2021/12/15

現代クライマーのレベル感=お粗末系です

 現代クライマーというのは、

1)クライマーがやっていないクライミングジムで、ボルダリングに目覚め

2)山岳会にも入らず

3)誰とも登らず

4)当然フリークライミング協会も知らず

5)雑誌も読まない

で、外岩ボルダーに行く人

です。

そういう人が、岩場のある地方自治体にボルダリングがしたいからと言って、移住してくるのが現代のクライマー事情なんですよ。

普通は移住して来るくらいクライミングに熱を上げているとすれば、クライミング史くらい知っていると思うでしょう…ところが。

ボルダラーなのに、”黒本”って言葉も知らないんですよ。”御岳ボルダー”って言っても、きょとんとしています。

当然、ノーマットで登った記録のすごさとかを見聞きしたことがあるわけでもなく、ただ単に、”金がないから”とか言う理由でノーマット。

ちなみに単独で誰からも何も教わらずに登っていると言われたとき、私が聞いたのは、

「マットは何枚使っているの?」

でした。なんせ、ボルダリングは、マットを運ぶのが大変なので、マット担ぎ要員としてメンバー揃えるのが核心の一つです。

一人で登っていたら、マットを運び入れるだけで大変です。

ところが、答えは「マットは使っていない」でした。

ですので、別にポリシーがあってそうやっているわけではなさそうです。

そして、誰からも教わっていないし、フリークライミング協会が出している『安全ブック』などを置いているクライミングジムもない。ので、当然のことながら

1)ボルダリングは9割落ちているクライミング形態であるとは知らない

2)ランディングのセルフコントロールがすなわちボルダリングのリスクコントロールである、ことも知らない

3)ので、ランディング技術を磨く=ボルダリングのスキルの一つとも知らない

4)ロープが出るクライミングより、ボルダリングのランディングでの事故が多いことを知らない

5)頭を切っても翌日から登れるが、足首をやると数か月は最低登れないことも知らない

6)仮にノーマットで外ボルダリングして、事故になった場合、岩場が閉鎖になる恐れがあると知らない

7)そのため、公開された岩場でのノーマットが非常に迷惑な行為であることを知らない

8)ソロで登る場合、事故の際、発見が遅れて、大事になることが多いということを知らない

9)もし発見が遅れて死亡などにでもなったら、岩場の閉鎖の憂き目にあう可能性がある

10)したがって、分かっていないクライマーのソロは、迷惑行為の一つであり、勧められない

と10個くらいの無知が重なっています。

どのような内容のクライマーか?というと、50代でクライミング歴2年、13Kgの歩荷でヘロヘロになってしまうそうで、今登れるグレードは3級が限界グレードだそうです。

一般的な話ですが、アルパインのクライマーは女性で25kg、男性なら30kgを担いで大倉尾根をノーマルコースタイムで登って帰ってこれないと、アルパインルートに連れ出してもらえません。そのくらいの強さは最低限って意味です。なので13kgでへばっていると聞いて、ビックリ仰天です。前にいた会では、60代の太ったおばちゃんだけが12kgで限界、と言っていました。

さらに言えば、3級が限界グレードの人がいきなり2段。その2段の課題を登るのに、マットを使わないとか言っている…それが迷惑行為だとも知らず…です。

そんなレベル感であるので、クライミング史に残る偉業のノーマット主義とは話が違います。

これが、クライマーがやっていないクライミングジムが町中にうじゃうじゃできて、これまで絶対に岩場に来る機会がなかったような人たちが岩場に来始めたときに起こることです。

対策としては

 岩場ごとにノーマット禁止を告知しておく

ことだと思います。というのは、公開された岩場でノーマットで登るなどというのは、非常識なことだという”常識”も、基本的に見聞きするチャンスが現代クライマーには存在しないからです。

先輩後輩の絆で登るわけでもなく、

友達と登るわけでもなく、

ジムのお兄さんと登るわけでもなく、

山岳会は人間関係がめんどくさいから嫌、

本を読むのは字が煩わしいから嫌、

クライミング技術を学ぶのは、カタカナが多いから嫌

そんな人だってボルダリングなら外岩に来れてしまう時代が来ているのです。

つまり勉強する気もなければ、岩場に対して熱い思いもない。岩を愛しているのではなく、単純に

 登りたいだけ

なのです。何のためにいきなり2段なのか?それは本人しか知る由がありません。

なんで3級しか登れない人が2段なのか?

普通は遠くの目標、憧れのルートにとどめて、目の前のもっと身近な目標をこなすのが普通だと思います。なにしろ、ボルダーは課題が短く一瞬なので、飽きちゃいますし、指を痛めます。痛めたら登れるところも登れなくなります。

成長戦略として非常に非合理的である、”いきなり2段作戦”。

これと似ているケースで、”いきなり四尾根”というのが過去にありました。

アルパインのクライマーでも、インドアジムで5.11が登れるからという理由で、北岳バットレス四尾根にそのまま行こうとしていた人を知っていますので、要するにリスクを因数分解するだけの知性がないだけかもしれません。

つまり無謀って意味です。そのような人は、自分では無謀とは思っていないので、何を言っても聞く耳を持たないかもしれませんが(何しろ、本人は大まじめで二段にトライ中ですので…)、それでも、

 各岩場側の自己防衛

として、

岩場としてノーマット禁止

くらいは言っておかないと、このような極端に無知な人からの弊害を防げないと思います。

もちろん、きちんとした技術的裏付けがあってのハイボル&ノーマットの伝統は、それなりのきちんとしたクライマーが引き続き文化伝統としてつないでいけばいいと思います。

そんな伝統とは似ても似つかない、お粗末系ノーマットクライマーは、あらかじめ予防していないと、クライミング自体が成立できなくなってしまう、と思います。

それではこれまでの多くの人が流した汗と涙…苦労が無駄になってしまいます。岩場の公開までは長い長い交渉の時間がかかるものです。

例え、クライミングに昨日来たお上りさんが起こした事故だとしても、世間は、その人だってクライマーでしょ、と思います。世間はクライマー界とは違って、”常識”で成り立っており、いくら、その人が例外的お粗末クライマーでも、事故ったり、死者が出れば、町は迷惑であることには変わりありません。すぐに閉鎖になってしまうでしょう。

そのような目に遭わないためにも、岩場の側が、無知なクライマーから、自己防衛しておく方が、良い策だと思います。

このような人が、例外で少数派、である保証はどこにもなく、一般的現象、である可能性もあるからです。

初見フリーソロで登った厳冬期阿弥陀北稜。途中のモタモタした男子を抜きました
    ほとんどアックスで登るフリーソロ・ハイボルダーです(笑)