2024/04/11

【クライミングによる地域おこし】熊本五木・天狗岩 について考察

■ 故・飯山健司さん

熊本五木天狗岩は、

 あの故・飯山健司さんが

「おれ、ここに住む!」

と言ったほどの、石灰岩で、石灰岩の岩場としては日本最大級と目されている岩場です。

しかし…ある場所がなぁ。五木。

五木と言えば、五木の子守歌で知られる、熊本の平家の落人の里で、まぁ辺境・奥地です。

日本で辺境と言えば、めっちゃ不便な場所にあるってこと。

つまり、ローカルの人も、え…五木かぁ…と躊躇するような遠隔地にあります。

しかし、素晴らしい岩場であることは間違いないようです。

ただ、当然ながら、地元行政は、五木天狗岩の可能性に気が付けるクライミングリテラシーがあるか?ないですよねぇ…。

例えば、ギリシャのカリノモス程度でも、行ったことがある日本人は超少なく、結局、日本人にとってのクライミングって、外岩ではなく、人工壁のことで、勝った負けたの切り貼りのことです。つまらん。お受験と同じです。そんなつまらん価値観は、小学生で卒業したぞ?

さて、その五木ですが…。

■ 最悪のケース

五木の地元行政に開拓許可が取れる。

しかし、その一方を聞いた途端に、開拓技術の未熟な全国の開拓者が一斉に岩場に集まって、岩場全体としてのグランドデザインがゼロのまま、なし崩し的に開拓がはじまり…それは結局、誰が一番難しいルートを引くか競争なので、結局、その岩場の個性は無視され、岩場としての整合性より、無理に難易度を上げたルートばかりになり、結局のところ、他の全国の岩場と同じ、5.11~5.12に収まり、せっかくの岩場が台無しになる。

オマケに違法駐車で、全国から集まったクライマーがみな浮浪者みたいな様子なので、地元住民は、その様子を見て、上野のホームレス炊き出しみたいになるんじゃないか?と超不安に。

ルートも混みこみぎゅうぎゅうで、見つけづらく、あるルートを登ったつもりだったら、上部で他のルートに行ってしまっていた…ということが頻繁に起こり、ナチュラルなラインになっていない。

誰もがこぞって開拓したいと大急ぎで開拓するため、安物ボルトを使って、なおかつボルト数を節約する。

その結果、ボルトも遠く、とても、5.9を登る人が5.9とつけられた課題に取り付ける状況にない。

当然のごとく、死亡事故が起こって、登攀禁止になる。

■ 最善のケース

五木の地元行政に開拓許可が取れる。

そして、地元行政は、開拓許可の代わりに以下のような条件を付ける。

・決して事故を起こさないこと

・事故を未然に防ぐこと

・近隣住民の迷惑になる行為は現に慎むこと

・環境破壊につながるような行為は、事前に町に相談すること

・クライマーの責任と行政の責任をきちんと線引きすること

これを受けてクライマーたちは、

・事故を誘発しない作りの岩場の開拓に何が必要か?と思案し、墜落に耐える適正ボルト間隔墜落に耐える強度のある適正ボルトを使う。

・安全性を第一に考えた結果、混みこみぎゅうぎゅうは、ビレイの関係からも不適切と判断される

・石灰岩のどっかぶりであるので、その石灰岩の適正に見合った開拓が指向される

・佐久の岩場のように、プリクリップが必要な課題にはトポにそう記載される。


■ 石灰岩の開拓は、花崗岩の開拓のような見栄っ張りができない

花崗岩って、見栄、張れちゃいますよね…。ほんとは怖いのに、いや俺は怖くねぇ!って、こんなところでボルト打ったら、弱虫って思われるかなぁ?とか思っちゃって、ボルト打つのは、あと1m先にしよ~、とかなっちゃいませんか?

だから、花崗岩って、結構、見栄っ張り路線なんですよ。

■ 下手くそリードを見て参考になった

見栄っ張りリードと言えば、アイスクライミングで相沢大滝に行ったときのことがありました。連れて行ったビレイヤーが、私がリードすると言ったにもかかわらず、心配して、「いや俺がリードするよ」と言ったので、そんなに自信があるなら、してもらおうか…となったのですが…

あちゃー!ってリードでした…。

・まず、トータルの登攀ラインを見ていない。

・次に、見栄っ張りで、強点に取り付いた (下は難しいライン)

・しかし、登りながら弱気になって、弱点に流れて行った (上は簡単ライン)

・そのせいで、ルートが屈曲し、ロープが90度近くに屈曲

・結果、くねくねしたリードラインになった

ね?経験の浅いクライマーにリードさせると、どうなるか?こうなるんですよ。

もしかしたら、これがスタートだけが難しくて上に行くほど簡単になるルートの起源かもしれませんね?

アイスクライミングなら、まだ岩は傷つきません。氷はアイススクリューでリードするので、失敗しても自然界は無傷です。

しかし、岩に取り付いて、上記のようなリードしたら??? 

それでも初登は初登とか言って、このヘンテコなリードラインを保存します?したくないですよね?だって、最初から失敗丸見えなんですよ?

アイスクライミングは、クライミング自体は簡単です。なので、出来の良しあしというのはリードラインの美しさの勝負なんですよ。

これは僭越ですが、わたくしのリードライン 教育をきちんと受けていると分かるラインだと思う


そういうことを分からないで10年以上の時を過ごすことができるっていうのが、そもそも不思議ちゃん、なんですが…。たぶん、ジムで正解ムーブを見つけることを課題にしているとそうなりますね。

つまり、何年経験を積んでも、自分でリードし、正しい師匠から教わらない限り、岩や氷との対話については分からないってことです。私が青ちゃんと組んだのは、たった1年、それもアイスは登れる季節が短いので、3か月だけですからね。

こないだ小鹿野のクライマーズトークで宴会に出たら、クライマーと一杯、喋れて楽しかった♪

みんなこんな話してるんですよ… 

どうりで、このヘンテコリードした人とクライミングの話題で話が盛り上がらない…と思ったんですよね。

だって、私、クライマーでも相手によっては無限にクライミングの話で盛り上がれるんですよ。洋の東西を問わず。

こないだも、ギンちゃんやサチさんにいろいろ教えてもらってうれしかった。

■ 私の個人的な意見

花崗岩ではなく、石灰岩を開拓するなら、ギリシャのカリノモスみたいな、ジム上がりクライマーが外岩クライマーになるのに、易しいルート、5Cから、9Aまで、一通りそろっているような、そんな岩場になったら、ジムクライマーばかり増えて糞詰まり状態になっている、日本の閉塞したクライミング状況の突破口になるかもしれないと思います。

日本にはジム出身クライマーが安全に楽しめる岩場がほとんどない。

沖縄の岩場の開拓が参考になるかもしれない。

石灰岩をきちんと岩と対話しつつ開拓できるトップクライマーって、

ユージさんくらいなんじゃないんでしょうか?

だって、アルパインのクライマーは、フリークライミングは、花崗岩止まりの方がほとんどです。石灰岩は無理そう…なんせ被っているから、今日本に存在する平均的なアルパインクライマーの思考回路では、被ったとたんにエイド出しそうです。

アイスクライミングですら、トップのクライミングは、どっかぶっていて、アックステンションはしないで、それにスクリュー打つんですよ? 腕力の関係で、そんなに頻繁にはプロテクションを出せないのでロングフォール前提です。師匠が教えてくれました。

しかし…40年前に時を止めた九州のクライミングシーン…そして、ボルダラーの人は、ロープにぶら下がってボルト打つとか、できないんじゃないですかね?

私は九州出身のクライマー、叶うなら熊本の人が開拓のグランドデザインをするのがいいとは思いますが、人材いないような気がします。

私が見た中ではユージさんがグランドデザインを引くのが、一番岩場の個性を生かすことになると思います。

ユージさん、昇仙峡の11C、11Cとつける、心のやさしさ。

故・吉田さんは、あれ、私に11bと言って触らせていたんで…吉田さんは、グレード厳しめだったみたいです。

ユージさんは若いときからヨーロッパ中で登って、ヨーロッパグレードを体感しておられるので、

”こんなの、俺にとっては11bなんだよ!”というエゴの声ではなく、

”俺には簡単だだけど、これって客観的に見て、11cだよね~、普通の人にとっては”

って声の方を選んでグレードつけると思います。

11bを触るのは何とも思わないけど、11cって言った途端に、わたしなんかは、最初から登れるわけない!と思って敗退しちゃいますから、11cを11bと言ったのは、吉田さんの思いやりだったのかもしれませんが…。

という以上のような考察でした。

心のないクライマーの餌食に、熊本・五木の岩場が食い物にされないことを祈っています。

         故・吉田さんと過ごした昇仙峡の春 8年前の今頃