クライミング界で、しょっちゅう言われる言葉だが、ボルトルートで自己責任って? ボルトを打った人が自分に問うべき言葉なのかもしれません。

■ 因と縁を見ると…現地調査隊、みたいなことになった(汗)

私と先輩の荒木さんがたまたま九州で登ることになったのは、九州クライミングにとっては、良い出来事だったのかもです。

外から来た人が、「えっ?!」とか言わなければ、”終了点直がけが、ローカルルール”と信じている人の、”間違った信念”が、覆されることはなかったかもですから…。

私自身も最初のころは、以前師匠と登っていたように、誰か信頼できる山岳会の人たちと登りたい!と切に願っていたので、何軒も会の扉をたたいていました… 

安全面以外でも、最低でも一人は、パートナーと一緒に登る必要があるからです。

ところが、一年後からは、前の会の先輩と登れたため、いわゆる”一般クライマー”、”ビジター”という立場で登れました。さしづめ、現地調査隊、です。

その意味で言えば、調査終了感…といいますか、そんな感じです。

とりあえず、現代九州クライミングで、どんなことが起きているのか?は分かった。

ある程度登れるようになり、海外にも登りに行き、という状態でないと、取り込まれてしまって、”この終了点は変なのでは?”とか、分からなあったかもしれません。

パートナーが前の会の先輩で、大体どこの岩場でも登れる程度の登攀力がある相手でよかったです。私と同じ程度の人だと、二人とも危険になってしまいますし…。師匠とだと、最初から、これは…と登りに行かない判断になったかもです。

疑問を持たず、現状をそのまま受け入れてしまうのが新人の立場…。結局、一番損をしているのは、新人さん、ですね。

普通のクライマーは、ボルトとハーケンがあれば、難しくても、ボルトを選びますが、その選択肢が九州ではあんまり差がないです。つまり、40年前のカットアンカーとハーケンでは、支点の信頼度は、どっちもどっち…です。今まで、登りに来たクライマーも、変だな、とは思っても、旅行で来ていたら、今回は大丈夫だったから、まぁいいか…と思ってしまうと思います。

外から来たクライマーであること、× 比較的長期にボルトの品質が欲しい立場、でないと、情報発信することもなく、したがって、バレた!ヤバい!と設置者が思うこともなく、… その結果としては、ボルトの更新は進展しない…となります。

ボルト更新が絶対的に必要な善、とすれば、それを前進させることができたのは、私たちの立場だったからかもしれません。

結果としては、日向神、八面、龍頭泉のリボルトが進んで、めでたいです。

ほんとに良かったです。

ある意味、一番ひどい目に遭っているのは、登ってしまってから、あのボルトは全然信用ならないボルトなんだよ、と分かってしまった人なので、二人ともが危険な目に遭っているということですが…、深い納得感を持って、ボルダーに転向かな(笑)。

■ 日向神、八面、龍頭泉

良かったことは、日向神でも、八面でも、竜頭泉でも、リボルトが進んだことです。

もしかしたら、心ある人が言っても言っても、誰も対策を取ろうとせず、宙づり状態だったのかもしれません。

比叡ですが、初めて行ったときは、庵に泊りましたが、三澤さんから、”50mで3級1本、4級2本、5級3本が基準”と聞きました。(ボルト本数のことです)。ただ、「今はそういう時代ではないと思っている」そうでした。要するに取り巻きの人が、現代的に打ち換えることに反対しているのかもしれません。

とは言っても、インスボンですら、ボルトは適正配置が進行しています。一回インスボンに行けば、納得するのかもですね。

■ JFA頼みは疑問

JFAは、全国組織なので、その弱点があります。例えば、全国でクライマー数を見ると、東京周辺のクライマー数のほうが、どう考えても九州周辺のクライマー数より上です。

となると、集められたボルト基金は、優先的に関東から配分されるということになり、その順番を待っていると、九州でのリボルトは、最も後回しになってしまう。

その結果が、私たちがビックリ仰天した、手作り終了点、という現実に現れているのかもしれません。

もし、自己責任論を立場として取るならば、

 自分たちが登る岩場のボルト代は自分たちが出す

というのがまっとうな路線なので、岩場ごとに、ボルト用の募金集め団体、を持つのが適切なことだと思います。

そうすれば、JFAにお金を払っているのに、ぜんぜんリボルトが進まない、という問題は、回避できます。

■ 自前リボルト職人

このときに問題になるのは、リボルト知識の欠如です。

いくら資材が良くても、その資材の良さを台無しにしてしまうボルト配置しかできない知識しかなかったら…、せっかく集めたお金を無駄にしてしまうことになります。


いくらローカルがお金を出しても、こんなボルトを採用したり…

正しく製品を購入しても、こんな施工をしたり… 

してしまっては、お金の無駄遣いになってしまうという意味です。

JFAは、日本の開拓者に正確で、これだけは最低限知らないといけない開拓知識を普及する組織になったらいいのではないでしょうか?

例えば、九州では、地権者に許可を取らないで、クラックを開拓してしまった人もいます。

そのような常識では考えられない開拓者の行為も、今の状態では防げないです。

また、ボルト連打問題もそうです。昔のボルトラダーを、新しいボルトに打ち換えるだけで1m置きにボルトが配置されているような状態は、何もしない方がマシなくらいかもしれません。

これも、分かっていないことから来るミスなので、そのような開拓が広がらない工夫がいると思われます。

■ ボルダー

外ボルダーは、ボルトがないクライミングなので、ボルト更新のための寄付金集め、という性格が色濃いJFAへの加入は、一般のボルダラーには、意義が見いだせない、と言われると、仕方ないかな…という気もします。

年間3000円払って読むほどの内容が、フリーファンにあるか?というと…ソックス特集だの、チョーク特集だの…では、お金返して、と言いたくなるかもしれません。

安全ブックはホントに良いものなのですが、無料配布だから、入会しなくてもいいですし。

というので、結局、雨後の筍のように増えている、

 1)クライマーがやっていないボルジム上がりの初心者ボルダラーをどう守っていくか?
 
 2)初心者ボルダラーの無知から、岩場をどう守っていくか?

については、岩場の側が考えないと、どうしようもない気がします。JFA頼みというのは、ここでも、なんだかなぁ…な選択肢です。

やはり、ローカルのクライマーが、町を守ること、初心者クライマーの事故を未然に防ぐこと、を目標として、組織的に通達を出していく、というのが良いかもしれません。

昨今、SNSの発達で、BtoC、つまり、団体から個人へ個別に情報発信する垣根は、かぎりなく下がっています。その網目から漏れる人はいるかもしれませんが、岩場(現場)で、参加を求めれば、少なくとも岩場に来た人は、全部補足できることになります。

そもそも、岩場に来るクライマーの事故が問題なのであって、来ない人はどうでもいいわけですので、もっともシンプルに問題解決できると思います。

たとえば、岩場のライングループ、FBグループの2次元バーコードを岩場に貼っておくとか、公民館、駐車場、道の駅のトイレなどクライマーが必ず通るところに貼っておく、ということです。

そうすれば、大雨で林道が閉鎖になって通れないとか、駐車場の位置が変更になったとか、そういう情報も、速やかに伝達することができます。

■ 事故情報をまとめる

事故を減らす、ということを考えると、事故情報の集積と解析が欠かせません。 

アメリカでは、アメリカアルパイン協会…アメリカの日山協みたいなもの…が、毎年、事故情報をまとめた冊子を出しています。

そこには、その年に起きた事故と、その分析が載っています。またアメリカのクライミング雑誌でも事故の特集では、統計情報、トップロープでの事故と、リードの事故ではどちらが多いのか、どういう内容なのか?どうすれば防げるのか?などの情報が豊富です。

ロクスノでは見かけたことがないです。事故という現実から日本国全体が目を背けているかもしれません。

これでは、ぜんぜん”傾向と対策”が積みあがらず、事故が減るわけがありません。

例えば、ボルダリングの事故は、愛好者人口の面から言っても、リードクライミングの事故よりも、総数が多いです。

ほとんどがランディングの失敗ではないかと思いますが、初心者をボルダリングに導入するのに、ランディングを強調していないです。ボルダリングのメッカである九州でこれでは、お粗末です。

ちなみに参考になる情報としては、中根穂高さんの外ボルダー講習では、いきなり登るとかなく、登った後の、降りる道…クライムダウンができる場所を最初に確認します。そもそも、登れても降りれないような岩って多いです。登るより、降りる方が難しいですし。

クライムダウンだけでなく、ランディングも、着地は練習が必要です。あとはマントルムーブは、初心者のほぼほぼ全員が苦手とするところです。

なにしろ、インドアジムでは、マントルムーブが出てくることは稀で、外ボルダーになって初めてやることになります。その場合、マントルムーブだけを練習する時間が要りますし、練習用に採用する岩も、失敗しても死なない程度の高さ…1mとか…を選んで、マントルが確実になっている必要があります。

故・吉田和正さんの講習では、最初にマントルだけをする岩がありました。そういうのは、岩場に一個あればいいだけなので、公開された岩場では、マントル練習用、とか、で定番にしておけばいいのではないでしょうか。

そういう風にしないと、初心者には、

ランディングがボルダリングのセーフクライミングについては、ポイントだ、

ということが、明確なメッセージとして伝わらないと思います。

スタイルも知識がないと、おざなりになります。大体においてボルダーは、登れさえすれば何でもいい…というスタイルで、オンサイトという言葉はありえない感じです…みんなビデオを見ています…それじゃ、良くてもフラッシュにしかならないです。

必要とあれば、スポット、あるいは、ロープを出しても良いのです。大事なことは、

 無謀と挑戦が、きちんと峻別できる能力を身に着けること

です。


スーパー赤蜘蛛をフリーソロ出来るような人ですら、このようなボルダーではロープを出しています。

リスクの総量は、事故が起こる頻度 × 事故になった場合の深刻度、で決まります。





2021/12/17

リスク中心思考 九州クライミングの思考の続き

■ 安全ブックを読んでも、クライミングのリスク管理能力は身につかない

私は、『安全ブック』とは、クライミングを初めてすぐに出会ったし、自分が行く身近な岩場での事故がたくさん掲載されているので、クライミングをスタートして初期に、目を皿のようにして読んだのですが…、

例え、『安全ブック』を読んだとしても、

公開されている岩場でノーマットで登るのは、非常識だとは、どこにも書いていない…

という指摘を受けて、確かにそうだよなぁ…と思っています。

基本的に九州の岩場での事故情報は全く載っていない。どこかよそ事のような内容になっている。

よそ事感があれば、ジブンゴトと感じるのは難しいでしょう…

では、一体どういう情報を与えたら、現代の初心者クライマーは、ちゃんとしたクライマーになるための知識が得られるのでしょうか?

■ ボルダリングにおけるリスク中心思考のスタート地点

ボルダリングは9割落ちているクライミング形態です。

つまり、リスク管理としては、

 安全な落ち方をマスターしている

が第一義的に大事です。

ムーブを上げるというのは、それができたあとのこと。

安全に落ちるスキルがないと、練習すら積めません。

そしてボルダリングにおける安全に決定的に必要な道具がマット。クラッシュパッドとも言います。

インドアジムでは、どこで落ちても大丈夫なように、マットが敷き詰められていますが…アウトドアでは、それは当然期待できない。

自分が所有できる数のクラッシュパッドで何とかせざるを得ません。

ということは、

自分が所有できるクラッシュパッドで、最大の安全を確保するというノウハウ=ボルダリングにおけるクライミング技術

ですね。

■ クライミング技術=登攀グレード、ではないですよ

奥村さんも言っていますが、一般の人はクライミング技術というのは、ムーブが上手なことだと勘違いしているのだそうです。

もし登れるだけがクライミング能力なら、それこそ、クモが一番偉い、みたいなことになってしまいます。

これは案外見過ごされている点で、指導者クラスの人でも、高グレードが登れる方がえらいと勘違いしている人もいます。

安全にクライミングに行って、帰って来れる、自己完結したクライミングを出来ること=クライミング技術

です。

■ 何をどこでやるか?でクライミング技術の中身は違う

なので、活動の内容により、クライミング技術の意味する内容は、バラエティがあります。

例えば、登山であれば、誰か助けて!と山小屋に駆け込んだりしたら、自立していない登山者、つまり、登山技術がない、ということになります。

テント泊で宿泊している登山者が、山小屋の談話室に入室するのがNGなのは、このためです。

他には、水や食料といった必需品を持ってこないで、”山小屋にください”、という登山者も自立してない登山者と言われます。山小屋では、買い物はゆとりの範囲で行う募金、です。必需品はもって上がります。

■ ヘリでレスキューされたことは勲章にならない

夏の本チャンに行って、他人が作った支点に足を掛けて落ちてヘリを呼んだら、それは”本チャンクライミングを分かっていない”という意味になります。

なぜなら、本チャンで、残置を信用してはいけないことなど、当然の常識、だからです。なので、ヘリレスキューになっても誰も同情してくれません。

私の先輩も、春山の前穂北尾根でアイゼンを付けたままグリセードして、足を骨折してヘリレスキューになっていましたが(笑)、誰も同情していませんでした…(笑)。

アイゼン付けたままグリセードしてはいけない、ということは、雪山で滑落停止技術を学ぶ初日に、一声目に言われることだからなのです。げんこつが飛んできます。

■ クライミングの自立

クライミングが自己完結できることが、クライミング技術。

一般的なショートのフリークライミングなら、自分のロープと自分のヌンチャクで登って、降りてこれないといけないです。

それができるのに必要な技術は、人工壁で学ぶリードとローワーダウンだけではなく、結び替えと懸垂下降、支点構築、途中敗退の捨てビナ、程度が必要です。それがあるのが、外岩クライマーとして技術がある、という意味の中身です。まちがっても、”カラビナ直がけが九州ルール”という人にクライミング技術がある、と言えることはありません。

誰かにトップロープを上げてもらっていたら、自立したクライミングではありません。

当然ですが、自分が登る課題を選べない、トポを持ってこないというのも、自立したクライマーではありません。

そもそも、岩場に自分の足で来れない、というのも、自立したクライマーではありません。ということは、車で行かないといけない岩場に誰かに載せて行ってもらうのは、半人前です。

マルチのセカンドだったら、登れなくなって、ライジングされないと終了点に行けない、などというのも自立したクライマーではありません。行く前に登り返し技術や多少のエイド技術は身に着けてからいくものです。

https://allnevery.blogspot.com/2017/08/blog-post_13.html

ところが、現実的には、一回目の初心者は仕方ないね、と、自立しようとすると色々と面倒が多いので、多少は、多めにみられています。

問題は、多めにみられているという状況を分からないで、当然のように、要求し始める人を是正できない指導者が多いことです。

なので、多めにみられていることを当然の権利のように要求する人がいる会は、はてな?という感じです。5.12が登れるのに、結び替えを知らない、とか、自分は運転できないで載せてもらっている側なのに、運転者にえらそうに指示するとか、まるでモンスターチャイルド?みたいな感じです。

基本的に、その場所で事故になったとしても、自力で帰って来れる、あるいは、一緒に行った人と帰って来れる、というのが伝統的に最低限のマナーとなっています。

そのために必要な知識を一通り持っている必要があります。つまり、

 岩場での事故を想定したセルフレスキュー

です。それがないと、思い切った行動は普通は取れません。し、取りません。

山梨で登っていた時は、私は体が小さいので、私と登りに行って無茶をする男性クライマーは、常識上、皆無、いませんでした。

レスキューになった場合、相手は私を担げますが、私は相手を担げないからです。私にとっては保険付きだが、相方の男性にとっては私は大した保険にはなりません。もちろん、走って出るくらいのことは当然できますが。また私は日赤救急救命を受けています。しかし、それでも事故になって良い、というのとは違うでしょう。

ですので、チャレンジクライミング、をしたいときはお互いがお互いの保険になるようなパートナーを選びます。

私の中では、ゲレンデは基本的に誰と組んでも行けますが、準本チャンの沢…例えば祝子川は、誘われてもお断りしました… 膝を怪我したのでそもそも行くのは無理でしたが、ゴルジュってエスケープがないです。囂々と流れる水の中で、たとえば転倒したとして、現代の確保術では、流さないといけないということを知らない人もいます…沢ではATCではなく、そのため8環を使いますが…そういう知識のすり合わせを初級の沢でするのが普通ですが、その人はその発想はなくいきなり本番…なのでお断りしました。彼とではなく、別の人とだったら行きました。あとは2名でなく、3名とか別にメンバーがいれば行けます。

まぁ、フリークライミングしている人が、沢に行くような、大きなリスクを取るというのは、自己矛盾なので、考えにくいです。一般にフリーのゲレンデは、基本的には携帯電話が入れば、安全圏と考えられています。

要点は、誰と登るかによって取れるリスクの量は違う、ってことです。

一般に、フリークライマーは、パートナーを組むのですが、一緒に登ろうぜとなった最初に、人工壁で、お互いが持っているセルフレスキューの知識のすり合わせをします。

具体的には

 ビレイ

 リードフォロー

 懸垂

 宙づり登り返し

 ビレイヤーの事故脱出

 ライジング

です。互いにすり合わせて、知らないところやずれたところは、補います。斜バリまで行く必要はないと思いますが…熱心な人はやっています。

これには、

 ザックやストックを使った背負い搬送

 ロープバスケット

 救急救命法

などが入っていませんが、どちらも、ハイキングに行くレベル、登山レベルで、すでに練習しているもの、という暗黙の前提です。

ただ昨今は、ハイキングからステップアップしてクライミングをするようになった経緯の人の方が少数派で、山登りは全くせず、いきなりクライミングジムでクライミングして、その流れでアウトドアクライミングに進む人が多いので、やったほうがいいかもしれません。

その際は、具体的な場所を想定したほうがより実状に添ったシナリオができると思います。

例えば、九州で言えば、

・日向神の愛のエリアで

・グランドフォールが起き、

・クライマーは自力歩行ができない

と想定すると、下の林道までは、背負い搬送をしないと、救急車は入れません。

ので、クライミングを自己完結するスキル、の中には、

 背負い搬送を知っていて出来る

が入っていないといけません。それがそこでクライミングする者の最低限のスキルということになります。

■ ボルトルートクライマーなら、ボルトの見極めスキルはクライミング技術の一つですよ

私がいた山梨では、ボロい支点であることが、そもそも前提の三つ峠、と、フリークライミングの岩場である小川山では、全く違う登攀スタイル、ということが、誰の常識でも明らかでした。登り方自体を変えます。

小川山では、テンション!と叫ぶのはアリですが、三つ峠ではありえません。

なにせ、腐ったハーケンとかが支点で、後は自分でカムをもって上がって支点を取ります。岩の突起とか、チョックストーンになった岩とかに、スリングを掛けて、ランニング支点にする、とか、そういうのが、三つ峠における、”クライミング技術”なのです。

終了点は、一般的には普通に登山道を歩いて帰ります。山にある本チャンで懸垂で帰るというのは、敗退時以外ないです。支点はカムで3点で作ります(2点で作ると厳しく注意を受けます)。

小川山のほうは、フリークライミングの岩場でも、歴史的経緯からアレヤコレヤと細かい注文が色々ある岩場ということなので、その辺に詳しいガイドさんが詳細な、ステップアップに使うべき課題をネットに上げています。

ので、本州の人は、クライミングのステップアップ…クライミング技術というのは、具体的にどういうことなのか?が、分かりやりやすい。ある段階で今何が自分にとっての課題なのか?が比較的把握しやすいと思います。

その辺が九州ではきちんと区別して教えられていないように思います。アルパインとフリーとスポーツクライミングが混同しています。スポーツクライミングのノリをフリークライミングで要求するのは変です。

何kNの耐荷重があるか怪しいボルトで、落ちれ落ちれと言われて謎でした。やっぱり落ちるのはNGのカットアンカーでした。

もし、ボルトが崩壊して、落ちるクライミングを周囲がはやし立てたために、死者が出たらどうするのでしょうか?責任を取れるのでしょうか?

小川山はフリークライミングの岩場としては、100%落ちれるわけではないので、一般的に初心者は、落ちても大丈夫な岩場としては、城山、などが、ケミカルにリボルトされた岩場、初心者のリード向きの岩場として知名です。 

小川山は日向神と同じで落ちてはいけない岩場ですが、違うのは、そう認識しているかどうか?かもしれません。うちはボルトがヤバいとか、ランナウトしていて初心者には登らせられないと、岩場として自覚がある、あるいは課題として自覚があるかないか?が大きな違いなのかもしれません。

小川山は初心者向けではないという認識は、大体のクライマーが持っていた認識のように思います。その証拠に初心者クライマーは、目を皿のようにして、歩いてトップロープがかけれる課題を探します。

なにせ、先輩に連れて行ってもらって当然、というのは、基本的に ”ない” のです。

連れて行ってくれる人がいたら、かなり奇特な人として感謝されるものです。そこがだいぶ違います。

大体の人が、フリークライミングにデビューする前に、インドアジムでボルダリングをして、その後に人工壁でスポーツクライミングを経験して、ビレイを確実にしてから、外岩に来ると思いますが… そのコースの場合、

 外ではインドアのように安易に落ちてはいけない

というのが、実際のところなぜなのか、初心者は分からなかったりします。私もそうで、初期のころは、私は背が低いので、大体、ホールドはデットで取っていました。普通の人にとって何にもしなくても手が届くところが、大体デッドしないと取れないからです。

そんな登りをアウトドアでできるか?当然ですが、ダメですね…。外岩リードは基本的にスタティック、が定石です。それがすぐに分かったので、ボルジムでの登りも変えました。

しかし、そこのところが分からない段階の人用に、城山みたいな場所が用意されています。

先輩後輩のシステムで登っている人には、自動的に小川山の前に、城山が上がってきて、その経験から、なんとなく分かるようになっています。

城山はケミカルボルトの岩場です。小川山では、基本的にはボルトルートですが、えらい1ピン目が遠いとか、ジョコンダなどハーケン混じりです。え?ここアルパインの岩場?みたいな感じですが、まま、気やすく落ちるなよ、という警告を含めて、そういうものが残されています。

先輩曰く、ハーケンはオブジェ。もちろん信頼はしないですが、意外にしっかりしている場合もあります。

小川山におけるリングボルトも同じで、起点に打たれた課題もあり、大体がビレイ位置が不安定で、ビレイヤーも転がり落ちそうな課題などです。

そうしたリングボルトは、ビレイヤーのセルフビレイ用ですが、インドアクライミングでは、ビレイヤーがセルフを取ることはないので、ビレイヤーとして自立したクライマーになるにも、小川山でリングボルトを見て、”なんでここにリングボルトがあるのかな?”と思考し、その結果、”そうか、ビレイヤーも落ちそうでヤバいのか”、と理解することによって、ビレイヤーのセルフを取るという安全技術を知ります。

アウトドアでは、ビレイヤーもセルフがいるか要らないか、自己判断ができるようになって一人前。

私は軽いので、ビレイヤーとしては、自分を守るために、セルフが必要な場合があります。

例えば、大柄なクライマーに1ピン目で落ちられると、パチンコ状態になってビレイヤーとクライマーがぶつかります。”ビレイヤーのセルフ”が必要です。

”ビレイヤーのセルフという技術”、そういう知識があり、対策を知っているというのが、クライミング技術、の具体的な中身です。

一言で、”ビレイができる”、と言っても、中身の濃度は色々です。

前にアルパインのクライマーに、ゲレンデでの練習会で”ビレイできますか?”と聞いたら、元気よく”できます!”というので、お任せしたら、リードクライマーが落ちた時、真っ青になっていたので、交代してあげたのですが、聞いたら、彼は落ちたクライマーを確保したことはなかったそうです。

”落ちるクライマーをキャッチしたことがある、グランドフォールさせないスキルがある、ということが最低限ビレイができるということですよ”、と後で教えたら、”そう言われたら、そのとおりなのに、全く思いつきませんでした”と言っていました…。

彼は、”先輩は落ちないから、ロープは持っているだけでいい”、と教わったのです。

■ リスク中心思考=落ちたらどうなるか?

落ちたらどうなるか?

ということと突き詰めて考える、ということは、登る楽しさゆえに見過ごされてしまうのが、クライミングの悲しい宿命なのかもしれません。

が、逆に考えると

落ちたらどうなるか?すでに保険を掛けてある、

という状態だと、後は何をしてもいい、と考えることができます。

ショートのフリークライミング、つまりいわゆるクラッギングなら、2名で行ったとしても、ちゃんと行って帰って来れるスキルが、どちらもないといけません・・例えば、片方が運転できない、とかダメです…。

完全にリスクフリーというのは、ありえないので、リスクが何か、分かっているというのが大事です。

例えば、私は50kgないくらいの体重ですので、一緒に登っていた相方が74kgで、彼がドカ落ちするとビレイヤーの私の方が危険が迫ります。

なので、落ちることが分かっている、ランジで取りました、みたいな登り方は、相方もしません。下のビレイヤーの方がリスクだということが共通理解だったからです。

インドアから普通にいつも落ちている登りをアウトドアでやってしまう人だと、たぶん、そのようなことも分からず、当然のように、下のビレイヤーが誰か?など考慮せず、普段通りのクライミングをしてしまう人が多数だと思います。

つまり、こういうことも、”クライミング技術”の一例なのです。クライミングは、”ビレイヤーの内容”が、どう登るか?にも影響して当然なのです。

それを分かっているのが、クライマーです。

誰彼構わず、じゃんじゃん落ちているということは、クライミング技術、がまだ育っていない、ということです。

奥村さんなら、クライマー以前というのではないでしょうか?

つまり、まだクライマーではなく、今からクライマーになるところの人、という段階ということです。

■ リスク中心思考への切り替え

これは私の考えですが、山と同じで、クライミングは、リスクから考えれば、すっきりします。

リスクを中心に考える思考回路を身に着けたら、それがクライマーとしての完成となるのではないでしょうか。

世の中には完全なリスクフリーはありません。

数あるクライミング形態のうち、もっともローリスクであるのが、トラッド。命がかかる支点を他人任せ(ボルトを打ったのが何年の事なのか分からないとか、誰なのか分からない)にしない。カムによる支点のクライミング形態だと思います。

私もまだカム設置の能力は完成しているとは思いませんが、それなら、落ちないようなところを登るというリスクコントロールが可能です。

なんせ、カムは100% 自己責任ですから、ボルトの信頼性が分からなくても、カムの信頼性は分かります。

支点間の距離も、自分の見極めで、怖ければたくさん取り、大丈夫だと思えば、落ちたとき保険にならないことはない程度に間隔を広くとることもできます。(まあ、岩に強いられて、クラックがあったとしても、浅かったりフレアしていたりして、取れないことはありますが。それこそが岩との対話で、クライミングの愉しみの一つです。ランナウトに耐える能力は、そのような時…ここぞというときに取っておくものです。)

ボルトだとそんな芸当はできません。見ず知らずの人…つまり施工が上手な人か?それとも下手くそな人か?も分からず、さらに言えば、そのボルトはいつ打ったのか?もトポにあることは日本では稀です(台湾の龍洞ではエクセルで管理されていました)。

ボルトだから大丈夫だと思っていると、グージョンではなくカットアンカーかもしれません。

そして、それは、見た目では全然判断できなかったりするのです。私の山梨時代にも、カットアンカーとグージョンの見分け方を教わった覚えはありません。

(山梨では、もはやレガシーレベルのカットアンカーを使うような人がいなかったためかもしれませんが…。私も開拓者に出会ったとき、当然のようにFixe社のボルトを物色しました)

■ ボルト配置の不利・有利 グレードは相対的なものですよ

ボルトルートのボルト配置は、トラッドのピンクポイントと同じで、クライマーにとってはなんの合理性もない配置というのもあります。

特に背が低い人にとっては、背が高い開拓者が選んだボルトの配置は、ムーブ的な整合性は全く取れない位置かもしれません。

つまり、そのピンに行くまでに、ワンムーブ多く必要で、そのムーブのスタンスが極小、ということはありうるということです。極小スタンスに乗らないといけないとすれば、それは全然クリッピングチャンスではありません。安定したところで一本入れるべきです。

背が高ければ、そのスタンスに乗る必要はないので、背の高い人にとっては同じグレードでも易しくなります。180cmある男性クライマーは、核心部が飛ばしてしまえるそうです。

つまり、同じ5.9でも、小さい人にとっての5.9は一般的な人にとってより難しく、大きい人にとっての5.9は易しいことが多いということです。

もちろん、これは傾向であり、逆に小さいほうが有利な課題もあります。例えば、リン・ヒルは手が小さくてクラックに手を入れられるために登れることが多く、大柄で手が大きいクライマーは頻繁に愚痴っていたそうです。

そういう知識があることも、”クライミング技術”の一つに入るかもしれません。

■ コンペはクライミングの本質ではないですよ

なにせ、クライミングをスタートしてすぐは、

  クライマーとしての優劣をクライミンググレードで付ける

のが当然だと思い込んでいます。つまり、ハイグレードを登れるほうがえらいと思い込んでいます。

 クライマーの優劣が、クライミンググレードでつくのは、コンペの世界だけ

です。もちろん、コンペで優勝することは喜ばしいことですし、努力の証と言えますが、だからと言って、人間として優れているというわけでは当然ですが、ありません。

お受験の勝者が人間として優れているわけではないのと同様に、あるモノサシで計った時に、たまたま、その人が一番だったというだけで、別のモノサシで測れば、別の人が一番になる。

          『ビヨンド・リスク』 より

さらに言えば、10aでひいひいやっている人と、15でひいひいやっている人は、別のグレードで同じことをやっているだけです。本質的になんら変わることはありません。

クライミングを何年もやっていて、なぜ、それが分からないのか?そのほうが私には不思議です。

グレードで人間が一直線に優劣で並んでいる、という見方は、高速道路で隣の車とスピード争いをしてしまうと同じくらいの短絡した見方です。

スタートも違えば、目的地も違うのですから、どっちが登れるか?で、上下を決めることほど、愚かなものの見方はありません。

10歳でスタートした人は20歳でスタートした人より有利ですし、30歳でスタートした人は40歳でスタートした人より有利です。50歳でスタートした人が、15歳でスタートした人と比べて、そう伸びしろがないのは、誰が見ても明らかです。15歳の人が50歳の人を馬鹿にすべきでしょうか?

年齢は一つの例にすぎません。性別、持っていまれた体格、握力、指力など、色々個人差があり、それぞれです。ハッキリ言って、背が高くて、ひょろ系体形、指力強い人が有利です。

グレードが高い事が一つの有利になるとすれば、

 取り付いてよい課題の選択肢の幅を広げる、

ことです。5.9しか登れない人は一つの岩場で大体1つか二つしか登れる課題がありませんが、5.13が登れる人は、同じ岩場でも、大体全部の課題が登れます。

偏差値50の人が行ける大学の数は限られますが、偏差値74の人が行ける大学の幅は選り取りみどりです。

これで回答になったでしょうか?


   こういうのが高いクライミング技術の証なんですよ。パッシブ1ピン目のとり方



2021/12/15

現代クライマーのレベル感=お粗末系です

 現代クライマーというのは、

1)クライマーがやっていないクライミングジムで、ボルダリングに目覚め

2)山岳会にも入らず

3)誰とも登らず

4)当然フリークライミング協会も知らず

5)雑誌も読まない

で、外岩ボルダーに行く人

です。

そういう人が、岩場のある地方自治体にボルダリングがしたいからと言って、移住してくるのが現代のクライマー事情なんですよ。

普通は移住して来るくらいクライミングに熱を上げているとすれば、クライミング史くらい知っていると思うでしょう…ところが。

ボルダラーなのに、”黒本”って言葉も知らないんですよ。”御岳ボルダー”って言っても、きょとんとしています。

当然、ノーマットで登った記録のすごさとかを見聞きしたことがあるわけでもなく、ただ単に、”金がないから”とか言う理由でノーマット。

ちなみに単独で誰からも何も教わらずに登っていると言われたとき、私が聞いたのは、

「マットは何枚使っているの?」

でした。なんせ、ボルダリングは、マットを運ぶのが大変なので、マット担ぎ要員としてメンバー揃えるのが核心の一つです。

一人で登っていたら、マットを運び入れるだけで大変です。

ところが、答えは「マットは使っていない」でした。

ですので、別にポリシーがあってそうやっているわけではなさそうです。

そして、誰からも教わっていないし、フリークライミング協会が出している『安全ブック』などを置いているクライミングジムもない。ので、当然のことながら

1)ボルダリングは9割落ちているクライミング形態であるとは知らない

2)ランディングのセルフコントロールがすなわちボルダリングのリスクコントロールである、ことも知らない

3)ので、ランディング技術を磨く=ボルダリングのスキルの一つとも知らない

4)ロープが出るクライミングより、ボルダリングのランディングでの事故が多いことを知らない

5)頭を切っても翌日から登れるが、足首をやると数か月は最低登れないことも知らない

6)仮にノーマットで外ボルダリングして、事故になった場合、岩場が閉鎖になる恐れがあると知らない

7)そのため、公開された岩場でのノーマットが非常に迷惑な行為であることを知らない

8)ソロで登る場合、事故の際、発見が遅れて、大事になることが多いということを知らない

9)もし発見が遅れて死亡などにでもなったら、岩場の閉鎖の憂き目にあう可能性がある

10)したがって、分かっていないクライマーのソロは、迷惑行為の一つであり、勧められない

と10個くらいの無知が重なっています。

どのような内容のクライマーか?というと、50代でクライミング歴2年、13Kgの歩荷でヘロヘロになってしまうそうで、今登れるグレードは3級が限界グレードだそうです。

一般的な話ですが、アルパインのクライマーは女性で25kg、男性なら30kgを担いで大倉尾根をノーマルコースタイムで登って帰ってこれないと、アルパインルートに連れ出してもらえません。そのくらいの強さは最低限って意味です。なので13kgでへばっていると聞いて、ビックリ仰天です。前にいた会では、60代の太ったおばちゃんだけが12kgで限界、と言っていました。

さらに言えば、3級が限界グレードの人がいきなり2段。その2段の課題を登るのに、マットを使わないとか言っている…それが迷惑行為だとも知らず…です。

そんなレベル感であるので、クライミング史に残る偉業のノーマット主義とは話が違います。

これが、クライマーがやっていないクライミングジムが町中にうじゃうじゃできて、これまで絶対に岩場に来る機会がなかったような人たちが岩場に来始めたときに起こることです。

対策としては

 岩場ごとにノーマット禁止を告知しておく

ことだと思います。というのは、公開された岩場でノーマットで登るなどというのは、非常識なことだという”常識”も、基本的に見聞きするチャンスが現代クライマーには存在しないからです。

先輩後輩の絆で登るわけでもなく、

友達と登るわけでもなく、

ジムのお兄さんと登るわけでもなく、

山岳会は人間関係がめんどくさいから嫌、

本を読むのは字が煩わしいから嫌、

クライミング技術を学ぶのは、カタカナが多いから嫌

そんな人だってボルダリングなら外岩に来れてしまう時代が来ているのです。

つまり勉強する気もなければ、岩場に対して熱い思いもない。岩を愛しているのではなく、単純に

 登りたいだけ

なのです。何のためにいきなり2段なのか?それは本人しか知る由がありません。

なんで3級しか登れない人が2段なのか?

普通は遠くの目標、憧れのルートにとどめて、目の前のもっと身近な目標をこなすのが普通だと思います。なにしろ、ボルダーは課題が短く一瞬なので、飽きちゃいますし、指を痛めます。痛めたら登れるところも登れなくなります。

成長戦略として非常に非合理的である、”いきなり2段作戦”。

これと似ているケースで、”いきなり四尾根”というのが過去にありました。

アルパインのクライマーでも、インドアジムで5.11が登れるからという理由で、北岳バットレス四尾根にそのまま行こうとしていた人を知っていますので、要するにリスクを因数分解するだけの知性がないだけかもしれません。

つまり無謀って意味です。そのような人は、自分では無謀とは思っていないので、何を言っても聞く耳を持たないかもしれませんが(何しろ、本人は大まじめで二段にトライ中ですので…)、それでも、

 各岩場側の自己防衛

として、

岩場としてノーマット禁止

くらいは言っておかないと、このような極端に無知な人からの弊害を防げないと思います。

もちろん、きちんとした技術的裏付けがあってのハイボル&ノーマットの伝統は、それなりのきちんとしたクライマーが引き続き文化伝統としてつないでいけばいいと思います。

そんな伝統とは似ても似つかない、お粗末系ノーマットクライマーは、あらかじめ予防していないと、クライミング自体が成立できなくなってしまう、と思います。

それではこれまでの多くの人が流した汗と涙…苦労が無駄になってしまいます。岩場の公開までは長い長い交渉の時間がかかるものです。

例え、クライミングに昨日来たお上りさんが起こした事故だとしても、世間は、その人だってクライマーでしょ、と思います。世間はクライマー界とは違って、”常識”で成り立っており、いくら、その人が例外的お粗末クライマーでも、事故ったり、死者が出れば、町は迷惑であることには変わりありません。すぐに閉鎖になってしまうでしょう。

そのような目に遭わないためにも、岩場の側が、無知なクライマーから、自己防衛しておく方が、良い策だと思います。

このような人が、例外で少数派、である保証はどこにもなく、一般的現象、である可能性もあるからです。

初見フリーソロで登った厳冬期阿弥陀北稜。途中のモタモタした男子を抜きました
    ほとんどアックスで登るフリーソロ・ハイボルダーです(笑)


2021/12/13

レスキューを組織するススメ

■ 暗示の力

心と体の関係は、まだ解明されていないのですが、私は自分の親指と人差し指にできたイボ(クライミングジムで貰った)を暗示で取り除いたことがあります。ただイボイラナイと念じたら気がついたら取れていました。それまで色々な方法でイボ取りを試したのに、よく使う右手なのでどうしても薬が効かず取れなかったのに…です。

暗示というのは、ものすごく簡単にかかってしまうもののようです。アンドルー・ワイス博士によると、医師が「この病気はどんどん悪くなるタイプのものだ」と一言言っただけで、悪くなる、という暗示がかかってしまい、患者が自ら治ろうとしなくなる事例があります…。

同じことが、大なり・小なり、思い込み、ということに言えるのではないかと思います。自分は〇〇だ、という思い込みです。

それが人間関係にも影響している、というのは、本人の思い込みが相手の態度を決めることがあるから、ではないか?と思います。

〇〇と思われている、と考えると、本当に相手は〇〇と行動するようになります。あるいは、なぜ相手は○○するのだろうか?と原因究明を考えるようになると、なぜか相手はそのように動くようになるのだそうです。

これが、ノーマットボルダラーに起きたことかなぁ…。私はこの人に会いたくて巡り合ったわけではないのですが…なぜか、こんな人にばかり九州に来て合うような気がしますが、九州だからというよりも、現代だから、という現象のような気がします。

しかし、ランナウトによる命知らず自慢の伝統、というのはどこから来ているのか?を紐解くと? 花崗岩、人工登攀 あたりに原因が求められそうです。まぁ、ブランクセクションでは、仕方がないランナウトというのは、昔は当然あったでしょう…

そこから進化していないのではないかったんでしょうかね?カットアンカーでリボルトしようとしてる人たちは、比叡と日向神でしたので…。一般的な若い人たちではない。

しかし、指導者のクラスが、カットアンカーでリボルトして良いと考えているとすると、それが修正されない儒教文化…目上の人は100%正しい…の九州では、本州で20年前にすっかりお払い箱になったとしても使い続けられる、という成り行きになる訳ですね。

もう指摘したので、今後、そのようなことが起こるとは考えにくいですが…。

しかし、「カラビナ直掛けが九州ルール」と女性のジム店長さんに言われ、ビックリ仰天したり…、ビレイを教える立場の人が、「待機時はグリップビレイ形にして保持するように」と一般クライマーに指導していたり、ほんと九州では色々ありました。

大抵は、その場で、”変!”とすぐ気がつきましたが、まだその場では気が付けないものもありました。

3年後になって気がついたのが、指導者クラスの人が、アルパインと、フリーと、スポーツクライミングの切り分けができず、たぶんご本人もレスキューのトレーニングなしで、つまり、万が一の場合の想定なしで、本ちゃんに出かけていたのだろう、それを反省しそこなっているのではないか…という記録でした。

だから、その会では全然クライミング技術が身についていない…登れても、危急時対策が出来ていない、ロープのアレヤコレヤ、クライミングのあれやこれやが分かっていないクライマーばかり、その会では出会うので面食らいました。

余りにも何度も、分かっていない人ばかりに合うので、もう嫌…となっていました。

■ レスキュー隊長

クライミングする男性の、クライミングに対する情熱の”昇華”の対象は、開拓者になって栄誉にあずかる、というものや、ボルダリングジム店長になって登りたいときに登れる、というものが定番です。

しかし、もっとも尊いのは、レスキュー隊長になる、というものではないかと思います。

弱きを助ける…のもっとも高貴な形が、レスキュー…。

私がもっともパートナーを長く組んだのは、青ちゃんでしたが、もともと日本で初のレスキュー隊の隊長をしているときに長野に講演に呼ばれて行ったのだそうです。

レスキューをすることで、どういうケースで死者が出るのか?ヒヤリハット事例が溜まりますし、どうやって、周囲の人がリスク認知をせず、自分も巻き込まれそうになる状況から身を守るか?という術もたまっていくでしょう…

インドアのスポーツクライミングにレスキューの想定がないのは、インドアなので仕方がありませんが、アウトドアになったら、例え2名での行動、1名での行動であっても、セルフレスキューを前提としたレスキュー訓練をするべきでしょう…

とくに近年、マスメディアは偏った情報しか報道していません。フリーであっても、例えば八面で墜落が起これば、担ぎ上げるのは大変です。背負い搬送のスキルがないとヘリピックアップの場所まで移動させることすらできないかもしれません。

ヘリが来やすい場所とそうでない場所でもリスクに違いがある、という発想自体も、現代の九州クライミングには、想定されていないかもしれません。

2021/12/11

九州で一回目の岩場 比叡&雌鉾岳

2018年4月17日の記録からです。

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 比叡&雌鉾岳2

比叡&雌鉾岳は、初めていく初見の岩場でした。

1)トポだけを頼りに、

2)自分たちの調べられる範囲の情報だけで、なんとかする、いうタイプの山で、

3)登攀が含まれる山

は、私にとって、北アの明神主稜以来です。乾徳山旗立岩もか。しかし、今回は、不安なく行きました。というのは、

1)相手が知っている人で、

2)自分より登攀力2、3ランクくらい上

3)ロープワークや下降、読図、運転などは私がフォローできそう(私の意見を無視しない)

4)ちょっとしたミス(試行錯誤と言う)にイライラしないおおらかな性格の人、不安がるタイプではない

と分かっていたからです。実は、情報が乏しく、

・ニードルは人気があるが、フリークライマーに人気があるのであってアルパインの人は第一スラブとかだし、もしかしてトポに表れているより難しいのでは???

・庵・鹿川の人と連絡がが取れず、場所も不明で、行きつけるか不安

・トポに下降が詳しく書いて無く、岩の3Dの姿が理解しづらく、下降(敗退)に不安

・トポのグレード感で、登れると思ったところを登っていいのか?

でした。

岩の登りも、山も、

 未知の部分

を自分たちの力で解決するのが楽しいのに、未知の部分を異様に怖がる人だと、何もかも、予定通りでなければ、精神的に動揺したりします。私はそういう人と行くと、未知の部分を楽しめないので嫌なのです。

最低限、自分の身を守るスキル、ビバークとか、衣類とか、懸垂下降とか、ちゃんと携帯電話を持つとか、そういうことを達成したら、あとは、あまり調べこまず、未知の部分を楽しみたいなと思います。

が、これは下限が難しく、全く何もかも相手にお任せ、の人と一緒だと何とかしてあげないといけない側になってしまうし、なんとかしてよオーラを出す人もいます。それどころか、どうしてくれるのさオーラを出す人もいるので、そういう人とだと、あまりにも計画通りの山しかできないことになる…。

今回は、あまりベータを調べずに行って、その結果分かったことは

ニードル

・ニードルは超風強い。そのため声も聞こえない。すごく寒い!ウィンドブレーカー必携!

・下降は下降点が不明瞭。不安があったので、同ルート下降とほぼ同じインディアンサマー側から下降したら、ブッシュが多く苦労して、下降にだいぶ時間がかかった。

・ここはフリーでフェイスの相当のスキルがないとリードは厳しい。突破力が必要なところが、登り始めなど、落ちれないところにある。

・ダブルじゃなくてシングルでもいいのかも。

大長征ルート

・ルートが錯綜して分かりづらいと思ったがその通り

・スラブはインスボンよりもノーピン区間が長い

・登攀終了してから、一の坊主と二の坊主の間までのトラバースは2級だが、ザイルは必要、どこか支点にロープを通してさえいれば、簡易的なビレイ、グリップ程度で良いのでは?屈曲が多くロープが流れない

・最後に短いハンドサイズのクラックが出てきてトップアウト

・下降は登山道だが、登山道がまた分かりづらい 薄い踏み痕が多い荒れた登山で、数回、獣道へ

・ダブルが良いと思う 弱点を突くクライミング

・大滝左の最初の5.6も5.7も、ショートの5.9はある感じでかなりピンが遠い

今回は、合ってよかったロープワーク技術&総合力って感じ!!

・ニードルでコールが聞こえず、ロープアップもされず、ロープも動かないので、しびれを切らせて、登攀。とはいえ、そのまま上るわけにはいかないので、自己確保をロープクランプでとりながら、ニードル最終ピッチをセカンドで上がる。上がったら、やっぱり聞こえていなかった。たるんで余ったロープはループに巻いて回収しながら登攀したので、登攀がグレーディングより難しくなった。

・ニードルてっぺんで寒かったので、ロープワークが雑に。結局、きちんとたたんだほうが早かったと理解。

・ニードル終了し、正面壁へ最終ピッチの出だし、IV級A1は、フリーで超えられず、3回落ちたので、あきらめて、エイド。エイドもスリングで鐙を出すだけだと無理で、プルージック登攀も併用。あってよかった登り返し技術。ここは、デシマル返還で、5.7ならリードできるんじゃないかなどと、甘く見ていたところでしたが、一目みて、無理と思いました。フットスタンスの位置がどうみても、5.7レベルじゃない。A1ということは、昔の人は鐙を出したはずで、これは鐙を持っていけばよかったなと思いました。ぬんちゃくはセカンドだったので、もっていなかったので、スリングで切り抜けました。こんな登攀をしたのは、初めて連れて行ってもらった小川山のクラックで登れずエイドに切り替えたとき以来…  屈辱(笑)?

雌鉾岳

・一般ルートの地図を持っていくべきでした。ゲレンデ感覚で下降も明瞭だと思って調べずに行ったので、なんとなく歩いていると、薄い踏み後に導かれ、ルートを外すこと数回。毎回すぐに気がついて補正しました。山歩きの経験値のたまもの。

・一枚岩のスラブが素晴らしく、ほんとにインスボンみたいでした。登攀はインスボンより若干易しかったと思う。

・インスボンよりもランナウトはひどい

どちらも、適度なスレスレ感があり、楽しめた。ニードルの登攀はアップアップ感がありました… 最近アップアップ感があることよりも、確実感で登っていたので、久しぶりのアップアップ感でした。

成長を実感する山で、なおかつ、山が素晴らしくきれいで、モミジつつじなど、お花がいっぱい。新緑が美しく、素晴らしい場所でした。泊りこんで登攀三昧でもいいな、という感じ。

2018年12月11日の不可解な出来事

 FB回想から…

もう3年前の出来事ですが、今振り返っても変な出来事だと思う。新人を最も危険だという野北で鍛える提案を貰ったんですが、その新人は懸垂下降もまだできない人…。

この出来事の解釈としては、旧態以前の教え方、というものです。で、私の考えとしては、この教え方では死者が増える。

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野北
ハーケンを購入しようかとしたら、なんと先輩の返事、”冬の野北は寒いからやめましょう”
はぁ?意味不明。
散々、新人さんを連れてマルチの練習を野北でするように説得を受けたのに(しかもその説得している人なしで)。
私は、ビレイも確実でない状態で、外岩行ったことは無いし、もちろん、マルチのセカンドでライジングなんかしてもらったことは一回もない。
初めて行ったマルチでも、1Pで易しいが後続を確保したし、懸垂下降はATCを落としてしまったこともあるが、カラビナで降りた。すでにカラビナ一枚で降りる方法は知っていた。

女性の私に向かって自立していないと苦情を言う人が多いが、むしろ自立していないのは、どうみても男性新人のほうだと思う。
ビレイできない人にビレイしてもらうなんて、リードは命がけになるわけだから、そうするべきでないと思うし、ライジングして登らせるなんて、フォローが自立していない。ガイド仕様だからするべきでないと思う。
少なくとも、自分がかつてそうだったくらいのレベルの、セカンドは私だってつけてもらって当然だと思う。
あーどこかにいないかな、ちゃんとしたセカンド。
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2021/12/04

トップクライマーの言葉の重み

■ボルダリングでのマット使用

公開されている岩場でノーマットはなぁ…。怪我でもされて明るみに出たら、岩場閉鎖の憂き目にあうこともある…というので、めんどくさいことを知ってしまったぜ、ちぇっ!と思っていたんだが…、あるトップクライマーの言質を取って、伝えたら、気持ちを変えてくれたようで、

 ”マット買います”

という返事が来て一安心。でもほんとに買うか?は未知数です(笑)。

■ ジムしか知らず、誰とも登っていないクライマーもいる

しかし、現代クライマーの情報源は、クライミングジム一択。誰とも一緒に登らず、クライミングの雑誌も読まず、フリーファンの存在すら知らない(フリーファンは、日本フリークライミング協会が出している無料の冊子だが、九州のジムで配布しているジムを見たことがない)クライマーがほとんどだ。つまり、安全に関する情報を得る、きっかけや情報源が皆無。

クライミングジムが、クライミングのマーケティングを担っているということは、つまり、安全に関する、必要で、良心的な情報を決定的に、誰もクライマーに流していない、ということだ。

クライミングジムが流しているのは、”どうやって、かっこつけるか?”という情報だけである。

ネガティブ面を言わず、ポジティブ面しか言わないというのがマーケティングでは当然の行いなのだ。

トップクライマーの皆さんには、このような現代的な状況を理解いただき、かつての山岳会の先輩から、あれやこれやを教えてもらった自分の境遇の優位性を考えてみていただき、同じことを大衆に向かっているのだと、率先して自分がどんな風に安全を確保しつつ記録を更新したり、プロジェクトを完成させているのか、ということを公開していってもらいたい。

なにしろ、クライミング界の常識では自分より登れる奴の言うことしか聞かなくていい、ということになっています。

ですので、11が精いっぱいの私が言っても、誰も言うことは聞きません(笑)。

こちらは、V16(6段)がどのように登られているか?分かる動画です。ご参考に。9割落ちています。

https://allnevery.blogspot.com/2021/12/ryuichi-murai-floatin-v168c-fa.html

ジョコンダで抜けたハーケン



2021/12/03

ノーマットは許されない

■以下引用

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ボルダーの公開されているエリアではマットの使用は、最低限の安全を守るという意味で、半ば義務的なものだと思っています。

マナーとしてもマットを使わない場合、靴底が泥などで汚れてしまい、そのまま登ると課題を汚してしまいます。

クライマーに、何かしらのポリシーが有る無いに関わらず、マットを使用して欲しいとの意思を伝える事ができるならば、そうした方が良いかと思います。

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■ ノーマットがえらいという文化

実際は、ノーマットでハイボルダーを登る人が尊敬される歴史を作ってしまっていますが…。

ノーマットの方が偉いという価値観を作ったのは、過去のクライミング史上のクライミング界のリーダーたちですので、ノーマットへの憧れとかいうものは、クライミングの歴史に無知な現代クライマーの責任というよりは、リーダーたちが作り上げた文化そのものに問題があると思います。

現代の事情だと、そもそも、3級とか4級とかしか登れないクライマーが、2段をチャレンジするのにノーマットとか言い始める時代みたいです。え?その実力で?!と、私もびっくりしましたが、そう言われた。

そもそも、ノーマット自慢というのは、命知らず自慢ではなく、ノーマットで登れるほど、ゆとりがある、っていう自慢です。自慢の中身を取り違えている。

3級の人がノーマットしていいのは、5級の課題です…

しかも、ボルダリングって9割落ちているクライミングです。(アルパインは、落ちたらゲームオーバーの落ちないクライミングです)

その現実を見たときに、どうすべきか?を考えるのは、私の仕事というよりは、そもそも原因…ノーマットのほうがエライ!という文化…を作ったリーダークラスの人たちの仕事であるような気がしますが…。どうなのでしょうか?

ボルダーで情報発信力のあるクライマーは、公開された岩場でのノーマットは、控えるような通達を各岩場ごとに出すくらいなことはしてよいのでは?と思います。特にノーマットで有名な人とかはそうかもです。

しっかし、ボルダーって、試登でも、ノーマットなんでしょうかね???ボルダー界の事情は分からないんですが。ボルダーの本気トライって、オンサイトとか聞いたことないから、ぜんぶレットポイントなのでしょうか?

■ 自分より強いクライマーの教え以外聞かなくていい文化

なにしろ、クライミング業界は、自分より強いクライマーの言うことしか聞かなくていい、という伝統です…。

危険なビレイという、相手の命がかかる、つまり、相手を殺してしまうかもしれないという、ものすごいミスですら、女性が言えば、無視=スルーして良いと若い男性クライマーは当然のように思っているのですから、いくら心配した人が口を酸っぱくしたところで、誰も言うこと聞かない(笑)です。

オヤジ雷火事じゃないけど、トップクライマーが言うことしか聞かないので、トップの方の責任は、どうもそこらへんにありそうです。



ぶら下がり筋トレボルダー

2021/12/02

エイドでリングボルトに荷重し墜落しているロッククライミング指導者

■アルパインクライミングは支点を自作するクライミングですよ

これは、ふとした調子で出てきたある方の以前のコメントですが、

山岳地帯での本チャンクライミング(=雪のないアルパインクライミング)とフリークライミング、ボルトのあるスポートクライミングの混同

が、指導者クラスであっても、九州ではあるのではないか?と思います。

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核心部は抜けて、あと2ピッチで稜線というところで、「大岩溝」という所があります。相方の二人が恐いというのでその左にあった古い人工ルートを探って見ました。20mくらい登ったら、ボルトも無くなり、無理だと思い、クライムダウンしていて古いリングボルトに体重をかけた時ボルトが抜けました。その下の2本も抜けて、20mくらい落ちて止まりました。

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これは、ずいぶん昔に起こったことらしいのですが…10年以上前と思いますが、それでも

  リングボルトに足を掛ける=問題外の行為 ではないのだろうか?と思います。

■アルパインでは支点を信用しない

私も山岳総合センターで、山登りの延長線としてのクライミングを教わりましたが、最初に教わった支点は、スノーボラート。その次が立木とかです。つまり、100%信頼するってできない。とくに朽ちたリングボルトやハーケンの類は、信用してはならないもの、として最初に教わるもののように思います。

私も初級の無雪期アルパインルートには行っていますが、支点を信頼したことはないです。アルパインでのロープは墜落からクライマーを守るためのロープというより、死体が迷子にならないためのロープです。

一度でも、前穂北尾根などに行けば意味が分かると思います。墜落したら、どこに落ちたのか、見つけられないようなのが山岳地帯での本チャンルートです。

■アルパインでどれほど支点を信頼しないか?というと??

三つ峠などのアルパインの本チャンに行くためにゲレンデでは、猫の頭ほどもある、懸垂支点がありますが、そんな支点ですら信頼すると怒られるくらいです。

■ 支点用ギアを持って出るのが普通ですよ

現代の無雪期のアルパインクライミングで、自分で支点を作ろうと、スリングやハーケン、あるいはカムなどを持って行かない人も稀です。

そもそも、そのような人には、フォローができないはずです。最初から残置を期待していくというのは、しないのが山岳地帯のクライミングの建前です。

もちろん、昨今は情報が充溢しているために、人気ルートでは、残置の存在があらかじめ分かってしまったりもしますが、それでも、一応は用意していくのがマナーというものでしょう。沢登りですら、ハーケンとハンマーは持っていくのが当然です。

その前提が崩れているのが、古いリングボルトに足を掛ける、という行為をしている時点で、見受けられます…。

■ マルチピッチが人気と言っても

マルチピッチというのは、複数ピッチ数があるというだけの意味ですので、マルチピッチと言う言葉でルートの性格を表せるわけではありません。

ルートは固有のそれぞれの性格があります。乾徳山旗立岩は、本州の本チャンクライマーのデビュー戦では定番ですが、ハーケンしかないです。つまり、全く支点に関する信頼性ゼロです。それで、登れないようでは、そのルートに行く資格がないということです。

そのようなルートもあれば、フリークライミングの対象として、ボルトが打たれたスポートのルートもありますが、これはボルトがあるだけに、安全であると勘違いされやすいです。

ボルトがあったとしても、どのような内容のボルトなのか?が昨今は問題です。さらに言えば、ランナウトの問題があります。

もっともよいスタイルは、クリーンクライミングができるルート、つまりクラックルートだと思います。残置を期待することなく、自分で、安全度合いの大小を自分でコントロールすることができます。

■ 事故から学ぶ

大事なことは事故から学ぶことだと思います。


登山という遊びは失敗の反省から始まります… 失敗をやってから、それでも、不味い支点を使い続けるというのでは、失敗から学んでいないと結論せざるを得ません。


悪い施工は自分で施工者に伝えてください

■事例

Aさん:「この画像にある資材はちょっと…」

→ 本人にAさんが言えばいいでしょう、良くない資材だと分かった人はAさんなんだから。

私:Bさんへ 「Aさんがこれはどうか?と言っていますが?」

  Bさん 「これはこうこういう理由で、強度が足りないと思われますね」(同意)

私: 「じゃ、施工者に連絡しましょうか?」

Bさん: 「いや、言わないでください」

はー!! 人を介さず自分で当人に直接やり取りしてください。仲間のミスは仲間なんだから、仲間うちでしりぬぐいすべきでしょう。