■ クイズ
このボルトの安全性は、どう判断したらよいでしょうか?
答え
1)引っ張ってみる
2)体重をかけてみる
3)落ちてみる
4)叩いてみる
正解
ボルトを開けて、中身を開いてみる。
■ 開けてみないと分からない
これはカットアンカーです。それがステンレスか鉄かや、メーカーなども外してみないとわかりません。効き具合いも、抜いてみないとわかりません。
アンカーの状態はハンガーを外してみないとなんともいえない。
参考情報
写真は昨年末に伊豆の海金剛の下降点にあったハンガーボルトです。 外からの見た目は同じですね。 しかし、中のアンカーは鉄だったので、電解腐食でネジ山はほとんど無くなってしまっています。 抜けるのは時間の問題という状況ですね。
■ 非現実的
一回一回、全部のカットアンカーのボルトを外して、内部を確認して登るというのは、非現実的です。
■ ブランクセクション以外はカム
ということで、ブランクセクション以外はカムを用いて登るのが、もっとも
自己責任論 & 安全性
ともに、満たしたプロテクションの解、ということになります。
■ ブランクセクションをどうするか?
1) スキルを上げる
落ちるリスクを受け入れ、100%落ちないスキル(つまりフリーソロ可能なレベル)になってから、取りつく
2)一か八か
落ちるリスクを受け入れ、一か八かの賭けに出て、掛けに勝つ。
3)TRによる試登
トップロープリハーサルを繰り返せば、自動化で、落ちるリスクは、かぎりなく0%にちかく下げることができます。
トップロープリハーサルを10回やって10回落ちなければ、確率論的に、次に落ちる可能性は、かなり低いです。
その上、トップロープリハーサルの数は、本人が好きに増やせる。
試登は、アレックス・オノルド君が、エル・キャップフリーソロに成功した手法です。
4)TR限定
とは言っても、何十回も試登してまで、その課題にこだわってフリーで登りたい!って人も、かなり少ないハズです…先に飽きちゃう…
ので、現実的には、
一般人 → 4)の解。TR限定で登る
エリートクライマー → 1)の解。ゆとり(安全マージン)を増やす。
自分のRP限界グレードが5.14なら、5.12では落ちないだろう、ということです。
5.12が登れる人だと5.8で落ちるということは、考えにくいので、ソロイストなどのソロシステムで登ることも可能になります。
5.8がギリギリの人が、ソロイストで5.8を登ると、ソロイストの信頼性は低いので、非常にリスキーな行為になります。
(5.12)- (5.8) = 4
で、4グレードの開き。
一般にアルパインルートでは、2グレード下が適した安全マージンと言われています。
しかし、ランナウトやブランクセクション、では、4グレード開きが要るかもしれませんね。
■ 日本の岩場のボルトの現状について
カットアンカー=外してみないと安全かどうか?が確認できないボルト、です。
つまり、以下の見識では、クライマーは自分を守ることができません。
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日本の岩場の今の現状では、リボルトも、なかなか進まないだろうし、クライマー自身が知識を持って、自分の安全を守ることが大切だと思う
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この”思想”は、現在、一般クライマーが共有している、マジョリティが持つ思想だと思いますが、この思想では、安全性を確認した、とクライマー本人が思ったところで、まったく確認は取れないということです。
つまり、もはや、この思想が通用する時代ではない、ということです。残念ながら。
何度もいうようですが、
カットアンカー=開けてみないと外から分からない
です。私はレンチを持って行きましたが、今回、六角レンチを持ってきたクライマーは何人いたのでしょうか?
つまり、カットアンカー= 時限爆弾と同じ、です。
この、クライマー自己責任思想、”思う”のは個人の思想なので、思いたけければ思えば、それは自由であるのですが、それがあるべきクライマー像だと人に強要するのは、無理がある、ということです。
現実は、カットアンカーのルートが9割、JFAが認定したグージョンのルートは1割もあるかないかでしょう。
つまり、JFA認定のグージョンでない限り、そのボルト自体の安全性をクライマーが自己責任で受け入れるためには、ボルトを外してみて、中身を見ないことには分からないということです。グージョンですら、レンチで回して、効きを確かめる必要があります。
自分自身が知識を持って、自分自身を守る
というのは理想論ですが、それはハッキリ言って、実現されていないどころか、その理想論の裏を掻くような、ボルト事情です。つまり、その理想論を地で行けば、
カットアンカー引っ張ったり、いろいろしてみて、まぁ、大丈夫そうだから登ろう!
ということになり、
落ちてボルトが外れても自己責任、
となります。外からでも分からないし、引っ張っても分からないのに。
つまり、現在通用している、流布している、クライマー自己責任論をあまりに強く言いすぎることはクライマーの間に事故死を増やします。
現実的に、クライマーが自己責任を取ることが不可能な現状が広がっているからです。
開拓者の人たちには、いつ、だれが、どういう材質のボルトをどのような技術で設置したのか?を明らかにしてもらわないといけません。
それだけ開拓者は責任が重い、ということです。いったん設置したら外目には分からないのですから。
さらに言えば、自分で打ったボルトを開拓者は登っていないことすらあります。開拓者はオンサイトと言うことは一切ない人たちです。開拓をするということは、すべての登攀が、トップロープリハーサル、ということです。
なぜ、開拓者たちがそうしているのか? 誰にも指摘されないですが、それがもっとも安全だから、なのではないでしょうか? ボルトを打った本人ですら、信用しないボルトをほかの人が信用する必要はないのでは?
■ 法的見地
法的見地からは、日本のボルトの実情は、自己責任を取ろうとしても取れない状況です。
なぜなら、国際的に最低基準とされる25kNが出ているボルトはほとんどなく、材質も明らかにされず、トポにも誰が、何年に打ったボルトか記載もされず、判断の根拠が全くない、からです。
このような状況下で死亡事故が遭った場合、”自己責任で登ります”というクライミングジムでよくある一筆があったとしても訴訟では負けること確実だそうです。
つまり、
カットアンカーのボルトを量産しつづけること=クライミング界に単なる登れない負の遺産を量産し、リボルト負担を増やし続けること、
にほかなりません。
単純に開拓者の人は、情報弱者に陥り、このことを知らないだけだと思います。
ぜひ、この知識が開拓者も含め、多くの人に広まることを願っています。
そういえば、リボルト職人の検定を受けた、トシゾーさんも、感想で、よくこんなボルトでバンバン落ちていて死ななかったものだ、運がよかった…と言っていました。
祐介さんらと登る強いクライマーです。