■ クライマーラーニング特性の分析
Q:
【10年クライミングをしていても、50mのロープでリードしている間に、35mのピッチを登ったのにもかかわらず、25mのピッチに進んでしまうような思慮の浅いクライマーなどは、どのようなラーニング特性なのでしょうか?】
A:
このようなミスをするクライマーは、学習スタイルや認知特性に特定の偏りがある 可能性があります。以下の観点から分析できます。
1️⃣ ラーニング特性の観点
🔹 ① 「経験と学習の切り離し」タイプ
- 何年もクライミングをしていても、経験を体系的な知識に統合できていない。
- 「やっているうちに覚える」という場当たり的な学習スタイルで、原理や基礎を深く考えない。
- 「リードではロープの長さを考慮する」という基本的な計算を、自動化しておらず、都度判断ミスをする。
🛠 指導のコツ
✅ 「経験を言語化させる」(なぜこの判断をしたのか説明させる)
✅ 「事前のシミュレーションを習慣化する」(登る前にルートとピッチの計画を口に出して確認する)
🔹 ② 「情報処理が局所的」タイプ(全体像を見ない)
- 目の前の動作や課題に集中しすぎて、全体の状況を俯瞰できていない。
- 「今登ること」だけに意識が向き、ロープの長さや次のピッチの計算を後回しにする。
- 「35m登ったなら、次は15m以内にする」という基本的な足し算が、実際の登攀中に抜け落ちる。
🛠 指導のコツ
✅ 「全体を俯瞰するトレーニング」(読図のように、ルート全体を考えながら登る練習)
✅ 「決定の前に、一度立ち止まる習慣をつける」(次の行動に移る前に「この選択で問題ないか?」を確認させる)
🔹 ③ 「慣れによる慢心」タイプ
- 「これくらい大丈夫だろう」と思考停止している。
- ルートやロープ長を 「勘」でやってしまい、基本の確認を怠る。
- 初心者の頃は気をつけていたが、長年の習慣で注意力が低下し、細かいチェックを省くようになった。
🛠 指導のコツ
✅ 「初心者のつもりで確認させる」(自分が教える立場だと思って説明させる)
✅ 「ミスのフィードバックを明確に伝える」(「ここでロープ長を考えなかったら、墜落リスクがあった」など具体的に指摘)
🔹 ④ 「数値や距離感が苦手」タイプ(空間認知・数値処理の弱さ)
- 距離感の把握や、数値の処理が苦手。
- 例えば、35mのピッチを登った後、残り15mしかロープがないことを直感的に理解できていない。
- 「25m進む」と決めた時に、「そもそもロープが足りるのか?」を計算しない。
🛠 指導のコツ
✅ 「具体的な数値で練習する」(ロープの長さとピッチ計算を習慣化)
✅ 「視覚的に考えさせる」(図を書いて説明し、数値と空間認知を結びつける)
2️⃣ まとめ:「思慮の浅いクライマー」の学習特性と対策
「経験年数=スキル」ではないため、
「考える習慣」と「ミスの振り返り」 を身につけさせることが、指導者としての重要な役割になります。
参考:
白亜スラブ