2023/10/19

【開拓】開拓には正解があるのか?

■ 東さんのFBからの転記。

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新岩新ルート

私は今、痛いかかとをさすりながらこの文を書いています。

夏くらいから新しいラインの掃除にかかっていましたが、300本以上開拓している私が300数本目を作るよりも、まったく開拓の経験のないクライマーに人生の1本目を設定して頂こうと加藤遥さんに声をかけました。

彼女はクライミングが上手く、やる気満々でしたが、これがあとでひどい目にあう端緒となります。

私のガイドで彼女のボルト打ちも順調に進みました。最上部に差し掛かり、終了点まであと数メートルのところで私は「間隔的にはあと1本くらい入りそうだけど、どう?」と声を掛けました。

彼女は「ここまで来たクライマーなら最後は絶対落ちないのでいらないと思います」ということでした。

そしてその後のクライミングではみごと1回で登り、「初登」を果たしました。グレードは5.11b、ルート名は「生活の知恵」とのことです。

後日、私はそのルートを登ってみました。中間部のホールドは細かく適切なシークエンスを見いだすのに苦労します。また最後のハンガーにクリップした後、ややランナウトした状態できわどいマントリングがあります。

私は肩の手術をした後、肩関節の可動域が狭くなり手が背中の方に回りません。「最上部はイージー」という加藤さんの言葉が頭の中をコダマのように響く中、マントリングの右手プッシュができず、身体は岩から剝がされてしましました。

緩傾斜の下に打たれたハンガーからランナウトしてフォールすることほど怖いものはありません。どこまで落ちるのか、ロープの中に足を入れていない体勢なのか分からないからです。結局6mくらいフォールしました。

初登者の意見を尊重してグレードは5.11bとしていますが、近郊の岩場のプロミネンス(5.11b)よりは難しいと思います。

生活の知恵 5.11b ボルト6本

 下部はクラックとフェイスを使用したクライミングとなる。ルーフでのロープの屈曲を避けるため、ルーフ下はややボルト間が遠いので注意。

またその付近の左側の岩は少し脆い。(ボルトは硬い部分に打たれている)

ルーフ上のチョックストーンを取る部分がやや悪い。チョックストーンから上は左のカンテ方向に行き、右には逃げない。その後も終始カンテ付近を登ること。

核心は左へのトラバース及びその上のパートであるが、最終ピンの上も悪いのでランナウトに注意すること。

最後のスラブはランナウトしている上、ホールドが乏しいので泣きながら登る。ルート内容は素晴らしい。

ーーーーーーーーーーーーーーー 赤青当方

■ まとめ

・感覚的にはもう一本入りそう ← ベテランの意見より初心者の意見が優先されている

・ここまで来たクライマーなら絶対に落ちない ← とは言えない。客観的根拠なし

・中間部のホールドは細かく適切なシークエンスを見いだすのに苦労 ← 男子は大体細かいホールド苦手だよなぁ…

・最後のハンガーにクリップした後、ややランナウトした状態できわどいマントリング ← マントル苦手な人には向かない

・緩傾斜の下に打たれたハンガーからランナウトしてフォール ← ロングフォールのリスクあり

・近郊の岩場のプロミネンス(5.11b)よりは難しい ← みんなの意見を入れてグレード確定したらどうなのか?高難度ルートは、みなそうなっている

■ これが開拓者(初登者)の現状だということを踏まえると?

何が表現されているのか? 自己表現って…ってなりますね。

これらが意味する自己表現は何なのか?っていうのは、意味深ですねぇ…。

ランナウト好み×激辛好みは、日本人のもはや伝統、みたいなかんじかもしれませんね。

トポに書かれる情報ですが、スラブでランナウト、マントルでロングフォールの可能性、というのは、訪れるクライマーのために書いておく必要があるリスク情報のような気がしますね。

11bを普段登る人が、11bだ~と思って取りついてよいか?という視点で見ると、そうでもない、と言うニュアンスや警告も必要かもしれません。

■ 観光目的での ”老若男女が登る健全なアウトドア活動としての市民クライミング”

には、遠い感じであることが分かりますね…

安全安心にのぼれるための改善には、

 1)1本入れる

 2)グレード表記を11bから11b+か、11cへ

が必要みたいだということは、東さんというベテランがいれば分かる。ということは、ベテランのベテラン足るゆえんの知恵を生かしてこなかったのが、日本の岩場ってことなのかなぁ…

1本多くて、11cになったところで、このルートの価値が下がるか?というと、下がるとは思えないけどなぁ。

あの大開拓者の東さんが泣きながら登る… 

これって海外のクライマーが日本に楽しみとしてきたときに、楽しんで登れるんだろうか…?