2021/11/28

自分の育てられ方は、正しかったのか?

 ■ 師匠が必要かどうか?

最近、クライミングを学習するにあたって、自分の育てられ方は正しかったのだろうか?とよく考えています。

最初の師匠の鈴木さんとは、師匠が必要かどうか?でまず喧嘩しました。

私は、それまで、一人で登ってきた登山者でした。八ヶ岳の中では、ピッケルがなくても登れる最も難しい山である権現岳を登れる程度までは、独学してから、来ていました。

独学って何を?というのが、一般の人には分からないと思いますが、主に天候予測です。山には近づいてよい危険と近づいてはならない危険があります。八ヶ岳なら積雪30cmは大雪なので、雪崩の危険があり、逆にただの寒さ…-25度とかは特に問題がないです。

寒いところで、濡れた手で金属を触れば、皮膚を持って行かれますが…そういうリスクも独学済み。八ヶ岳の縦走路始め、問題が起こった時のエスケープルートも、頭に入っているという具合に、山のリスクを自分の考えでカバーする方法が頭に入っているということです。チャレンジする前に、主要な尾根と谷は知っていないといけません。

そんなの誰だって分かっている、当然だろ、と思う人は、昨今の登山者を知らないかもしれません。

山岳会に属しているような人でも…いや、属しているような人だからこそ、かもしれませんが…富士山が目の前に見えているのに、北とか言ってしまいますからね。(実際にいた高齢女性登山者)

あるいは、美濃戸と言っているのに東側の尾根に歩き始めたり…。基本的なことを抑えていない人は、ただ、誰かに連れて行ってもらっていた、という人です。

そのあと、師匠が現れたわけですが…私は当初から、ずっと一人で登っていきたいと思っていたので、師匠は要らないって思っていたんですよね。だいぶ口説かれました。

■ スポーツクライミングでムーブを習得

そのあとも、問題でした。私の当時の考えでは、

  スポーツクライミングを身に着けるべき時期

でした。積雪期登山が単独でできるようになったクライマーが次に行うべきことは、クライミングムーブの習得かなぁ…と思っていたためです。

ところが、これに師匠が猛反発したんですよね…。スポーツクライミングが、あまり身についていないのは、そのためです。

しかし、私の考えでは、師匠の反発は、間違っていたと思います。

師匠がどのように考えて、インドアクライミングは要らない、と考えたのか分かりませんが、多くのクライマーは

フリークライミングこそ、登山の基礎力の底上げ

と言います。登山の生活能力(テント泊など)、ナビゲーション能力(読図ややぶ漕ぎなど)、積雪期登山(アイゼンワークなど)と並ぶのが、フリークライミングの基礎的力、と思います。

大体、外岩グレードで、限界グレードが5.12くらいまで必要です。インドアジムだと2級が登れるくらいかな?昔の山岳会のリーダーでも、そのくらいまでは努力で到達していたもののように思います。

数あるクライミングの中ではもっとも安全であるインドアで、片手でビレイするとか、壁からものすごく離れてビレイするとか、そう言う人たちと登らないようにするのがミソかもしれません。

■ リーチの問題

これは、背が低いともっと厳しくなるので、女性の場合はもっと高度なムーブ処理能力が必要になると思われます。同じ5.9でも、背が低い人にとっては10になるので。その辺りは、一般のリーダーがほとんど男性なので、40年、50年、登っていても、リーチとプロテクションの問題は理解が及ばないかもしれません。

むしろ、シットスタートがあるボルダラーのほうが、リーチの差による難易度の変化は良く理解できるかもしれません。その辺は、個人がどれくらい女性とのクライミング経験があるか?によります。大体の人は、女性と登った経験値が皆無だったり、元アスリート選手の女性と登っているとかで、一般人にアスリートを押し付けるみたいなことになってしまっていたりで、一般登山者の普通のラインが見いだせないケースが多いと思います。

私の観察では、3年毎週登るくらいの頻度でやっていれば、普通の運動能力の人でも、外岩の10代に登れるようにはなると思います。

■ 外岩リードの問題

一般に、古い教え方だと、いきなりリードです。5.6でも、5.5でもいいからリードさせます。

私もそういう教え方で、育てられたので、会で一緒に行った先輩が、小川山で私にリードさせる課題がないので、困り果てていました。

小川山はアルパインの岩場ではなく、フリーの岩場だからです。フリーの岩場というのは、5.9から上がスタートと言うことに日本ではなっており(海外は違う)、小川山にある、5.8とか、5.7とか、苔が生えんばかりの勢いです。もしくは絶賛ランナウトしており、5.8が限界の人が登ることはできないです。

それを解説する能力がほとんどの人は欠けているので、新人は、「先週、人工壁で10Aが初めて登れました!」とか言って、小川山の10Aにチャレンジ権ができたと思ってしまいます。

先輩はやれやれ、と思って、自分が登った10Aをトップロープさせるしかないわけですが…新人の側は、リードクライミングこそ、クライミングだ、とか聞かされているので、結局、「先輩、この隣の5.5を登っていいですか?」とか聞いてくるわけです。

見るとそれはコケコケでプロテクションがハーケン…つまり、誰も登らないので、リボルトも後回しだし、登られていないからコケまみれなわけです。登らせるわけにもいかないので、先輩は後輩の意欲をそがないように考えて、しかたねえなぁと掃除しながら、ハーケンの強度をチェックしつつ登る以外なくなります。

ということなので、教える側からすると、プロテクションの確かなインドアの人工壁に1年くらい通って、プロテクションの意味だの、ロープの流れだの、逆クリップだのを覚えてくれた方がうんと楽なわけです。

一方、菊池さんの本によると、昔の新人は、一年くらいは、先輩の登攀に ”金魚の糞”だったそうです。つまり、リードはお預けで、ずっとセカンドってことです。

当然、新人には難しすぎる課題を登っていることになるので、楽しくはないようです。この学び方だと、外岩しか使わないですが、どちらかというと、クライミングはあまり上手でないクライマーが出来上がるようです。