2026/01/30

決して落ちてはいけない(墜落を許容できない)ケース」

共通する大原則は、「システム(支点・ロープ・着地点)が墜落の衝撃を安全に吸収できない状況」では絶対に落ちてはいけない、ということです。


1. ボルダリング(ボルダー)

低高度ながら、マットやスポットの状況がリスクを左右します。

  • ハイボール(高高度): 5mを超える高さ。マットがあっても骨折や頸椎損傷のリスクがあり、墜落は致命的になります。

  • 悪い下地: 下地がデコボコ、または鋭利な岩がある場合。

  • マントルを返す瞬間: 岩の最上部でスラブ化する場所。足が滑ると制御不能な落ち方になります。

  • 不適切なスポット: 注意散漫なパートナーや、マットの配置ミスがある場合。

  • 結露: 霧や夜露で足がノーモーションで抜ける可能性がある状況。


2. 人工壁(ジム)

基本的に「落ちていい」場所ですが、例外があります。

  • クリップ前の墜落: 1ピン目をかける前の低い位置(グランドフォールの危険)。

  • 足がロープに引っかかっている: 逆さまに反転して頭を打つリスクがある時。

  • 不適切なビレイ: デバイスのセットミスや、過度なロープの弛みがある場合。


3. リード(外岩スポート・スラブ)

傾斜とボルトの信頼性が鍵となります。

  • スラブ・緩傾斜(70〜80°): 岩肌を激しく擦り、棚(テラス)に叩きつけられるため。

  • 出だし(低高度): ロープが伸びきる前に地面に激突する(グランドフォール)圏内。

  • ランナウト中: 支点間隔が広く、墜落の軌道上に突起物やテラスがある場合。

  • 40年前のカットアンカー: 腐食や金属疲労で、墜落の衝撃で支点ごと抜ける(ジッパー)可能性がある場合。

  • 脆い岩質 × 浮石: 衝撃で頭上の岩が剥がれ、自分やビレイヤーを直撃する恐れがある時。


4. マルチピッチ

「高さ」が「遭難」に直結するシビアな領域です。

  • フォールファクター2の墜落: ビレイ点のすぐ上で落ちるケース。支点への衝撃が最大化し、システム崩壊を招きます。

  • 古いボルト・終了点: 比叡山に代表されるような老朽化した支点。体重を預けるだけで抜けるリスクすらあります。

  • 屈曲・トラバース: 墜落時に大きく振られ、見えない岩角や木に激突する可能性がある時。

  • 悪天候(雨・雪): ロープが水を吸って硬化し、衝撃吸収力が低下している時。


5. 沢登り

水と不安定な地形がリスクを増幅させます。

  • 滝の登攀: 下地が浅い水場や岩場である場合が多く、墜落は即怪我に繋がります。

  • 脆い岩・ぬめり: ホールドが信用できず、かつ支点が取れない状況。

  • 低体温症のリスク: 濡れた状態で動けなくなると、救助を待つ間に命に関わります。


6. アルパインクライミング

極限の変数が重なる「サバイバル」の領域です。

  • 遠隔地(リモート): 救助に数日かかる場所。小さな怪我が「生還不能」を意味します。

  • 高所(低酸素): 判断力が低下し、普段ならしないミス(バックアップ忘れ等)を起こしやすい状態。

  • 脆弱な支点(NP): バードビイクや極薄のピトンなど、静荷重には耐えても墜落衝撃には耐えられない支点のみの時。

  • ナイトクライミング(夜間): 支点の状態や下地が全く見えず、距離感が狂っている時。

  • 身体的・属性的マイノリティ: 高体重や高齢など、システムの物理限界や救助難易度を押し上げる要素がある中での無理な突っ込み。



提供されたテキストに基づき、リスク管理の観点から「トップロープ」と「リード」における決して落ちてはいけないケースを整理しました。


1. トップロープ(Top Rope)

「上から吊られているから安全」という思い込みが最も危険です。システムが正しく機能しないケースに注意が必要です。

【決して落ちてはいけないケース】

  • 出だし(低高度)の墜落:

    • ロープには「スタティックな伸び」があります。高度が低いと、ロープが伸びきる前に地面に接触(グラウンド)する可能性があります。

  • 緩傾斜・スラブ:

    • 墜落距離がゼロでも、滑った瞬間に岩肌で顔や手足を激しく擦り、重度の擦過傷(大根おろし状態)を負うため。

  • 終了点の支点が古い・単一:

    • 40年前のカットアンカーなど、老朽化した支点が一つしかない場合。自分の体重(静荷重)を預けた瞬間に支点が崩壊すれば、即、墜落死に繋がります。

  • 強風下での屈曲ルート:

    • ロープが風で煽られ、鋭利な岩角(アレート)に食い込んでいる場合。墜落の衝撃でロープ切断の恐れがあります。

  • ビレイヤーとの意思疎通が困難な夜間・強風:

    • トラバース(横移動)を含むルートで、ビレイヤーが登攀者の位置を把握できていない時。不意の墜落で予期せぬ「大きな振られ」が発生し、岩の突起や木に激突します。


2. リード(Lead Climbing)

リードでは「墜落距離」と「支点にかかる荷重」が物理的な生還ラインを左右します。

【決して落ちてはいけないケース】

  • ランナウト(支点間隔が広い)中の離陸直後:

    • 1ピン目、2ピン目をかける前。落ちれば確実に地面へ激突(グランドフォール)します。

  • 足がロープに引っかかっている時:

    • 落ちた瞬間に体が反転して逆さまになり、頭部から岩壁や地面に衝突するため、極めて致命的です。

  • 墜落ラインに「テラス(棚)」がある時:

    • 空中に放り出される前にテラスに激突します。ロープの衝撃吸収機能が働く前に時速数十キロで床に叩きつけられるのと同義です。

  • 脆い岩質 × 浮石(ルーズロック)地帯:

    • 墜落の衝撃で頭上の巨大な浮石を剥がしてしまうケース。自分は空中に逃げられても、剥がれた岩が自分やビレイヤーを直撃し、確保不能になります。

  • フォールファクターが高い状況(FF2など):

    • マルチピッチのビレイ点直下での墜落。出しているロープが短いため、全衝撃が支点と体にダイレクトにかかり、支点の破断や内臓損傷を招きます。

  • 老朽化したボルト(40年前のカットアンカー):

    • 「支点ではなく単なる目印」と考えるべき状態。墜落の動荷重(衝撃)を与えた瞬間に、ジッパーのように支点が連鎖崩壊する危険があります。

  • 悪天候(雨・氷結)での高所:

    • ロープが水を吸うと動的な伸びが低下し、支点への負荷が激増します。また、濡れた岩では自己脱出用の用具が滑って機能せず、救助待ちの間に低体温症に陥ります。


【比較まとめ:安全と危険の境界線】

項目トップロープ(高い方が安全)リード(中間部が最も安全)
低高度NG(ロープの伸びで地面に届く)NG(グランドフォールの危険)
高高度OK(空中へ投げ出される)警戒(ランナウトや支点荷重が増大)
緩傾斜NG(激しい擦過傷のリスク)NG(岩への接触・激突)
強傾斜OK(空中復帰が可能)OK(支点と岩質が確かならば)

警句:

二子山(スポーツの岩場)では「突っ込んで落ちる」のが正解でも、比叡山(アルパイン的な岩場)では「危ないと思ったら一段降りる、あるいはA0(ヌンチャクを掴む)する」のが正解です。