2024/04/02

【クライミングによる地域おこし】小鹿野のクライマーズトーク

 ■ 小鹿野のクライマーズトークに出席してきました

小鹿野はクライミングによる地域おこしを町の議員が、後押ししていることで著名で、いつかは会いたい…とは思っていました。

しかし、日本の石灰岩の岩場は、つるつるに磨かれて、グレードが機能しなくなっている…ということを、ラオスの登攀前に行った奥多摩の岩場で知ったので、「私のような、ヨワヨワクライマーには、ちょっと石灰岩は…」というので、登りに行くことができず(行っても、一個も登れるのがないのでは…汗)、会いに行くにも用事がなく、で、遠目に見るだけでした。

今回、古い開拓者を招いたクライマーズトークがあり、その上、最近、平山さんがデイドリームを登ってくれたので、うれしく思い、ちょうど翌日に、分子栄養学のディプロマ授与式が日本橋であったので、ちょうどよい機会というので出かけてきたのでした。

■ 小鹿野=秩父、でした

行ってみたら、小鹿野町というよりも、秩父が最寄りの町だということが分かりました。

東京郊外の岩場ということで、東京方面のクライマーにとっては、ホームの岩場、ということが分かった。

私は山梨クライマーだったので、まぁ、当然、わざわざそんな不便な岩場に行かなくても、甲府から普通に小川山に行くのがいいので、全く知らなかった。

しかし、これまで見た、どの岩場の最寄都市よりも、観光地化がすでにされており日本にアウトドアツーリズムによる、クライミングを導入するにあたっては、小川山を凌ぐ最適地と思われました。

■ 対小川山

小川山は日本で最大のクライミングメッカですが、それは歴史的経緯により、花崗岩からクライミングはスタートして石灰岩に進んだからです。

一般的に言って、花崗岩はスラブやクラックで、石灰岩はオーバーハングの岩場、であり、登り方が違います。

現代のインドアジム上がりのクライマーにとっては、ジムでムーブを練習することができないスラブやクラックよりも、ムーブが共通しているオーバーハングのほうが登りやすいはずです。

仮に現在増えているクライマー人口を取り込むとするならば、石灰岩の二子山のほうが、小川山よりも可能性があるのかもしれません。

小川山: 花崗岩、クラックやスラブ、古いクライマー、ジムでムーブが習得できない

二子山: 石灰岩、オーバーハング、新しいクライマー、ジムでムーブ習得できる

このような違いがあり、小川山には現在、海外クライマーの来訪もあると思いますが、二子山はそれを凌ぐエリアになれる可能性があります。

■ 開拓者に聞いて分かった再整備が進まない訳

今回は4人の初期の開拓者が招かれていました。寺島さん、大工さん、堀さん、佐藤さん、です。80年代に開拓がスタートしたときは、全員がフランスのブローなどに行ってきて、「おお~!」と感動し、これを日本に!と思ったのだそうです。

しかし、開拓に、他のチーム…例:チームたわしなど…が入り乱れると、なぜかグレードは激辛になったのだとか… 競争心でなんかそうなっちゃったんだよね~ということでした…。あちゃー!って感じですが、それを修正する機会も訪れないまま、現代へ、つながってきた、ということなんですよね…。

ボルト連打のボルトラダーからスタートしたそうです。そこからフリー化されていったプロセスで、適切なボルト配置みたいな配慮があったりのなかったりの、いろいろなのでしょう…ルートも隣り合ってぎゅうぎゅう詰め、たまに隣と被ってしまう、という場合もあるようで、その辺は、大体の岩場が共通する点みたいでした。

つまるところ、当時としては合理的であったものの、時間が経つにつれ、ますます適切ではなくなり、それ自体の問題や障害となっているっていうことでした…

不適応になってしまったんですね。

■ 不適応⇒適応 には、岩場のグランドデザイン、が必要

岩場全体のグランドデザイン、というものが、まぁ全くない…ですね。

そりゃそうだ。要するに、デパートのバーゲン会場みたいに、我も我も!と殺到し、その殺到が、ごちゃごちゃの岩場を作って、そのまんま、ということなんです。

しかし、いざ、さて、誰が整理整頓する?となると…? みんなが顔を互いの顔をみあっている…というお見合い状態なわけですね。

しかし、若手開拓者でトップクライマーのサチさんみたいなクライマーでも、やっぱり

岩場のグランドデザイン

を手掛けるには、まだ視野の広さが足りないわけで、やっぱりユージさんがやるしかないのではないでしょうかね?というのが私の感想でした。

なんて言っても、もし、日本の石灰岩の岩場、として世に売り出すならば、小川山と競うのではなく、備中と競うのではなく、ブローと競うわけですし、アルコと競うわけですし、ラオスと競うわけなので、国内的視野ではなく、必要なのは国際的視野

各国の岩場を登って知っているクライマーって、そんなに数がいないはずです。ユージさんがやっぱり適任なのでは?っていうか、そのためにユージさんは、いろいろな海外の岩場に導かれたのではないかと思いますけど…。

■ クライミングの良さを一般市民に伝える 

協会では、頑張って協会員を増やそうとしているようでしたが、それは必要ないのではないかと思いました。

それより、一般の小鹿野市民にクライミングの良さを理解してもらう活動が大事なのです。

例えば、一つのルートを巡って、孫、子、親の三世代が話ができるスポーツってそうないですよね?

クライミングは国際用語でもあり、英語が話せなくても、クライミングさえ分かれば、国際交流もできます。

海外では、クライミングは、子供も、おじいちゃんも、おばあちゃんも、ちょっとお散歩とか、ちょっとボーリング、くらいなノリで出かけて行って登ってくる、みたいな活動です。

■ 海外vs日本

日本のアウトドアクライミングは、アルパインクライミングの印象が強すぎて、死の山、谷川岳に向かうクライマーのイメージで、クライマーなんて、いったいどんな死にたがりの、精神分裂症気味の人が行くものだろうか?という印象がぬぐえていませんが、そんなじめじめ、根暗のクライマーは加藤文太郎のイメージなんでしょうか?

今ではすっかりジムで明るく楽しいのがクライミングになったんですけど?

でも、一般の人が、クライマーを 危険なことを行う人物、と思っている限り、支援を受けるのは、難しいわけですから、結局、その先入観を覆し、

 明るく健全なクライマー像

をクライマーに対して持ってもらう必要があります。

ま、4人の開拓者の話を聞く限り、昔は、クライマーになるってことは、堅気の世界を降りる、みたいな意味だったみたいなのですが(笑)。

しかし、40年たって、若い人は3年以上、大企業に勤めていれば、労働市場では評価されない時代になり、昔の開拓クライマーのような、自力で職業人生も切り開いていく才覚が必要とされる時代になり、むしろ佐藤さんのような生き方のほうが望まれる時代になりました。

■ 一般クライマーの視座

さて、普通の一般の日本人クライマーたちですが、まぁ地域おこしをするような視点の高さは期待できないですね…

ボルトのおっかけで楽しくて仕方がない、という状態にいて、岩との対話もまあ、ほぼほぼお留守です。

開拓クライマーは、難しい文章題を解くみたいな感じで、岩と対話しています。

一般クライマーは、単純な計算問題を山ほど説いて基礎的な数学力をつけるみたいな感じで、さしずめ、ジムは公文で数学やってます、みたいな感じなんですよ。

だからセッターが忙しくなる。どんどん課題を変えて!みたいなことになります。

■ 私にとっての小鹿野

私にとっては、えーん!九州でクライマーにいじめられ、死にそうな目に遭ったよ~(><)となったのを、「よしよし」してもらっているような、そんな気分な会でした。

ギンちゃんがいたので、世界最高難度のアイスと天野さんと登ったクラシックルートの違いを聞きました。

サチさんとは、開拓者になるとFAはできても、オンサイトが出来ない、という点について、考察をもらいました。

この2点については、別トピックで取り上げます。しかし、こうした点を教えてくれるにあたって、なんでそんなこと聞くんだよ?みたいな反応はなく、二人のトップクライマーは、丁寧に考えや感じを話してくれました。

九州ではこういう話ができる人が皆無だった…(汗)。みな俺が俺がの自己顕示欲モードでしたが、それがなぜなのか?後で80代の女性を山に連れて行って分かった…。九州では儒教文化なので、え?僕の分は?となっている人が多いのです。俺の人生は?私のは?って。

なので今こそ俺の人生を生きるぞ!という行動が分かりやすく、自己顕示に今表現されていたりします。

ギンちゃんも、サチさんも、クライミング、という点では、うんと大先輩です。私とは、年齢は下ですが、子供に教えるように、分かりやすく解説してもらってうれしかった。

■ デイドリ

一方、デイドリームの再登について、ユージさんに聞いてみたのですが、いまいち、ロクスノ記事以上の情報は得られませんでした。

まぁ、故・吉田さんとユージさんって、そんなに仲良くもなかったみたいだしなぁ…。

私は、小峰っちの初登が出たとき、なんかなぁ…イマイチな内容だなぁと思ってしまったのです。ユージさんのきちんとした内容が書かれている再登情報が出て、どういう内容のルートかということが分かりやすく、ほんとにうれしかったんでした。それに、グレードも、経験豊富なユージさんが言うなら、間違いがない、と思います。

グレードって、ある程度幅広く、いろいろな人の課題をいろいろな岩場で、いろいろな国で登っていないと、適切に付与できないんじゃないですかね?

私は、グレード的には5.10代を登る一般的クライマーですが、それでもピラニアよりは、ベーキャンはグレードが易しく感じられ、奥多摩の石灰岩は5.8でも登れなかったのに、ラオスの6Aは、一日4本~5本登って、全部オンサイトです。つまり、易しく感じる。そういう大まかな感覚と言うのは、多くの人が共通で持つものなので、インターネット時代、グレード付与は、それこそ投票でやればいいのではないかと思います。

(たぶんTheCrag.comでは、それが可能になっていると思います。誰かが二子山のページを作ってくれたら、私が日本語に直してあげますよ)

クライミングによる地域おこしについて、それに生かせそうな、多様な職業経験が私にはあると思いますが、一般的に言ってクライマーって社会人経験自体が皆無なので、履歴書からその人を推し量ること自体ができないのだろう…ということも分かりました。

山梨に行ってすぐのころ、アルテリアで翻訳の仕事をしてあげたいと思ったので、声をかけたことがありましたが、?な反応されました(笑)。私はテクニカルライターや医療系翻訳の経験があり、職業的に翻訳者をインハウスでやっていたんで、その辺のボランティア通訳者と同列に思われたらしかったのが心外でしたが…。なぜなのか?今回で分かった(笑)。

相手側の社会人経験が不足すると、相手の価値が分からない、ということなのです。

とまぁ、以上のような感想でした。