2021/12/19

九州クライミングの総括…部分点を考える

 今日の仏教説話は、自因自果、だった。


例えば、”自己責任”。 クライミング界で、しょっちゅう言われる言葉だが、ボルトルートで自己責任って? ボルトを打った人が自分に問うべき言葉なのかもしれません。

■ 因と縁を見ると…現地調査隊、みたいなことになった(汗)

私と先輩の荒木さんがたまたま九州で登ることになったのは、九州クライミングにとっては、良い出来事だったのかもです。

外から来た人が、「えっ?!」とか言わなければ、”終了点直がけが、ローカルルール”と信じている人の、”間違った信念”が、覆されることはなかったかもですから…。

私自身も最初のころは、以前師匠と登っていたように、誰か信頼できる山岳会の人たちと登りたい!と切に願っていたので、何軒も会の扉をたたいていました… 

安全面以外でも、最低でも一人は、パートナーと一緒に登る必要があるからです。

ところが、一年後からは、前の会の先輩と登れたため、いわゆる”一般クライマー”、”ビジター”という立場で登れました。さしづめ、現地調査隊、です。

その意味で言えば、調査終了感…といいますか、そんな感じです。

とりあえず、現代九州クライミングで、どんなことが起きているのか?は分かった。

ある程度登れるようになり、海外にも登りに行き、という状態でないと、取り込まれてしまって、”この終了点は変なのでは?”とか、分からなあったかもしれません。

パートナーが前の会の先輩で、大体どこの岩場でも登れる程度の登攀力がある相手でよかったです。私と同じ程度の人だと、二人とも危険になってしまいますし…。師匠とだと、最初から、これは…と登りに行かない判断になったかもです。

疑問を持たず、現状をそのまま受け入れてしまうのが新人の立場…。結局、一番損をしているのは、新人さん、ですね。

普通のクライマーは、ボルトとハーケンがあれば、難しくても、ボルトを選びますが、その選択肢が九州ではあんまり差がないです。つまり、40年前のカットアンカーとハーケンでは、支点の信頼度は、どっちもどっち…です。今まで、登りに来たクライマーも、変だな、とは思っても、旅行で来ていたら、今回は大丈夫だったから、まぁいいか…と思ってしまうと思います。

外から来たクライマーであること、× 比較的長期にボルトの品質が欲しい立場、でないと、情報発信することもなく、したがって、バレた!ヤバい!と設置者が思うこともなく、… その結果としては、ボルトの更新は進展しない…となります。

ボルト更新が絶対的に必要な善、とすれば、それを前進させることができたのは、私たちの立場だったからかもしれません。

結果としては、日向神、八面、龍頭泉のリボルトが進んで、めでたいです。

ほんとに良かったです。

ある意味、一番ひどい目に遭っているのは、登ってしまってから、あのボルトは全然信用ならないボルトなんだよ、と分かってしまった人なので、二人ともが危険な目に遭っているということですが…、深い納得感を持って、ボルダーに転向かな(笑)。

■ 日向神、八面、龍頭泉

良かったことは、日向神でも、八面でも、竜頭泉でも、リボルトが進んだことです。

もしかしたら、心ある人が言っても言っても、誰も対策を取ろうとせず、宙づり状態だったのかもしれません。

比叡ですが、初めて行ったときは、庵に泊りましたが、三澤さんから、”50mで3級1本、4級2本、5級3本が基準”と聞きました。(ボルト本数のことです)。ただ、「今はそういう時代ではないと思っている」そうでした。要するに取り巻きの人が、現代的に打ち換えることに反対しているのかもしれません。

とは言っても、インスボンですら、ボルトは適正配置が進行しています。一回インスボンに行けば、納得するのかもですね。

■ JFA頼みは疑問

JFAは、全国組織なので、その弱点があります。例えば、全国でクライマー数を見ると、東京周辺のクライマー数のほうが、どう考えても九州周辺のクライマー数より上です。

となると、集められたボルト基金は、優先的に関東から配分されるということになり、その順番を待っていると、九州でのリボルトは、最も後回しになってしまう。

その結果が、私たちがビックリ仰天した、手作り終了点、という現実に現れているのかもしれません。

もし、自己責任論を立場として取るならば、

 自分たちが登る岩場のボルト代は自分たちが出す

というのがまっとうな路線なので、岩場ごとに、ボルト用の募金集め団体、を持つのが適切なことだと思います。

そうすれば、JFAにお金を払っているのに、ぜんぜんリボルトが進まない、という問題は、回避できます。

■ 自前リボルト職人

このときに問題になるのは、リボルト知識の欠如です。

いくら資材が良くても、その資材の良さを台無しにしてしまうボルト配置しかできない知識しかなかったら…、せっかく集めたお金を無駄にしてしまうことになります。


いくらローカルがお金を出しても、こんなボルトを採用したり…

正しく製品を購入しても、こんな施工をしたり… 

してしまっては、お金の無駄遣いになってしまうという意味です。

JFAは、日本の開拓者に正確で、これだけは最低限知らないといけない開拓知識を普及する組織になったらいいのではないでしょうか?

例えば、九州では、地権者に許可を取らないで、クラックを開拓してしまった人もいます。

そのような常識では考えられない開拓者の行為も、今の状態では防げないです。

また、ボルト連打問題もそうです。昔のボルトラダーを、新しいボルトに打ち換えるだけで1m置きにボルトが配置されているような状態は、何もしない方がマシなくらいかもしれません。

これも、分かっていないことから来るミスなので、そのような開拓が広がらない工夫がいると思われます。

■ ボルダー

外ボルダーは、ボルトがないクライミングなので、ボルト更新のための寄付金集め、という性格が色濃いJFAへの加入は、一般のボルダラーには、意義が見いだせない、と言われると、仕方ないかな…という気もします。

年間3000円払って読むほどの内容が、フリーファンにあるか?というと…ソックス特集だの、チョーク特集だの…では、お金返して、と言いたくなるかもしれません。

安全ブックはホントに良いものなのですが、無料配布だから、入会しなくてもいいですし。

というので、結局、雨後の筍のように増えている、

 1)クライマーがやっていないボルジム上がりの初心者ボルダラーをどう守っていくか?
 
 2)初心者ボルダラーの無知から、岩場をどう守っていくか?

については、岩場の側が考えないと、どうしようもない気がします。JFA頼みというのは、ここでも、なんだかなぁ…な選択肢です。

やはり、ローカルのクライマーが、町を守ること、初心者クライマーの事故を未然に防ぐこと、を目標として、組織的に通達を出していく、というのが良いかもしれません。

昨今、SNSの発達で、BtoC、つまり、団体から個人へ個別に情報発信する垣根は、かぎりなく下がっています。その網目から漏れる人はいるかもしれませんが、岩場(現場)で、参加を求めれば、少なくとも岩場に来た人は、全部補足できることになります。

そもそも、岩場に来るクライマーの事故が問題なのであって、来ない人はどうでもいいわけですので、もっともシンプルに問題解決できると思います。

たとえば、岩場のライングループ、FBグループの2次元バーコードを岩場に貼っておくとか、公民館、駐車場、道の駅のトイレなどクライマーが必ず通るところに貼っておく、ということです。

そうすれば、大雨で林道が閉鎖になって通れないとか、駐車場の位置が変更になったとか、そういう情報も、速やかに伝達することができます。

■ 事故情報をまとめる

事故を減らす、ということを考えると、事故情報の集積と解析が欠かせません。 

アメリカでは、アメリカアルパイン協会…アメリカの日山協みたいなもの…が、毎年、事故情報をまとめた冊子を出しています。

そこには、その年に起きた事故と、その分析が載っています。またアメリカのクライミング雑誌でも事故の特集では、統計情報、トップロープでの事故と、リードの事故ではどちらが多いのか、どういう内容なのか?どうすれば防げるのか?などの情報が豊富です。

ロクスノでは見かけたことがないです。事故という現実から日本国全体が目を背けているかもしれません。

これでは、ぜんぜん”傾向と対策”が積みあがらず、事故が減るわけがありません。

例えば、ボルダリングの事故は、愛好者人口の面から言っても、リードクライミングの事故よりも、総数が多いです。

ほとんどがランディングの失敗ではないかと思いますが、初心者をボルダリングに導入するのに、ランディングを強調していないです。ボルダリングのメッカである九州でこれでは、お粗末です。

ちなみに参考になる情報としては、中根穂高さんの外ボルダー講習では、いきなり登るとかなく、登った後の、降りる道…クライムダウンができる場所を最初に確認します。そもそも、登れても降りれないような岩って多いです。登るより、降りる方が難しいですし。

クライムダウンだけでなく、ランディングも、着地は練習が必要です。あとはマントルムーブは、初心者のほぼほぼ全員が苦手とするところです。

なにしろ、インドアジムでは、マントルムーブが出てくることは稀で、外ボルダーになって初めてやることになります。その場合、マントルムーブだけを練習する時間が要りますし、練習用に採用する岩も、失敗しても死なない程度の高さ…1mとか…を選んで、マントルが確実になっている必要があります。

故・吉田和正さんの講習では、最初にマントルだけをする岩がありました。そういうのは、岩場に一個あればいいだけなので、公開された岩場では、マントル練習用、とか、で定番にしておけばいいのではないでしょうか。

そういう風にしないと、初心者には、

ランディングがボルダリングのセーフクライミングについては、ポイントだ、

ということが、明確なメッセージとして伝わらないと思います。

スタイルも知識がないと、おざなりになります。大体においてボルダーは、登れさえすれば何でもいい…というスタイルで、オンサイトという言葉はありえない感じです…みんなビデオを見ています…それじゃ、良くてもフラッシュにしかならないです。

必要とあれば、スポット、あるいは、ロープを出しても良いのです。大事なことは、

 無謀と挑戦が、きちんと峻別できる能力を身に着けること

です。


スーパー赤蜘蛛をフリーソロ出来るような人ですら、このようなボルダーではロープを出しています。

リスクの総量は、事故が起こる頻度 × 事故になった場合の深刻度、で決まります。