2022年1月2日の記事です
■ 仏教説話
私は毎日仏教説話を聞いています。今日の仏教説は、願行具足、のお話でした。
願いと行いの両方が十分に満たされると何のために → 事故を減らすため
正しく理解 → 市民クライミングと競技クライミングは異なる
技術を学んで → 知識を普及する手段を得る = 行政のパイプと繋がる
実践する → 様々な手段で、事情を説明して回る
です。
■ なんで自分の得にはならないのにやっているのか?
私は、すごく良い師匠に恵まれ、頼まなくても向こうから師匠がやってきました…。
なので、自分一人が楽しく登っている分には、何にも問題がない時代が山梨時代でした。
とっても楽しかったので、他にも人をお誘いしようとしたのですが、なかなかうまく行かなかったです。平たく言えば、師匠らのお眼鏡にかなう人がいなかった、です。
このボルトは、ペツルのハンガーが付いていても、カットアンカーであって、施工が良くて15kNしか強度がなく、ガンガン落ちるようなクライミングには耐えられないだろうから、テンション程度にしておこう…というような知識に基づく知恵が現代クライマーにはない、です。
グージョンとカットアンカーが見分けられなかったら、分かるはずがありませんし、落ちないように登る知恵も出てこないです。
ずばり、現代日本のフリークライミングに必要な教えは
1)3ピン目を取るまではクライマーは、決して落ちてはならない
2)本チャン(マルチ)は、2グレード下げる
3)山の支点(ゲレンデであっても)を全信頼してはいけない 残置は信頼してはいけない
です。
4)岩場のグレードを信頼してはいけない
5)ボルト配置が適正ではない課題を見極めて登らないといけない
5)ギリギリに迫っていいのは、人工壁のスポーツクライミングだけ
です。
外岩のボルトルートはスポートルートと呼ばれ、建前上、バンバン落ちながら登っていいという定義がされています。しかし、それは信頼できるボルトがある場合のみ。現代の岩場ではほとんどの岩場がボルトが40年経過しているし、しかも、当時のボルトなので、必要な強度がありません。しかも、異種金属とか、カットアンカーとかです。
ギリギリに迫っていいという建前は、現実のものではない。が、現実の岩場では、”3ピン取るまで落ちるようなクライミングをしてはいけない”、です。
ラオスでは、例外的に、ボルト配置が極めて安全志向で、近くに打たれています。つまり、5cというグレードなら、5cを登るクライマーのためにボルトが打たれています。
国内岩場では、ケミカルにリボルトされた岩場であっても、ボルト配置がそのグレードを登るクライマーのために打たれているとは限りません。また、安全なボルト配置は、登るクライマーのリーチによって変わります。
海外では、どんなリーチのクライマーにも安全なように、ボルトが打たれた岩場が登場しています。
が、日本の岩場はそうではありません。文句を言っても、今後10年以内に状況が変わる可能性は、ほとんどゼロです。
ならば、建前に拘るのではなく、現実に合わせた方針を新しいクライマーに指導するほうが現実的です。
実際、クライミングがメッカの山梨では、そのように指導されていたと思います。
それでも、無知なクライマーによる事故が完全に防げていたとは思えず、無防なチャレンジで事故る若いクライマーは後を絶たないようでした。しかし、だとしても、事故は、中山尾根とか、阿弥陀南稜とか、本格的なアルパインの入門ルートであり、ある程度、ジムデビュークライマーならば、無知も仕方がないなという、高度な場所でした。しかし、九州では、事故が起こっているのは、四阿屋とか、比叡のような”ゲレンデレベル”の場所です。
この記録は、私の2018年4月22日の四阿屋でのグランドフォールを目撃したときのものです。
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グランドフォール
今日は四阿屋の岩場でグランドフォールをみました。
インディアンフェイスというルートで、2ピン目から3ピン目までがランナウト気味、つまり、
(最終クリップから出ているロープ長)と(それより下で出ているロープ長)が、ほぼ同じくらいになっていました。
背の高いクライマーを同じくらい背が高く、細身のクライマーがビレイしていたのですが、たぶん、体重は釣り合うくらいですが、クライマーが落ちると、ロープの伸びがあるので、結局伸びの分でグランドフォールしていたと思います。腰を打ったようで、病院へ行く、ということでした。
私は岩場でグランドフォールを見たのは、自分が落ちて頭を7針縫った以外は初めてです。(アイスは2度見ている)
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理由は、グレードが適切でないため、です。
別にジム出身クライマーでなくても、5.10bだったら誰でも取り付いてしまいますよね。
これらの事情により、九州福岡では無謀な人だけでなく、普通に慎重に正しいビレイで登っているクライマーまでもが、取り返しのつかない事故を回避できないということになっています。異様にグレードを辛くつける習慣は、おそらく九州の文化的なもの…一か八かがクライミングなんだ、という誤解…によると思われます。どうも、大阪から西はそうらしいです。
さらに、ボルト位置の問題、適正ボルトではなく、ボルト間の距離が遠い問題は、全国で共通しています。
これはリーチの問題が、多くのクライマーに理解されていないためです。誰にとっても、難易度は同じである、という間違った前提に立っていて、ジム上がりではないクライマーでも、そのことを理解していません。
ボルトの配置が適正でない場合、正しくビレイしていても、ランナウトしていれば、落ちればグランドフォールになる。そのような、ルートの作り、岩場の作り、のために、適正にビレイしていても、落ちれば、この四阿屋のように腰椎骨折の事故に遭うことになります。
その原因は、クライマー側の無知を有知に変えてやる、指導者側の一種の手薄さ、があると思います。
つまり、”3ピン目取るまでは決して落ちてはいけない”、とか、”マルチでは2グレード下を登る”、ということを明示的に教えることです。