2023/10/10

【盲点】昔の5.12と今の5.12 リスクテイキングゼロの5.12

■[クライミングを語ろう68]同じグレードやのにジムと岩場はなんで難易度が違う?

■ この動画、3回も見てしまいましたよ(笑)

私は、アルパインクライマーとしてクライミングをしていたので、全くフリークライミングには詳しくないのです。

なので、フリークライミングの人に、「フリークライミングとは、こういうもんだ!」と自己主張されると、”そうなんだー”と思うしかありませんが、現れてきた現象については、まぁ、当然ですが、普通に事実を捉えることができます。

  事実: ”今の男子の5.12登れます”は、瞬間風速のこと。

具体的には、何分も、ある場合には、何時間もハングドッグで粘って、やっとこさ登れた5.12が、”5.12登れます”、です。なので、5.10bでも落ちたりします。油断は禁物です。

これはマシな人のことで、ひどい人だと、ジムグレードのことです。

■ 昔のクライマーの5.12は、どうだったのだろうか?

昔の人は、分厚いマットが敷かれたクライミングジムなどなく、5.12が触れるだけでも、そこへ積み上げるには、

 怖さ

をかなりな状態で克服しないといけなかったはずです。というのは、外の岩で、自分のギリギリにチャレンジするのと、インドアジムの分厚いマットや落下係数0.3に調節された人工壁で、5.12にチャレンジするのでは、

 心理グレード

が全く違います。

ので、私自身も、はじめっから外岩の小川山ストーリーは別にトップロープでいいのなら、普通に登れていたわけなんですが、5.9のオンサイトが確実になるまでには、2年半かかりました… 山梨時代です。それで、こちらに来てからも、命拾いした感じはあります。

同じ5.9でも中身が違います。その中身の差は、恐怖で、だいぶ違うわけですが…そこが、グレードだけで実力を測ると、捨て去られてしまうわけですね…。

 昔の人の5.12は、中身のぎっしり詰まった相当の実力

■ 日本の岩場は、”あるクライミング”理論に貫かれている

安易に…と私からは見えますが…男性はグレードを上げますが、それは安全のためです。

日本の岩場では、
 
 易しいグレードほど、恐怖グレードが高く設定

されており、

 難しいグレードは、ボルト配置が下手したら1mおき

で安全です。これは、クライミングで有名な論文があり、それに倣っているんですよね…名前は忘れましたが…。

その忘れた論文によると、リスク+難度で、5.12も5.9も同じになるように調整されているのです。

なので、日本の岩場は、基本的にはこの理論に貫かれている、ということなんです。

そこは、フリークライマーでも、古い人、昔からやっている人しか共有されていません。

ので、新しい人は、えー?!ってなりますね。

■ リスクは除外して、ムーブだけの難度表記にするのは新しい潮流

たしかに、外岩では、ムーブ自体は簡単で、リスクがやたら大きい…のが、一般的な入門ルートです。

ので、アルパインルートは2グレード下、と言われていますが、

 登攀力にゆとりをもっていても、防げないリスク

はある。その1は、ビレイヤーが下手っぴってリスク。大体、落ちないで登るのがルールであるアルパインクライミング育ちのビレイヤー(例:往年クライマー)は、ほぼ全員ビレイがダメです。

落ちたクライマーを確保した経験がないんだろうなと分かるビレイ具合…壁から2mも離れ、しかもダラリンで、フリークライミングのルートをビレイしています。

■ アルパインの外的リスク

だれかアウトドアのフリークライミングのリスクを検討したクライマーがいないのかなぁと検索したら、こちらの論文がヒットしました。

称名の滝フリーソロの時のリスク検討
https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/Portals/0/images/contents/syusai/2020/tozankensyu.vol35/tozan35_1-2nakasima.pdf


しかし、これもアルパインのリスクなんで、フリークライミングのゲレンデのリスクとは違うんですよね…

アルパインのリスクを理解して取ってきた人にとっては、フリークライミングのゲレンデってリスクフリーと言ってイイくらい安全安心感があります。

■ フリークライミングの外的リスク


サンプルとして、またしてもアイロンさんが提供してくれました…

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最近は東股沢の開拓やってます。

私が発見した美しい(けど浅くて途切れ途切れ)のクラックにラインを引かせてもらったんだけど、プロテクションが取れん。。。

核心のプロテクションが足下3メートルの良い音がするフレークにセットしたカム、なんてやりたくないよね〜

TRでは一撃できているからプロテクションに問題がなければ登れそうなんだけど、登るためにボルト打つ? それともボルトレスで登れるように鍛えてから登る?

スタイルとか安全性とか悩むときりがないけど、みんなどうやって折り合いをつけているんでしょう???
ーーーーーーーーーーーーーー引用終わり 太字当方

これ、フリークライミングで良く起きます。

■ 現代クライマー的解とオールドクライマー的解

 登るためにボルト打つ = 現代クライマー的解
 ボルトレスで登れるようになってから登る = オールドクライマー的解

です。

そこで、今いさかいが起きているんですよね。私はいさかいが起きるより、説明しろ、と思います。

例えば、トポに

 核心のプロテクションが足下3メートルの良い音がするフレーク

と書くか、Rをつけておけば良いです。RとかXってそのためにあるんでしょうし。

個人的には、ボルトを安易に打つのには反対意見です。

■ 誤解を受けることと無理強いされること

私がクライミングで、特に少し前まで登っていた人との間で起きたことで嫌だったことは、

 TR派だと誤解を受けて非難されること
 
 と

 すでに無理しているのに、もっと頑張れと無理強いされて心がすり減ること

の2点でした。

この誤解は、誰にとっても、5.9は同じ困難度だ、という誤解に基づくもの、だからです。

落ちたときのリスクも、誰にとっても同じだ、というは誤解です。おばあちゃんがこけただけで5か所も骨折するのは、30代男性がこけたときと同じリスクと思いますか? 女性のほうが男性より、壊れやすい、です。

過去に、私が連れて行ったアメリカ人クライマーは佐世保勤務の軍人さんで、33歳でごっついパワーの人です。

その人は、愛のエリアの5.9夢中歩行はオンサイトできなかったんですよ?

私は念のため彼が現地の岩慣れできるように、別の5.9トップロープを張ってあげ、さらに5.10Aも登らせてあげたのに…。これだけの好待遇で、彼が怖いというのなら、私がいきなり一本目でオンサイトできたのは、すごいことでしょう。

私の日向神一本目は、この課題で、1ピン目はるか遠くです。

降りて来たら、クライマーに、

「これが遠いって文句あるなら、この岩場に来るな!って意味だよ」

と言われました。男性です。しかし、5.12で同じ状況か?全然、ボルト近いです…

■ 身長が低いというハンデ=恐怖グレードが上がるですよ?

私は身長が152cmなので、同じスタンスに立っても届くところ違います。

マスターとぬんがけリードはエライ差です。

しかも、一回リードで落とされて、頭縫っています。血みどろの岩場になって救急車です。身をもって安全とは何か?学び中です。

クライミングで、新人さんや、その岩場に詳しくない人は、何を登るべき段階か?分からないというのは真実です。なので、これを登ったら、どうお?というのは親切ですが、それを無理強いするのは…。

 虐待です。

■ 人に勧められて登ったルートは印象が薄くなる

私も大堂海岸で、スーパークラックはやっておいてよかったなとは思っていますが…。

これは、私は疑似リードで取りついた課題です。

しかし、自分で選んで登った5.8のほうが印象に残っている。登って楽しかった。何が課題か見えた。

長いハンドのスーパークラックのほうが私向きと分かりました。

■ 自分の基準で人を裁くとは?

ラオスへ行ったとき、13を目指しているヒロさんは、私が6Aでテンションして、スイマセンと言ったら、「俺らも同じよ」、と言いましたが…

体の性能は人それぞれです。その性能の限界にチャレンジしているときに、感じている感情は同じです。

ですから、ギリギリにチャレンジしているときのグレードは違っても、みな同じです。

私のギリギリが5.10Aで来ることは、クリップする余裕がなくて、ノークリップで抜けてしまう、ということからも分かると思います。

日本の大体の10Aではそんなことはありませんが、米澤先生の課題は辛いことで知られ、一本そんな課題があって、それは米澤さんの10Aだったので、多分10Aじゃない(笑)。
…cとかだと思う… 

これがグレードで騙される弊害というか、リスクです。辛い上にランナウトしていると、もっと最悪です。

あー、ホントあれは落ちなくて良かった…と思いますが、トポにその旨書いてあるか?というと書いてありません。本人が、俺の課題は、Rです。と書くかというと?書かないでしょう。

開拓者と言うものは、自分の作った課題を登ってほしいものだからです。

…という事情なので、頑張っていない子呼ばわりされると、大変、腹が立ちます。

その頑張っていない子呼ばわりですら、そもそも、そう呼ばわってくる人が、共感力というよりも、そもそもクライミングに対する理解力が低い、ということに起因するのですから…。

つまり、自分は全然ギリギリを登っていないくせに言っているのですから…。

■ エリートが作った岩場

日本の岩場は、基本、昔のアルパインクライミングのエリート族が作ったものが多いです。

で、5.12を登れるようでないと、そもそも楽しめないようにできている、とあの北山真さんも著書の中で述べています。

この問題の回避のために、初級クライマーはみんな海外に行くんですよ?

理由は海外では、5.9は5.9のクライマーのためにボルトが打ってある岩場があるからです。

でないと、5.12を登る前に死んでしまいますよね?

私はすでに頑張って、心がすり減っただけでなく、右膝や左のアキレス腱は、もう生贄に差し出した的な様相です…、つまり頑張りすぎ、です。

クライミングではまるでお荷物みたいな扱いを受け、なんだか頑張りを理解してもらえなかったので、納得がいかなかったです。

その上、なんで私をお荷物扱いする人に、国際ガイドをしてやらないといけないのでしょう??? 私のスキルはハードアーンドです。仲間でしょーとあなたが主張するだけ仲間待遇は、もらっていないです。仲間でしょう、を主張する人ってテイカーですよね?基本。

今水泳で、他の人からみたら、ホントに初めてですか?と言われるくらい上手に泳げるので、クライミング、別に下手くそでないんじゃないかと、先述の米国人クライマーと比較しても思いました。

ただパワーがないだけなのです。そんなの女性であれば当然です。女性は男性にはなれませんし、なりたいとも全く思いません。

私は握力17Kgなんですよ?握力65kgの人がクリップ飛ばすガバで、飛ばせずクリップしたいのは当然かも?

というわけで、理解力が問題だという結論です。こんなの、ジム壁登っていても分かるようなことですけど?